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大神 (Part2/2) - (2010/06/01 (火) 08:38:59) のソース

<p><strong>大神</strong>(Part2/2) ページ容量上限の都合で2分割されています。</p>
<p>part42-409~412、part43-572~577、part46-303~306、part47-257~261</p>
<hr /><dl><dt>409 :<a href="mailto:sage"><strong>大神</strong></a>:2008/11/27(木) 00:29:57
ID:mzp/whSm0</dt>
<dd>さてさて、とり憑いていたエキビョウから開放され、アマテラスの雄叫びによって(?)<br />
やっとこ長い眠りから覚めた宝帝ですが、憑依されていた人間のお約束どおり、<br />
寝ている間のことは全く覚えていないようです。<br />
「人騒がせなおっさんだぜェ。まァ竹姉ちゃんも無事だったし……今回はお咎めナシにしてやらァ」<br />
と、ぼやくイッスンを前に<br />
「白いオオカミと……そして面妖な動く飴玉……眠っている間、夢の中で見たような気もするが……<br />
ともかくこのような失態、早くヒミコ殿にお詫びせねば!」と決意する宝帝。<br />
その言葉にこの都に来て以来の超大元の目的を思い出したイッスンとアマテラス、<br />
「……ところで白いオオカミよ。お前の顔を見ておると、なぜか心が和むのう。<br />
腹の中まで見透かされてるような、そんな安心感があるわい……」とヒミコへの詫びそっちのけで懐いてくる宝帝を<br />
まぁ、ついさっきまでそのタイコ腹ん中にいたしね……とスルーして、<br />
今度こそヒミコの元へ向かおうと屋敷を後にするのですが、その門前に見覚えのある後姿を見つけて<br />
またまた足を止めることとなります。<br /><br />
「よォ、竹姉ちゃん!せっかく自由の身になったってのに、こんな所でボアッと何やってんだィ?」<br />
かけられたイッスンの声にぴょこんと振り返り、驚くカグヤ。<br />
「お会いした時は米粒のようでしたが―――こんなにも凛々しいお姿だったのですね」<br />
「そ……そうかィ!?オイラぁよく言われるんだよなぁ。凛々しいとか、美々しいとかよォ!」<br />
「え!?あ……そうですね、イッスンさんも……」<br />
気まずそうなカグヤに気付かないままイッスンは早く竹爺さんの所に帰ったほうがいいと勧めます。<br />
しかしカグヤは寂しそうにしている竹取翁の様子を聞いて、何故か更に気まずそうに俯いてしまいました。<br /><br /></dd>
<dt>410 :<a href="mailto:sage"><strong>大神</strong></a>:2008/11/27(木) 00:33:14
ID:mzp/whSm0</dt>
<dd>「あの方は、私を本当の孫のように可愛がって下さいました。私も……早く帰りたいのは山々なのですが……」<br />
記憶のない彼女を手厚く看護し、本当の孫のように接してくれた竹取翁の恩に報いるため、<br />
竹細工作りを手伝って暮らしてきたというカグヤ。<br />
それがどうしてこの期に及んで彼の元へ帰らないのかというと、真っ暗な牢の中に閉じ込められたがゆえに、<br />
同じように真っ暗な部屋の中で何かに没頭していた過去を思い出してしまったからなのでした。<br />
一刻も早くそこに帰らなければ!<br />
自らの内側から湧き上がる強い衝動に押されて駆け出した彼女を放っておくわけにも行かず、<br />
アマテラスはカグヤの後を追って毒霧の晴れた都大路を抜け、笹部郷へと向かいます。<br /><br />
途中で都の上空に浮いてる怪しい建物(超オーバーテクノロジー満載で<br />
何故か巨大ロボのホログラフィーとか耳が羽根になってる変な天使の像とかが飾ってある)<br />
に潜入、そこが女王ヒミコ直属の特殊諜報部隊である「陰陽師特捜隊」、略して陰特隊の本部で<br />
ウシワカはそこの隊長だったりすることが判明するのですが、まあそれは後の話ってことで。<br /><br />
笹部郷の竹林の奥深く。<br />
地面に描かれた不思議な紋の前にやってきたアマテラスたちが見たのは、<br />
一足早く辿り着いたカグヤと偶然にもやってきていた竹取翁が<br />
(ていうか、竹取翁の竹細工は笹部郷の竹製なのである意味必然でもあるのですが)<br />
感動の再会を果たした光景でした。<br /><br />
「カグヤ!……これからはずっと一緒に暮らそうね。またワシの竹細工、一緒に売りに行こうね!」<br />
と涙にむせぶ竹取翁、しかし彼と同じく嬉しげだったカグヤは、その言葉に顔を曇らせてしまいます。<br />
このままジジさまとは一緒に暮らせない、そんな事を言い出した彼女に驚き、動転する竹取翁。<br />
「ジジさまがここに来ているとは知りませんでした。本当は……ジジさまに会わずに行こうと思っていたんです」<br />
「行くって……どこへ?」<br />
おろおろと尋ねられ、首を振ったカグヤは地面に浮かぶ模様に視線を移しました。<br />
「分かりません……ただ、笹部郷の地面に刻まれた王家の紋章―――この紋章が私を呼ぶのです!」<br />
そう叫び、カグヤが腕を広げると、その身に纏った(って言うの?)竹筒が眩い光を放ちます。<br />
すると地面がそれに呼応するように光りだし、音を立てて深い穴が開きました。<br /><br />
何をしてるの?と仰天する竹取翁に<br />
「何か……得体の知れない激しい感情が私を突き動かしました」と答えたカグヤ、<br />
「この紋章の下……遥か地下の奥底に私の失われた記憶に纏わるものが待っているのです!<br />
私……行きます!この穴の中に入ってそれを見届けに行って参ります!」<br />
とうっ、と何のためらいもなくジャンプして、穴の底へと姿を消してしまいました。<br />
「竹姉ちゃん一人じゃ危ねェ!アマ公、オイラたちも行くぜェ!」<br />
という訳でアマテラスもまた穴の中に飛び込んでカグヤを助け、穴を掘り掘り、更に地の底へと向かいます。<br /><br /></dd>
<dt>411 :<a href="mailto:sage"><strong>大神</strong></a>:2008/11/27(木) 00:37:55
ID:mzp/whSm0</dt>
<dd>地下に眠っていた、カグヤの記憶に纏わる物……それは黒光りする金属の竹で出来たかのような、<br />
奇妙なデティールを持つ、どう見てもロケットとしか言いようのない物体でした。<br />
「ななな……何だいこの、この馬鹿デカい鉄のタケノコはよォ!?」<br />
と驚きまくるイッスンとは対照的に<br />
「この物体が私を呼んでいたのですね……」と感慨深げに呟くカグヤでしたが<br />
「……カグヤ……ワシ、知ってたの。この大きなタケノコが、お前を拾ったこの竹林の下に埋まっているのを……」<br />
思いがけない竹取翁の告白に驚き、背後を振り返ります。<br /><br />
「うんと昔」にやはり同じく竹を取りに来た竹取翁の目の前にこの「鉄のタケノコ」が突然現れ、<br />
カグヤを残して地面の中にもぐっていったこと。<br />
冷たくて今にも死にそうなカグヤを慌てて家に連れ帰り、もう今はいないお婆さんと看病したこと。<br />
二人ともずっと子供が欲しかったから、カグヤが天からの授かり物のように思えて、<br />
楽しく暮らすうちにこのことを話せなくなってしまった。ぽつりぽつりと語っていた竹取翁は<br />
