流行り神 警視庁怪異事件ファイル

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流行り神 警視庁怪異事件ファイル - (2009/11/06 (金) 18:43:38) のソース

<p><strong>流行り神 警視庁怪異事件ファイル</strong></p>
<p>・第零話「チェーンメール」:part17-26,27</p>
<p>・退魔師・犬童蘭子編:part44-92~96</p>
<p>・part47-313,338~345,372~379,382、part48-48~53</p>
<hr /><dl><dt><a>26</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">流行り神</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/07/18(月) 22:53:47
ID:OUpqXmLE</font></dt>
<dd><a href="http://jumpres/read.cgi/gamerpg/1121509305/25"></a>リベンジの方を買ってきた、一話まで投下<br /><br />
「友達の友達から聞いた話なんだけど…」<br />
そんな口上で始まる噂、都市伝説を誰もが聞いたことがあるだろう。<br />
実際にその話が嘘か本当かわからない。その友達を探そうとしても<br />
話の出所は友達から友達へと連鎖し、決して体験者にたどり着くことはできないのである<br />
怪談と違い「いつ」「どこで」「だれが」という信憑性を与える項目が曖昧…<br />
何故なら、都市伝説においては「いかに面白いか」というのが重要なのである。<br />
更に噂は人から人へ伝えられるうちに尾ひれがつき、形を変え広がっていく…<br />
まるで、その伝説自体がいきているかのように…<br /><br />
「F.O.A.F.という言葉を知っているかね?」…フレンド オブ ア フレンドの頭文字<br />
あなたに声が問いかける謎の声。彼は都市伝説の中には決して表には出ない真実の一端が<br />
隠されていると告げる…そして、あなたは行方不明になった刑事風見純也として<br />
それに関わることになる…<br /><br />
風見純也…元・キャリア組?<br />
小暮宗一郎…経歴は長いのに主人公を先輩と呼ぶ部下。体育会系。おばけ大嫌い<br />
犬童蘭子…上司、仕事をしているのを見たことがない。関西弁のねーちゃん<br /><br />
第一話 チェーンメール<br />
不幸の手紙…稚拙で誰も信じない内容でも受け取った人は精神的圧迫を受ける…<br />
そして被害者は加速度的に増えていく。時代と共に変化し現代ではチェーンメールと<br />
いう形で今も行われている…これは一つのチェーンメールが生んだ悲劇である。<br /><br />
警視庁地下5階…警視庁には地下4階までしか存在しないはず…そこが職場だ。<br />
巷では若い女性ばかりを狙った連続殺人事件が起きていた。<br />
眉をひそめる風見の元にメールが届く。(いつもは電波が届かないはずなのにだ<br />
「私は都内で起こっている連続殺人犯の犯人を目撃しました。<br />
メールでは詳しいことは話せません。けど、何とか犯人を止めたいと思っています。<br />
協力していただける方は、電話番号を返信してください。なお、協力が難しい方は、<br />
このメールを3日以内に10人の友達に送ってください。<br />
もし送らなかったら、連続殺人事件の次の犠牲者はあなたになるかもしれません…END」<br />
返信しないと…数日後殺される…というようなデジャブを覚えたので返信する。<br />
すると送り主からホントに連絡がはいる、犯人は「はっとりえりさ」だと言われ調べると<br />
人気アイドル川原ミユキの本名と同じだとわかる。<br /><br /><a name="a27"></a></dd>
<dt><a>27</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">流行り神</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/07/18(月) 22:55:03
ID:OUpqXmLE</font></dt>
<dd>林奈緒ルート<br />
送り主は林奈緒、メークの仕事をしている女性だった。彼女は川原ミユキと新人時代からの<br />
付き合いだったという、しかし彼女はある心霊番組に出てから変わり始めた…<br />
独り言を呟いたりナイフを持ち歩いたり…そして彼女は殺人の現場を目撃したというのだ。<br />
彼女の証言を信じ、殺害現場に案内してもらう…廃ビルの地下には黒魔術を思わせる<br />
祭壇があった…。そこに現れた川原ミユキは血を浴び外国語のような呪文を唱える…<br />
「被疑者確保だ!」だが、小暮は気絶していた。首を絞められ気絶した風見…<br />
「はよ、起きんかい!」蘭子に起こされると既に川原ミユキは逮捕されていた。<br />
「なるほどなぁ…」壁に掛けられた肖像画を見て蘭子は呟く。<br />
エリザベート・パートリ。自らの美しさを保つため3百人以上を殺した女吸血鬼…<br />
川原ミユキも永遠の美しさを求め血を求めたのだろうか…<br />
そして事件解決から姿を消した林奈緒、彼女は4ヶ月も前に殺されていたのだ…<br /><br />
川原ミユキルート<br />
送り主は川原ミユキ本人だった。半年前から楽屋が荒らされたりバッグにナイフが入っていたり…<br />
そして、いつも誰かが近くにいるような感覚がしていたという<br />
そして一週間前、彼女は殺人現場を目撃することになる。あなたは誰なのという問いに<br />
殺人鬼ははっとりえりさ…そう名乗ったというのだ。幻覚、妄想、二重人格。<br />
彼女は自分を疑い検査を受けたが精神状態は正常という判定を受けたそうだ。<br />
警察にも訴えたがまともに取り合ってはくれなかったのだという。<br />
1、彼女の話を信じ保護を行う。<br />
急によそよそしい態度になる川原ミユキ、仕事現場に行くといいつつ廃ビルへと姿を消す<br />
追いかけた風見の前には黒魔術の祭壇があった。襲撃する殺人鬼<br />
人間とは思えない力で襲ってくるが小暮の着メロに拒絶反応を起こし倒れる。<br />
殺人鬼の正体は川原ミユキ本人だった。自らの罪を知ったミユキは屋上から飛び降りる…<br />
それから2週間彼女は一命を取り留めたものの眠り続けている…<br />
「風見、あんた生まれ変わりを信じるか?古の亡霊に取り付かれた悲劇の歌手…単なる妄想や」<br />
あの時の着信は川原ミユキの携帯からだった。あれは彼女の抵抗だったに違いない<br />
曲名は彼女の新曲ファントム(幽霊)、それは悲しいエンディングテーマに聞こえた…<br />
2、彼女の話を信じない<br />
その日の夜、川原ミユキは心臓麻痺で死亡した。この日を境に連続殺人事件は止まる…<br />
これを見てください…小暮が見せてくれた2つのサイン。あの日もらったものと懸賞であたった<br />
サインは明らかに別物だった…。2重人格。ドッペルゲンガー。<br />
謎は解けないまま事件は闇へと消えていった…。<br /><br />
密室の中、風見純也の関わる事件を聞かされる「あなた」<br />
声は言う我々人間が見聞きする自称すべてを不可思議なものと認めてしまえば、迷いはなくなる<br />
友達の友達が流布する噂話に隠された真実を見極められるようになるだろう…と。<br />
