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【種別】 “[[紅世の徒]]”、[[神]]、[[真名>真名(まな)]] 【初出】 II巻 【解説】  “[[紅世の王]]”。「汚名に等しき名」として捨てた過去の[[通称]]は[[伏羲]]。 [[炎]]の色は黒。この炎は通常とは違い、闇と区別がつかないような「輝かない炎」であり、全てを染め上げ塗りつぶすと形容される場合もあった。この黒い炎が影となった場合、[[銀]]色となった。 [[顕現]]した姿は、両目と影から零れる銀色に浮かぶ真黒の巨大な蛇身。いくらかの鋭角さを備えた頭部は兜のようで、長大な蛇身を鱗が鎧のように隙なく覆う。その各所に黒い炎をまとわりつかせ、見るものに畏怖と崇敬の念を抱かせた。 真名が初登場したII巻では「天裂き地呑む化け物」と称され、かつて支配という行為に興味を持ち、[[宝具]]『[[玻璃壇>玻璃壇(はりだん)]]』で監視された都『[[大縛鎖]]』を作ったが、すぐに[[フレイムヘイズ]]に袋叩きにされ一発昇天したと[[マージョリー>マージョリー・ドー]]と[[マルコシアス]]によって語られていた。 同巻の[[ラミー]]の言では、“[[棺の織手]]”[[アシズ]]のように、強大であっても討滅されてしまった存在として語られており、不帰の秘法『[[久遠の陥穽]]』により放逐され彼は討滅された、という認識が一般には広まっていた模様。 [[フリアグネ]]曰く、「すごくすごく偉い……でも、とてもとても変で、とてもとても甘い……ああなっても仕方がなかった」という古い“王”。 その正体は[[[仮装舞踏会>仮装舞踏会(バル・マスケ)]]]の『[[盟主]]』にして、“[[紅世>紅世(ぐぜ)]]”真正の[[神]]たる超常的存在。持ちたる権能は『造化』と『確定』。新たなもの、新たな流れを作り出す『創造神』。 『創造神』を討滅できるのは、『天罰神』にして「神をも殺す神」、“紅世”真正の魔神“[[天壌の劫火>アラストール]]”のみとされる。 その存在意義にして神としての機能は、“徒”の願った望みを創造の力を持って叶えることである。 逆にいうと、創造の力はあくまで「他者の望みを叶える」だけであり、「自身の望みを叶える」ことはできない。例えば『[[大縛鎖]]』や新世界『[[無何有鏡>無何有鏡(ザナドゥ)]]』にしても自分で考え出したものではなく、“徒”たちの願いを反映しているに過ぎない。たとえ不都合が生じるとわかっていても、修正の効かない不自由なものでもある。 最終巻ではこの枷を取りはらい、自分の意思で自由に創造を行うために、『[[零時迷子]]』を利用して莫大な力を得た。もっとも、その「自分の意思」というものが“祭礼の蛇”の場合「他者の願いを叶えたい」というものだったため、結果としては何も変わらなかったようである。 存在意義を円滑に行うための[[眷属]]として、護衛担当の“[[千変>シュドナイ]]”、策謀担当の“[[逆理の裁者>ベルペオル]]”、“徒”の願いの結実として現れ“祭礼の蛇”と交信し[[神威召喚]]“[[祭基礼創]]”の際の生贄となる“[[頂の座>ヘカテー]]”の『[[三柱臣>三柱臣(トリニティ)]]』を創りだしていた。 彼の神威召喚の際に形成される、生贄を捧げる黒色の場は[[黒き御簾]]と呼ばれた。生贄にする“徒”は眷属であるヘカテーのみである。 眷属が死亡しても、また同一人物を新たに生み出すことが出来るようである。これは、神威を畏れて生贄を供すことを憚った太古の“徒”たちが創造神に願った結果として、『眷属』という存在を世界法則として組み入れたからであり、『三柱臣』が討滅されても復活できるのは、彼らの存在そのものが世界法則の一部として組み込まれているからであることがSIII巻で判明した。 その存在理由から良いも悪いも関係なく余地があれば埋め、未踏のモノに手を伸ばしてきた。 個人の欲望を肯定するその在り様から、世界のバランスを乱す“徒”たちの多くから敬服や崇拝を受けているが、世界のバランスを憂え、世界のために同胞を討つ事も止む無しと考える“徒”たちからはその思想と目的から嫌悪され恐れられていた。 