「だって……もしもお前に話したら……お前がこの不思議なタケノコと一緒に<br />
ワシらの目の前から消えそうな気がしてねぇ……!ふええーん!ふえええええーん!」<br />
とうとうしまいに泣き出してしまいました。<br />
「ジジさま……!」その様子にカグヤは感極まり、ひっしと竹取の翁と抱き合います。<br />
「……グスッ」イッスンがもらい泣きして鼻をすすりました。<br /><br />
けれどカグヤはなおもせつせつと竹取翁に訴えかけます。<br />
自分だって老夫婦を本当の家族だと思っているけれど、<br />
自分は何者なのかと身もだえしながらただじっとしてはいられない。<br />
自分自身の起源を明らかにして堂々と暮らせるようになって必ず帰ってくると。<br />
「お願いジジさま……カグヤを笑顔で見送って!」<br />
決意を込めたその言葉に、ついに竹取翁が頷きました。<br />
「うん……うん!行っておいで、カグヤ。そして……行った先で何があっても―――これだけは忘れないでね。<br />
お前はワシの孫だから……ワシの可愛い孫だからね!」<br />
「ジジさま!」<br />
お互いに叫び、再びしっかと抱き合う二人。<br /><br />
そんな二人の姿に何か思うところがあったのか<br />
「かわいい孫……かァ」<br />
ぽつりとイッスンは呟きましたが<br />
「……イ……イヤ、別にオイラぁ故郷を思い出したワケじゃないぜェ!」<br />
何故だか慌てて誤魔化します。なにやら気になる態度ですが、それはさて置き、<br />
「イッスンさん、そしてアマテラスさん……お二人には本当にお世話になりました。<br />
お礼と言うほどのものではありませんが……」<br />
とカグヤが差し出したのは赤茶けた石造りの髪飾り……「火避けの石簡」でした。<br />
記憶のないカグヤが持っていた唯一の出生の手がかりにして大変珍しい宝ですが<br />
(宝帝がカグヤを招こうとしたのは世にも珍しいこの秘宝を一目見ようとしたからなのです。<br />
エキビョウに憑かれたせいで結果拉致監禁になっちゃったけど)、<br />
自分にこれはもう必要のない物。ならば炎の海すら渡ることの出来るこの神器を二人の旅に役立てて欲しい、<br />
そう言って髪飾りをアマテラスたちに託し、カグヤはロケットへと乗り込みました。<br /><br /></dd>
<dt>412 :<a href="mailto:sage"><strong>大神</strong></a>:2008/11/27(木) 00:44:27
ID:mzp/whSm0</dt>
<dd>「……それでは―――カグヤは旅立ちます。ありがとうお二人とも、<br />
ありがとうジジさま!また会う日まで……どうか、お元気で!」<br />
ロケットの排気口から噴き出した煙が辺りを包み、カグヤの乗ったコクピットがオレンジ色の透明なシールドに包まれます。<br />
そして―――<br /><br />
3!<br /><br />
2!<br /><br />
1!<br /><br />
微妙に○hun○er○irdsAreGo!!とか言いそうなカウントダウン(SEだけだけど)と共にエンジン点火、<br />
凄まじい速度で上昇したロケットの姿は、ひときわ大きな星のように輝きながら見る見る小さくなっていきました。<br />
それを見守る竹取翁の頬に、涙の星が流れます。<br />
その隣に並んでポカーンと大口を開け、遠ざかるロケットを見上げていたアマテラスが翁の様子にふと気付き、しょんぼり耳を伏せました。<br /><br />
「行っちまったなァ……飛んでった先に何があるのか見当もつかねェが……竹姉ちゃんの旅の無事を祈ろうぜェ」<br />
と一旦はしんみりしたイッスンですが、すぐにぴょんぴょん元気よく跳ねだします。<br />
「おい、アマ公!ボアッとしてんじゃねェや!竹姉ちゃんの世話でちょっと遠回りしちまったけど、<br />
オイラたちにもやる事はあるじゃねェか……ダンマリ決め込んでる何処ぞの女王サマにキツいお灸を据えに行こうぜェ!」<br />
イッスンに促され、都へ向かって四足のきびすを返したアマテラスの背後、<br />
「ワシは今まで以上に竹細工作りを頑張っちゃうよ。<br />
それでカグヤが帰って来るまでに竹細工御殿を建てちゃうからね!元気でやるんだよ……カグヤ」<br />
竹取翁は年甲斐もなく張り切った様子で軽いステップを踏むと、満天の星の彼方に向かって語りかけるのでした。<br /><br /><br />
とりあえずここまでー<br /><br /><br /></dd>
<dt>572 :<a href="mailto:sage"><strong>大神</strong></a>:2009/03/03(火) 18:50:26
ID:sNvHI57q0</dt>
<dd>カグヤを見送り、笹部郷を後にして、もと来た道を引き返し、西安京へと戻ってきたアマテラスとイッスン。<br />
本来の目的を果たすべく、ヒミコの神殿へと乗り込もうとしますと、<br />
門の前でヒミコの親衛隊に「祈祷の間は犬一匹とてここを通ることはまかりならん」と、通せんぼされてしまいました。<br />
ちょっと前までなら「どのような妖術にも惑わされんぞ!」と息巻く彼らに困り果てるところですが、<br />
幽神の筆業、「霧隠」を取り戻した今のアマテラスにはなんてことはありません。<br />
融通の利かない彼らの時間をスローにして難なく突破、神殿の中へと突入……したが早いか、ヒミコの侍女に出くわしてしまいます。<br />
が、落ち着き払った様子の彼女によると、アマテラスたちの行動などヒミコには全てお見通しで、最上階で二人を待っているというのです。<br /><br />
「もしも貴方たちが真にヒミコさまの求める方ならば、煮えたぎる炎の海などなんの障害にもならないでしょう」<br />
とか言われたとおり、最上階は何故かぐつぐつと沸き立つ溶岩に満たされたフロアなのですが、<br />
ここで都合よくついさっきカグヤに貰ったばかりの「火避けの石簡」が役に立ち、火の海を渡りきることができました。<br />
……カグヤを見送ってなかったら、アマテラスは「ヒミコの求める方」になれなかったんだね、というのは禁句です<br /><br />
とまれ仰々しく掲げられたいくつもの御簾をくぐり、「卑」「弥」「呼」と描かれたビミョーに自己主張の強いデザインの扉を開くと<br />
その向こうは無数のロウソクに照らされた大広間になっておりました。<br />
広間を壁のように仕切った緞帳のように大きな御簾の向こうには、これまたひとかかえほどもある大きな水晶が浮かび、<br />
その下に、こちらに背を向けて座っている人影がぼんやりと見えます。<br /><br />
「やいやいやい!部屋に閉じこもって、妙チキリンな祈祷をしてるって噂の女王ヒミコだなァ!?」<br />
ぐるぐると唸り声を上げるアマテラスの頭の上でイッスンが叫ぶと、ちらりとこちらを振り返った人影はこともなげに言いました。<br />
「慈母アマテラス大神……貴殿のご来訪をお待ちしておりました。そして……旅絵師イッスン、そなたのこともな」<br />
名前ばかりかこちらの素性まで看破した彼女に驚きながらも、イッスンが都の現状や暴れまわる水龍を知りつつ<br />
それを放置している理由を尋ねたところ、御簾の向こうの人影は、驚いたことに打ち伏した肩を震わせてすすり泣き始めました。<br />
けれども彼女の事を、人間たちを苦しませ、生じた怨嗟の念を喰らう妖怪だと思い込んだイッスンは、<br />
都の民の苦しみを感じ取ってのものというその涙を信じようとしません。<br /><br /></dd>