「ところで君は聴いたことがあるか?これは私の友人の友人から聞いた話なのだが…」<br /><br /><hr /></dd>
</dl><dl><dt>92 :<a href="mailto:sage"><b>流行り神 退魔師・犬童蘭子編</b></a>:2009/02/14(土) 13:30:56
ID:KHZiYnGO0</dt>
<dd>未解決一覧から「流行り神 退魔師・犬童蘭子編」投下します<br />
…といっても犬童蘭子編が番外編の為、本編をやってないと理解しづらいかもしれません。<br />
wikiには第零話「チェーンメール」の解説がありますが、時間的には犬童編はチェーンメールより前の話になっています。<br /><br /><br /></dd>
<dt>93 :<a href="mailto:sage"><b>流行り神 退魔師・犬童蘭子編</b></a>:2009/02/14(土) 13:31:59
ID:KHZiYnGO0</dt>
<dd>犬童蘭子編は、同ゲームの本編第1話「コックリさん」のオカルトルートを犬童の視点から描いたもの。<br />
この事件で本編の主人公である刑事・風海純也とその相棒・小暮宗介は初めてオカルト的存在に触れる事になる。<br /><br /><br />
本編ではギャンブル好きで全く仕事をしないグータラ上司として描かれている蘭子だが、その正体は魔を憎み滅する事に命を懸ける「退魔師」。<br />
彼女はある組織に属し、魔を滅する為に風海達には隠れて活動している。<br />
ある日蘭子は志を同じくする男(霧崎水明の父・霧崎道明と思われる)に、都内の高校の敷地内にある「殺生石」の怨念を封じるよう依頼される。<br />
殺生石とは、平たく言えば怨念の篭った石の事。しかし高校にあるような殺生石の欠片ならその力は微力であり、封じる必要まではない。<br />
首を傾げる蘭子に、男はその高校で2日前に女子生徒の自殺があった事と、その原因が恐らく殺生石にある事を告げる。<br /><br /></dd>
<dt>94 :<a href="mailto:sage"><b>流行り神 退魔師・犬童蘭子編</b></a>:2009/02/14(土) 13:33:27
ID:KHZiYnGO0</dt>
<dd>さっそく件の高校に向かい、調査を開始する蘭子。<br />
同様に女子生徒の自殺について調べる風海や小暮とニアミスしながらも、殺生石に力を与えているのは、とある女子生徒の抱いている強い恋心と、恋敵に対する激しい憎しみだという事を突き止める。<br />

しかしいくら触媒となっていても女子生徒自体をとっちめるわけにも行かない。<br />
そこで蘭子は殺生石のある敷地内の森へ向かい、経文を殺生石に捧げる事でその暴走を止めようとする。<br />
だが蘭子の予想以上に女子生徒の想いは強く、彼女が激昂した際に経文は破れ、落雷により殺生石に封じられていた怨念が復活してしまう。<br />
仕方なく蘭子は殺生石に封じられていた怨念「九尾の狐(の破片)」と対峙する事に。<br />
苦戦しながらも蘭子は九尾の狐を追い込み、瀕死の状態に持ち込む。<br />
しかし九尾の狐は殺生石の様子を伺いに来た風海達の気配を察し、これ以上攻撃を加えたら断末魔の苦しみを奴らにも分ける(要するにメガンテして風海達も殺す)と蘭子を脅<br />

した為、仕方なく蘭子は一旦退く事に。<br /><br /></dd>
<dt>95 :<a href="mailto:sage"><b>流行り神 退魔師・犬童蘭子編</b></a>:2009/02/14(土) 13:35:12
ID:KHZiYnGO0</dt>
<dd>そして翌日。蘭子は自分に退魔師となる術を教えた住職の下に行き、新たな退魔具を持って再び九尾の狐に挑む。<br />
九尾の狐は触媒たる女子生徒が負の感情に流されつつある為か、刻一刻と力を増している。<br />
対する蘭子は昨日の傷を癒えておらず、その結果徐々に追い詰められていく。<br />
九尾の狐はそんな蘭子を嘲笑い、また自分達の近くで想いを叫び、感情を爆発させている触媒とその恋敵の言い争い(本編の1シーン)を見せつけ、人間の憎しみは美味だと哄笑する。(結界が張ってある為、向こうから蘭子達は見えない)<br />

蘭子にはもはや反論する力さえも残っていない。<br />
もはやここまでか、とあきらめかけた時、突然九尾の狐が苦しみ出した。<br />
何が起きたのかわからずに周りを見回すと、先ほどの言い争いの末、恋敵が鋭い枝で触媒となっていた女子生徒の腹部を刺しているのが見えた。<br />
これほどのチャンスはない。蘭子は最後の力を振り絞り九尾の狐に一撃を加え、これを打ち破る事に成功する。<br /><br />
数日後、編纂室には「コックリさん」事件の功績を認められ、「組織」によって異動させられた風海と小暮がやってくる。<br />
いくら人手不足でも、こんなひよっ子送ってこられても困る…などと口では毒づく蘭子だが、内心では風海達に期待していると告げるのだった。<br /><br /><br /></dd>
<dt>96 :<a href="mailto:sage"><b>流行り神 退魔師・犬童蘭子編</b></a>:2009/02/14(土) 13:41:55
ID:KHZiYnGO0</dt>
<dd>すみません、書き忘れていましたが以上で終わりです。<br /><br /></dd>
</dl><hr /><dl><dt>313 :<a href="mailto:sage"><b>ゲーム好き名無しさん</b></a>:2009/10/08(木) 18:38:32
ID:psoFP1Em0</dt>
<dd>「流行り神(ポータブル)」の穴埋め投下予約。<br /><br />
このゲームのオリジナルはPS版だけど、筋は同じらしい。<br />
なので、Wikiにあるオリジナルの「第零話」と「犬童編」を除いた、<br />
本編3本とおまけ3本を1話ごと近日中に上げます。<br /><br /><br /></dd>
<dt>338 :<a href="mailto:sage"><b>流行り神</b></a>:2009/10/14(水) 11:01:14
ID:nAiukjAT0</dt>
<dd><br />
流行り神PORTABLE:第一話『コックリさん』<br /><br />
【主な登場人物】<br /><br />
式部人見(しきぶ・ひとみ)…鴨根医大に所属し、助教授と監察医を兼務する才女。<br />
 オカルト否定派だが、霧崎の数少ない友人でもある。<br />
霧崎水明(きりさき・すいめい)…須末乃大学で民俗学を教えている。<br />
 オカルト肯定派だが、否定派の式部とも交友がある。<br />
 中学のころに両親と死別し、それ以降は主人公の両親に育てられた。<br />
 このため、主人公とは、兄・弟と呼び合う仲である。<br /><br /><br />
【前置き】<br />
 この話は、主人公と小暮が初めて顔を合わせた事件であり、<br />
 編纂室に配属するきっかけとなったものです。<br />
 つまり、時系列では第零話よりもかなり以前の話となります。<br /><br />
1)前半部<br /><br />
 私立花峯高校の校内にて、在校生が相次いで自殺する事件が起きる。<br />
 警視庁捜査一課の新人警部補・風海警部は、所轄署の小暮巡査長と組んで捜査に当たる。<br />
 場所が学校というデリケートな場所では、捜査はおもうように進まなかった。<br />
 証拠も、現場にあった「紙切れ」とコックリさん用の「ウイジャ盤」しか見つからなかった。<br /><br />
 二人目の被害者を検死した式部は、「死因は自殺」と断定した。<br />