その権能ゆえ、様々な“徒”が“紅世”からこの世に渡り来始めた頃に、その新しい流れに引き寄せられ、三柱の眷属『三柱臣』と共に渡り来てこの世の“徒”たちに様々な新たなものを齎した。 そしてこの世の“徒”たちの大多数が望んだ、“存在の力”をいくら使ってもよい箱庭とも言うべき封界『大縛鎖』の創造に着手した。 しかし、多数の人間を犠牲にして人喰いである異世界人たちが好き勝手に出来る空間を創ること、『大縛鎖』自体が“徒”にもたらす影響は、当時のフレイムヘイズたちには看過出来ぬ横暴であり、己が権能に溺れ、世界の在り様にまで手を伸ばし、支配に興味を持ったとして、古のフレイムヘイズたちが創造の儀式に合わせて発動させた秘法『久遠の陥穽』によりこの世から放逐されられた。 この戦いは後世に『神殺し』の御伽噺として伝わっていた。 しかし、この際に秘法『久遠の陥穽』を、秘法を発動させたまま巻き込まれた古のフレイムヘイズたちの“存在の力”が自身にも僅かに流れ込むように変質させ、また秘法『久遠の陥穽』発動直前にベルペオルが渡した『[[旗標]]』を頼りに、この世に僅かな繋がりを確保していた。 その後はヘカテーとの交信成功を期に[[両界の狭間]]でただ漂うのを止め、力を切り離して『[[祭殿]]』へと変えることで神体たる自身の身体を蛇骨へと変えて休眠させ、精神のみで活動を行っていた。 自らは流れ込む最古のフレイムヘイズたちの力を用いて、自身に至る道『[[詣道]]』や、ヘカテーが束ねた“徒”の願いに合わせて『[[大命詩篇]]』と呼ばれる特殊な[[自在式]]の製作にとりかかった。それは、いつかこの世に帰還し再び創造を行うための千年単位の計画であった。『三柱臣』を使い、『大命詩篇』をヘカテーに送ったり、『[[暴君]]』と呼ばれるこの世で自分に代わって自由に活動する代行体の製作などがその内容であった。 VIII巻以降、[[坂井悠二>坂井悠二(さかいゆうじ)]]の夢に現れる「真っ黒な自分」は、『暴君I』と化した『[[零時迷子]]』に送られてきた人格鏡像の断片ごしに意識を共有した“祭礼の蛇”であった。 坂井悠二の心の在り様を観察している内に、彼の願いである大切な人や街、そしてシャナを守りたいと願い、そして「この戦いをいつか終わらせる」という独自の願いと心の在り方を同調可能な思考と志向と判断して、自身と共に歩む唯一の“人間”と認めた。これにより、“[[ミステス]]”の形を残したまま代行体とすることを『三柱臣』に伝え、『暴君II』をそのまま素体にするという計画から変更させていた。 そしてクリスマス・イヴの日、[[サブラク]]が『零時迷子』に打ち込んだ『大命詩篇』によって完成した[[仮想意思総体]]を得て悠二と接触し、『[[非常手段>非常手段(ゴルディアン・ノット)]]』で『[[星黎殿]]』に転移したと同時に二つの『暴君』が完全合一を果たし、この世での代行体を得て仮の帰還を果たした。 その際に、古い通称を捨て、新たな通称を「坂井悠二」と改めた。 長年空席だった[仮装舞踏会]の盟主に帰り咲いた後は、数千年前に成し得なかった「[[この世の本当のこと]]」を変えるという『[[大命]]』を成し遂げるために活動していた。 本来は『暴君II』を体にする計画だったが、上記の理由により坂井悠二を自分の体としたため、代行体の核である仮想意思総体に共振している“祭礼の蛇”の人格と、素体である“ミステス”坂井悠二の人格が同調し混在するという特殊な状況になっていた。 “祭礼の蛇”坂井悠二曰く、どこからどこまでという区切りは両者の心にはあまり無いらしく「融け合っている」という感覚に近いとのことだった。 それに伴って起こる現象なのかは不明だが、『大命詩篇』を作った“祭礼の蛇”にも想定外の現象として、異常なまでに鋭敏な探知能力と、盟主と悠二の声が混じり合った状態が発生していた。 存在理由以外には特に興味が無い性格で、他人の自由を縛るのはあまり好きではないため、代行体の主導権は“祭礼の蛇”にあるものの、共有している坂井悠二も割と好きに活動できていた。 