<dt>573 :<a href="mailto:sage"><strong>大神</strong></a>:2009/03/03(火) 18:51:38
ID:sNvHI57q0</dt>
<dd>「そんな煤けた蚊帳の向こうで三文芝居してねェで、いい加減観念して正体を現しなァ、この妖怪ババァ!」<br />
威勢よく叫んだ言葉に人影は<br />
「……イッスンよ、妖怪ババァとは随分な言い様じゃな」とさすがにムッとしたようでしたが、すぐに<br />
「しかし、顔を隠したままお迎えするとは、確かに無礼でおじゃった。<br />
慈母アマテラス大神……この西安京の長、ヒミコ。御前に額づき、謹んでお詫び申し上げまする」<br />
そう言って立ち上がるとこちらに向き直り、長い着物の裾をさばいて再び跪くと、深く頭を下げました。<br />
同時にお互いを隔てていた巨大な御簾が静々と巻き上げられていきます。<br />
伏せていた顔を眼前に捧げ持っていた榊から上げると、なんとそこに現れたのは輝くばかりの美貌でした。というか、美しさのあまり本当に後光が差しています。<br /><br />
「……」<br />
案の定、美人に弱いイッスンはぴょんと跳ねた姿勢のまま硬直して、ハートマークを撒き散らしつつ<br />
アマテラスの頭の上から木の葉が舞い落ちるように、ひらひら落っこちてしまいました。<br />
頭に飾った鏡が跳ね返す明りか、それとも同じく頭上に組んだ護摩壇の炎のせいか(熱くないのか)<br />
スポットライトのような光に包まれながらヒミコは言います。<br />
都の民の苦しみをよそに安閑としていられる訳はない、今まで全てに耳を塞いでひたすら祈祷を行ってきたのは<br />
ひとえに物の怪どもの牙城、鬼ヶ島の行方を突き止めるためだったと。<br />
ようやっとヘブン状態から回復したイッスンがアマテラスの頭上に舞い戻り、慌てた声で叫びます。<br />
「それが都の騒ぎの元凶だってのかよォ?……でも、鬼ヶ島だかニョゴヶ島だか知らねェけど―――島の行方ってのはどういう事だィ?」<br />
答えるヒミコいわく、鬼ヶ島は神出鬼没。毎日日暮れと共に忽然と姿を消し、<br />
全く別の場所に移動してしまう……それゆえ兵を差し向けたくともどうにもならぬ、と。<br /><br />
だからってお祈りなんかじゃ埒が開かないだろうに、とぼやくイッスンに、ヒミコは立ち上がると傍らを振り仰ぎました。彼女の手招きに応え<br />
「や……野郎、やる気かァ!?」<br />
とケンカっ早いイッスンが勘違いして刀を抜くほどの威圧感で宙を滑ったのはあの大きな水晶玉。<br />
ヒミコが説明するにはそれは千里水晶という太古より西安京を治めてきた彼女たちヤマタイ一族の什宝(じゅうほう)で、<br />
如何なる未来をも教えてくれるものなのだそう。そう、アマテラスたちがやって来ることも……鬼ヶ島が現れる海域も。<br />
そんな世にもスバラシアイテムの話を聞いて<br />
「ほ……ほォ~。そんな便利なものがあるなら、サッサと鬼ヶ島の場所を調べたらどうだィ」<br />
イッスンが当然の提案をし、アマテラスもうきうきとした後足ジャンプをしながらそうだそうだと言わんばかりに吠え立てましたが、<br />
やはり世の中そうそううまくいくもんではなく、鬼ヶ島ほどの物を暴くには多くの法力が必要で、<br />
更に祈祷を敵に知られてしまえばどんな手を使って阻止してくるか知れたものではない、<br />
従って今は密かに祈祷を続けるほかないらしいのです。さらに。<br />
「もっとも……もう敵の尖兵が差し向けられているかも知れぬがな……」とまで。<br /><br /></dd>
<dt>574 :<a href="mailto:sage"><strong>大神</strong></a>:2009/03/03(火) 18:52:42
ID:sNvHI57q0</dt>
<dd>ちょっとコワイ意味にも取れるものいいに一瞬鼻白んだものの、懲りないイッスンは<br />
「ま……まァ、オイラはヒミコ姉の事、信用してやるぜェ。カワイイ姉ちゃんの嘘と乳には抱かれろって言うからなァ、プフフフフ!」<br />
誰が言ったんだか出所不明の格言を叫ぶや、スゴイ勢いでヒミコに向かってダッシュ、大きく開いた貫頭衣の胸元へとダーイブ!<br />
……しようとした途端、その豆粒のような体は見えない壁にブチ当たり、スパークを散らして弾き飛ばされてしまいました。<br /><br />
「や……やりやがったなァ……」<br />
「これこれ!今の妾に近づいてはならぬ!」<br />
ふすふすと煙を上げるイッスンを、歩み寄ったアマテラスが興味深げに前足でつつき、ヒミコが今更な警告を投げました。<br />
なんでもこの千里水晶を手にしたヒミコの周りにはどんな厄災をも跳ね返す結界が張られるそうで、<br />
イッスンはヒミコの最後の命綱とも言える水晶の「天罰」の威力を身をもって実証してしまったのでした。<br />
次いでヒミコはアマテラスに水龍を鎮めて味方につけて欲しいと頼みます。<br />
水龍は元々海の安寧秩序を司る海神であり、害を成すからと言ってそれを退治してしまっては逆に乱を招く<br />
……その上、水龍がいなければ鬼ヶ島へは渡れないというのです。<br /><br />
なんとならば、鬼ヶ島にもまた結界が張られていて、それを切り崩せるのは唯一水龍のみ。<br />
祈祷のために神殿を離れられない自分に代わってどうか、と懇願するヒミコに、<br />
しかしイッスンはいまだ水龍に死ぬほど追いまくられた恐怖が忘れられないのか、<br />
ついさっきの結界電撃アタックを根に持っているのか乗り気ではない様子。<br /><br />
「そりゃカワイイ姉ちゃんのお願いならオイラにゃ断れねぇけど……<br />
このアマテラス大先生が首を縦に振らねぇんじゃ、どうにも……」<br />
としぶる端から、にもかかわらずアマテラスがあっさりコックンと頷いてしまい、またまた<br />
「いやァ、残念!アマテラス大先生がそう言うんじゃ……な、何ィ!?」と絶叫する破目になりました。<br />
「おお……アマテラス大神、なんと慈悲深き事でおじゃりましょう!」<br />
先刻までの厳かな振る舞いとはうって変わって、うれしげにぴょいぴょい飛び跳ねたヒミコに渡されたのは「カンモン砦の鍵」<br />
この鍵を使ってカンモン砦を抜けた先には海の民「龍神族」が住まう国があり、龍を操るという彼らが何か今回のことに関係あるはず……<br />
「水龍乱心の謎を突き止め、鬼ヶ島への天つ橋を架けてたもれ!」<br />
ヒミコの言葉に背中を押されたアマテラスは<br />
「アマ公!……まったくお前は、また安請け合いしやがってよォ!」<br />
と湯気を立てるイッスンとともにカンモン砦へ向かいます。<br /><br /></dd>
<dt>575 :<a href="mailto:sage"><strong>大神</strong></a>:2009/03/03(火) 18:54:27
ID:sNvHI57q0</dt>
<dd>都を抜けて辿り着いたカンモン砦は、大木で出来た格子戸によって閉ざされておりましたが、<br />
入り口を守る兵士の一人にヒミコから渡された鍵を見せますと、<br />
「ヒミコ様の命でここを通る動物はお前が初めてだ……」<br />
と褒めてんだかなんだかよく分からない感想を漏らしつつ扉を開けてくれました……<br />
ってカギいらないじゃーん!……まあ、通行証のような物なのでしょう。<br />
カンモン砦を抜けた先は、両島原の北側です。<br />
苔むした岩山と砂浜、勢いよく生えた松の木の向こうには紺碧の海、<br />