 それと同時に、体内に残った血液が極端に少ないことに首をひねる。<br />
 自殺を正確に予知した人物が二人の遺体から血液を抜き取ったとしか、考えられない。<br />
 式部は、コックリさんがらみのことは霧崎に聞いてみたらいい、と二人にすすめる。<br /><br />
 霧崎を訪ねる途中で、被害者のクラスメイト・神山由佳が声をかけてきた。<br />
 「本当に自殺したんですか?」<br />
 風海が質問の意味を問いただすが、神山は答えずに駆け出した。<br />
 そのとき、暴走車が神山めがけて突っ込んできた!<br />
 「危ない!」とっさに小暮が神山を突き飛ばしたため、大事には至らなかった。<br />
 驚いたことに、暴走車は無人で、運転席に奇妙な「紙切れ」が貼ってあるだけだった。<br />
 神山は、迎えに来た家族とともに帰宅。けっきょく、彼女の話は聞けなかった。<br /><br />
 二人は、霧崎にあい、コックリさんの話を聞く。<br />
 そのとき、現場の「紙切れ」と暴走車の「紙切れ(の写し)」を見せた。<br />
 霧崎によると、前者は『狐憑き』除けの札、後者は『狐憑き』退散の札だという。<br />
 どうやら、誰かが事件がらみで狐憑きを退治しようとしているようだ。<br /><br />
 事件は、なにやら奇妙な事態になっていた。風海は、どういう捜査方針でいこうか思い悩む。<br /><br />
/* ここで、ルート分岐。取り上げる順番は、式部ルート、霧崎ルートの順になります。<br />
/* 途中の小見出しは、見やすいようにつけたもので、公式なものではありません。<br /><br /><br /></dd>
<dt>339 :<a href="mailto:sage"><b>流行り神</b></a>:2009/10/14(水) 11:07:13
ID:nAiukjAT0</dt>
<dd>2-1)式部ルート<br />
 風海は、人為的に引き起こされた事件と断定した。……心にしこりを感じながら。<br /><br />
★狐塚の由来<br /><br />
 翌日、二人は学校長から「狐塚」の話を聞きだした。<br /><br />
 学校創立以前から、学校裏手の雑木林に小さなふるい塚がある。<br />
 二年前、一年生の崎田美佐が、交通事故で死亡した。<br />
 事故後、校内に「彼女はコックリさんの呪いで死んだ」という噂が広がり、<br />
 彼女の幽霊騒ぎまで起きてしまう。<br />
 故人が生前コックリさんをやっていたから、が噂の根拠だった。<br />
 学校側は、雑木林の塚を供養塔に仕立て、お祓いをすることで事態を収拾させた。<br />
 そして、学校側は校則に「コックリさん禁止」を盛り込んだ。<br />
 供養塔になった塚は、生徒からいつの間にか「狐塚」と呼ばれるようになった。<br />
 崎田の幼馴染である男子生徒・野沢翔太は、毎日その塚へ祈りを捧げているという。<br /><br />
 狐塚の話を聞いたあと、二人は、校内で野沢に神山が詰め寄っているところを目撃する。<br />
 「まだ、美佐のことが忘れられないの!」<br />
 「……お前には関係ねえ。」<br />
 神山を諌めたのは、そばに居た堀川だった。<br />
 「帰りなさい、神山さん。」<br />
 「……言うことを聞けば、うまくいくって言ったくせに!」<br />
 神山が堀川に突っかかるが、堀川は冷静に切り返す。<br />
 「そうよ。だから、今までどおり私の言うとおりしてなさい。」<br />
 「……!!」<br />
 今にも何かが爆発しそうな神山。と、その時、とてつもない大きな雷鳴が響いた。<br /><br />
★傷ついた狐塚(式部ルート限定イベント)<br /><br />
 狐塚の雑木林から、煙がのぼっている。「火事か?」駆け出す刑事二人。<br />
 雷が落ちたのは、狐塚だった。塚を狙い撃ちしたような落ち方に、二人は戦慄した。<br />
 校内へ引き返したが、さっきの三人は帰宅したらしく姿が見えなかった。<br /><br />
★影で暗躍する者<br /><br />
 真夜中に、風海に電話がかかってきた。聞いたことがない男の声だ。<br />
 「キミたちに助っ人を用意した。わたしか? 『ある組織』の人間とだけ言っておこう。」<br />
 そう告げると、電話の男は一方的に電話を切ってしまった。<br /><br />
 翌日、学校前でなぜか式部と霧崎が待っていた。<br />
 何者かが、彼らに捜査協力を要請し、高校へもその話を通していた。<br />
 校長によると、軽薄な若い刑事が令状を見せて、協力を要請したという。<br /><br />
(式部ルート、続く)<br /><br /></dd>
<dt>340 :<a href="mailto:sage"><b>流行り神</b></a>:2009/10/14(水) 11:09:46
ID:nAiukjAT0</dt>
<dd>★式部、激怒する(式部ルート限定イベント)<br /><br />
 捜査した結果、二つのことが判明する。<br />
 神山と自殺した二人は、二年前に死んだ崎田と同じクラスに在籍していたこと。<br />
 狐塚から狐退治の経文が見つかった。霧崎は、これが落雷の原因だと思っているようだ。<br /><br />
 校内探索中に、女子高生三人組がコックリさんを行っている現場をおさえた。<br />
 神山と堀川、そして妙におびえている山野恵子。<br />
 風海は、神山と山野が死んだ崎田のコックリさん仲間であることを聞き出した。<br />
 神山と堀川は、更に物騒なことを言い出した。<br />
 自分たちは、コックリさんが願いを叶えてくれたら血をささげる約束をした。<br />
 死んだ二人は、その約束を破ったからコックリさんに殺されたのだ、と。<br /><br />
 二人の言い分を聞いた式部は激怒して、実践でコックリさんのカラクリを暴いた。<br />
 「コックリさんは、参加者の無意識な筋肉の収縮で動いているだけ。<br />
 だから、人を殺す力なんてない。」<br />
 コックリさんを否定されても、神山と堀川は静かに沈黙していた。<br />
 それは、オカルト肯定派でもある霧崎も同じであった。<br /><br />
★警察庁の中の廃屋<br /><br />
 三度目の悲劇を防ぐため、神山・堀川・山野を所轄署の刑事が護衛することになった。<br />
 しかし、翌朝、校内で山野の遺体が発見された。<br />
 コックリさんを行った教室で、パジャマ姿のまま体中を切り刻まれていた。<br />
 家族も、護衛の刑事も、山野が家を抜け出したことを知らなかった。<br /><br />
 風海が途方にくれているとき、風海の携帯がなった。相手は、例の謎の男だった。<br />
 「ヒントをあげよう。……警察史編纂室へ行きたまえ……。」<br /><br />
 地下五階にあった警察史編纂室は、廃屋も同然の部屋だった。<br />
 年単位で積もった埃、『紫煙』と印刷された煙草の吸いさしも散乱している。<br />
 レトロな電話が鳴った。電話の相手は、例の男だった。<br />
 「右手にあるファイルを見たまえ。」更に男は話を続けた。<br />
 「事件を解決したければ、常識を捨てることだ。」男は、一方的に通話を切った。<br /><br />
 ファイルは、死んだ崎田の日記だった。<br />
 親しい友人だった神山が、野沢を紹介してから変わっていく様が克明に記されていた。<br />
 崎田の事故は、嫉妬に狂った神山から追い詰められて起きた悲劇だったのだ。<br /><br />
(式部ルート、続く)<br /><br /></dd>