その一方で存在理由を遂行している時はお喋りになったり、我侭放題だったりで、ベルペオル曰く「奇矯が性の過ぎる方」、悠二曰く「いつでも誰かの願いを叶えたくてワクワクしてる」と言わしめ、諧謔の風を持つ一筋縄ではいかない性格のようだ。 代行体たる“祭礼の蛇”坂井悠二の外見は、全身に緋色の凱甲『[[莫夜凱]]』と衣を纏い、後頭からは[[ダンタリオン]][[教授]]作の漆黒の[[竜尾]]が伸びていた。 代行体を用いて怪力や頑強さといった身体的な力を発揮する他、万単位の人間分の“存在の力”を必要とする『[[神門]]』を創造するなど、“祭礼の蛇”の持つ強大な統御力と創造の力を、神体を動かさずに精神だけで行使可能だった。 その一方で人間サイズでの戦いには慣れておらず、組織運営において盟主の仕事は特に無いことを利用して、教授に代行体たる身体を改造させ、『暴君』を用いた補助武装や竜尾を付けさせたり、悠二としての意志で[[自在法]]の練習や戦闘訓練、書類の講義などを不眠不休で行って、『[[達意の言]]』といった(初歩ではあるが)新たな自在法なども習得していた。 一月初頭に[[御崎市>御崎市(みさきし)]]に襲来し、同地においてシャナを打ち負かし、『玻璃壇』とともに『星黎殿』に連れ帰り、フレイムヘイズの異能を封じて虜囚とした。坂井悠二としては彼女を討ち手の運命から解放するため、“祭礼の蛇”としては“[[天破壌砕]]”の発動を封じるためであった。 『[[大命]]』第二段階として、中国中南部で『久遠の陥穽』に通じる『[[神門]]』を生み出し、ヘカテーによるシャナ暗殺を未遂で防いだ後、自身(アラストールを含む)と『三柱臣』、教授(と[[ドミノ]])、サブラク、[[ロフォカレ]]を伴って、世界の狭間へ向かった。 そして『詣道』を踏破して『[[祭殿]]』に到達すると、『三柱臣』によって神体を覚醒・復活させ、その神体に乗って『詣道』を遡りつつ崩壊させながらこの世に通じる『神門』を目指した。 途中、サブラクを振り切って深部に達していたシャナと遭遇。神体の上で戦闘に及ぶも、そこでの決着は付かないまま[[ヴィルヘルミナ>ヴィルヘルミナ・カルメル]]たちと合流したシャナを見送ると、『神門』を抜けこの世に還御した。 この世に戻った“祭礼の蛇”の最初の業は、全世界に向けた大命宣布であった。これにより、フレイムヘイズは戦う意義を奪われ、『星黎殿』に攻め寄せていた[[フレイムヘイズ兵団]]は総崩れとなった。 しかし、再構成されたばかりの神体での『詣道』踏破という強行軍に加えて、両界の境である『神門』を潜り抜けたことで神体は微妙な軋みを上げており、実際に戦闘に参戦できる状態ではなかった。 『星黎殿』秘匿区画でヘカテーが『[[吟詠炉>吟詠炉(コンロクイム)]]』に収められた『大命詩篇』のバックアップを用い神体顕現の安定化を図ることで、中国中南部の決戦が終わる頃には五割方安定したようだ。 来る大命成就の地に御崎市を選び、各軍との合流等の準備を整え、悠二や『三柱臣』たちと共に出発した。 御崎市に向かうまでは『[[秘匿の聖室>秘匿の聖室(クリュプタ)]]』で姿と[[気配]]を隠蔽し、『星黎殿』の御崎市到着間近に[[吉田一美>吉田一美(よしだかずみ)]]を迎え入れ、新世界『無何有鏡』創造の一助として([[調律]]の)[[逆転印章>逆転印章(アンチ・シール)]]を起動させた。 『星黎殿』が『[[真宰社>宰祝の社壇]]』と化してからは、神体はその上空でヘカテーを取り巻く『大命詩篇』の繭の周囲で環を作り、代行体である坂井悠二はシュドナイを護衛に、防衛線を抜けてきたシャナ、ヴィルヘルミナと交戦に入った。 その戦闘中、『大命詩篇』の繭に改変の自在式を挿入されるが、それは“祭礼の蛇”や“徒”たちの許容範囲内であったため、自身の神体を素材として『[[天梯]]』を創造した直後、そのまま新世界を完成させた。 そして“祭礼の蛇”は『[[タルタロス]]』で坂井悠二から分離し、“徒”たちの願いを叶えたために休眠に入ったまま、ベルペオルと共に『天梯』を通って新世界へ旅立った。 