デビル メイ クライ 4 (Part2? > 2)

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<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"><strong>デビル メイ クライ 4</strong>(Part2/2) ページ容量上限の都合で2分割されています。<br /> 2009/10/26にWiki直接投稿 <hr /> 教団本部に入ってすぐ、生粋の魔界の悪魔である「アサルト」と悪魔をベースにアグナスが造り出した「天使」である<br /> 「アルトアンジェロ」「ビアンコアンジェロ」が戦うムービーが挿入され、両者が敵対している事がわかる。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"><br /> 本部内の渡り廊下。跳ね橋を下ろそうと装置を操作するがこれも魔の力の影響か、<br /> 橋自体に巨大な樹木が絡みついていて役をなさない。<br /> 仕方なく他の道を探して後戻ったネロは、はびこった大木により壁が大きく崩れ落ちた、とある一室にやってきた。<br /> 焦りに呼吸を弾ませながらぐるりを見渡し、ふと頭上の「それ」に気付いて息を呑む。<br /> 鳥籠にも似た奇妙な装置。目を閉じたキリエが揺らぐ赤い光に捉えられるようにして浮いている。駆け寄ろうとしたネロの前に、耳障りな羽音と共にアグナスが現れた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「やっと来たか……」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「キリエに何を!」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">アグナスは睨みつけるネロの視線から隠すように、キリエの前に剣を掲げて挑発する。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「自分で確かめてみたらいい。私を倒せたらの話ではあるがね」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">忌々しげに舌打ちをし、</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「お前は殺す。キリエは守る。それだけだ!」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">端的な言葉を吐き捨てて、ネロは開いた右手をひときわ激しく光らせた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「貴様……!貴様ッ!」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">辛うじて宙に浮きつつ、腹を押さえたアグナスが、怨嗟の声を振り絞る。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「殺す!殺してやる!」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">喚きながら突きつける剣に、</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「来いよ。首をスッ飛ばしてやる」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">今度はネロが両手を広げて挑発を返した。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">度を失った叫びと共に、アグナスは剣を振りかぶり突進してこようとしたが、<br /> その進路を猛スピードで飛ぶ何者かに遮られ、慌てて急ブレーキをかける。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"><br /> 「何者か」……いや、「何者かたち」……それは一群の「天使」だった。<br /> 彼らはしばらく辺りを目まぐるしく飛び回っていたが、ほどなく一斉にネロに向かって殺到してくる。<br /> 四方八方から次々と飛び掛ってくるのを或いは剣で弾き飛ばし、或いは槍を捕まえて投げ飛ばすが、<br /> 数と機動力の差のせいで防戦一方に追い込まれてしまう。<br /> 幾つもの翼が風を切る音と、剣戟の音が響く中、アグナスは傍らに生まれた光、その中から現れた鎧姿に恭しく頭を垂れた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「教皇……」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「もう良い、アグナス。お前は降臨の準備をせよ」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 老人のシルエットとは似ても似つかないが、翼を具えた豪壮な姿の鎧は確かに教皇の声でそう命じ、アグナスは従順に応じてその場を飛び去って行った。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「教皇」は眼下で荒れ狂うネロを一瞥すると頭上をゆっくり振り仰ぐ。そこにはキリエがいまだ気を失ったまま、「鳥籠」の中に浮かんでいる。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">滑空してきた「天使」の槍を跳ね返し、ネロはハッとして中空を見やった。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 他のものとはデザインのやや異なる鎧を纏った、四枚羽根の「天使」がキリエを抱え、連れ去ろうとしていた。<br /> 援護の為か、更にも増して激しくなった「天使」たちの攻撃を片っ端から捌きとめ、突進してきた二体の槍を両腋に挟んで投げ飛ばし、駆け出した所で剣を弾き飛ばされるがかえりみもしないで跳躍する。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「彼女に触るな!」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">二体同時に飛び掛ってきた「天使」が一瞬で吹き飛ばされた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">青白く光る右手を、宙を遠ざかるキリエに向かってあらん限り、一杯に伸ばす。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「キリエーッ!」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「ネ……ロ……」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">喉も割れんばかりのネロの雄叫びが届いたのだろうか、<br /> 目を閉じたままのキリエが無意識の下から、囁くようないらえを返した。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"><br /> しかし、彼がその存在を呪いながらも同時に少なからず頼みにもしていたであろう悪魔の腕は、<br /> 先刻のようにやはり肝心なところで彼を裏切った。<br /> 彼に出来たのは、辛うじて、その胸に下がっていたペンダントを掴み取る事だけ。次の瞬間には、急降下してきた一体の「天使」によって地上に叩き落され、床に磔にされてしまう。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「その力、やはりスパーダの血か……」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 鎧の下でもがくネロを見下ろし、教皇はそう呟いたが、すぐに踵を返し、飛び去っていく。直後、その後詰をするかのように二体の「天使」が宙を滑り、襲い掛かってきた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> が、最早遠くなるキリエの姿しか映していないその両目が赤く輝くや否や、その身を刺し貫いた二体の槍もものかは、右腕の一振りで三体すべてが吹き飛ばされて壁に叩きつけられ、ガラクタと化す。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> よろめきながら、ネロはなおも数歩を走ったが、ぽっかりと空いた壁の穴の向こうには、もう誰の姿も見えなかった。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"><br /> 荒い息をつきながら、左手の中に残されたものを見下ろす。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">光る掌の上の、小さなペンダント。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> <p>がっくりと膝を突き、何度も拳を床に叩きつけるネロの獣のような叫びは、やがてかすかなすすり泣きへとかわっていった。<br /><br /> 教団本部内の一室、つい先刻教皇が「蘇った」部屋を横切ろうとしたネロは、はっと息を飲んで足を止める。<br /> 「遅かったな」<br /> あの赤いコートの男が寄りかかっていた柱から身を起こし、床に突きたてていた大剣を背負うところだった。