<dt>341 :<a href="mailto:sage"><b>流行り神</b></a>:2009/10/14(水) 11:11:36
ID:nAiukjAT0</dt>
<dd>★二人の推理(式部ルート編)<br /><br />
 日記を読んだ二人は、事件を推理した。<br /><br />
 犯人は、崎田を追い詰めた四人を自殺させる計画を立てた。<br />
 先ず、コックリさんが願いを叶える見返りに血を欲しがっていると、犯人は四人に吹きこむ。<br />
 次に、犯人はそのコックリさんが崎田の霊であると信じ込ませた。<br />
 「崎田の霊が、虐めた自分たちの血を欲しがっている。」<br />
 封じていた罪悪感と崎田のたたりで、四人は精神的に追い詰められていった。<br />
 そして、最初の犠牲者が校内で飛び降り自殺を遂げた。<br />
 その際、遺体から血を抜くことで「崎田が血を欲しがっている」事実を強調したのだろう。<br /><br />
 では、その犯人とは?<br />
 野沢は、イジメの事実を知らないし、コックリさんにも関わりがない。<br />
 堀川は、つい最近転入してきたばかりだが、積極的にコックリさんをやっていた。<br />
 堀川と崎田の間に何らかの関係があると仮定すると、合理的に説明できる。<br /><br />
★暴かれた真実<br /><br />
 今は神山を保護しなければ! だが、神山も堀川も、姿をくらませていた。<br />
 「学校だ!」二人は、迷いなく狐塚に向かう。<br /><br />
 狐塚では、野沢、神山、堀川が集まっていた。<br />
 堀川は、野沢の面前で神山の崎田イジメを暴露する。<br />
 更に、堀川は、神山に持ちかけた話「コックリさんによる恋愛成就」は、<br />
 全くのでたらめ、野沢の気持ちが神山に傾くことはないと嘲笑った。<br />
 「何のために、人が死んだの?!」裏切られて呆然する神山。<br />
 「さあ? あなたのせいじゃないの?」平然と言い放つ堀川。<br />
      う わ ぁ ぁ ぁ ぁ っ !!<br />
 理性を失った神山は、絶叫した。獣と化した神山は、堀川に襲いかかる。<br />
 風海と小暮が神山を押さえ込もうとするが、いとも簡単に振り払われた。<br /><br />
(式部ルート、続く)<br /><br /></dd>
<dt>342 :<a href="mailto:sage"><b>流行り神</b></a>:2009/10/14(水) 11:13:10
ID:nAiukjAT0</dt>
<dd>★終局(式部ルート編)<br /><br />
 「神山!」我に返った野沢の呼びかけに、神山が反応した時――<br />
 堀川が隙をついて、神山の脇腹に木片を突き立てた。<br />
 うずくまる神山。止めを刺そうとする堀川を、野沢が止めにはいった。<br />
 自分のせいで悲劇が起こった。いつかは罪悪感に押し潰されて、自殺するかもしれない。<br />
 それならば、神山の代わりに自分を殺してくれ、と。<br />
 「今でも、彼女のことが好きなの?」<br />
 「ああ、これからもずっと。」堀川の問いに、野沢ははっきりと答えた。<br />
 「ずっとじゃなくてもいいのよ。時々思い出してくれるだけで……」<br />
 堀川は、涙を浮かべながら微笑むと、その場に倒れてしまった。続いて、野沢も。<br />
 倒れた三人は、風海らの手配によって救急車で搬送された。<br /><br />
 数日後。<br />
 事件はゴシップ誌にすら報道されることなく、学校も平穏を取り戻していた。<br />
 野沢は無罪放免となったが、自室に閉じこもり、ふさぎ込んでしまったという。<br />
 堀川は、一命を取り留めたが、数ヶ月間の記憶を失っていた。<br />
 神山は、搬送中に救急車ごと消息を絶った。<br />
 全国に緊急手配をして行方を追っているが、未だに所在がつかめていない。<br /><br />
 堀川と崎田の関係は、警察の調査では判らなかったが、式部が秘密裏に漏らしてくれた。<br />
 二年前に堀川は心臓を移植したのだが、このときの臓器提供者が崎田だったのだ。<br />
 風海は、崎田の遺志が心臓を通して堀川に届けられたのではないだろうか、<br />
 と考えるようになった。<br /><br />
★警察史編纂室<br /><br />
 風海は、クビ覚悟で自分の考えをそのまま報告書にした。<br />
 その報告書を提出する前に、課長から辞令を受け取った。<br />
 「本日付で警察史編纂室に配属す」<br />
 地下五階に行くと、小暮が部屋の前に居た。彼もまた、編纂室へ配属されたのだ。<br />
 意を決して扉を開けると――、埃も煙草の吸いさしも消えた、普通の部屋だった。<br />
 現職の警部が競馬中継に耳を傾けている光景を除いて。<br />
 警部の名は、犬童蘭子。彼女は、二人を前にして「ガキを寄越して」とぼやくのだった。<br /><br />
★「密室」にて<br />
 「さて、キミの心にどう響いたかな?」<br />
 男の巧みな話術によって、「あなた」は自分が事件当事者のように錯覚した。<br />
 怪異を生み出すのは人間の心……男の言葉が、真実を言い当てているように思えてきた。<br />
 「ところで、キミはこんな話を聞いたことがないか?<br />
 友人の友人から聞いた話なんだが……。」<br /><br />
(式部ルート終了、次は霧崎ルートです)<br /><br /></dd>
<dt>343 :<a href="mailto:sage"><b>流行り神</b></a>:2009/10/14(水) 11:20:22
ID:nAiukjAT0</dt>
<dd>/* 話の内容は、式部ルートとかなりダブってます。<br />
/* ダブっている部分は、先の式部ルートを参照してください。<br /><br />
2-1)霧崎ルート<br />
 風海は、「コックリさんの呪い」で引き起こされた事件と断定した。<br />
 ……心にしこりを感じながら。<br /><br />
★狐塚の由来<br />
 /* ここは、先の式部ルートとほぼ同じなので割愛します。<br /><br />
★神山、錯乱!?(霧崎ルート限定イベント)<br /><br />
 途轍もない雷鳴が轟いた。外を見ると、狐塚の雑木林から煙がのぼっている。<br />
 その時、神山が奇声を発して錯乱してしまった。<br />
 口からヨダレをたらし目は狂気を宿らせ、暴れる様子は、まさに獣だった。<br />
 「神山!」<br />
 「みないで……みないで……」<br />
 野沢の呼びかけに、神山は正気を取り戻して気を失う。<br />
 式部が神山をの診察したが、異常は見つからなかった。<br />
 風海は、捜査の行き詰まりを強く感じた。<br /><br />
★影で暗躍する者<br />
 /* 助っ人が霧崎しか出てこない点を除けば、式部ルートと同じ。<br /><br />
★コックリさんと血の儀式(霧崎ルート限定)<br /><br />
 狐塚を調べると、焼け焦げた経文――狐憑き退治の経文が見つかった。<br />
 校長に話では、この塚はもともと源平の時代に狐憑きとして惨殺された娘の霊を鎮める<br />
 ものだったという。今回の事件は、その娘の怨霊のせいなのか?<br />
 風海の問いに、霧崎は答えた。<br />
 「何らかのきっかけがなければ、そういうことにはならないさ。」<br /><br />
 校内探索中に、女子高生三人組がコックリさんを行っている現場をおさえた。<br />
 神山と堀川、そして妙におびえている山野恵子。<br />