その後、遠い未来で眠りが浅くなった時に、『三柱臣』のことを思い、“徒”と人間の共存を説いて回る悠二とシャナの姿を夢うつつに見通している。 【元ネタ・由来】 伏羲は、中国神話で多くのものを作り出した創造神である。八卦を定め縄を結ぶことで文字とした。後に様々なものを作り出したという神話が加わる。 上半身は人間で下半身は蛇。女媧とは兄妹または夫婦とされている。手に曲尺を持つか太陽を捧げ持つ姿で、蛇の下半身を女媧の下半身と絡み合わせた姿で描かれることが多い。 「祭礼」とは神を奉る儀式のことである。 そして「蛇」という言葉だが、これはよく知られる爬虫類のヘビだが、脱皮を繰り返すこの生物から古代人は「死と再生」を連想し、故にヘビは「神の使い」として世界的に崇められる対象であった。更に、ヘビはその生命力と生態から、豊穣と多産、永遠の生命力を表す大地母神の象徴ともされた。 また、尾を銜えたヘビであるウロボロスは「無限」の象徴であり、この世の物体を不滅の物に確定させることが出来る“祭礼の蛇”の権能の一面に上手く当て嵌まる。 そして、創造神である彼をヘビという観点から考えるのに於いて最も重要なのはインド神話のナーガであろう。 宇宙を創造したヴィシュヌ神の寝台であるアナンタや、乳海を撹拌し世界を再生させるヴァースキのように、ナーガという蛇神は世界の創造に大きく関わっている。 そしてそんな存在ならば当然“徒”たちに神として崇められ、祭られるだろう。これらを総合して真名の意味を考えると「“徒”たちに祭られる創造と不滅の神」という意味だと思われる。 また公式ガイドブック完結編『灼眼のシャナノ全テ 完』にて「造物主だがゴッドではない方」という解説があった。 【コメント】 ☆[[人化]]した姿が見たかったな。 ☆人間社会に紛れるつもりがあるわけじゃなし、人化する必要は“祭礼の蛇”側にはなかっただろう。悠二が以前の姿を取るのが、もしかしたら人化なのかもしれない。 ☆かつての通称を予想すると、神殺しの伝承などからサタンが妥当だと思われていた。 ☆サタネルうんぬんは元ネタじゃなくて単なる推測に過ぎないので勘違いを防ぐためにも消しました。 ☆[仮装舞踏会]はともかく、フレイムヘイズ側でも過去の通称が一切出ないのが不自然な気がする。フレイムヘイズにとっては、“祭礼の蛇”を貶める格好の材料だと思うのだが。 ☆↑実は既に別の“徒”の通称になっているとか。 ☆小説として最後に刊行された外伝第三巻でかつての通称が判明した。 ☆まさかの、本編最後の語り手役ゲット。 ☆アラストールが裁きたがり、[[シャヘル]]が珍しがり。ならこいつは作りたがりとか叶えたがりとかかな? ☆↑どちらも“祭礼の蛇”が言ったある種の嫌味だから、自分の事を言うことはないと思う。 ☆最初から最後まで悠二を褒めちぎって、彼を甘やかそうとしたのはこの神さまくらいではないかと思う。どうにも悠二はかなりお気に入りのようだ。天敵はそういう事も含めてシャナとアラストールで間違いないな。 ☆[[アニメ第3期]]で登場した。 ☆本当に悠二を気に入ってたみたいだな。“徒”の願いを叶えること以外には無頓着な性格であるにも関わらず、分離と残していくことを心から惜しんでるみたいだし。 ☆↑ちょっと違う。“祭礼の蛇”は“徒”だけでなく、人間サイド(人間・フレイムヘイズ・[[トーチ]])も含めた「皆」が愛しく、「皆」の願いを叶えたいと思っていたからな。だから「新世界では人食えないよ。フレイムヘイズの願いも叶ったよ。良かったね。おめでとう。」と祝福したわけだ。 ☆坂井悠二から分離したあとは、また通称無しに戻ったのだろうか?
