ベイグラントストーリー

「ベイグラントストーリー」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る
ベイグラントストーリー」を以下のとおり復元します。
ベイグラントストーリー
まとめ人(>>1-563 
563 名前:ベイグラントストーリー 人物 投稿日:03/11/23 13:47 ID:I04kCSni 
∇主要登場人物 

@VKP(バレンディア治安維持騎士団) 
・アシュレイ=ライオット:重犯罪者処理班所属の「リスクブレイカー」、プレイヤーキャラ。 
・キャロ=メルローズ:情報分析班所属、アシュレイ支援の命を受ける。 
・ジャン=ローゼンクランツ:アシュレイと同じ「リスクブレイカー」、公爵と内通、レアモンデについて詳しい。 

@メレンカンプ(カルト教団) 
・シドニー=ロスタロット:メレンカンプの首謀者。ある目的の為バルドルバ公爵邸占拠事件を起こし、そこでアシュレイと出会う。 
・ジョン=ハーディン:メレンカンプ所属。シドニーを信頼し、親友として組織の為に尽力する。 

@聖印騎士団(クリムゾンブレイド) 
・ロメオ=ギルデンスターン:騎士団団長。法王庁の命でレアモンデへ向かうが、何か腹積もりがあるようだ…。 
・サマンサ:騎士団所属、純粋な騎士ではなく、元々は研究者。ロメオとはいい仲…?。 
・ティーガー、ニーチ、デュエイン、グリッソム:ロメオの部下、アシュレイの前に立ち塞がる。 

@公爵家 
・アルドゥス=バイロン=バルドルバ公爵 
 旧バレンディアの内戦を終わらせた英雄であり、歴史の闇を司るフィクサー。占拠事件中は別宅にて静養中だった。 
・ジョシュア=コリーン=バルドルバ 
 公爵の息子。公爵邸占拠事件にてメレンカンプに拉致される。そのショックで一時的な失語症に。 


564 名前:ベイグラントストーリー 組織 投稿日:03/11/23 13:49 ID:I04kCSni 
-組織、固有名称について- 

・リスクブレイカー - VKP所属の、重犯罪者を対象に単独で活動することを原則とした人間の事。 
・VKP - 議会の命で動く、バレンディアの法と正義を守る騎士団。だがその実態は…? 
・聖印騎士団 - 法王庁の擁する、VKPと双璧を為す組織。 
・議会 - バレンディア国家評議会の事。元老院とも呼ばれる。国王から政権を委任されている。 
・法王庁 - 国教であるヨクス教の法王バドウィズム(ゲームには未登場)の組織。議会とは水面下での対立が続いている。 

・メレンカンプ - 古代の魔術師。レアモンデを創造した女性。ちなみにバレンディアではメレンカンプは邪教。 

・レアモンデ - メレンカンプの創った城塞都市。メレンカンプに心酔する人々が住んでいた。 
         25年前の地震で廃墟と化し、今はカルト教団(メレンカンプ)の隠れ家となっている。 
         レアモンデ産のワインは世界でも1、2を争う高級品との事(キャロ談) 
         ゲームの舞台となるのはこの「魔都」レアモンデ。 

・「魔」 - 現在のレアモンデを満たしている力。触れた人間は特殊な能力が開花する。 
     しかし、「魔」に触れた人間は死ぬと、魂だけがレアモンデを永遠にさ迷う事となる。 
     「魔」は魂のある所に寄って来るという。 


565 名前:ベイグラントストーリー 1/10 投稿日:03/11/23 13:50 ID:I04kCSni 
~プロローグ~ 

AM 2:00 

貿易都市グレイランド、バルドルバ公爵邸は炎に包まれていた。 
シドニー=ロスタロットを首謀者とするメレンカンプが、公爵邸を占拠したのだった。 
それに対し火を放ち、独断で突入を開始した聖印騎士団。邸内は混乱を極めた。 
騒ぎに乗じ、VKPエージェントのアシュレイ=ライオットは公爵邸へと侵入する。 

アシュレイは邸内で教団の首謀者、シドニーと対面する。シドニーにボウガンを向けるアシュレイ。 
静止も空しくアシュレイに斬りかかるシドニー。刹那、ボウガンの矢がシドニーの心臓を貫く。 
脈を取り、死んだ事を確認するものの、教団No2 のジョン=ハーディンが現れる。 
そちらに向き直ったアシュレイは背後から殴り倒される、後に居たのは死んでいたはずのシドニー。 

「…どういうことだ?、さっきは確かに死んでいたはず」 
「死者の復活なんておとぎ話の中だけにしてくれ…」(アシュレイ) 