 彼女たちによると、コックリさんを提案したのは、転校生の堀川だった。<br />
 その後、コックリさんから「血を捧げれば、願い事を叶える」というお告げがあったらしい。<br />
 自殺した二人は血の儀式を拒んだからコックリさんに殺されたのだと、彼女たちは断言した。<br /><br />
 話を聞いた霧崎が「血の儀式の仕組みを解明してやろう。」と言いだす。<br />
 「コックリさんは、参加者の潜在意識を写しているにすぎない。<br />
 つまり、血を欲しているのは参加者の一人。その人物こそが犯人であり……狐憑きだ。」<br />
 周囲の視線は神山に集まるが、彼女は不敵な笑みを浮かべるだけだった。<br /><br />
(霧崎ルート、続く)<br /><br /></dd>
<dt>344 :<a href="mailto:sage"><b>流行り神</b></a>:2009/10/14(水) 11:22:07
ID:nAiukjAT0</dt>
<dd>★警察庁の中の廃屋<br />
/* 話の流れは、式部ルートとほぼ同じなので割愛します。<br /><br />
★二人の推理(霧崎ルート編)<br /><br />
 日記を読んだ二人は、事件を推理した。<br /><br />
 死んだ崎田は、コックリさんを通じて自分をいじめた三人を殺したのだ。<br />
 事件の黒幕が崎田なら、次の標的は神山しかいない。<br /><br />
★暴かれた真実<br />
 /* 式部ルートとほぼ同じなので割愛します。<br /><br />
★終局(霧崎ルート編)<br /><br />
 《どうれ、誰から血を啜ってやろうか?》神山から、普段とは違う声が漏れた。<br />
 《決めた……お前の血をわらわに》そういうと、神山は野沢に襲い掛かった。<br />
 野沢の喉に食いつこうとしたとき、神山は辛うじて正気に戻った。<br />
 「ごめんね……私はただ野沢君のことが好きだっただけなのに……」<br />
 その時! 堀川が隙をついて、神山の脇腹に木片を突き立てた。<br />
 《おのれぇぇ、人間どもめ》<br />
 風海は、人ならざる影が苦しんでいる様を見たような気がした。<br /><br />
 数日後。<br />
 事件はゴシップ誌にすら報道されることなく、学校も平穏を取り戻していた。<br />
 堀川は、一命を取り留めたが、数ヶ月間の記憶を失っていた。<br />
 これにより、堀川が神山を刺した理由も、崎田のことを知った経緯も判らなくなった。<br />
 神山は、搬送中に救急車ごと消息を絶った。<br />
 全国に緊急手配をして行方を追っているが、未だに所在がつかめていない。<br />
 これで、呪いの存在を証明できる証拠は何も残らなかった。<br /><br />
 神山が抱いていた恋情は純粋なものだった。だが、その思いが歪んだとき、悲劇が始まった。<br />
 人間なら、誰にでも起きうる事件だった。<br />
 風海は、犠牲者への手向けとして、この事件で見聞きしたことを正直に記すことにした。<br /><br />
(霧崎ルート、続く)<br /><br /></dd>
<dt>345 :<a href="mailto:sage"><b>流行り神</b></a>:2009/10/14(水) 11:23:33
ID:nAiukjAT0</dt>
<dd>★警察史編纂室<br />
★「密室」にて<br />
 /* 式部ルートとほぼ同じなので割愛します。<br /><br /><br />
【余談】<br />
・霧崎ルートの〆では堀川の心臓や野沢のその後には触れてませんが、<br />
 実際の本編でも触れられていません。<br />
 霧崎ルートでは、崎田が堀川に憑依していたということなのでしょう。<br />
 野沢も引き篭もりになるほどふさぎ込んでないってところなのかな、個人的にと思ってます。<br /><br />
・このシナリオは、最後の隠しシナリオ「退魔師・犬童蘭子」と対をなしています。<br />
 つまり、影で狐憑き退治に動いていた人物は……。<br />
 ちなみに、式部ルートにて霧崎がその人物を「(術に関して)相当無節操なやつ」<br />
 と評しています。<br /><br />
(以上で、第一話は終わり。第二話は、近日中にアップします。)<br /><br /></dd>
<dt>372 :<a href="mailto:sage"><b>流行り神</b></a>:2009/10/20(火) 10:40:51
ID:+lIODfw+0</dt>
<dd>流行り神PORTABLE:第二話『鬼』<br />
【主な登場人物】<br />
間宮ゆうか(まみや・――)<br />
 風海の義兄・霧崎の教え子で助手。<br />
 自称・オカルト専門ジャーナリスト(見習い)だが、霊感はない。<br />
 海外出張中の霧崎に代わって、風海の捜査を手伝うことになる。<br />
道明寺秋彦(どうみょうじ・あきひこ)<br />
 警視庁捜査一課の刑事。印南警視の部下で、極秘裏に協力している。<br />
 見た目ヘラヘラした軽薄な青年だが、被害者救出に関しては真摯な態度を見せる。<br />
 「小暮と同期」(道明寺談)だが、小暮は覚えてない。<br /><br />
【前置き】<br />
 この事件は二人が配属後に初めて手がけたもので、<br />
 時系列で言うと第一話のあと、第零話の前となります。<br /><br /><br />
1)前半部<br />
 配属後十日目。謎の男から、児童誘拐の捜査に参加するように頼まれる。<br />
 ところが、担当の印南警部から二人を呼んだ覚えはないと追いだされてしまう。<br />
 結局、彼の部下・道明寺巡査長の協力により、調査を極秘裏に行うことになった。<br /><br />
 被害者は斉藤裕介、小学二年の八歳。両親は離婚、家族は母親の由香利のみ。<br />
 母親の由香利は、レストランを経営する女性実業家だった。<br />
 犯人は、身代金ではなく「由香利が〔柘榴の実〕に一人で来ること。」<br />
 という変わった要求を出してから、沈黙を保っている<br />
 〔柘榴の実〕について、由香利は心当たりがないと言う。<br />
 誘拐の現場を見た少年は、「鬼が連れて行った」と言い張っていた。<br />
 印南は作り話だと切り捨てたが、二人が調べると実在した可能性が高くなった。<br /><br />
 奇妙なファックスが斎藤宅に届いた。<br />
 「鬼」の天辺の「ノ」が取れた字が一文字だけ、大きく印字されているという代物。<br />
 これも、由香利は判らないという。<br /><br />
 その後の聞き込みで、他の家二軒に似たような脅迫状が郵送されたことが判明する。<br />
 この二軒と斎藤家をつなぐ線上に、斎藤家の隣人・安西聡子が浮かんだ。<br />
 安西が脅迫状を出したのか? 安西を密かにマークする二人。<br /><br />
 しかし、安西を巡って騒ぎがおき、その余波で印南に極秘調査がばれてしまった。<br />
 これを機に、風海は脅迫状の件を印南に託す。<br />
 その上、二人が安西を疑っていることを、安西本人に悟られてしまう。<br />
 笑みを浮かべた安西は、とんでもない爆弾を二人に投下した。<br />
 「あの母親は、息子が居なくなって、せいせいしている……。」<br /><br />
(続く)<br /><br /></dd>
<dt>373 :<a href="mailto:sage"><b>流行り神</b></a>:2009/10/20(火) 10:43:17
ID:+lIODfw+0</dt>
<dd>/* 前半部最後の安西の一言をどう扱うかで、2ルートに分岐します。<br />