更にその向こうには鬼の形をしたいかにも怪しい島が見えます……<br /><br />
怪しいよアレ……よく見りゃ目と口も付いてるし怪しすぎるよ……絶対アレだよ鬼ヶ島……とツッコむ間もなくイッスンが<br />
「龍神族の国ってェのはどこにあるんだィ?名前からして海の方にありそうな感じだけど、オイラぁ出来れば海に入るのは遠慮したいぜェ」<br />
と難問を思い出させてくれます。<br />
確かにアマテラスの泳ぎでは鬼ヶ島どころか、海に入ったが早いか<br />
探索の「た」の字もしない内に先刻のように水龍にバックンチョされることは必定です。<br />
もう一つなんか忘れてることがあるような気もしますが、取り合えず何か海を渡る手段を探そうと<br />
浜へ向かう坂道を下りかけたアマテラスの鼻先に「キラァン!」と眩い光の粒子が輝き、<br />
「やぁ、アマテラス君」<br />
またまたまた例によって例の如く、爽やかにウシワカが現れました。<br /><br />
「都の空気もすっかり良くなったようだけど―――小さな穴の向こうのアドベンチャア……楽しめたかな?」<br />
あいかわらず怪しげな英語?を操りつつ両手を広げて問いかけるキザな仕草に<br />
「……無視だィ、無視無視!さァ行くぜェアマ公!」<br />
もう取り合わないことに決め込んだらしいイッスンが、それでもイラついた声を張り上げますが、そこでウシワカが<br />
「随分つれないなぁ。ホラ……辺りの景色を見て、気付かない?」<br /><br />
……忘れてたもう一つがいまここに。新エリアのお約束、大神降ろしによるタタリ場の浄化を、<br />
なんとウシワカが「パパッとやってあげた」というのです。<br />
今までの予言の数々はひょっとしたらヒミコ直属の特捜隊隊長である彼がヒミコから得た物だったのかも、<br />
という事で説明が付きますが、これは明らかに人間業ではありえません。<br />
っていうか光になって消えるとか現れるとか空飛んだり結界に穴開けたり今までも十分に人間離れしてましたが。<br />
「ユーたちが来るのを待っても良かったんだけど、ビューティフルな海をいつまでもタタリ場漬けにしておくのもねぇ……」<br />
アマテラスしか出来ないと思われていた大神降ろしをいかにも何でもない事のようにしれっと言って、<br />
ウシワカは更に奇妙な言葉を口にします。<br />
「でも見てのとおり、両島原の青い海が見事に蘇っただろう?絵にも描けない美しさってのはこういう事かな?……ゴムマリ君」<br /><br /></dd>
<dt>576 :<a href="mailto:sage"><strong>大神</strong></a>:2009/03/03(火) 18:56:18
ID:sNvHI57q0</dt>
<dd>「……お前、何が言いたいんだィ」<br />
含みを持たせた言い草にイッスンが尋ね返すと、何故かウシワカはイッスンがどんな絵を描くのか見たいなどと言い出しました。<br />
「どんなビューティフルな絵を描くのか……興味あるんだよね……ちょっと一枚、見せてくれないかな?」<br />
どんな絵を描こうと勝手、お前のような奴に誰が見せるかとイッスンが突っぱねてもどこ吹く風、<br />
ウシワカはなおもおかしな質問を……いやこれは、はたしてただの「質問」なのでしょうか?……ぶつけてきます。<br />
「まさかとは思うけど、絵を描けもしないのに、絵師を名乗ったりしてないよね?」<br /><br />
「……何だとォ?」<br />
こんな事言われたらいつものイッスンならカンカンになって怒るはず、なのにどうしたことでしょう、妙に焦った感じでどこか変な様子です。<br />
そんなイッスンの顔色にはお構いなしでウシワカが言うには<br />
「いやぁ、ある絵師のお爺さんから聞いたんだけど……<br />
弟子でもある孫が家を飛び出した時―――ご神木の木精を描いた家宝の美人画を持って行ってしまったらしくてさ……<br />
巨匠の絵を自分の手柄にでもしようとしたのかねぇ?そんな不逞の輩がいるくらいだから、<br />
絵師の世界も真贋怪しいもんだなぁと思ったんだよ。ユーには関係のない話だったかな……?」<br />
それを聞いたイッスンは、完全に汗ダラダラ。<br />
「そ……そんな話、聞いた事もねェや!さァ、早くどこかへ消えろってんだィ、いつまでも目の前をウロウロしてると叩っ斬るぜェ!」<br />
ついには声を上ずらせてなんだか逆ギレっぽく怒鳴りだしてしまいました。<br />
しかしウシワカはそれ以上追及することもなく<br />
「ソーリィ、ソーリィ!物騒な事言わないでよ!」なだめるように手を振ると<br />
「こりゃ、とんだお邪魔をしちゃったみたいだね。<br />
今回は特に予言することもないし―――この辺で消えるとしようかな?それじゃ……グッバイ、ベイビィ!」<br />
現れたときと同じく唐突に、キラァン!と光の粒子を残すや消え去ってしまいました。<br /><br />
ってか「物騒な事言わないで」とか……この人初登場時に「ミーは刀でしか語れない男―――」とか言ってなかったか、などという疑問はともかく。<br />
どうやらイッスンの背景にも何やら一悶着ありそうなフンイキを覚えつつ、<br />
ですがこの様子からすると今はまだ先の事のよう……<br />
そんな訳でアマテラスはとにもかくにも何とかして龍神族の元へ向かうべく、両島原(北)の探索に向かうのでした。<br /><br /></dd>
<dt>303 :<a href="mailto:sage"><strong>大神</strong></a>:2009/07/02(木) 11:30:28
ID:pmscV9ea0</dt>
<dd>皆さん乙です<br />
大神行きます<br /><br />
さて、両島原の北側へやってきたアマテラス。<br />
海を渡る手段を探して両島原の浜辺を眺め渡していますと、そこで奇妙な騒ぎが起こっていることに気付きます。<br />
なにやら子供たちが三人、寄ってたかって何かをどつきまわしているようなのです。<br />
おお、もしかしてこれは昔話にあるあの……と近寄ってみますと<br />
輪の真ん中でダンゴムシのように丸まっているのは……モリを持った半裸のふとっちょ青年です……エエエエ(AAry<br /><br />
「やい、ウラシマ!お前、チャチ丸とか言う奴に連れられて海の底のお城に行ったんだって?」<br />
いじめっ子その一がウラシマなる青年を棒切れで殴りながら叫びます。<br />
よく見ると子供たちはそれぞれに亀っぽいデザインの帽子をかぶっていて、<br />
亀が亀みたく丸まったウラシマをいじめているというなかなかシュールかつ複雑な展開です。<br />
「そのチャチ丸ってのを見せてみろよ!」「見せろよ!」「見せなよ!」<br />
いじめっ子その二と紅一点の女の子がやはりビシバシと棒で青年をはたきながら尻馬に乗って叫びます<br />
……って言うか女の子だけ何故かSMとかでよく見る九条鞭を使っています。どっから持ってきたんだそれ。<br /><br />
さて置き、「チャチ丸じゃねぇダよ。シャチ丸っていうダよ」<br />
とウラシマが丸まったまま変な方言でいらんこと反論するには、<br />
シャチ丸は竜宮の使者で、資格のある人でないと迎えに来ないというのです。<br />
これは聞き捨てならない話、そしてイジメカッコ悪い。<br />
という訳で、「またウソばっかりつきやがって!野郎どもやっちまいな!」<br />
口ごたえに怒ったいじめっ子その一がけしかけて「やっちまうぜ!」「やっちまうよ!」と再度始まった袋叩きに<br />