【種別】 “[[紅世の徒]]”、[[神]]、[[真名>真名(まな)]] 【初出】 II巻 【解説】  “[[紅世の王]]”。読みは「さいれいのへび」。「汚名に等しき名」として捨てた過去の[[通称]]は[[伏羲]]。 [[炎]]の色は黒。この炎は通常とは違い、闇と区別がつかないような「輝かない炎」であり、全てを染め上げ塗りつぶすと形容される場合もあった。この黒い炎が影となった場合、[[銀]]色となった。 [[顕現]]した姿は、両目と影から零れる銀色に浮かぶ真黒の巨大な蛇身。いくらかの鋭角さを備えた頭部は兜のようで、長大な蛇身を鱗が鎧のように隙なく覆う。その各所に黒い炎をまとわりつかせ、見るものに畏怖と崇敬の念を抱かせた。 真名が初登場したII巻では「天裂き地呑む化け物」と称され、かつて支配という行為に興味を持ち、[[宝具]]『[[玻璃壇>玻璃壇(はりだん)]]』で監視された都『[[大縛鎖]]』を作ったが、すぐに[[フレイムヘイズ]]に袋叩きにされ一発昇天したと[[マージョリー>マージョリー・ドー]]と[[マルコシアス]]によって語られていた。 同巻の[[ラミー]]の言では、“[[棺の織手]]”[[アシズ]]のように、強大であっても討滅されてしまった存在として語られており、不帰の秘法『[[久遠の陥穽]]』により放逐され彼は討滅された、という認識が一般には広まっていた模様。 [[フリアグネ]]曰く、「すごくすごく偉い……でも、とてもとても変で、とてもとても甘い……ああなっても仕方がなかった」という古い“王”。 その正体は[[[仮装舞踏会>仮装舞踏会(バル・マスケ)]]]の『[[盟主]]』にして、“[[紅世>紅世(ぐぜ)]]”真正の[[神]]たる超常的存在。持ちたる権能は『造化』と『確定』。新たなもの、新たな流れを作り出す『創造神』。 『創造神』を討滅できるのは、『天罰神』にして「神をも殺す神」、“紅世”真正の魔神“[[天壌の劫火>アラストール]]”のみとされる。 その存在意義にして神としての機能は、“徒”の願った望みを創造の力を持って叶えることである。逆にいうと、創造の力はあくまで「他者の望みを叶える」だけであり、「自身の望みを叶える」ことはできない。例えば『[[大縛鎖]]』や新世界『[[無何有鏡>無何有鏡(ザナドゥ)]]』にしても自分で考え出したものではなく、“徒”たちの願いを反映しているに過ぎない。たとえ不都合が生じるとわかっていても、修正の効かない不自由なものでもある。 最終巻ではこの枷を取りはらい、自分の意思で自由に創造を行うために、『[[零時迷子]]』を利用して莫大な力を得た。もっとも、その「自分の意思」というものが“祭礼の蛇”の場合「他者の願いを叶えたい」というものだったため、結果としては何も変わらなかったようである。 存在意義を円滑に行うための[[眷属]]として、護衛担当の“[[千変>シュドナイ]]”、策謀担当の“[[逆理の裁者>ベルペオル]]”、“徒”の願いの結実として現れ“祭礼の蛇”と交信し[[神威召喚]]“[[祭基礼創]]”の際の生贄となる“[[頂の座>ヘカテー]]”の『[[三柱臣>三柱臣(トリニティ)]]』を創りだしていた。 彼の神威召喚の際に形成される、生贄を捧げる黒色の場は[[黒き御簾]]と呼ばれた。生贄にする“徒”は眷属であるヘカテーのみである。 眷属が死亡しても、また同一人物を新たに生み出すことが出来るようである。これは、神威を畏れて生贄を供すことを憚った太古の“徒”たちが創造神に願った結果として、『眷属』という存在を世界法則として組み入れたからであり、『三柱臣』が討滅されても復活できるのは、彼らの存在そのものが世界法則の一部として組み込まれているからであることがSIII巻で判明した。 その存在理由から良いも悪いも関係なく余地があれば埋め、未踏のモノに手を伸ばしてきた。 個人の欲望を肯定するその在り様から、世界のバランスを乱す“徒”たちの多くから敬服や崇拝を受けているが、世界のバランスを憂え、世界のために同胞を討つ事も止む無しと考える“徒”たちからはその思想と目的から嫌悪され恐れられていた。 その権能ゆえ、様々な“徒”が“紅世”からこの世に渡り来始めた頃に、その新しい流れに引き寄せられ、三柱の眷属『三柱臣』と共に渡り来てこの世の“徒”たちに様々な新たなものを齎した。 そしてこの世の“徒”たちの大多数が望んだ、“存在の力”をいくら使ってもよい箱庭とも言うべき封界『大縛鎖』の創造に着手した。 