<br /> 「今さら……何の用だ?」ネロは歯軋りせんばかりの剣幕で「こっちは急いでるんだ」と男を乱暴につきのけ先へ進もうとしたが、その肩を「そろそろ―――」と背後から男がつかんだ。<br /> 途端、ぎろりと相手を睨みつけ、つかんだ手を払いのけざまにネロは男に殴りかかったが、男はそれを難なくかわし、今度はネロの腕をつかんで「鬼ごっこはヤメだ」上から覗き込むようにしつつ言う。<br /> と、戒められたネロの右腕がこめられた力で輝きだすのを見て取るや、男はぱっと手を放し、独り相撲を取らされたネロは、自分の力のあおりを食らって背中から壁に突っ込んでしまった。<br /> 「その刀を返せ」壁に開いた大穴に、のしのし歩み寄りながら男が言う。<br /> 「何の話だ……」という言葉とは裏腹に、ネロの体から光の波動が湧き出して、次いで放たれた一陣の衝撃が崩壊で立ち込めた土埃を吹き払った。</p> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">顔を庇っていた手を下ろして男が低い息を漏らす。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">彼と対峙したネロの背にはオーラが造り出した異形の影が佇んでいた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">しかしそれを目にしても男は特に慌てるでもなく、<br /> 「俺の兄貴の物でね。返すなら―――」ひょいと背中に手をやり、大剣を抜き放つ。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「見逃してやるよ、坊や」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「“坊や”か……」と鼻をこするや「我ながら甘く見られたもんだ!」ネロは刀を腰だめに構え、ひと息に振り切った。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 目前に迫った居合いによる衝撃波を男は宙に飛び上がってかわし、そのままちょんと天蓋の上に腰掛ける。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 背後で崩れ落ちる石柱を見やり、感嘆めいた声を上げてからこちらを見下ろし、「忠告だ」と人差し指でみずからの胸をこつんと叩いた。「年長者は敬え」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> もちろんネロがそれに従うわけもなく、彼は男を無視してそのまま駆け去ろうとしたが、進行方向に男が飛び降りてきて道を塞がれ、忌々しげな息をつく。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">大剣を肩に担いでそれを眺める男のまなざしから、ふと笑みが消えた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">激しい剣閃の応酬が続く。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">4合、5合、6合目についにネロのがむしゃらな剣が男の大剣を宙に跳ね上げた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> チャンスとばかりにネロは刀を胸元に引きつけ、渾身の突きを放ったが、喉元にその切っ先が届く寸前、男がするりとその攻撃をかわしざま、ネロの後頭部をぽんと叩いて押し出した。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 結果勢いを狂わされたネロは足をもつれさせて無様に床に転がり、男は落ちてきた大剣を見事にキャッチして、悪ガキのような笑い声を上げた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 往生際悪く上半身だけ跳ね起きて、歩み寄る相手にヤケクソまがいの一撃を浴びせようとしたが、首の真横に剣をつきたてられて、そこでようやっと観念したネロは床に大の字になった。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「頭は冷えたか?」彼と同じく荒い息をつきながら、それでもにやにや笑って男が聞いてくる。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> ネロが顔を背けると「何だよ、文句あるか?」となおも聞くので「殺す気はないって顔だな(英語だと「最初っから俺で遊んでたんだろ」という)」右腕を踏みつけた男の足を睨みつけてネロが応えると、男はネロの右腕から足を上げ、床から剣を抜いて身を引いた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「その刀は、人と魔を分かつ剣でね。俺が持つのがスジなのさ」ふらつきながら床から身を起こすネロに言い聞かせるようにそう言って「家族の形見だしな」と付け加え、男はとんとん、と胸を叩いて見せたが、</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「必要なんだ……」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 手にした刀に眼を落とし、低い声で囁くネロを見ると、彼は小さく頭を振って息をついた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"><br /> 「なら、持ってけ」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> あっさりとなされた提案に、ネロはきょとんとして男を見返したが、「頭も冷えただろ。行きな」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">男はそれ以上何を説明するでなく、ただ親指で出口の方を指す。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">暫しの無言ののち、ネロは右手の刀を握り締め、歩き出した。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">すれ違う二人の間に、ふと一陣の風が吹く。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「おい!」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">その時、遠ざかるネロに背を向けたまま、男が声をかけた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「名前は?」問われて「ネロだ。あんたはダンテだろ」と答えると「悪くない名前だ……」ネロは呟き、歩み去っていった。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"><br /> 「お前もな」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">振り返り、男……ダンテがそう返す。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そのまま小さくなる背中を見送っていたダンテの視界に、突然白い影が割って入った。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">扇情的な切れ込みの入った教団服に褐色の肌を包んだ銀髪の美女。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">教皇に言ったとおり、グロリアが彼のもとに現れたのだ。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">両者の間に張り詰めた空気が流れる……かと思いきや。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">沈黙もつかの間、突如ダンテが噴き出し、膝を打って笑い始めた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「似合ってるじゃないか」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">言われた方も、「それはどうも」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 肩をすくめてあっけらかんと応じると、ひょいと腕を伸ばして何かを剥ぎ取るような動作を見せる。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> するとエキゾチックな銀髪美女は姿を消し、以前の彼女とはまるで正反対の……銀のボブヘアは腰までのブロンドに、褐色の肌は抜けるような白に、白い団服は黒いチューブトップと黒皮のパンツに変わった……美女が現れた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 彼が笑い出したのも当然、そしてグロリアが魔剣スパーダを教団にもたらせたのも当然のこと、彼女の正体こそダンテの相棒、女悪魔のトリッシュだったのである。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"><br /> 「……行かせていいの?」