「オイオイお前ら、何やってんだィ!」<br />
イッスンが割り込み、怒鳴り声を上げると<br />
「おっ……何かヘンなのが来たな?まぁ丁度こいつと遊ぶのも飽きたところだい、みんな!向こうで遊ぼうぜ!」「遊ぼうぜ!」「遊ぼうよ!」<br />
と、子供たちは悪びれる様子もなく駆け去っていってしまいました。<br /><br /></dd>
<dt>304 :<a href="mailto:sage"><strong>大神</strong></a>:2009/07/02(木) 11:31:16
ID:pmscV9ea0</dt>
<dd>気になるのはさっきの彼らの会話です。海の底のお城というのは、もしや……<br />
「おい坊主、いつまでうずくまってんだよォ?」とウラシマに近寄りますが、<br />
声をかけても最初と同じ胎児のポーズのままぴくりともせず、<br />
「おい坊主……坊主?ぼ……坊主ゥーッ!!」<br />
しまいには焦ったイッスンの絶叫が浜辺に響き渡りました。<br />
が、アマテラスが頭突きをかますとウラシマはむっくりと起き上がり、<br />
「……ええと……?オラ、また浜辺でいつの間にか寝ちまってたダかや?」と首をひねりました。<br />
「どなたか知らねぇけど……起こしてもらって悪かったいなぁ」<br />
あさってなセリフに怒りながらもイッスンは子供たちにぼこられまくった彼の体を心配したのですが<br />
「海岸で寝るくらい何てこたぁねぇダわい」とずれまくった答えが返ってくるだけです。<br /><br />
「そ……そうかィ、そりゃまあ、良かったぜェ」<br />
最早呆れるしかないイッスンが先刻の会話の事を訪ねますと、<br />
「こんな事……まぁズ、誰に言っても信じてもらえねェダけどセ―――」<br />
と前置きしてウラシマが語るには、まだ水龍さまが大人しかった「ええかん昔」に海を眺めながらボーっとしてたら、<br />
朝日と共に龍神族が住まう海底の国、龍宮の使者シャチ丸がやってきて、龍宮に連れて行ってくれたとの事。<br />
「龍宮に行く資格がある奴だけシャチ丸は迎えに来るんズラなあ」<br />
などと言ってますがこのふとっちょのどこにそんなものが……という疑問はさて置き、<br />
ウラシマがシャチ丸と出会ったという桟橋で朝を待ってみる事にしました。<br />
勿論普通に待つのはめんどいので空に月を描いて夜にして、その後即太陽を描いて夜明けにしますと、<br />
果たせるかな、波間をざんぶざんぶと豪快にジャンプしながら一頭のシャチが現れました。<br /><br />
桟橋の向こうに顔を出したシャチは、どういうことか、ちぎれんばかりに尻尾を振るアマテラスに応えるように、まるで笑むように口を開いています。<br />
「どうしたんだィ、このシャチ……妙に嬉しそうにしてよォ?」<br />
といぶかしむイッスンの背後で、突然「あああああーっ!!」と大声が上がりました。<br />
驚いて振り向くと、そこにいたのはウラシマです。<br />
まさかこのシャチの嬉しそうな様子は……と思う間もなく<br />
「シャチ丸!シャチ丸じゃねぇかい!!」駆け寄ってきたウラシマは<br />
「まぁズはぁるかぶりじゃねえか!あれから、へぇ、何年になるダかやぁ?もしかして、オラをまた龍宮へ連れてってくれるダかい?」<br />
とシャチ丸に飛びつきます。シャチ丸はウラシマを鼻先でぽいん♪と投げ上げて、感動の再会<br />
……と思いきや、落ちてきた所をドルフィンキックならぬキラーホエールキィィィィック!でフッ飛ばし、彼方にさぱー、と水柱が上がりました。<br /><br /></dd>
<dt>305 :<a href="mailto:sage"><strong>大神</strong></a>:2009/07/02(木) 11:32:00
ID:pmscV9ea0</dt>
<dd>「お前たち、ずっと待っていた。龍宮へ行く資格ある者、待っていた。オレの背中、乗れ。お前たち、龍宮連れて行く!」<br />
ウラシマを完シカトしてシャチ丸が言います。<br />
実はウラシマは桟橋でボーっとしてたら海に落ちて溺れたのをシャチ丸に龍宮に連れて行かれ助けてもらっただけだったのでした。<br />
そんでそのせいで年をとらない体になってしまい、奥さんはお婆さんになってしまって<br />
二人はすれ違いうんちゃらかんちゃらだったりするのですが、まあそれはまた別のお話。<br /><br />
さて、「オレ、泳ぎにかけては天下一!自慢の泳ぎで水龍様もブッ千切り!」と胸を張るシャチ丸。<br />
「だってェ!?アマ公、ど……どうするよォ?」イッスンに聞かれるまでもなく、<br />
シャチ丸に乗る気満々のアマテラスはその背中の鞍に乗っかろうと必死でしがみつき、地面に滑り落ちたりしています。<br /><br />
なんとかシャチ丸の背中に乗り込んで「自慢の泳ぎで龍宮まで連れて行ってもらおうかァ!」と叫んだイッスン、<br />
しかしシャチ丸はさっきまでの威勢とは裏腹に「それ……まだ、出来ない」とその出鼻をくじくような事を言い出しました。<br />
今龍宮はこの国を荒らす妖魔の手を逃れるため、入り口を隠しており、その入り口、「海鳴門」を探し出す事が<br />
彼のあるじ「オトヒメさま」が与えた最後の試練。<br />
それを乗り越えて初めて、本当に龍宮へ行く資格があると認める、というのです。<br />
「何だい、そんなの簡単な事だぜェ」と啖呵を切ったイッスンですが、行けそうな所を粗方回ってみても、<br />
特に入り口になるようなところは見当たりません……が、それとは別に、怪しい場所が一つ。<br /><br />
東側の島に突き立った、天高くどこまでも伸びる塔。<br />
その塔の天辺からにゃおんにゃおんといかにも心細げな猫の鳴き声が聞こえてくるのです。<br />
不思議に思い、島に上陸してその塔を間近に見ますと、その側面には地面に置かれた猫の石像から上に向かって<br />
猫の足跡のような模様が刻まれています。<br />
イッスンが言うにはそれは十三の筆業の一つ、「壁足(かべたり)」の神サマの紋所らしいのですが……。<br />
更に近づき触れてみると、なんとアマテラスの足はその模様にぺたりと吸い付き、<br />
模様がある限りどこまでも上に登っていくことができるのです。<br />
早速登攀を開始したアマテラス、上へ上へと登っていきますが、遠目にみても凄まじく高い塔、どこまで登っても終わりが見えません。<br />
どこまでも上へ上へ……最早周囲の景色すらも空気の中に青くかすんだ頃、やっと塔の頂上につきました。<br /><br /></dd>
<dt>306 :<a href="mailto:sage"><strong>大神</strong></a>:2009/07/02(木) 11:36:28
ID:pmscV9ea0</dt>
<dd>バカでかい猫の像が見下ろしている天辺の広場には三毛猫が一匹、毛づくろいをしたりころころ寝転んだり、思うさまくつろいでいます。<br />
しかしこんな高い所にたった一匹、食物などは大丈夫なのでしょうか?<br />
持ち合わせていた魚をあげると、猫はおいしそうにそれを平らげ、ごろりと横になりました。<br />
するとどうでしょう、あれほど辺りに響き渡っていた猫の鳴き声がぴたりと聞こえなくなったのです。<br />
そして同時に天からきらきらと降る光が。<br /><br />
「せ……星座ァ!?まさかこんな所で……!」<br />
早速足りない星を穿つと星座は魚の飾りがついた屏風に姿を変え、その側面に張り付いていた猫が勢いよく飛び出してきました。<br />
くるくると回転し、着地を決めた白猫はアマテラスの頭上のイッスンに気づくや<br />