しかし、多数の人間を犠牲にして人喰いである異世界人たちが好き勝手に出来る空間を創ること、『大縛鎖』自体が“徒”にもたらす影響は、当時のフレイムヘイズたちには看過出来ぬ横暴であり、己が権能に溺れ、世界の在り様にまで手を伸ばし、支配に興味を持ったとして、古のフレイムヘイズたちが創造の儀式に合わせて発動させた秘法『久遠の陥穽』によりこの世から放逐されられた。 この戦いは後世に『神殺し』の御伽噺として伝わっていた。 しかし、この際に秘法『久遠の陥穽』を、秘法を発動させたまま巻き込まれた古のフレイムヘイズたちの“存在の力”が自身にも僅かに流れ込むように変質させ、また秘法『久遠の陥穽』発動直前にベルペオルが渡した『[[旗標]]』を頼りに、この世に僅かな繋がりを確保していた。 その後はヘカテーとの交信成功を期に[[両界の狭間]]でただ漂うのを止め、力を切り離して『[[祭殿]]』へと変えることで神体たる自身の身体を蛇骨へと変えて休眠させ、精神のみで活動を行っていた。 自らは流れ込む最古のフレイムヘイズたちの力を用いて、自身に至る道『[[詣道]]』や、ヘカテーが束ねた“徒”の願いに合わせて『[[大命詩篇]]』と呼ばれる特殊な[[自在式]]の製作にとりかかった。それは、いつかこの世に帰還し再び創造を行うための千年単位の計画であった。『三柱臣』を使い、『大命詩篇』をヘカテーに送ったり、『[[暴君]]』と呼ばれるこの世で自分に代わって自由に活動する代行体の製作などがその内容であった。 VIII巻以降、[[坂井悠二>坂井悠二(さかいゆうじ)]]の夢に現れる「真っ黒な自分」は、『暴君I』と化した『[[零時迷子]]』に送られてきた人格鏡像の断片ごしに意識を共有した“祭礼の蛇”であった。 坂井悠二の心の在り様を観察している内に、彼の願いである大切な人や街、そしてシャナを守りたいと願い、そして「この戦いをいつか終わらせる」という独自の願いと心の在り方を同調可能な思考と志向と判断して、自身と共に歩む唯一の“人間”と認めた。これにより、“[[ミステス]]”の形を残したまま代行体とすることを『三柱臣』に伝え、『暴君II』をそのまま素体にするという計画から変更させていた。 そしてクリスマス・イヴの日、[[サブラク]]が『零時迷子』に打ち込んだ『大命詩篇』によって完成した[[仮想意思総体]]を得て悠二と接触し、『[[非常手段>非常手段(ゴルディアン・ノット)]]』で『[[星黎殿]]』に転移したと同時に二つの『暴君』が完全合一を果たし、この世での代行体を得て仮の帰還を果たした。 その際に、古い通称を捨て、新たな通称を「坂井悠二」と改めた。 長年空席だった[仮装舞踏会]の盟主に帰り咲いた後は、数千年前に成し得なかった「[[この世の本当のこと]]」を変えるという『[[大命]]』を成し遂げるために活動していた。 本来は『暴君II』を体にする計画だったが、上記の理由により坂井悠二を自分の体としたため、代行体の核である仮想意思総体に共振している“祭礼の蛇”の人格と、素体である“ミステス”坂井悠二の人格が同調し混在するという特殊な状況になっていた。 “祭礼の蛇”坂井悠二曰く、どこからどこまでという区切りは両者の心にはあまり無いらしく「融け合っている」という感覚に近いとのことだった。 それに伴って起こる現象なのかは不明だが、『大命詩篇』を作った“祭礼の蛇”にも想定外の現象として、異常なまでに鋭敏な探知能力と、盟主と悠二の声が混じり合った状態が発生していた。 存在理由以外には特に興味が無い性格で、他人の自由を縛るのはあまり好きではないため、代行体の主導権は“祭礼の蛇”にあるものの、共有している坂井悠二も割と好きに活動できていた。 その一方で存在理由を遂行している時はお喋りになったり、我侭放題だったりで、ベルペオル曰く「奇矯が性の過ぎる方」、悠二曰く「いつでも誰かの願いを叶えたくてワクワクしてる」と言わしめ、諧謔の風を持つ一筋縄ではいかない性格のようだ。 代行体たる“祭礼の蛇”坂井悠二の外見は、全身に緋色の凱甲『[[莫夜凱]]』と衣を纏い、後頭からは[[ダンタリオン]][[教授]]作の漆黒の[[竜尾]]が伸びていた。 