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「あんな顔されたらな」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 愛剣「リベリオン」を床に突きたて、そう答えるダンテにトリッシュは歩み寄り、彼の肩に手を置いて、</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「大事になっても知らないわよ」とその顔を見上げたが、</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「その時はその時だろ。俺がケツを拭くさ」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 剣を背に戻しながら彼女の相棒は頼もしいというか行き当たりばったりというかないらえを返し、トリッシュは無言でなんとも言いがたい視線を向けるのだった。<br /><br />   <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「これは……」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 教団本部、最上階。そこに安置された二本の角に後光のような輪を戴く巨大な石像を見上げて呟きを漏らしたのもつかの間、ネロはやおら銃口をその頭部に向けた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「美しい姿だろう?」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">両手を広げ、教皇は問いかけたが、</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「俺の趣味とは合わないね」すげないネロの答えに「それは残念だ」左手を振った。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> それに応じて石像の額にはめ込まれた青い宝玉の中から現れたものを見て、ネロの目が驚きに見開かれる。「キリエ……」呟き、銃を下ろしてしまうネロに教皇が問いかける。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">神の中で彼女と溶け合い、一つになって永遠の愛を証明したくはないか、と。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「××××してな!」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ネロはただそう返して歯噛みする教皇はそれきり無視し、キリエにひたむきな眼を向ける。<br /> 「今助ける。信じてくれ」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 彼女もまたじっとネロを見つめ返したが、小さく頷いたかのように見えた瞬間、その体は石像の中に引き戻されていった。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「交渉は決裂か。未完成とは言え、この神の力の強大さを思い知れ」と教皇は叫び、彼と神という名の巨像とを相手取った戦いが幕を開けた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 吹き飛ばされつつも何とか体勢を立て直し、石像の額に降り立った教皇に、閻魔刀を振りかざしたネロが飛びかかる。が、すんでの所で教皇の足元の宝玉からキリエが再び現れて、それに怯んだネロは巨像に掴み取られてしまった。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「愛のために破れるか」とあざ笑いながらも、教皇はネロの持つスパーダの力を認めたが何故か「ダンテほどではなかろうがな」と付け加えた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 何とか逃れようとあがきながらも唐突に出てきたダンテの名を訝るネロに、本来石像の中にはダンテを取り込む予定だったと教皇は告げ、「だが結果が同じなら、容易な道を選べばいい」ネロに向けてその手を差し招くと、閻魔刀が石像をすり抜けて浮かび上がり、教皇の手の中に納まった。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「貴様の血とこの閻魔刀の力で、我らは望みどおりの楽園を築ける」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 刀を掲げて勝ち誇る教皇の前に、その時ふいに白い影が舞い降りる。驚きに眼を見張る間もなく、彼は飛び降りてきたクレドの放った剣閃を受けてその場に崩れ落ちた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 逃げろと叫ぶクレドの声に、なんとかネロは右腕を引き抜いたが、同時に響いた苦鳴に愕然と眼を見開く。特に傷ついた様子もなく裏切りの理由を訊く教皇に串刺しにされつつも、クレドは彼の望む理想の世界のために何でもやってきたが、何も知らぬ妹までも利用した事だけは許せない、と途切れ途切れに糾弾する。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「愛か?家族への?愚か者め!」教皇は吐き捨てて刀を振り払い、「信ずるべきは、絶対的な力のみだ……!」必死で伸ばすネロの手を掠めて落ちていくクレドの姿を見送った。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> クレドの、血に染まったその体は、しかし石畳の床に激突する寸前、何者かに抱きとめられて難を逃れる。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 壁際にクレドを横たえるダンテを守るように進み出たトリッシュの正体を看破して、教皇は「貴様らにも予想外だっただろう、この小僧の体に流れる血はな!おかげで我らが神は完成する!」となおも嘲った。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> が、ちらりと相棒と視線を交わして、ダンテが「坊やはまだやる気みたいだぜ?」溜息混じりにそう言ったのと同時に、ネロの伸ばした悪魔の腕が教皇を鷲づかみにして石像の胸部に叩きつけた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> やったかと思われた瞬間、しかし既に「神」と同化している教皇を「神」の体に叩きつけた所で意味はなく、「神」の体内を通ってネロの背後に現れた教皇がその右腕を像の拳に縫いとめた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 最早脱出は不可能と哄笑しながら教皇は刀を携えて再び「神」の中に姿を消し、ぐったりとうなだれるネロに、「坊や!ギブアップか?」とまるきり外野の口調でダンテが問いかける。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「もう、打つ手ナシでね……」ネロはそう返すのがやっとの事で、それきり顔を上げることもできない。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> しかし「そりゃ大変だ」と肩をすくめたダンテが「死ぬのは勝手だが、刀は返せよ?」と指を突きつけると、「取りに来な……」とこの期に及んで憎まれ口を叩いた上に中指を突き立てつつ巨像の中に引き込まれ、「悪ガキめ……」ダンテは苦笑交じりに呟いた。<br /><br /><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> かすかな歌声と差し込む光に目を開けると、赤黒い、夕焼けのような空にネロはキリエと二人、浮かんでいた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">彼を目覚めさせた光は、キリエから放たれているようだった。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">かすれる声でネロが呼びかけると夕闇が払われ、辺りは光に満たされる。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">守れなかったと呟くネロに、キリエはただ微笑んで手を差し出す。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> けれどもその手をとろうとした刹那、キリエの体は金色の粒子に変わって闇へと融けていった。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ありがとうと囁くキリエの声に、ネロは闇に捕らわれ、もがきながら叫び続ける。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「約束だ!ここから抜け出す!君と一緒に!」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">だがその絶叫も、そして思わずあふれた涙も虚しく闇に飲まれ、かき消された。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> あれは白昼夢だったのか、気がつくと現実の彼は強靭な肉の塊に捕えられていた。