しかし、傷が深すぎたシドニーは、ハーディンに「先にレアモンデへ行け!!」と命令する。 
自分は飼い慣らしているワイバーンを呼び、窓から逃亡を図った。 
こうして、首謀者の逃亡により「公爵邸占拠事件」は幕を閉じた。 



566 名前:ベイグラントストーリー 2/10 投稿日:03/11/23 13:51 ID:I04kCSni 
同日の12:00頃、アシュレイは情報分析官キャロ=メルローズを伴ってレアモンデに居た。 
メレンカンプの隠れ家がこの廃墟の中にあるというのだ。 
アシュレイはシドニーを追う為、ワイン貯蔵庫から進入を開始する。 
キャロは同行しようとするも、「実戦経験のないエージェントは足手纏いだ」と一蹴される。 
一人残されたキャロは、貯蔵庫から地上へと続く階段を登り始める。 
だが、気配を感じ視線を上げると、そこには…こちらを見下ろし、笑みを浮かべるシドニーが居た。 

ここで公式の記録から、アシュレイの消息は途絶える事となる。
後日、再び姿を見せる事になるのだが…。 


―――――

貯蔵庫内でシドニーと再び対面したアシュレイ、シドニーはアシュレイを評して言う。 

「お前はなぜ心を支配できる?」 
「絵本を読む子供と、本の中で活躍する勇者のように心と体が分離している」(シドニー) 

そしてシドニーは「力」を使い、アシュレイの記憶を覗きこむ。 
そこに広がるのは、騎士崩れの野盗によって妻と子供を惨殺されるアシュレイの姿だった。 
アシュレイはその事がきっかけで犯罪を憎むようになり、リスクブレイカーとなったのだ。 
しかし、シドニーはそこに「何か」を見たのか、アシュレイに「自分を追え」と宣言する。 
折りしもハーディンに連れられ、捕らえられたキャロも姿を見せる。 
シドニーは捨て台詞を残し、ハーディンはキャロを連れ、アシュレイを残し立ち去った。 

先へ進もうとするアシュレイに、「身に覚えのない」殺人技(バトルアビリティ)が目覚めたのはこの時である。 



567 名前:ベイグラントストーリー 3/10 投稿日:03/11/23 13:53 ID:I04kCSni 
その後レアモンデ内へ進入したアシュレイ。中途、先行していた聖印騎士団(と法王庁)の目的が 
「完全なる不死」である事も判明する。
アシュレイは聖印騎士団の妨害を排除しつつ、さらに魔都の深部へと歩を進める。 

そして羽虫の森でローゼンクランツと出会う。彼は「手助けに来た」とアシュレイに告げるが 
単独行動を原則とするリスクブレイカーにならい、拒絶する。 
そんなアシュレイに、ローゼンクランツはレアモンデの秘密を語り始める。 

「レアモンデは"牧場"なンだよ」「"魔"を放し飼いにする為のな」(ローゼンクランツ) 

そして、公爵邸占拠に端を発した今回の事件が、「魔」の所有権をめぐる争いと解る。 
アシュレイはその争いの「議会側の代表」だと、ローゼンクランツは告げる。 

アシュレイはローゼンクランツと別れ、森の中へと入っていった。 



568 名前:ベイグラントストーリー 4/10 投稿日:03/11/23 13:54 ID:I04kCSni 
アシュレイは森の出口で、聖印騎士団のグリッソムと向き合うシドニーを見つける。 
グリッソムは命を課してダーククルセイダー(敵モンス)を召喚、アシュレイとシドニーに襲いかかる。 
二人は一時的に共同戦線を貼り、結果、グリッソムを退けた。 

「魔」の存在を信じはじめていたアシュレイは、シドニーに「レアモンデは"牧場"だと聞いた」と告げる。 
目で見たものしか信じないアシュレイを、シドニーは「頭の硬いお役人」と評する。 
しかしアシュレイにとっては疑問だった。25年前の地震は人為的に起こされたものなのか? 
そして"牧場"を作ったのは議会や法王庁なのか? 
しかしシドニーは我関せず、アシュレイの成長ぶりを見るにつけ「素晴らしいな、暗殺者として鍛えられた結果か」と吐く。 
その言葉に疑念を抱くアシュレイに、シドニーは再び「力」を用い「過去」を見せる。 

そこにはあの、妻と子供が殺された草原が広がっていた。 
記憶と同じように、野盗の剣によって胸を貫かれる妻。 
しかし、妻を殺した男の姿は野党ではなく…アシュレイだった。 