腰を落としてお尻をふりふり、直後にすかさず飛び掛り、かっさらいました。<br />
ハッとしてアマテラスが振り返ると前足でイッスンを転がして遊んでいた猫はそれをくわえあげ、ぽいっと放り投げます。<br />
何故か尻尾を振って大喜びで追いかけるアマテラス。二匹はイッスンをパスしあいながらどこまでも楽しそうに走っていきました。どこまでも……どこまでも……<br /><br />
「おお……我らが慈母アマテラス大神。<br />
邪気渦巻く塵界を憂い、我、天空を望むこの塔に身を寄せ、遥か下の世界を見下ろし侍りぬ。<br />
再び我が力必要とあらば、この壁神、御前に天駆ける希望の橋を架け奉らん!」<br />
……猫にありがちな高い所に上ったきり降りられなくなった言い訳のような気がしないでもないですが。<br />
ともあれ高らかに叫んで白猫は光の玉になり、アマテラスの体内に帰ります。<br />
気絶から覚めたイッスンが「お……お前ら今オイラに何をしやがったァ……!?」と食って掛かりましたが、<br />
とにかくこれでアマテラスはまた新たな筆業が使えるようになりました。<br />
猫の像が壁に紋章を刻んでいれば、そこをまるで猫のように登ることが出来るのです。<br /><br />
猫の像……そういえば桟橋の近くにも一つあったはず。<br />
桟橋近くの猫像から壁足で登った先は天望岬といい、そこにいる先客曰く(どうやって登った……)鬼の顔をした不吉な島が現れ、<br />
空が淀んでしまう前は、岬の先端から天鳴門(あまなると)という渦のような形を描いた星の群れが見えたそう。<br />
「僕……お願いしたい事があってこの天望岬に立ってるんだけど、<br />
やっぱり昔のように流れ星が流れる事は滅多になくなっちゃった。<br />
あ~あ……お空に流れ星が流れれば……お願い事が出来るんだけどなぁ」<br /><br />
流れ星……そんなもん入力失敗すりゃナンボでも見れますよ?<br />
という訳でアマテラスが作った流れ星が空を走るのを見た男は、慌てて天に向かい、お祈りを始めました。<br />
「ええと……昔のように空が綺麗になって、夜空に再び天鳴門が現れますように!」<br />
すると、なんと男が願い事を言うが早いか空が見る見る澄み渡り、星の渦が現れたではありませんか!流れ星SUGEEEEE!<br />
大喜びして天鳴門を眺めながら男は更に語ります。<br />
かつて天鳴門の下には海鳴門という海の神様の国への入り口があった事を。<br />
「天鳴門と海鳴門―――昔はどっちも風車のように勢いよく回ってたのになぁ」<br />
それってまさか……と岬の先端から見える天鳴門に筆業の渦を描くと……<br />
「お?お?お?も……もしかして、あの星の渦……風に吹かれて回りだしてねェか?」<br />
……この世界の天体法則はどうなっているんでしょう。まあ今に始まった事じゃないけど。<br /><br />
ともあれ「アマ公、もう一丁だァ!」と言うイッスンのリクエストに答えてアマテラスは風を吹かせまくり、<br />
くるくると勢いよく回りだした天鳴門の下で海鳴りが起こると、沸き立つ大渦―――海鳴門がついにその姿を現したのでした。<br />
こうしてアマテラスはシャチ丸に乗り、<br />
「よォし、アマ公!……早速龍宮に乗り込もうじゃねェか!<br />
暴れ者の水龍を野放しにしてる龍神族に正義の拳骨を食らわしに行こうぜェ!」<br />
と叫ぶイッスンを頭に乗せて、いよいよ龍宮城に向かいます。<br /><br /></dd>
<dt>257 :<a href="mailto:sage"><strong>大神</strong></a>:2009/10/03(土) 02:12:27
ID:NNrEzqko0</dt>
<dd>大神行きます<br />
まあ途中放棄は悪だと自分も思うし、何とか最後まで行ってみま<br /><br />
大渦海鳴門をくぐり、海の底へとやってきたアマテラスたち。<br />
アマテラスの苦手な水中ではありますが、ここでは大きな気泡が身体を覆ってくれ、普通に息が出来るようです。<br />
龍宮城の門の前までやってくると、こんな所に龍神族以外の者(しかも狼)がいることに驚いた門番が声をかけてきて、早速イッスンが<br />
「オイラは西安京筆頭、ヒミコ姉ェの防波堤―――旅絵師イッスンさまだィ!!」<br />
ついこの間までさんざん疑ってきたヒミコの虎の威を借る、なんとも調子のいい啖呵を切ります。<br />
下っ端じゃ話にならない、オトヒメを出せというイッスンの無礼な態度に、しかし門番たちは<br />
「なに?ヒミコ?あの西安京の女王、ヒミコか?……という事はあの白き獣は……」<br />
なにやら意味深に顔を見合わせると、「玉座の間にて話を伺おう!」とあっさり門を開いてくれました。<br /><br />
首をかしげながらも龍宮城の中に入るアマテラスたち。<br />
城の住人も皆いちようにオトヒメの所に向かうようにすすめ、ますます妙な感じです。<br />
大広間の奥、石造りの玉座に腰掛けていたオトヒメはお約束に違わず美しい女性で、<br />
問い詰めようと声を荒げかけたイッスンは、案の定出鼻をくじかれてしまいました。<br />
なんとオトヒメはアマテラスが神様である事を先刻ご存知の様子。<br />
そして彼女が言うにはひと月前、突然妖魔の城「鬼ヶ島」が現れ、大ピンチに陥った龍宮を救うため、<br />
彼らの神である水龍は妖魔たちと戦い大半を蹴散らしてくれたものの、<br />
妖魔たちの首領の持つ強大な妖力の前にねじ伏せられ、深手のあまり自我を失ってしまったというのです。<br /><br />
妖魔軍は去りましたが水龍は乱心したまま。<br />
神である水龍を操るすべなどありようもなく、むしろ彼女らこそが水龍の脅威にさらされている最たる者たちだったのです。<br />
「あの水龍には鬼ヶ島の結界を破る力があるんだろォ?その力が借りられないんじゃ敵陣に攻め入る事が出来ないぜェ!?」<br />
愕然としてイッスンが叫びました。正にそれこそが妖魔の狙いだったとオトヒメも肩を落とします。<br />
「……しかし」と彼女は言葉を繋ぎました。水龍の力を借りる術はまだ残っていると。<br />
「何だってェ!?そ……そういうモンがあるなら先に言えよォ、ワカメ姉ちゃん!」<br />
と勢い込んでイッスンが尋ねます。<br />
ちなみになんでワカメかって言うとオトヒメの羽衣(昔話でよく見る天人的な人が纏ってるアレ)がワカメ製だから。<br />
とにかくオトヒメが言うには他に手段がないではないのだが、それはとても危険な方法で彼女たちには成しえず、<br />
その為にアマテラスをここに呼んだのだそう。<br /><br />
「分かった!水龍の首に鈴でも付けて来いって言うんだろォ?まったく無茶言いやがらァ!」<br />
と捨て鉢ながらもしょうがないといった態でイッスンは言いましたが実際彼女がいう「方法」とはそれに輪をかけて無茶も無茶、<br />
水龍の腹の中にある力の結晶、秘宝「龍玉」を持ち帰ってきて欲しいというものでした。<br /><br /></dd>
<dt>258 :<a href="mailto:sage"><strong>大神</strong></a>:2009/10/03(土) 02:13:58
ID:NNrEzqko0</dt>
<dd>「そりゃアンタ、いくら何でもあり得ねぇ話だってェ!」<br />
とイッスンが焦りまくって拒否しますが、もはや鬼ヶ島の結界を破るにはこれしかないとオトヒメは懇願します。<br />
「待て待て待て待てェ!オイラ、カワイイ姉ちゃんのお願いは断らねぇ主義だけど、<br />