不気味な肉の檻……それは「神」の像の体内、その胸の青い宝玉の中に位置していた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> すると宝玉が鈍く明滅を始め、同時に不気味な地鳴りが辺りを包む。「神」が空中へ浮かび上がろうとしているのだ。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 頭上遥かに舞い上がる「神」の背に出現した、奇妙な光る輪のような物体を指し「見ろよ!羽が生えた!」ダンテが呆れた嘆息のような笑い声を上げた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「悪趣味なデザインね」切って捨てるトリッシュに首を振り、ダンテは背後にへたり込んだクレドに完成した「神」の行方を尋ねた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 何とか立ち上がろうとしながら果たせず、クレドは「世界の救済には混沌が必要だ」と答える。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 彼らはこの街に眠る魔界への扉、地獄門を開こうとしているのだと。折れた閻魔刀、魔界を封印した鍵を復活させようとしていたのはその為だったのだ。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「人と悪魔を分かつ剣、か……」呟くダンテにクレドは喘鳴に濁る声で必死に訴える。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">スパーダの息子の貴方ならば、神さえ殺せるかも知れない、と。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「期待されてるみたいね」トリッシュが目を向けるが、ダンテは「らしいな」と受け流すだけだ。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> すると、「頼む、救ってやってくれ……」ようやっとのことで立ち上がったクレドがダンテの肩を掴んだ。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「彼らを……キリエと……ネロを……」だが、それが彼の最後の言葉だった。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 倒れ込もうとするクレドをダンテが支えたが、その体は光に包まれ、無数の粒子になって飛び散った。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「分かったよ」しばしの後、ぽつりとダンテが呟いた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「遺言じゃ仕方ねえ」やれやれとでも言いたげに腕を組むダンテに「私は住民を避難させる」言い置いてトリッシュがすたすたその場を去ろうとするので</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「おい!そもそもお前が……」と難所を押し付けられた不満もあらわに言い募ろうとすると「じゃあ交代?」ぴしゃりと遮られてダンテは一瞬口ごもった。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">結局は「いや……こっちがいい」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">降参!とばかり、手を上げてダンテは大股に歩き出した。その背に彼の相棒が続く。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">歩き去る彼らの後ろ、二人の背中を見送って、光の最後の一粒が蛍のように闇に消えた。</div> </div> </div> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"><strong>デビル メイ クライ 4</strong>(Part2/2) ページ容量上限の都合で2分割されています。<br /> 2009/10/26にWiki直接投稿 <hr /> 教団本部に入ってすぐ、生粋の魔界の悪魔である「アサルト」と悪魔をベースにアグナスが造り出した「天使」である<br /> 「アルトアンジェロ」「ビアンコアンジェロ」が戦うムービーが挿入され、両者が敵対している事がわかる。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"><br /> 本部内の渡り廊下。跳ね橋を下ろそうと装置を操作するがこれも魔の力の影響か、<br /> 橋自体に巨大な樹木が絡みついていて役をなさない。<br /> 仕方なく他の道を探して後戻ったネロは、はびこった大木により壁が大きく崩れ落ちた、とある一室にやってきた。<br /> 焦りに呼吸を弾ませながらぐるりを見渡し、ふと頭上の「それ」に気付いて息を呑む。<br /> 鳥籠にも似た奇妙な装置。目を閉じたキリエが揺らぐ赤い光に捉えられるようにして浮いている。駆け寄ろうとしたネロの前に、耳障りな羽音と共にアグナスが現れた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「やっと来たか……」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「キリエに何を!」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">アグナスは睨みつけるネロの視線から隠すように、キリエの前に剣を掲げて挑発する。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「自分で確かめてみたらいい。私を倒せたらの話ではあるがね」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">忌々しげに舌打ちをし、</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「お前は殺す。キリエは守る。それだけだ!」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">端的な言葉を吐き捨てて、ネロは開いた右手をひときわ激しく光らせた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「貴様……!貴様ッ!」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">辛うじて宙に浮きつつ、腹を押さえたアグナスが、怨嗟の声を振り絞る。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「殺す!殺してやる!」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">喚きながら突きつける剣に、</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「来いよ。首をスッ飛ばしてやる」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">今度はネロが両手を広げて挑発を返した。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">度を失った叫びと共に、アグナスは剣を振りかぶり突進してこようとしたが、<br /> その進路を猛スピードで飛ぶ何者かに遮られ、慌てて急ブレーキをかける。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"><br /> 「何者か」……いや、「何者かたち」……それは一群の「天使」だった。<br /> 彼らはしばらく辺りを目まぐるしく飛び回っていたが、ほどなく一斉にネロに向かって殺到してくる。<br /> 四方八方から次々と飛び掛ってくるのを或いは剣で弾き飛ばし、或いは槍を捕まえて投げ飛ばすが、<br /> 数と機動力の差のせいで防戦一方に追い込まれてしまう。<br /> 幾つもの翼が風を切る音と、剣戟の音が響く中、アグナスは傍らに生まれた光、その中から現れた鎧姿に恭しく頭を垂れた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「教皇……」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「もう良い、アグナス。お前は降臨の準備をせよ」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 老人のシルエットとは似ても似つかないが、翼を具えた豪壮な姿の鎧は確かに教皇の声でそう命じ、アグナスは従順に応じてその場を飛び去って行った。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「教皇」は眼下で荒れ狂うネロを一瞥すると頭上をゆっくり振り仰ぐ。そこにはキリエがいまだ気を失ったまま、「鳥籠」の中に浮かんでいる。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">滑空してきた「天使」の槍を跳ね返し、ネロはハッとして中空を見やった。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 他のものとはデザインのやや異なる鎧を纏った、四枚羽根の「天使」がキリエを抱え、連れ去ろうとしていた。