驚愕するアシュレイに、これが「真実の記憶だ」と告げるシドニー。今までの記憶が偽りであると。 
アシュレイは近衛騎士団一員だったとされていたが、実は暗殺や破壊工作を任務とする特殊部隊の一員であった 
そしてその頃アシュレイはある任務で、ターゲットとは異なる家族を殺してしまった。 
その時の強い罪悪感を法に対する服従に変える為、VKPは人格変更(洗脳)を行った。 
アシュレイが振るう殺人技(バトルアビリティ)の数々は、特殊部隊で習得したのもであり、レアモンデの秘術では無いと。

絶望感に苛まれるアシュレイに、シドニーは優しげにも取れる仕草で語り掛ける。

「確かな記憶などあるものか。人は自分に都合の悪い記憶なんて忘れるものだ。」
「自分の都合に合わせて記憶を作り替える…。自分自身に“嘘”をつくのさ。」(シドニー)


アシュレイに過去を見せた後、シドニーは去っていった。 
「真実を知りたければオレを追って来い」、そう言葉を残して。 



569 名前:ベイグラントストーリー 5/10 投稿日:03/11/23 13:56 ID:I04kCSni 
さらにシドニーを追うアシュレイは市街地にて、聖印騎士団団長のロメオ=ギルデンスターンとローゼンクランツを目にする。 
彼らの会話から、騎士団が「グラン・グリモア」と呼ばれるものを探している事。 
そしてローゼンクランツから、レアモンデ自体がその「グラン・グリモア」だという事を知る。 

彼らの後を追おうとするアシュレイの前に、二人が姿を見せる。 
ローゼンクランツは剣を抜き、前から一度戦ってみたかった事、昔からアシュレイの事を知っていると告げる。 
問い返す間もなく斬りかかられ、広場で二人のリスクブレイカーが戦いを繰り広げた。 

アシュレイに一蹴され、ローゼンクランツは戦意を喪失する。 
しかし、ローゼンクランツはアシュレイに告げる。 
自分たちは同じチームだったと。「夏のあの日」、自分もそこに居たと。 
アシュレイの頭に、草原の記憶が再び蘇った。 

記憶の中ではローゼンクランツが、ターゲットと違う家族を殺してしまった事でアシュレイを慰めていた。 
しかし、アシュレイはその事実に耐えきれず激怒し、直後、気を失った。 
気を取り直したアシュレイの前から、ローゼンクランツは捨て台詞を残して去っていった。 
アシュレイは、何が正しく、どれが間違っているのか、自分の記憶に自身が持てなくなってきていた。 


「人は自分に都合のいい嘘をつく…、自分を正当化するために…か。」(アシュレイ) 



570 名前:ベイグラントストーリー 6/10 投稿日:03/11/23 13:57 ID:I04kCSni 
レアモンデの廃坑を抜けるアシュレイ。その時「魔」の力の影響でキャロと知覚がリンクする。 
見えたものは廃屋に座り込むキャロと、ジョシュアを連れたハーディン。 

キャロはハーディンに、公爵邸を占拠した理由を聞くが、ハーディンは答えない。 
しかし突如ハーディンの影が現れる、魔に触れたキャロには「心を読む力」が目覚めたのだ。 
そして影は、問いていた理由を語り出した。 

元々バルドルバ公爵とメレンカンプは繋がっていた事、公爵はこのレアモンデを"処分"しようとしていた事。 
今回の占拠事件は、それに対し反旗を翻す為であった事…。 
メレンカンプは、レアモンデの力を継承しようとしていた。そして、その為の"鍵"を探していたのだ。 
さらにハーディンの口から、シドニーの"能力"についても語られる。 
他人の過去を読みとったり、他人に自分の意志を押しつけたりできる。それがシドニーの"力"だった。 

シドニーの"力"を知り、キャロは悲しげに被りを振る。
他人の過去を読み取れたとしても、それを押しつける能力があっては真実か嘘かを私たちは見抜けない、と。
そんなキャロを、ハーディンは鼻で笑い一蹴する。

「人間は誰だって嘘をつく。負の能力があろうがなかろうが
 嘘をつき、信じさせることは誰だってできる。……そうだろ?」(ハーディン)

――――――

一連のやり取りを眺めていたアシュレイの心に、一つの疑念が沸き起こる。 
森でシドニーが見せた自らの記憶に対する…。 


「オレが見たあの"真実の過去"も、嘘かもしれない…。」(アシュレイ) 