代行体を用いて怪力や頑強さといった身体的な力を発揮する他、万単位の人間分の“存在の力”を必要とする『[[神門]]』を創造するなど、“祭礼の蛇”の持つ強大な統御力と創造の力を、神体を動かさずに精神だけで行使可能だった。 その一方で人間サイズでの戦いには慣れておらず、組織運営において盟主の仕事は特に無いことを利用して、教授に代行体たる身体を改造させ、『暴君』を用いた補助武装や竜尾を付けさせたり、悠二としての意志で[[自在法]]の練習や戦闘訓練、書類の講義などを不眠不休で行って、『[[達意の言]]』といった(初歩ではあるが)新たな自在法なども習得していた。 一月初頭に[[御崎市>御崎市(みさきし)]]に襲来し、同地においてシャナを打ち負かし、『玻璃壇』とともに『星黎殿』に連れ帰り、フレイムヘイズの異能を封じて虜囚とした。坂井悠二としては彼女を討ち手の運命から解放するため、“祭礼の蛇”としては“[[天破壌砕]]”の発動を封じるためであった。 『[[大命]]』第二段階として、中国中南部で『久遠の陥穽』に通じる『[[神門]]』を生み出し、ヘカテーによるシャナ暗殺を未遂で防いだ後、自身(アラストールを含む)と『三柱臣』、教授(と[[ドミノ]])、サブラク、[[ロフォカレ]]を伴って、世界の狭間へ向かった。 そして『詣道』を踏破して『[[祭殿]]』に到達すると、『三柱臣』によって神体を覚醒・復活させ、その神体に乗って『詣道』を遡りつつ崩壊させながらこの世に通じる『神門』を目指した。 途中、サブラクを振り切って深部に達していたシャナと遭遇。神体の上で戦闘に及ぶも、そこでの決着は付かないまま[[ヴィルヘルミナ>ヴィルヘルミナ・カルメル]]たちと合流したシャナを見送ると、『神門』を抜けこの世に還御した。 この世に戻った“祭礼の蛇”の最初の業は、全世界に向けた大命宣布であった。これにより、フレイムヘイズは戦う意義を奪われ、『星黎殿』に攻め寄せていた[[フレイムヘイズ兵団]]は総崩れとなった。 しかし、再構成されたばかりの神体での『詣道』踏破という強行軍に加えて、両界の境である『神門』を潜り抜けたことで神体は微妙な軋みを上げており、実際に戦闘に参戦できる状態ではなかった。 『星黎殿』秘匿区画でヘカテーが『[[吟詠炉>吟詠炉(コンロクイム)]]』に収められた『大命詩篇』のバックアップを用い神体顕現の安定化を図ることで、中国中南部の決戦が終わる頃には五割方安定したようだ。 来る大命成就の地に御崎市を選び、各軍との合流等の準備を整え、悠二や『三柱臣』たちと共に出発した。 御崎市に向かうまでは『[[秘匿の聖室>秘匿の聖室(クリュプタ)]]』で姿と[[気配]]を隠蔽し、『星黎殿』の御崎市到着間近に[[吉田一美>吉田一美(よしだかずみ)]]を迎え入れ、新世界『無何有鏡』創造の一助として([[調律]]の)[[逆転印章>逆転印章(アンチ・シール)]]を起動させた。 『星黎殿』が『[[真宰社>宰祝の社壇]]』と化してからは、神体はその上空でヘカテーを取り巻く『大命詩篇』の繭の周囲で環を作り、代行体である坂井悠二はシュドナイを護衛に、防衛線を抜けてきたシャナ、ヴィルヘルミナと交戦に入った。 その戦闘中、『大命詩篇』の繭に改変の自在式を挿入されるが、それは“祭礼の蛇”や“徒”たちの許容範囲内であったため、自身の神体を素材として『[[天梯]]』を創造した直後、そのまま新世界を完成させた。 そして“祭礼の蛇”は『[[タルタロス]]』で坂井悠二から分離し、“徒”たちの願いを叶えたために休眠に入ったまま、ベルペオルと共に『天梯』を通って新世界へ旅立った。 その後、遠い未来で眠りが浅くなった時に、『三柱臣』のことを思い、“徒”と人間の共存を説いて回る悠二とシャナの姿を夢うつつに見通している。 【元ネタ・由来】 伏羲は、中国神話で多くのものを作り出した創造神である。八卦を定め縄を結ぶことで文字とした。後に様々なものを作り出したという神話が加わる。 上半身は人間で下半身は蛇。