/* 先に取り上げなかった場合、次に取り上げた場合の順に投下します。<br /><br />
2)-1 安西ルート(安西の証言を取り上げなかった場合)<br /><br />
 安西は、捜査の目を逸らそうとしてるのかもしれない。<br />
 そう判断した二人は、安西のサークル仲間に安西の人となりを聞きいてまわる。<br /><br />
 サークル仲間は、ほとんどが“セレブ”と呼ばれる婦人たちだった。<br />
 その中で、庶民で借金に追われている未亡人の安西は、<br />
 彼女たちから優越感を滲ませた同情心で「可哀想な人」と見られていたようだ。<br />
 これは、安西にとって屈辱であり、苦痛だったのではないだろうか。<br />
 そんな安西だったが、最近になって生き別れていた妹と再会したらしい。<br />
 そして、妹から贈られたガーネットのブレスレットを肌身離さずつけているという証言も得た。<br /><br />
 聞き込みのまとめをしているとき、道明寺から安西の経歴が送られてきた。<br />
 そのなかの記述に、全員が唖然とした。<br />
   妹の名は、雪村恭子。「グラナダ・マタニティクリニック」副院長だったが、<br />
   夫の無理心中に巻き込まれ、二年前に死亡。<br /><br />
 と、その時、一緒に居たゆうかがひらめく。<br />
 ガーネットの和名は柘榴石。柘榴は、スペイン語で「グラナダ」!<br />
 〔柘榴の実〕とは、この病院のことを指していたのではないだろうか。<br />
 由香利に、もう一度〔柘榴の実〕を問いただす必要がありそうだ。<br /><br />
 ゆうかは、グラナダ・マタニティクリニックを調べるといって飛びだしていった。<br />
 ゆうかの身を案じつつ斎藤家へ向かう風海。その家の前で、道成寺と出くわした。<br />
 彼によると、印南が安西の逮捕状を取って、彼女の行方を追っているという。<br />
 鑑定の結果、安西が例の脅迫状を出したと判ったからだ。<br /><br />
 由香利の頑な態度は、『グラナダ・マタニティクリニック』の一言で切り崩された。<br />
 「どうして、放っておいてくれないの?」<br />
 由香利は、最初から子供を見捨てるつもりだったのだ。<br />
 「子供には何の罪もないのですよ?」思わず問い返す風海。<br />
 「でも、あの子は……」何かを言い出そうとして口をつぐむ由香利。<br />
 「いいでしょう、〔柘榴の実〕へご案内します。」<br />
 一行は、小暮の車で目的地に向かった。辺りは、夜になっていた。<br /><br />
 移動中、由香利は誰ともなく語りだした。<br />
 思い描いた「幸せな家庭」のために、由香利は子供が欲しかった。<br />
 でも、裕介が生まれた時にできた借金で、夫婦は押し潰され、離婚してしまう。<br />
 うちつづく不幸の中で、由香利が抱いていた息子への愛情が揺らぎはじめた。<br />
 (この子さえ居なければ……。)この考えが、由香利を折檻に走らせたのだ。<br />
 息子が誘拐されとき、一旦は息子を見捨てようと考えたが、やはり出来なかった。<br />
 「私は『ママ』と呼ばれるのがつらかった。……あの子はね……。」<br />
 そのあとに続く言葉は、由香利の口から紡がれることはなかった。<br /><br />
(安西ルート、続く)<br /><br /></dd>
<dt>374 :<a href="mailto:sage"><b>流行り神</b></a>:2009/10/20(火) 10:46:22
ID:+lIODfw+0</dt>
<dd> 目的に着いて、風海が降りたときだった。<br />
 ゆうかが声をかけてきた。どうやら情報をたどって、ここまで来たらしい。<br />
 ゆうかの身を案じて、思わず叱責する風海。ゆうかも、予想外の叱責に素直に謝った。<br />
 しかたなく、風海は、小暮に建物の外でゆうかを護衛するように頼んだ。<br /><br />
 由香利は、廃墟の前の看板を指差した。<br />
 「産婦人科 グラナダ・マタニティクリニック」――その脇に柘榴の実の絵。<br />
 「ここで生まれたんです。」由香利は、そうつぶやいた。<br />
 由香利のあとを追いながら、風海は引っかかるものを感じた。<br />
 (“産んだ”のでなく“生まれた”? どういう意味なんだ?)<br /><br />
 廃病院を進むなか、由香利は、風海の呟きから隣人の安西が犯人だったことを知る。<br />
 「安西さんが「鬼」のファックスを送りつけたのは、<br />
 息子を虐待する自分を嘲笑うためなのでしょうね。」<br />
 「いまなら、安西さんのその気持ちがわかる気がします。」<br /><br />
 かつて、由香利は安西を『可哀想な人』と思った。それは優越感からきている同情だった。<br />
 今度は自分が周囲から『可哀想な人』と言われて、由香利はそのことに気がついた。<br />
 同情される自分が恥ずかしくなり、心が他者を受け入れられなくなっていった。<br />
 そして、自己嫌悪と自己否定に陥り、由香利は、他人、つまり息子を攻撃することでしか<br />
 自分を守れなくなっていったのだ。<br /><br />
 病室の一室に、裕介少年は寝かされていた。<br />
 たどたどしい足つきで近づいた由香利は、息子を抱きかかえると涙を浮かべた。<br />
 あとは、ここから逃げるだけだ。――と、その時、不快な冷気を感じた。<br />
 「由香利さん!」風海が振り返ると、横たわる少年の前にうずくまる由香利の姿だった。<br />
 まわりを黒いドロドロした靄が取り囲まれた状態で、由香利は何かを抑えようとしていた。<br />
 そして、風海の面前で由香利の目は白目ごと真っ赤に染まっていった。<br />
 その目は――まさに鬼。<br /><br />
 「ふふふふ……」地の底から響く、くぐもった笑い声。安西がいつの間にか立っていた。<br />
 髪はふり乱れ、衣服もボロボロ、眼は赤い狂気に満ちていた。<br />
 安西は、うずくまる由香利を凝視したまま話しだした。<br />
 「アンタも可哀想な女だよ。アンタは息子を愛せない。違うかい!」<br />
 「ちが…う。」由香利は必死に抵抗を試みるが、安西は容赦しなかった。<br />
 「子供を愛せないから、今こうして苦しんでいるんだろ?<br />
 無理することはないよ。あたしと一緒におなりよ。」<br />
 妖しい魅力を含んだ呼びかけに、風海の意識まで朦朧としはじめた。<br /><br />
(安西ルート、続く)<br /><br /></dd>
<dt>375 :<a href="mailto:sage"><b>流行り神</b></a>:2009/10/20(火) 10:48:36
ID:+lIODfw+0</dt>
<dd> 由香利の中の「何か」が弾けようとした時――<br />
 「ママ……ママ」裕介の寝言が漏れた。<br />
 「ゆう…すけ?」由香利の赤い目から、涙が溢れ出していた。<br />
 鬼になりかけた彼女は、息子の寝言で救われたのだった。<br />
 その様子を見ていた安西が、呻いた。<br />
 「アンタなら……わかってくれると思ったのに……」<br />
    ナ ゼ ダ ァ ァ ァ ァ ァ ァ<br />
 最後の叫びは、鬼の咆哮だった。それと同時に、安西の姿が大きく変容する。<br />
 猛獣の牙、狂気に満ちた深紅の瞳、額から生えた角。まさに――鬼。<br /><br />
 安西だったモノは、腕一振りで風海をなぎ払って弾き飛ばした。<br />
 どこかで照明用のランプが割れる音がして、部屋に火の手が上がった。<br />