<br /> 援護の為か、更にも増して激しくなった「天使」たちの攻撃を片っ端から捌きとめ、突進してきた二体の槍を両腋に挟んで投げ飛ばし、駆け出した所で剣を弾き飛ばされるがかえりみもしないで跳躍する。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「彼女に触るな!」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">二体同時に飛び掛ってきた「天使」が一瞬で吹き飛ばされた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">青白く光る右手を、宙を遠ざかるキリエに向かってあらん限り、一杯に伸ばす。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「キリエーッ!」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「ネ……ロ……」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">喉も割れんばかりのネロの雄叫びが届いたのだろうか、<br /> 目を閉じたままのキリエが無意識の下から、囁くようないらえを返した。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"><br /> しかし、彼がその存在を呪いながらも同時に少なからず頼みにもしていたであろう悪魔の腕は、<br /> 先刻のようにやはり肝心なところで彼を裏切った。<br /> 彼に出来たのは、辛うじて、その胸に下がっていたペンダントを掴み取る事だけ。次の瞬間には、急降下してきた一体の「天使」によって地上に叩き落され、床に磔にされてしまう。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「その力、やはりスパーダの血か……」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 鎧の下でもがくネロを見下ろし、教皇はそう呟いたが、すぐに踵を返し、飛び去っていく。直後、その後詰をするかのように二体の「天使」が宙を滑り、襲い掛かってきた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> が、最早遠くなるキリエの姿しか映していないその両目が赤く輝くや否や、その身を刺し貫いた二体の槍もものかは、右腕の一振りで三体すべてが吹き飛ばされて壁に叩きつけられ、ガラクタと化す。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> よろめきながら、ネロはなおも数歩を走ったが、ぽっかりと空いた壁の穴の向こうには、もう誰の姿も見えなかった。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"><br /> 荒い息をつきながら、左手の中に残されたものを見下ろす。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">光る掌の上の、小さなペンダント。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> <p>がっくりと膝を突き、何度も拳を床に叩きつけるネロの獣のような叫びは、やがてかすかなすすり泣きへとかわっていった。<br /><br /> 教団本部内の一室、つい先刻教皇が「蘇った」部屋を横切ろうとしたネロは、はっと息を飲んで足を止める。<br /> 「遅かったな」<br /> あの赤いコートの男が寄りかかっていた柱から身を起こし、床に突きたてていた大剣を背負うところだった。<br /> 「今さら……何の用だ?」ネロは歯軋りせんばかりの剣幕で「こっちは急いでるんだ」と男を乱暴につきのけ先へ進もうとしたが、その肩を「そろそろ―――」と背後から男がつかんだ。<br /> 途端、ぎろりと相手を睨みつけ、つかんだ手を払いのけざまにネロは男に殴りかかったが、男はそれを難なくかわし、今度はネロの腕をつかんで「鬼ごっこはヤメだ」上から覗き込むようにしつつ言う。<br /> と、戒められたネロの右腕がこめられた力で輝きだすのを見て取るや、男はぱっと手を放し、独り相撲を取らされたネロは、自分の力のあおりを食らって背中から壁に突っ込んでしまった。<br /> 「その刀を返せ」壁に開いた大穴に、のしのし歩み寄りながら男が言う。<br /> 「何の話だ……」という言葉とは裏腹に、ネロの体から光の波動が湧き出して、次いで放たれた一陣の衝撃が崩壊で立ち込めた土埃を吹き払った。</p> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">顔を庇っていた手を下ろして男が低い息を漏らす。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">彼と対峙したネロの背にはオーラが造り出した異形の影が佇んでいた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">しかしそれを目にしても男は特に慌てるでもなく、<br /> 「俺の兄貴の物でね。返すなら―――」ひょいと背中に手をやり、大剣を抜き放つ。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「見逃してやるよ、坊や」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「“坊や”か……」と鼻をこするや「我ながら甘く見られたもんだ!」ネロは刀を腰だめに構え、ひと息に振り切った。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 目前に迫った居合いによる衝撃波を男は宙に飛び上がってかわし、そのままちょんと天蓋の上に腰掛ける。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 背後で崩れ落ちる石柱を見やり、感嘆めいた声を上げてからこちらを見下ろし、「忠告だ」と人差し指でみずからの胸をこつんと叩いた。「年長者は敬え」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> もちろんネロがそれに従うわけもなく、彼は男を無視してそのまま駆け去ろうとしたが、進行方向に男が飛び降りてきて道を塞がれ、忌々しげな息をつく。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">大剣を肩に担いでそれを眺める男のまなざしから、ふと笑みが消えた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">激しい剣閃の応酬が続く。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">4合、5合、6合目についにネロのがむしゃらな剣が男の大剣を宙に跳ね上げた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> チャンスとばかりにネロは刀を胸元に引きつけ、渾身の突きを放ったが、喉元にその切っ先が届く寸前、男がするりとその攻撃をかわしざま、ネロの後頭部をぽんと叩いて押し出した。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 結果勢いを狂わされたネロは足をもつれさせて無様に床に転がり、男は落ちてきた大剣を見事にキャッチして、悪ガキのような笑い声を上げた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 往生際悪く上半身だけ跳ね起きて、歩み寄る相手にヤケクソまがいの一撃を浴びせようとしたが、首の真横に剣をつきたてられて、そこでようやっと観念したネロは床に大の字になった。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「頭は冷えたか?」彼と同じく荒い息をつきながら、それでもにやにや笑って男が聞いてくる。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> ネロが顔を背けると「何だよ、文句あるか?」となおも聞くので「殺す気はないって顔だな(英語だと「最初っから俺で遊んでたんだろ」という)」右腕を踏みつけた男の足を睨みつけてネロが応えると、男はネロの右腕から足を上げ、床から剣を抜いて身を引いた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「その刀は、人と魔を分かつ剣でね。俺が持つのがスジなのさ」ふらつきながら床から身を起こすネロに言い聞かせるようにそう言って「家族の形見だしな」と付け加え、男はとんとん、と胸を叩いて見せたが、</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「必要なんだ……」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 手にした刀に眼を落とし、低い声で囁くネロを見ると、彼は小さく頭を振って息をついた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"><br /> 「なら、持ってけ」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> あっさりとなされた提案に、ネロはきょとんとして男を見返したが、「頭も冷えただろ。