女媧とは兄妹または夫婦とされている。手に曲尺を持つか太陽を捧げ持つ姿で、蛇の下半身を女媧の下半身と絡み合わせた姿で描かれることが多い。 「祭礼」とは神を奉る儀式のことである。 そして「蛇」という言葉だが、これはよく知られる爬虫類のヘビだが、脱皮を繰り返すこの生物から古代人は「死と再生」を連想し、故にヘビは「神の使い」として世界的に崇められる対象であった。更に、ヘビはその生命力と生態から、豊穣と多産、永遠の生命力を表す大地母神の象徴ともされた。 また、尾を銜えたヘビであるウロボロスは「無限」の象徴であり、この世の物体を不滅の物に確定させることが出来る“祭礼の蛇”の権能の一面に上手く当て嵌まる。 そして、創造神である彼をヘビという観点から考えるのに於いて最も重要なのはインド神話のナーガであろう。 宇宙を創造したヴィシュヌ神の寝台であるアナンタや、乳海を撹拌し世界を再生させるヴァースキのように、ナーガという蛇神は世界の創造に大きく関わっている。 そしてそんな存在ならば当然“徒”たちに神として崇められ、祭られるだろう。これらを総合して真名の意味を考えると「“徒”たちに祭られる創造と不滅の神」という意味だと思われる。 また公式ガイドブック完結編『灼眼のシャナノ全テ 完』にて「造物主だがゴッドではない方」という解説があった。 【コメント】 ☆[[人化]]した姿が見たかったな。 ☆人間社会に紛れるつもりがあるわけじゃなし、人化する必要は“祭礼の蛇”側にはなかっただろうな。悠二が以前の姿を取るのが、もしかしたら人化なのかもしれなかったな。 ☆かつての通称を予想すると、神殺しの伝承などからサタンが妥当だと思われていた。 ☆サタネルうんぬんは元ネタじゃなくて単なる推測に過ぎないので、勘違いを防ぐためにも消しました。 ☆[仮装舞踏会]はともかく、フレイムヘイズ側でも過去の通称が一切出ないのが不自然な気がした。フレイムヘイズにとっては、“祭礼の蛇”を貶める格好の材料だと思うのだがな。 ☆↑実は既に別の“徒”の通称になっているとか。 ☆小説として最後に刊行された外伝第三巻で、かつての通称が判明した。 ☆まさかの、本編最後の語り手役をゲットした。 ☆アラストールが裁きたがり、[[シャヘル]]が珍しがり。ならこいつは作りたがりとか叶えたがりとかかな? ☆↑どちらも“祭礼の蛇”が言ったある種の嫌味だから、自分の事を言うことはないと思うな。 ☆最初から最後まで悠二を褒めちぎって、彼を甘やかそうとしたのはこの神さまくらいではないかと思う。どうにも、悠二はかなりお気に入りのようだ。天敵はそういう事も含めてシャナとアラストールで間違いないな。 ☆[[アニメ第3期]]で登場した。 ☆本当に悠二を気に入ってたみたいだな。“徒”の願いを叶えること以外には無頓着な性格であるにも関わらず、分離と残していくことを心から惜しんでいたみたいだしな。 ☆↑ちょっと違う。“祭礼の蛇”は“徒”だけでなく、人間サイド(人間・フレイムヘイズ・[[トーチ]])も含めた「皆」が愛しく、「皆」の願いを叶えたいと思っていたからな。だから「新世界では人食えないよ。フレイムヘイズの願いも叶ったよ。良かったね。おめでとう。」と祝福したわけだ。 ☆坂井悠二から分離したあとは、また通称無しに戻ったのだろうか? ☆[[[巌楹院>巌楹院(ミナック)]]]の[[ゴグマゴーグ]]や[[[宝石の一味]]]の“[[瓊樹の万葉]]”[[コヨーテ]]や[[フックス]]や[[トンサーイ]]や[[イナンナ]]や[[[マカベアの兄弟]]]の[[ダーイン]]や[[カルン]]や[[[轍>轍(ラット)]]]の[[ギータ]]や[[ケレブス]]や『[[色盗人>色盗人(いろぬすびと)]]』の[[バロメッツ]]とも絡んでいたら面白そうだったのにな。 ☆番外編『[[おじょうさまのしゃな]]』では、[黒い蛇団]の象徴として登場している。 ☆番外編『[[さんじゅうしのしゃな]]』では、ナレーションを務めた。

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