このアマテラス大先生が首を縦に振らねぇんじゃ、どうにも……」<br />
とイッスンが渋る端からアマテラスは以下略。<br />
結局(イッスンのみ)ぶつくさいいながら水龍の腹の中に潜る事になったのでした。<br /><br />
「貴殿に水龍様の守りのあらん事を!」と見送る警護の人に<br />
「その水龍が今厄介な事を仕出かしてんだろォ!?」イッスンが当りつつ、<br />
水龍が居る龍の庭(なんと水龍は龍宮の庭を寝床としているのです)に向かいます。<br />
女ばかりの龍宮の住人たちに、こんな時にも拘らず、イッスンが鼻の下を伸ばしたりしながら奥まった一郭にやってきますと、<br />
地面に大穴が開いており、覗き込むとそこにはずらりと牙が並んだ龍の巨大な口が。<br />
「あのデカい口……あんなモンの中に飛び込んで本当に帰ってこれるのかよォ?」<br />
とついこないだ人の体内に飛び込んだばかりのイッスンがこの期に及んでしり込みしますが、<br />
アマテラスは構わずえいやっと一跳び、二人の姿は大きな龍の喉の奥へと消えていきました。<br /><br />
龍の体内はジメジメとして暑苦しく、辺りには奇妙な木やきのこが生えており、あちらこちらに滝がある、まるで洞窟のような場所でした。<br />
「胃液で溶かされた人間とか……嫌なモン、転がってねェだろうなァ?」<br />
と怯んだ様子のイッスンを乗せて奥へ奥へ、最奥の行き止まりまでやって来ますと奇妙なものがありました。<br />
突き立った二本の青白い肉の柱、その真ん中に大きなガラス玉が、幾つもの脈打つ肉の筋に支えられて浮いているのです。<br />
これだけ厳重に守られているという事は、きっとこれは水龍にとって大事なもの。<br />
つまりこれこそが龍玉に違いありません。<br />
何とか取ろうとしてみますが、アマテラスの力では歯が立たず、<br />
仕方なく手段を探して脇道を進んでみますとやはりこれまた行き止まり。<br /><br />
奥はこれまでの場所に流れていた普通の水(……といっても水龍の体内ですから<br />
本当に普通の水かは分かりませんが)とは違い、なんだか毒々しい赤い液体をたたえた池になっていて、<br />
天井に空いた太い管に詰まった肉塊から更にぽたぽたと赤い液が垂れ落ちてきています。<br />
「気味が悪ィから、やたらにイジるんじゃねェ!」<br />
というイッスンを尻目に、池に生えた台座に飛び移ったアマテラスはしれっと「水郷」の筆業を発動。<br />
赤い水を下から上に奔らせて天井の肉塊にぶつけます。<br />
すると肉塊が溶け出して、水が一層激しくぽたぽたと落ちだしました。<br />
どうやら赤い液は酸のようなもので、肉の塊は蓋の役目をしているようです。<br />
最初こそ「何やってんだィ、アマ公!」と焦ったイッスンですが、アマテラスがじゃんじゃん赤い水を肉塊にかけ続けると<br />
終いには「あの肉の塊が溶けたら……オイラもちょっと興味出てきたぜ」なんて事を言い出し、<br />
そのまま水をかけ続けるとついに肉の塊はぼぶよんと震えて消え、蓋がなくなった管から赤い水が大量にほとばしりました。<br /><br /></dd>
<dt>259 :<a href="mailto:sage"><strong>大神</strong></a>:2009/10/03(土) 02:15:30
ID:NNrEzqko0</dt>
<dd>床は水かさを増した赤い液に浸かってしまい、煽ったくせにイッスンが<br />
「お前、デタラメに水龍のはらわたン中を引っ掻き回してねえか!?」<br />
とアマテラスを責めましたが、洞窟の床一面が赤い水浸し……という事は、と戻ってみますと案の定、<br />
龍玉の台座周辺も赤い水に浸かっています。<br />
さっそくさっきのように赤い水をばっしゃばっしゃ龍玉にかけてみますと肉の筋は次々と消え、<br />
ついにアマテラスは秘宝「龍玉」を手にすることが出来ました。<br /><br />
「後はヒミコ姉ェが千里水晶で鬼ヶ島が現れる場所を暴き出せば敵の牙城はもう丸裸だィ!」<br />
はしゃぐイッスンですが、ふと気遣わしげに空になった台座に目を向けます。<br />
「でも、玉コロを無理やり体から引っぺがしたけど―――あれで良かったのかァ?」<br />
ともあれ、こんなところに長居は無用と脱出しようとしたその時、周囲に妖しく輝く光の球が現れ、<br />
アマテラスたちを取り囲むようにしてくるくると旋回し始めました。<br />
水龍に飲み込まれた人間たちの怨念か、と一旦は思ったイッスンですがすぐに違うと気付きます。<br />
「イ……イヤ、これは人間の魂なんかじゃねェ、この不気味な色は……キツネ火だァ!」<br /><br />
その叫びに応えるように、紫の光たちが一斉にこちらへ向かって突進しましたが、<br />
アマテラスはひらりと一跳び、宙で身をひねってそれをかわしました。<br />
敵をしとめ損ねたキツネ火がぽうんと煙を放つとその中から飛び出したのは八匹のキツネたち。妖怪「管狐」です。<br />
アマテラスがこれを退けると敗れたキツネたちは再びキツネ火に変わり、それが回転しながらアマテラスの頭上で一つになると、<br />
九つの竹筒が組み合わさった不思議な道具になりました。<br /><br />
これこそ妖器「キツネ管」。<br />
これを捜し求めていたツヅラオは、確か「妖魔を退治するための絶世の宝物」と言っていた筈です。<br />
しかし、実際その中から現れたのは、退治されるべき妖魔……一体どういう事なのでしょう。<br />
考え込むイッスン、と不意に辺りを激しい地鳴りが襲います。<br />
何事かと見回していると天井から赤い液体がばしゃ、ばしゃと次々落ちてきました。やはり無理やり玉を剥がしたのがよくなかったようです。<br />
慌てて避けて、まるで○ェラーリの跳ね馬エンブレムのように後足で立ち上がったアマテラス。<br />
「このままじゃ胃酸で溶かされちまわァ!とにかく出口まで突っ走れェ!」<br />
と叫ぶイッスンに否も応もなく、落ちる胃酸をよけつつ遮二無二ダッシュをしまくって、やってきた道を逆戻り。<br />
なんとか脱出して水の中を見下ろすと「す……水龍が……死んじまったァ……?」<br />
細長いシルエットを持つ巨躯がゆっくりと沈んでいくのが眼に入りました。<br /><br /></dd>
<dt>260 :<a href="mailto:sage"><strong>大神</strong></a>:2009/10/03(土) 02:19:46
ID:NNrEzqko0</dt>
<dd>「これじゃ竜玉が手に入ったって、操る竜がもういねぇじゃねェか。<br />
てことは……ヒミコ姉が鬼ヶ島の現れる場所を暴いたとしても、島の結界を破る方法がなくなっちまったって事じゃ……」<br />
呆然とイッスンが呟いていると、眼下でちかりと瞬くものがあります。<br />
「な……何か来るぞォ」<br />
叫ぶ間にも光は近づき、気がつくと辺りが金色の光に包まれた、筆神の現れた時に変わる神様ゾーンになっていました。<br />
いつの間にか辺りを充たしていた水がなくなり、あわあわと落下するアマテラス。<br />
着地して、さっきまで相対していた光の主を見上げると、<br />
「慈母アマテラス大神……初めてお目にかかる。<br />
今となってはゆっくり語る時間もないが……貴殿には礼だけは言わねばなるまい」<br />
皇帝のような豪華な衣装に恰幅のいい体を包み、長い髭を垂らした男性がこちらを見下ろしています。<br /><br />
「礼……?あ、あんた、誰だィ?」」とイッスンが尋ねると、男は龍神族の族長、龍王ワダツミと名乗りました。<br />