571 名前:ベイグラントストーリー 7/10 投稿日:03/11/23 13:58 ID:I04kCSni 
さらに時刻は流れ…。聖印騎士団はローゼンクランツの案内で、メレンカンプの本拠地である大聖堂に辿りついた。 
ギルデンスターンの合図の元、突入を開始する騎士達。ギルデンスターンとサマンサもそれに続く。 
しかしローゼンクランツはそれを横目に、すぐ側のキルティア神殿内へと去っていった。 

同じ頃の大聖堂最上階、キャロはジョシュアに優しく接するハーディンを目の当りにする。 
疑問に思った頃、以前と同じハーディンの"影"が現れ、キャロに語り出した。 
ハーディンは以前、国家保安庁に属していた事。病弱な弟が居た事。そして、弟の為に味方を売った事を… 
その事をハーディンに問いただすものの、逆に手を上げられるキャロ。 
しかし、ハーディンは突如飛来したボウガンの矢で膝を突く。 
視界には聖印騎士と、ギルデンスターンの姿があった。 

ギルデンスターンはハーディンを尋問する。後継者となる為の"鍵"のありかを聞き出す為に。 
シラを切り通すハーディンに、ギルデンスターンは"力"を放つ、シドニーと同じ"力"を使える事に狼狽するハーディン。 
そしてハーディンは"力"に惑わされ、"鍵"が"血塗れの罪"と呼ばれるものだという事を喋ってしまう。 

ギルデンスターンは考えた。天上に描かれている"逆位置の聖印"を、かつて異端者の証として刻んでいた事。 
そしてそれを"血塗れの罪"と呼んでいた事…。 
その時、ギルデンスターンにシドニーと会った時の記憶が蘇った。シドニーの背中に刻まれていた"逆位置の聖印"…。 
そう、シドニーは既に"鍵"を手に入れていたのだった。その事実に驚愕し、騙されていたと絶望するハーディン。 
しかし一瞬の後、用済みとばかりに、ギルデンスターンの剣がハーディンを貫いた。 


同時刻…。大聖堂側のキルティア神殿にてシドニーが、ハーディンの末路を感じていた。 
そこに現れたローゼンクランツ。二人の会話から、シドニーがアシュレイを"魔都"の後継者にしようとしている事が解る。 
しかしローゼンクランツはそれをよしとせず、自らを後継者とするようシドニーに迫る。 
ローゼンクランツはシドニーに剣を向けるも、"魔"に惑わされ、動き出した邪神象に切り捨てられ塵となった。 
シドニーはアシュレイに告げる、「お前こそ魔都を受け継ぐにふさわしい」と 


「この街を貴様にやろう!、すべての力を貴様に託そう!!」 
「だから早く来い!!、この高みまで!!。もうすぐだ!、お前ならすぐ来れる!!」(シドニー) 

そして、シドニーはアシュレイを残し、大聖堂へと去っていった。 



572 名前:ベイグラントストーリー 8/10 投稿日:03/11/23 14:00 ID:I04kCSni 
シドニーは大聖堂最上階に着いた。そこにはギルデンスターン、刺されたハーディン、キャロ、ジョシュアの姿があった。 
既に"鍵"の存在を知ったギルデンスターンは、シドニーに対し、継承の儀式に必要な"魂"について答えるように迫る。 
拒否するシドニーに対し、自らの理想を得意げに語り始めるギルデンスターン。
この堕落した世を正すには共通の“価値観”と、剃刀の刃一枚入る隙もない完璧な“法(ルール)”
そして、それらを制する“恐怖”が必要なのだと。
狂気にも満ちた理想を追うギルデンスターンを評し、シドニーが言う。

「真の悪党は強大な権力を手にした者、という世の常は変わらんな。
 本人が気付いていないのが哀れすぎる。」(シドニー)

ギルデンスターンは最終警告として、シドニー達に剣を向ける。 
その刹那姿を現すサマンサ。シドニーは"力"でサマンサを弾き飛ばし、その隙にハーディンに駆け寄る。 
安全な所へ送ろうと詠唱を始めたシドニーに対し、それを遮ってハーディンが言った。 

「公爵を…、親父さんを助けたかったんだな…?」(ハーディン) 

無言のシドニー、一瞬の後、ハーディン達三人が光に包まれ消えた。 
次の瞬間、ギルデンスターンの剣が、背後からシドニーを刺し貫いた。 



暫くの後…。アシュレイが大聖堂最上階に現れる。そこには背中の皮膚を剥ぎ取られ、横たわるシドニーの姿があった。 
そしてアシュレイは見る、シドニーの子供時代の幻影を。幻影の語り出す言葉を聞いた。 