 「ソノコヲ、コロセ! コロセ! コロセ!」呪文のように言葉を繰りかえす鬼。<br />
 その言葉に苦しみながらも、由香利ははっきりと言い放つ。<br />
 「自分の息子を愛している!」<br />
 拒絶された鬼は、裕介を殺そうと襲い掛かる。鬼の前に、由香利が立ちはだかった。<br />
 「安西さん、もう止めて。」その言葉には、鬼と化した安西への悲しみが篭っていた。<br />
 同じ苦しさを経験したものだからこそ、紡がれた言葉だった。<br /><br />
 その言葉に、鬼の動きが止まった。泣いているのか?<br />
 風海は、母子を逃がすために鬼に取りついた。<br />
 燃え盛る炎の中、鬼は風海を剥がそうと壁に叩きつけるが、風海は必死にしがみついていた。<br />
 そして、建物から逃げる母子を見たとき、彼の身体は宙に舞い、落ちていった。<br /><br />
 風海は、右足骨折などで入院を余儀なくされた。あの状況では、軽傷と言っていいだろう。<br />
 見舞いに来たゆうかの話では、裕介少年は病院に運ばれるとき、<br />
 しきりに『お姉ちゃんはどこ?』と聞いていたという。<br />
 安西なら『隣のおばちゃん』と言うはずだ。安西のほかにも、誘拐犯はいたのか?<br /><br />
 今度は小暮が見舞いがてら報告にやってきた。<br />
 母子はほとんど無傷で助かり、由香利は自ら進んでカウンセリングに通いだしたという。<br />
 ただ、安西のほうはケリがつきそうになかった。<br />
 斎藤宅に送られたファックスは、鑑定した結果、安西以外の人物が送ったと断定された。<br />
 また、廃病院の焼け跡からは安西のブレスレットしか見つからず、<br />
 捜査陣の間から「本当に安西がいたのか」という声すらあるらしい。<br />
 それともう一つ不可解なことがあった。<br />
 捜査一課の名簿には、『道明寺秋彦』なる人物はいなかったのだ。<br />
 道明寺は、何者で何のために現れたのだろうか?<br /><br />
 安西は普通の人間だった。彼女を鬼にしたのは、周囲の心ない同情心だった。<br />
 何の自覚もなく、他者を追いつめる人間。風海は、無性に人間が怖くなった。<br /><br />
(安西ルート終わり、続いて雪村ルートです。)<br /><br /></dd>
<dt>376 :<a href="mailto:sage"><b>流行り神</b></a>:2009/10/20(火) 10:50:07
ID:+lIODfw+0</dt>
<dd>2)-2 雪村ルート<br /><br />
 思い返せば、由香利の態度は子供を誘拐された親とは思えないところがある。<br />
 風海は、道明寺を通じて令状を取り、斎藤家の家宅捜索をおこなう。<br />
 しかし、解決につながる手がかりはなく、息子への虐待が判明しただけだった。<br /><br />
 二人は、別の観点から犯人像を洗い出し、雪村恭子に行き当たる。<br />
 彼女の留守宅から、祐介少年の教科書が見つかる。<br />
 風海は、道明寺に雪村のことを伝えて留守宅を出た。<br /><br />
 彼女の日記には、雪村と少年の出会いと交友が記されていた。<br />
 世間に絶望して引き篭もっていた雪村は、偶然であった裕介に生きる希望を見出していった。<br />
 それと同時に、彼の傷から彼が虐待されていることを察知し、<br />
 彼の母に義憤を感じていたこともわかった。<br /><br />
 道明寺が、雪村宅の家宅捜査の結果を知らせてきた。<br />
 雪村宅から、ファックスされた文字と同じ奇妙な文字が書かれたお札が見つかったという。<br />
 風海は、小暮とゆうかと一緒に発行元の鬼哭寺(おになきでら)へ向かった。<br /><br />
 住職にお札のことを尋ねると、祭っている鬼子母神に由来するものだという。<br />
   鬼子母神は、子煩悩な神だったが、人間の子をさらって食べる神でもあった。<br />
   釈迦は、彼女の子を一人隠すことで、彼女に子を失った親の悲しみを実感させた。<br />
   悪行を悔いて改心した鬼子母神は、子供を守る神となった。<br /><br />
 お札の変形「鬼」は、「改心して神になった」=「角がない」ことを示しているという。<br />
 柘榴も鬼子母神とは縁が深く、釈迦が鬼子母神へ人肉代わりにと渡した果実が柘榴だった。<br /><br />
 「予想外の要求」「鬼子母神のお札」――風海は、誘拐犯・雪村の真の狙いに気づいた。<br />
 彼女は、由香利に「自分の子を愛せ」と言いたかったのだ。<br /><br />
 寺の聞き込み後、ゆうかは調べごとがあるといって別れた。<br />
 警視庁では、道明寺が二人を待っていた。<br />
 一時間ほど前、斎藤家に少年本人から助けを求める電話がかかってきたという。<br />
 これを機に、捜査本部は雪村を全国指名手配するつもりらしい。<br />
 腹を決めた風海は、斎藤宅へと向かった。<br /><br />
(雪村ルート、続く)<br /><br /></dd>
<dt>377 :<a href="mailto:sage"><b>流行り神</b></a>:2009/10/20(火) 10:52:21
ID:+lIODfw+0</dt>
<dd> 風海は、印南の制止を振り切り、由香利を説得し始めた。<br />
 「犯人は、鬼子母神のように改心して欲しいと願っているんです。」<br />
 「あの子は私を捨てて別の女に走った男の子供よ、居なくなってせいせいしたわ。」<br />
 風海は、口調とは裏腹に、彼女の様子から子供への愛情がまだ残っていることを確信する。<br />
 「〔柘榴の実〕で、裕介君が待っています。そして、犯人の雪村恭子も。」<br />
 「――――!!」<br />
 「雪村恭子」に異常な反応をした由香利は、唐突に〔柘榴の実〕へ一人で行くと言いだす。<br />
 風海と印南は、一人か二人の護衛をつけるように説得する。<br />
 彼女は、逡巡のあとで風海だけを護衛に指名した。<br />
 風海は、印南警部にバックアップを頼み、彼女の車に乗り込んだ。<br /><br />
 暗い夜道を、由香利は迷うことなく目的地まできた。<br />
 ここはどこだ? 風海が降りたとき、ゆうかが声をかけてきた。<br />
 どうやら別口の情報をたどって、ここまで来たらしい。<br />
 ゆうかの身を案じて、思わず叱責する風海。ゆうかも、予想外の叱責に素直に謝った。<br />
 ゆうかには後から来る応援を待つように言って、彼は由香利のほうへ急いだ。<br /><br />
 由香利は、廃墟の前の看板を指差した。<br />
 「産婦人科 グラナダ・マタニティクリニック」――その脇に柘榴の実の絵。<br />
 由香利が言うには、グラナダは柘榴という意味があるらしい。<br />
 彼女は、ポツリポツリと語りだした。<br /><br />
 この病院は、極秘裏に代理母出産を請け負っていた。<br />
 産めない由香利は、ここに借金をしてまで代理出産を依頼した。<br />
 希望どおりに裕介が生まれたが、その時の借金がその後の人生を変えてしまう。<br />
 潰れかかるレストラン経営、すれ違う夫婦、調停離婚。<br />
 借金は、二年前に焼死した両親が残した死亡保険金でようやく返済できた。<br />
 離婚、両親の急死と不幸が続く中、由香利の心に恐ろしい考えが芽吹く。<br />
 (息子さえ居なければ。息子は、他人が生んだ他人の子。)<br />
 この子は自分の子ではない――だから、たたいても心は痛まなかった。<br />