行きな」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">男はそれ以上何を説明するでなく、ただ親指で出口の方を指す。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">暫しの無言ののち、ネロは右手の刀を握り締め、歩き出した。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">すれ違う二人の間に、ふと一陣の風が吹く。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「おい!」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">その時、遠ざかるネロに背を向けたまま、男が声をかけた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「名前は?」問われて「ネロだ。あんたはダンテだろ」と答えると「悪くない名前だ……」ネロは呟き、歩み去っていった。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"><br /> 「お前もな」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">振り返り、男……ダンテがそう返す。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そのまま小さくなる背中を見送っていたダンテの視界に、突然白い影が割って入った。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">扇情的な切れ込みの入った教団服に褐色の肌を包んだ銀髪の美女。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">教皇に言ったとおり、グロリアが彼のもとに現れたのだ。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">両者の間に張り詰めた空気が流れる……かと思いきや。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">沈黙もつかの間、突如ダンテが噴き出し、膝を打って笑い始めた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「似合ってるじゃないか」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">言われた方も、「それはどうも」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 肩をすくめてあっけらかんと応じると、ひょいと腕を伸ばして何かを剥ぎ取るような動作を見せる。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> するとエキゾチックな銀髪美女は姿を消し、以前の彼女とはまるで正反対の……銀のボブヘアは腰までのブロンドに、褐色の肌は抜けるような白に、白い団服は黒いチューブトップと黒皮のパンツに変わった……美女が現れた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 彼が笑い出したのも当然、そしてグロリアが魔剣スパーダを教団にもたらせたのも当然のこと、彼女の正体こそダンテの相棒、女悪魔のトリッシュだったのである。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"><br /> 「……行かせていいの?」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「あんな顔されたらな」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 愛剣「リベリオン」を床に突きたて、そう答えるダンテにトリッシュは歩み寄り、彼の肩に手を置いて、</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「大事になっても知らないわよ」とその顔を見上げたが、</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「その時はその時だろ。俺がケツを拭くさ」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 剣を背に戻しながら彼女の相棒は頼もしいというか行き当たりばったりというかないらえを返し、トリッシュは無言でなんとも言いがたい視線を向けるのだった。<br /><br />   <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「これは……」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 教団本部、最上階。そこに安置された二本の角に後光のような輪を戴く巨大な石像を見上げて呟きを漏らしたのもつかの間、ネロはやおら銃口をその頭部に向けた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「美しい姿だろう?」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">両手を広げ、教皇は問いかけたが、</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「俺の趣味とは合わないね」すげないネロの答えに「それは残念だ」左手を振った。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> それに応じて石像の額にはめ込まれた青い宝玉の中から現れたものを見て、ネロの目が驚きに見開かれる。「キリエ……」呟き、銃を下ろしてしまうネロに教皇が問いかける。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">神の中で彼女と溶け合い、一つになって永遠の愛を証明したくはないか、と。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「××××してな!」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ネロはただそう返して歯噛みする教皇はそれきり無視し、キリエにひたむきな眼を向ける。<br /> 「今助ける。信じてくれ」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 彼女もまたじっとネロを見つめ返したが、小さく頷いたかのように見えた瞬間、その体は石像の中に引き戻されていった。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「交渉は決裂か。未完成とは言え、この神の力の強大さを思い知れ」と教皇は叫び、彼と神という名の巨像とを相手取った戦いが幕を開けた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 吹き飛ばされつつも何とか体勢を立て直し、石像の額に降り立った教皇に、閻魔刀を振りかざしたネロが飛びかかる。が、すんでの所で教皇の足元の宝玉からキリエが再び現れて、それに怯んだネロは巨像に掴み取られてしまった。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「愛のために破れるか」とあざ笑いながらも、教皇はネロの持つスパーダの力を認めたが何故か「ダンテほどではなかろうがな」と付け加えた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 何とか逃れようとあがきながらも唐突に出てきたダンテの名を訝るネロに、本来石像の中にはダンテを取り込む予定だったと教皇は告げ、「だが結果が同じなら、容易な道を選べばいい」ネロに向けてその手を差し招くと、閻魔刀が石像をすり抜けて浮かび上がり、教皇の手の中に納まった。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「貴様の血とこの閻魔刀の力で、我らは望みどおりの楽園を築ける」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 刀を掲げて勝ち誇る教皇の前に、その時ふいに白い影が舞い降りる。驚きに眼を見張る間もなく、彼は飛び降りてきたクレドの放った剣閃を受けてその場に崩れ落ちた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 逃げろと叫ぶクレドの声に、なんとかネロは右腕を引き抜いたが、同時に響いた苦鳴に愕然と眼を見開く。特に傷ついた様子もなく裏切りの理由を訊く教皇に串刺しにされつつも、クレドは彼の望む理想の世界のために何でもやってきたが、何も知らぬ妹までも利用した事だけは許せない、と途切れ途切れに糾弾する。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「愛か?家族への?愚か者め!」教皇は吐き捨てて刀を振り払い、「信ずるべきは、絶対的な力のみだ……!」必死で伸ばすネロの手を掠めて落ちていくクレドの姿を見送った。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> クレドの、血に染まったその体は、しかし石畳の床に激突する寸前、何者かに抱きとめられて難を逃れる。