つまりはこの男こそ海神水龍、その化身ということです。<br />
男は更に語ります。妖魔の侵攻のこと、妖魔王と戦ったが、その妖器を奪い、体内に封じるのが精一杯だったこと、<br />
そのせいで自我を失い、暴龍と化してしまったこと。<br />
「そりゃもしかしてこの……」とイッスンがキツネ管を取り出すとワダツミは頷きました。<br />
「それがなければ妖魔王は己の妖力を振るう事ができない。<br />
今頃彼奴らは、それを取り戻そうと血眼になって探している事だろう」<br />
そして、アマテラスにならばこれを安心して預けられると。<br />
それから彼が彼の妻オトヒメにアマテラスが手に入れた「龍玉」を(なんとこれは龍の心臓なのらしい。オトヒメさま……(ノД`))<br />
渡して欲しいと頼むと辺りの景色が再び海中に戻り、ワダツミは「おお……我が命、もはやこれまでのようだ」と呟きました。<br /><br />
乱心していたとは言え余りに多くの人を殺めてしまった彼は、<br />
せめてその者たちの魂の安楽を、両島原の民が愛したこの紺碧の海の底で永遠に祈るといいます。<br />
「……さらばだアマテラス大神。貴殿の武運を……祈っているぞ……」<br />
その言葉を最後に彼の姿は見る見る内に海底へと吸い込まれ、暗闇の中に消えました。<br /><br />
アマテラスが彼の残した龍玉を見上げると、輝きを増したその光が二人を包み、龍の庭へと運びます。<br />
戻ってきたアマテラスが辺りを見回していると、その背後に駆け寄る人影があります。<br />
振り返るとそこには見事な乳が!……じゃなくてツヅラオが。<br />
「おお、アマテラス殿!よくぞご無事で……」<br />
乳にしか焦点があってなかったカメラの目線が、しなを作るように腰を曲げたツヅラオの顔にようやく合い、<br />
けれどもアマテラスは前みたいにそれに見とれる事もなく首をかしげ、<br />
おかげで前と同じく悩殺されたイッスンが地面に落ちて「ボ……ボイン……」と呻きました。<br /><br /></dd>
<dt>261 :<a href="mailto:sage"><strong>大神</strong></a>:2009/10/03(土) 02:21:23
ID:NNrEzqko0</dt>
<dd>浜辺から水龍が苦しむのが見えたので、というツヅラオに、イッスンが得意げに武勇伝を語ろうとしましたが、<br />
勢い込んだ様子のツヅラオはそれを途中で遮って水龍がどうなったのか尋ねます。<br />
腰を折られて不満げながらもイッスンが事の顛末を語ると共に、水龍を狂わせていた原因のキツネ管を取り出すと<br />
「そ……それが、キツネ管……」と身を乗り出すツヅラオ。<br /><br />
ツヅラオはこれをヒミコが他国から取り寄せたといい、だからわざわざ沈んだ宝物船にまで行ったのに、<br />
水龍はこれを妖魔の頭領から奪って飲み込んだと言います。<br />
今更ながらの矛盾に気付き……と言うか無駄足を踏まされた事に気付いたイッスンがカンカンになりますが、<br />
ツヅラオはその抗議にも上の空で適当に誤魔化し、事は一刻を争うと妙に焦った様子でキツネ管をよこすよう迫ってきます。<br /><br />
これは妖怪共が血眼になって探しているものだから、ヘタに持っているのは危ないと<br />
イッスンがキツネ管を引っ込めかけたその時、なぜかアマテラスがそれを鼻先でちょいと投げ上げ、ツヅラオに渡してしまいました。<br />
これにはイッスンとツヅラオ双方が面食らいますが、<br />
すぐにツヅラオは「何とも怪しく艶かしい輝きを放っておる」と、手の中の妖器に夢中になります。<br />
「とにかくこれさえあれば、我が法力を極限まで高め―――妖魔どもを片端から退治る事が出来るわ!」<br />
……アマテラスがあんなに苦労した龍宮来訪をアッサリこなしてしまうような法力なら、もう現時点で片端から退治れるような気もしますが。<br />
とまれそう勢い込んだ後にツヅラオはハッと我に返った様子で<br />
「いや……この力でヒミコ様をお守りする事こそ我が本分。<br />
アマテラス殿、ご心配召されるな。このツヅラオ、今より都に馳せ参じ―――命に懸けて己の役目を果たすものなり!」<br />
ぽいん☆とおっぱいを揺らしながら片手を上げて宣言したのちに、とうっと宙へ飛び上がり、そのまま門をくぐって駆け去ってしまいました。<br /><br />
その後姿に「命を懸けてって……だから死んじまったらダメなんだってェ!」と呆れるイッスン。<br />
さて置き、水龍の力はもう借りられないかもしれないけれど、それでもオトヒメたちにとって宝物である龍玉を<br />
彼女らに返してあげるべく、アマテラスたちは玉座の間へと向かうのでした。<br /><br /><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
<p>さて、オトヒメの待つ玉座の間へと戻ってきたイッスンとアマテラス。<br />
ふたりの無事を喜び、首尾を尋ねるオトヒメに、アマテラスが鼻先でぽんぽんと弾ませた龍玉を投げ上げて寄こします。<br />
頭上で輝く龍玉を見上げ、これで水龍様の力を借り、鬼ヶ島の結界を破ることができると礼を言うオトヒメに「……その水龍だけどよォ」申し訳なさげにイッスンが、これまでの顛末を語り、水龍が龍王であると知ったことを明かすと、オトヒメたちはハッとして、互いの顔を見交わしました。<br />
「つまり―――あの龍王のオッサンはアンタの―――」<br />
続くイッスンの言葉に<br />
「お察しのとおり、水龍に変化していた龍王ワダツミは我が夫にございます」<br />
頷いたオトヒメは、妖魔の軍勢に立ち向かうため、長だけが成しうる変化の儀で龍になったワダツミが、戦に破れて暴龍になり、竟(つい)を待つ身となってしまった以上、世継ぎがどんな困難を排しても龍玉を取り返さねばならなかったと語ります。<br />
オトヒメの気持ちを察してうなだれるふたりに、続いてオトヒメは龍玉は妖魔王の妖器を封じていたはず、とキツネ管の行方を尋ねました。<br />
「あれなら、ヒミコ姉ェの使いが来て持って行ったぜェ。その力で妖魔どもをブッ倒すとかでよォ」<br />
とイッスンが答えると、オトヒメは心配そうに眉を曇らせました。<br />
確かにあれには底知れぬ力が宿っているが、同時に妖魔たちも手を尽くして探しているはず、その者に妖魔の追っ手がつかねばよいが……、とそうオトヒメが懸念を口にするやいなや、突然頭上の龍玉がきらきらと輝きだし、勝手に玉座の上から舞い降りてきました。<br />
驚く一同の中ではっとしたオトヒメが叫びます。<br />
「これは……もしや……龍王ワダツミの、最後の託宣!」<br />
皆が固唾を呑んで見守る中、水晶に映し出されたのは必死に逃げるツヅラオの姿。<br />
どこかの寺でしょうか、その背後から、境内一面を覆いつくさんばかりの巨大な何かが、地響きを立てながら追いすがっていきます。ついに追いつめられ、がたがたと震えるのみのツヅラオの前に、いくつもの尻尾を生やした化け物が迫ったところで映像は終わってしまいました。<br />
「アマ公、急げェ!」とイッスンが叫ぶ間もなく身を翻すアマテラス。<br />
慌てて呼び止めるオトヒメに、イッスンが「悪い予感的中だィ、ひとっ走り餡刻寺へ行って来らァ!」と叫びます。<br />
ふたりの無事を祈りつつ、「いずれ、鬼ヶ島の現れる場所にて落ち合いましょうぞ!」というオトヒメの声を背に、ふたりは大急ぎでツヅラオのもと、餡刻寺へと走ります。</p>
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