「父さんを助けたかったんだ、この街の力を使って…」 
「僕が生まれたとき、父さんがそうしてくれたように。今度は僕が助けたかったんだ。」 

そしてシドニーはアシュレイに頼む、ギルデンスターンを止めてくれ、と。 
"魔"を望む者には"魔"を支配することはできない。いずれ魂を喰われる結果に終わると、そうなる前に…。 
アシュレイは頷き、決意を新たに天上を見上げる。 

「…すまない、アシュレイ。」 
「…わかっている。」 



573 名前:ベイグラントストーリー 9/10 投稿日:03/11/23 14:01 ID:I04kCSni 
大聖堂の屋根の上、二つの人影が絡み合っていた。ギルデンスターンとサマンサ。
しかし、サマンサの腹部には突き立てられた短剣。
ギルデンスターンはサマンサの魂を贄として、「魔都」の力を継承しようとしていた。
信じ、愛していた男に裏切られ、絶望するサマンサ。男の掲げる「理想」に、自分の居場所は無かったのだと。
しかし、事切れんサマンサを前に、ギルデンスターンは優しげに語り掛ける。

「愛しているよ、サマンサ。本当だ。」
「…私も……そう思っていたわ。」

そしてサマンサの体は、深淵へと消えていった。
"契約"は成され、ギルデンスターンに力が宿っていく。
その直後、アシュレイが姿を現した。 

深い夜の闇の中、アシュレイと変貌したギルデンスターンの戦いが繰り広げられる。 
激しい戦いの末、アシュレイはギルデンスターンを倒すのだが…。 
次の瞬間、アシュレイの意識は飛んだ。 

白い空間に佇むアシュレイ。そこへ、数々の声が語りかける。 

「自分に都合の悪い記憶なんて忘れるものだ。」 
「真実を知ってどうする。失われた時間を取り戻すことなんてできやしない。」 
「あきらめろ。後悔するだけだ。どちらでもいいではないか。」 

「失ったのが妻子であったとしても、殺したのが罪のない善良な一家だったとしても 
 失われた命は帰ってこないのだ。」

"魔"はギルデンスターンの姿を取り、語りかける。
その言葉がアシュレイを覆っていく。

「貴様の手は多くの返り血で汚れている。真実を知っても貴様の罪は消えない。」
「過去を悔いるより、未来を見つめろ。我々の仲間になるのだ。 


しかし、アシュレイはその"言葉"を拒絶し、跳ねつける。 

「過去を見つめぬ者に"成長"はない。」 
「美辞麗句で未来を語っても、地に足がついていなければ"進歩"はない。」 
「"魔"よ、去れッ!!」 

"真実の過去"に対する誘惑を退け、そして“魔”との共存を否定するアシュレイ。 
シドニーの願いに答え、魔都の"後継者"となる道を選んだのだった。 

ギルデンスターンとの戦いが終わった頃、激しい地鳴がレアモンデを襲った。 
崩れゆく大聖堂の中、シドニーに手を貸すアシュレイ。 
その背中には赤い"聖印"があった 



そして、レアモンデは崩壊した。 




574 名前:ベイグラントストーリー 10/10 投稿日:03/11/23 14:02 ID:I04kCSni 

1週間後…。 

・王都バルナイン バルドルバ公爵別邸 

別邸にて静養中のバルドルバ公爵が、何者かの手によって殺害された。 
調査の結果、犯人はその直前に訪れていたアシュレイ=ライオットであるとされた。 
しかし、公爵は見ていた。今わの際に現れた息子、シドニーの姿を。 


「すべては片付いたか…。つらい思いをさせたな。」 
「わしらの役目も終わりだ、あとはアシュレイという男に託すとしよう。…おまえが見込んだ男だ。」 

シドニーが何かを呟く。それに答え、公爵が続ける。 
「…わかっている。あとはおまえだけだな」。 

公爵の言葉を受け、微笑むシドニー。そして、公爵の膝に短剣を置く。 
「…おまえには親らしいことをしてやれなんだ。すまない…、我が息子よ。」 

それを聞くシドニーの目には、わずかに光るものがあった。 
公爵は、短剣でゆっくりとシドニーを胸を刺す。シドニーは光の塵となって四散していった。 
そして公爵も… 


・同時刻 公爵別邸前 

そぼ降る雨の中、別邸を見上げるアシュレイの姿があった。 
何かを秘めた表情を浮かべ、一人佇む。 

暫くの後、踵を返し、夜の闇へと消えていった。 





  こうして、放浪者の物語(ベイグラントストーリー)は始まった 

-Fin- 

復元してよろしいですか?