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 壁際にクレドを横たえるダンテを守るように進み出たトリッシュの正体を看破して、教皇は「貴様らにも予想外だっただろう、この小僧の体に流れる血はな!おかげで我らが神は完成する!」となおも嘲った。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> が、ちらりと相棒と視線を交わして、ダンテが「坊やはまだやる気みたいだぜ?」溜息混じりにそう言ったのと同時に、ネロの伸ばした悪魔の腕が教皇を鷲づかみにして石像の胸部に叩きつけた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> やったかと思われた瞬間、しかし既に「神」と同化している教皇を「神」の体に叩きつけた所で意味はなく、「神」の体内を通ってネロの背後に現れた教皇がその右腕を像の拳に縫いとめた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 最早脱出は不可能と哄笑しながら教皇は刀を携えて再び「神」の中に姿を消し、ぐったりとうなだれるネロに、「坊や!ギブアップか?」とまるきり外野の口調でダンテが問いかける。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「もう、打つ手ナシでね……」ネロはそう返すのがやっとの事で、それきり顔を上げることもできない。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> しかし「そりゃ大変だ」と肩をすくめたダンテが「死ぬのは勝手だが、刀は返せよ?」と指を突きつけると、「取りに来な……」とこの期に及んで憎まれ口を叩いた上に中指を突き立てつつ巨像の中に引き込まれ、「悪ガキめ……」ダンテは苦笑交じりに呟いた。<br /><br /><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> かすかな歌声と差し込む光に目を開けると、赤黒い、夕焼けのような空にネロはキリエと二人、浮かんでいた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">彼を目覚めさせた光は、キリエから放たれているようだった。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">かすれる声でネロが呼びかけると夕闇が払われ、辺りは光に満たされる。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">守れなかったと呟くネロに、キリエはただ微笑んで手を差し出す。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> けれどもその手をとろうとした刹那、キリエの体は金色の粒子に変わって闇へと融けていった。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ありがとうと囁くキリエの声に、ネロは闇に捕らわれ、もがきながら叫び続ける。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「約束だ!ここから抜け出す!君と一緒に!」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">だがその絶叫も、そして思わずあふれた涙も虚しく闇に飲まれ、かき消された。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> あれは白昼夢だったのか、気がつくと現実の彼は強靭な肉の塊に捕えられていた。不気味な肉の檻……それは「神」の像の体内、その胸の青い宝玉の中に位置していた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> すると宝玉が鈍く明滅を始め、同時に不気味な地鳴りが辺りを包む。「神」が空中へ浮かび上がろうとしているのだ。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 頭上遥かに舞い上がる「神」の背に出現した、奇妙な光る輪のような物体を指し「見ろよ!羽が生えた!」ダンテが呆れた嘆息のような笑い声を上げた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「悪趣味なデザインね」切って捨てるトリッシュに首を振り、ダンテは背後にへたり込んだクレドに完成した「神」の行方を尋ねた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 何とか立ち上がろうとしながら果たせず、クレドは「世界の救済には混沌が必要だ」と答える。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 彼らはこの街に眠る魔界への扉、地獄門を開こうとしているのだと。折れた閻魔刀、魔界を封印した鍵を復活させようとしていたのはその為だったのだ。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「人と悪魔を分かつ剣、か……」呟くダンテにクレドは喘鳴に濁る声で必死に訴える。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">スパーダの息子の貴方ならば、神さえ殺せるかも知れない、と。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「期待されてるみたいね」トリッシュが目を向けるが、ダンテは「らしいな」と受け流すだけだ。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> すると、「頼む、救ってやってくれ……」ようやっとのことで立ち上がったクレドがダンテの肩を掴んだ。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「彼らを……キリエと……ネロを……」だが、それが彼の最後の言葉だった。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 倒れ込もうとするクレドをダンテが支えたが、その体は光に包まれ、無数の粒子になって飛び散った。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「分かったよ」しばしの後、ぽつりとダンテが呟いた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「遺言じゃ仕方ねえ」やれやれとでも言いたげに腕を組むダンテに「私は住民を避難させる」言い置いてトリッシュがすたすたその場を去ろうとするので</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「おい!そもそもお前が……」と難所を押し付けられた不満もあらわに言い募ろうとすると「じゃあ交代?」ぴしゃりと遮られてダンテは一瞬口ごもった。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">結局は「いや……こっちがいい」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">降参!とばかり、手を上げてダンテは大股に歩き出した。その背に彼の相棒が続く。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">歩き去る彼らの後ろ、二人の背中を見送って、光の最後の一粒が蛍のように闇に消えた。<br />  </div> </div> </div> </div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「さあ、欲望のままに暴れるのだ」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 地下の神殿らしき建物。宙に渡された石の通路を、誰に向けてか語りかけながらアグナスがゆっくりと進んでいく。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「喰らい尽くせ。この世界の崩壊の果てにこそ」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> やがて石の通路は丸い台座で行き止まりになった。彼が、というより彼が携えた閻魔刀が近づくにのに合わせ床で不気味に脈打つ赤い魔方陣に向かってアグナスは刀を振りかぶり、</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「神の支配する楽園の時代が―――訪れるであろう!」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">叫ぶと、その中心に開いた「鍵穴」に向けて剣を突き刺した。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">一瞬、辺りが白く輝き、そしてそれは一面の巨大な魔法の赤光に変わる。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「今こそ!審判の時!」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">深紅に輝く閻魔刀を前に、アグナスは喉も割れんばかりの雄叫びを上げた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 大聖堂の前に避難していたフォルトゥナの市民たちが、巻き起こる地鳴りに不安そうに顔を上げる。