イカ刺しサムの物語

★2話 サカナちゃんと眠れないヘッドの会話

「少年は恋をした。そう、浜辺で出会った少女に少年は燃えるような恋をした」

「いいねえ。恋物語か、好きだよ…場所はどこ?」

「そこは…魚の惑星」

「面白いよ、サカナちゃん」

「少年は腕の良い漁師だった。名前は…サムでどう?」

「サム…いい名だ」

「少年サムは出会った少女と二人 ボートに乗って眩い銀河の世界に旅立つことを夢見た」
「けれど、サムが恋したのはその少女だったのか…それとも銀河の世界だったのか」

「人生という冒険は続く」


★3話 サカナちゃんとヘッドの会話

「魚の惑星には銀河の世界へ行ける船が一隻だけあったの。その船は王様が持っていた」

(水槽を下降する船の模型)

「王様の船か…良い船はタダでは手に入らない」

「そうね。でもある日のこと王様がお触書を出したの」

(グラスに注がれるジュースと青い何か)

「イカ大王を倒して、その青い血を持ってきた者には何でも望みのものを与えると」
「魚の惑星には、夜になると我が物顔で暴れまわるイカの大王が居たの」

「食っても美味くないんだろうなあ…」

「少年サムは銀河の世界に旅立つ船を手に入れるため イカ大王と戦う決意をした」

「人生という冒険は続く」


★4話 テンション高いサカナちゃんとヘッドの会話

「チャンスを逃すな!少女はそう思ったの。なんとしてもイカ大王を倒して銀河の世界に旅立てる船を貰うのだ」
「そこでサムは手にした銛でイカを突き刺す訓練を始めた。イカ大王と戦うその日に備えて。えい!えい!えーい!!」

「いいねえ…。努力の無い勝利などつまらない」

「イカ刺しサムの名はほどなく国中に広まった」

「イカ刺しサム。カッコいいな」

「少女はそんなサムの帰りをいつも海辺の小屋で待っていた」

「あれ?二人はもう一緒に暮らしてるの?」

「当たり前じゃない!お盛んな年頃の少年少女よ?」

「魚の惑星は進んでるんだね」

「そして、二人は秘密を持った…」

「それで…イカ刺しサムと少女はどんな秘密をもったんだい?」

「イカを食べたの。魚の惑星ではイカは悪魔の使い。決して口にしてはいけないのに、二人は、二人でイカを食べた」

「イカ刺しサムっていうくらいだから刺身で食べたのかなぁ」

「けれど、秘密を共有したことで二人の絆は一層深まった」

「人生という冒険は続く」


★5話 くるくるサカナちゃんとヘッドの会話

「『欲しいものがあるならためらうな!』 少女はそう言ったの」
「ついに、イカ大王の居場所が分かったけれどそこは一年中、激しい嵐による危険な大時化に囲まれた海だから流石のイカ刺しサムもその船出をためらった」
「けれど、ためらうサムを少女は叱った」

「そうとも。本当に欲しいものがあるならリスクを恐れちゃいけない」
「その少女、良い事言うねえ」

「イカ刺しサムは少女を海辺の小屋に残し、一人危険な海へと漕ぎ出した」

「人生という冒険は続く」


★6話 サカナちゃんとヘッドの会話

「戦いが始まる。危険で暗い夜の海。サムは銛を手に今戦いを挑む」
「そして言葉では到底語り尽せない激しい格闘の末にイカ大王をしとめたサムは、ついにその青い血を手に入れた」

「なんだ…戦闘シーンの描写は無しか」

「瓶に詰めたイカ大王の血は、青く煌々と輝き夜の海を照らし出す」

「それは神秘的だねえ」

「その青い血を携えてサムは王様に謁見する」
『王様、約束の青い血です!これがそうです!』
「王様は歓喜に震え瓶を受け取ると、いきなりその青い血を飲み干した」
「その青い血は、不老不死の魔法にかけられた王様が永遠の人生を終わらせることが出来る唯一の薬だったのだ」
『ありがとうサム。これで今宵眠りにつけば、私はもう二度と目覚めぬ』

「…思いがけない展開だな」

「このジュース、美味しくないわ」

(飲み干されたグラスには青い玉と赤い玉が一つずつ)

「それでサムはどうしたの」

「人生という冒険は続く」


★7話 サカナちゃんとまだ頑張れるヘッドの会話

「王様は王位を譲ると言った。王様は最初から呪いを解く青い血を持ってきた者にその王位を譲るつもりだったのだ」
「けれどサムは、その申し出を断った」
『王様、僕はただあなたが持っているという銀河の船が欲しいだけなんです』
『それに乗って、眩い銀河の世界に旅立ちたいのです』
『だから王位なんか要りません!国など欲しくはありません!』

「本当…面白い」
「こうしてサカナちゃんの話が聞けるなら、俺もまだ頑張れる」

「…すると王様は言った」
『よかろう若者よ。望むものは何でも与える約束だ。違えるつもりも無い』
『あの銀河の船を譲ろう』
『だが若者よ。イカ刺しサムよ。心して聞くがいい』
『あの船を動かすにはお前が恋する少女の赤い血を一滴残らず、そのエンジンに注がねばならぬ』
『そう、恋する少女を殺さねばならぬ』
『そうしなければ動かない』
『さあ持っていけ。たった今からお前のものだ』

「甘いなこの飴…」

「人生という冒険は続く」


★8話 お別れ

「サムは少女を殺した。眩い銀河の世界に旅立つために、少女の赤い血をエンジンに注いだ」
「結局サムが恋したのは、少女ではなく銀河の世界への憧れだった」
「恋する少女は最初からあこがれの旅路を飾る花でしかなかったのだ」
「船はサムを乗せ銀河の世界へと旅立つ」
「けれどもすぐにサムは気付いた。あれほど憧れた銀河の世界、だが、それらの星星は生まれ育ったあの魚の惑星とどれほどの違いがあるのだろう」
「あの魚の惑星も同じ銀河の星の一つ、銀河は遠い世界ではなくサムは最初からその眩い世界に住んでいたのだ」

(飴の割れる音)

「では何のためにサムは少女を殺したのか」

「それで終わりか」

(立ち上がる魚ちゃん)

「物語は本当にそこで終わるのか」 

(魚ちゃんの鎖が外れる)

「お前の話はもういい」
「でてってくれ」

(魚ちゃんの頬を涙が伝う)

「さよなら・・・」
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