見上げる目の先で、あの巨大な石版が不意に膨れ上がり、泥のような飛沫を……否、そう見える程の膨大な数の悪魔たちを吐き出した。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">転げるように逃げ出した彼らを、悪魔たちが次々と屠っていく。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">追い詰められ、震えるだけの無力な民たちを覆う悪魔の影。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">と、その影を何者かが吹き飛ばした。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">恐る恐る振り返れば、白い騎士が宙に翼を広げてこちらを見下ろしていた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">同じく街のあちこちで、騎士たちが悪魔を払い、人々を「救って」いく。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「恐れることはない!神は今、降り立った!我らを救うために!」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">騎士たちを従えて宙を行く「神」の頭上で教皇が高らかに叫んでいる。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「感謝を捧げよ!賛歌を歌え!世界はまだ終わってはおらぬ!」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 力強く腕を打ち振ると、「神」の頭の不完全な……まるで悪魔の角のようにも見える「輪」が稲光を放ち、輪の欠けた部分に生じた雷球から生じた電光が無数の悪魔たちをやすやすと打ち砕いた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 辺りに教皇の笑い声が響く。人々を「救う」、その気高い筈の所業とは裏腹な、下卑た笑い声が。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">気のない拍手が辺りに響く。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「なかなか演技派だな、爺さん」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 火に包まれた街とそこに降り立った「神」を遠く眺めながら、ダンテはまるで熱のこもらない口調でそう言うと、コートの裾を翻して歩き出した。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「魔剣教団?」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ピザをかじりながらダンテは古い知り合いを見上げた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「そう。聞いた事は?」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 机の上に手をついて、ぴっちりした白いスーツに包まれた、豊かな胸元をさらしながら尋ねてくる。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「宗教には縁がない」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 彼と同じ感想を抱いたのか、相棒は机の端に腰掛けて、彼と同じくピザをかじりつつ足をぶらぶら揺らすだけで、こちらのことを見もしない。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「フォルトゥナで信仰されているの。物好きしか知らないけどね」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「お前みたいな?」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「そういう事。スパーダの事は詳しい?」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">まぜっかえすダンテに怒りもせずあっさり返すと、彼女は更にそう尋ねた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「何でも知ってるってわけじゃない」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> と、返してダンテは脇の相棒に目線をやったが、トリッシュはあいも変わらずピザをかじっているだけだ。サングラスの奥の眼……片側が青で、片側が赤い奇妙な眼でそれを睨んで、昔なじみはガンベルトに包まれた物騒な生足を揺らして歩き出した。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「スパーダはその街の領主だった。人々は彼が去った後も彼を崇めてる……神としてね」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「悪魔が神になったか」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">お行儀悪く机の上に載っけていた足を床に降ろして、皮肉な口調でダンテが笑う。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 聞いているのかいないのか、ピザを食べ終わったトリッシュは、こちらもまたお行儀悪くなおかつエロい音を立てながら指をしゃぶると、テーブルをぴょんと飛び降りた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「話はここからよ。問題はその教団。悪魔を捕まえてるの。何度かは仕事を邪魔されたわ」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「動物園でも開くのか」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">彼女は今度こそ苛立たしげにダンテの手からピザをひったくった。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「……まだあるわ。あなたが持ってるような―――魔具も集めてる」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ピザでこちらの事を指す彼女の手から</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「じゃあ博物館だな」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> と相変わらず茶化しながらそれをひったくり返そうとしたダンテは、ひょいと手を引っ込められて、</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「……何だよ」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">忌々しげにテーブルを軽くたたいてまた机の上に足を乗っけなおす。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">両肘を机から離して、仁王立ちになった彼女が</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「そんなものより―――はるかに凶悪な目的だとしたら?」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> ピザを片手に言い放った所で何か思うところがあったのか、ダンテはようやく机から立ち上がった。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「……退屈しのぎにはなるだろうな。トリッシュ!」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 呼びかけて、返事も、そういえば気配もないのに気がついて、眉をひそめて背後を振り返ったダンテはやれやれと首を振った。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">背の壁にかけてあった刀のほうの「スパーダ」が消えている。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">刀掛けには鮮やかなルージュで「現地集合」の文字。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「ややこしい話になってきた……」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> そう言いつつも、密林の木漏れ日の下を行くダンテの口元には、楽しげな笑みが浮かんでいる。</div>

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