 そう告白する彼女の頬には、一筋の涙が流れていた。本人も気づかなかった涙だった。<br />
 風海に指摘されて、はっとする由香利。<br />
 気持ちが吹っ切れた由香利は、廃病院へ入っていった。<br /><br />
 二人は、ようやく光が漏れる病室にたどりついた。<br />
 そこには、凄まじい形相の中年女が、裕介に鎌を突きつけていた。その様は、まさに鬼。<br />
 雪村は、すぐに迎えに来なかった由香利に母の資格はないと断罪し、<br />
 裕介を出産した自分こそが母親だと言い放つ。<br />
 息子に一番知らせたくなかったことを暴露されて、由香利は絶望に打ちひしがれる。<br />
 その姿を嘲笑う雪村に、裕介が反論した。<br />
 「ぼくのママは、一人だけだもん!」<br />
 「……ゆ、裕介っ……っ!」涙を浮かべる由香利。<br /><br />
(雪村ルート、続く)<br /><br /></dd>
<dt>378 :<a href="mailto:sage"><b>流行り神</b></a>:2009/10/20(火) 10:55:15
ID:+lIODfw+0</dt>
<dd> その瞬間、雪村が甲高い悲鳴を上げる。<br />
 「どうして! みんな、私を存在してはいけないものとしか見ない! 夫もそうだった!」<br />
 「どうして、あんな女をママと呼ぶのよ!」<br />
 裕介に向かって振り下ろされる鎌。間一髪、風海が少年を助ける。<br />
 今度は、由香利に襲いかかった。風海は何度も雪村を羽交い絞めにするが、<br />
 そのたびに華奢な中年女性とは思えない力で振り解かれてしまう。<br /><br />
 「ママを放して!」裕介は、近くにあったランプを雪村に投げつけた。<br />
 雪村に弾きかえされたランプは壁に激突して割れ、炎がとび散った。<br />
 火の粉を浴びた雪村は、狂ったように暴れ、取りついていた風海を投げ出した。<br />
 病室の窓から放り出された風海は、植え込みの上に墜落。<br />
 植え込みのおかげで、九死に一生を得ることになる。<br /><br />
 廃病院に火の手が上がったとき、由香利は裕介と離ればなれになっていた。<br />
   ひどい仕打ちをした母親。失うことに怯え、我が子を見捨てた母親。<br />
   それなのに、あの子はママといってくれた。<br />
 「私は、裕介の母親!」由香利は、身体の痛みや炎を省みずに走った。<br />
 裕介と再会したとき、由香利は泣きながら抱きしめた。<br />
 「ぼくが悪い子だから、泣いているの?」<br />
 「違うのよ。あなたが私の子でよかったって、泣いているの。」<br /><br />
 逃げる母子の前に、鬼――釜を持った雪村が立ちふさがる。<br />
 「裕介は、私の子よ!」<br />
 「……」<br />
 しばらくして雪村は幽霊のように業火の中に消え、母子の前に道が現れた。<br />
 「最後に……お姉ちゃん……笑ってたね。」裕介が小さくつぶやいた。<br />
 母子が外に飛び出したとき、廃病院は崩れ去った。<br /><br />
(雪村ルート、続く)<br /><br /></dd>
<dt>379 :<a href="mailto:sage"><b>流行り神</b></a>:2009/10/20(火) 10:56:12
ID:+lIODfw+0</dt>
<dd> 右足骨折で入院した風海に、小暮が報告を兼ねて見舞いにやってきた。<br /><br />
 あの晩、印南たちは、風海の発信機がすり替えられていたためフォロー出来なかった。<br />
 いつすり替わったのかは、全く判らない。<br />
 それより不可思議なのは、道明寺秋彦。捜査一課の名簿には、彼の名はなかったのだ。<br />
 実在しない刑事。彼は、謎の男の関係者だったのか?<br /><br />
 送られた二通の脅迫状は、鑑定により安西が出したものと判明。<br />
 それ以上のことは、安西が失踪したので判らないという。<br />
 最後に、小暮が裕介の手紙を見せた。雪村に渡して欲しいと頼まれたのだ。<br />
 便箋には、雪村“お姉ちゃん”を気遣い、また遊びたいと綴られていた。<br />
 読み終えた風海は、小暮に焼け跡に埋めて欲しいと頼んだ。<br /><br />
 そこへ、犬童警部がやってきた。<br />
 彼女は、印南から“無断持出し”した雪村の履歴書を出してきた。<br />
   二十年前、夫ともに産婦人科を開業。<br />
   不妊治療の限界を感じた彼女は、自ら代理母となった。<br />
   二年前、夫がいきなり病院を廃業し焼身自殺する。動機は不明。<br />
   自殺する際には、恭子までまきこもうとしたようだ。<br />
   焼身自殺の数日前に由香利の実家が焼失したが、<br />
   この二つに因果関係は見出されなかったようだ。<br /><br />
 「雪村の遺体な、見つからへんかったみたいやで。<br />
 もしかしたら、二年前の時に死んどったんかもしれんなぁ」<br />
 言いたいことだけをいって、警部は帰っていった。<br /><br />
 鬼の目撃談、人並みはずれた力――導き出された結論に、<br />
 刑事二人は沈黙するだけだった。<br /><br />
【余談】<br />
・まとめではほとんど良いところがなかった間宮嬢ですが、<br />
 本編ではきっちりと働いています。<br />
 題名にもなっている「鬼」について学問的に分析したり、<br />
 編纂室の“三人目”として聞き込みに従事したりしています。<br />
 ただし、思い込みは人一倍強く、本編で主人公が頭をかかる<br />
 場面が何度もあったりします(笑)。<br />
・これもまとめでは削除しましたが、ゆうかを叱責する主人公をみた<br />
 由香利が笑みを浮かべて「あの子は彼女なの?」と軽く突っ込む場面が、<br />
 両ルートにあったりします。もちろん、主人公は慌てて否定してますが。<br /><br />
・雪村ルートで出てきた鬼哭寺とその好々爺の住職は、隠しシナリオの<br />
 「退魔師・犬童蘭子」で再登場します。<br /><br />
(第二話『鬼』終了。第三話『名前の無い駅』は近日中に投下します。)<br /><br /><br /><br /></dd>
<dt>48 :<a href="mailto:sage"><b>流行り神</b></a>:2009/11/03(火) 20:23:51
ID:2jN9edTS0</dt>
<dd>遅くなりましたが、流行り神の本編最後のシナリオを投下します。<br /><br />
流行り神Portable:最終話『名前の無い駅』<br /><br />
【前書き】<br />
 この事件は、誘拐事件以降に起きたもので、<br />
 時系列でいうと一番最後におきたものとなります。<br /><br />
1)前半部<br />
 「あなた」は、まだ暗いコンクリートの密室にいた。<br />
 「これが、風海警部補が得たひとつの結論だ。」<br />
 部屋のなかで男の声に耳を傾けているうちに、<br />
 「あなた」は次第に怪奇現象を否定できなくなっていた。<br />
 (なぜだ! 実際に体験したのならまだしも、ぼくはただ普通の……!??)<br />
 そのとき、「あなた」の思い出せなかった記憶がよみがえった。<br />
 霧崎、小暮たちの姿が、「あなた」の脳裏に浮かんでは消えた。<br />
 そう、「あなた」こそ、風海純也警部補だったのだ。<br /><br />
 風海が“密室”から目をさますと、そこは病室だった。<br />
 ベッドの脇には、小暮、霧崎、そして式部が付き添っていた。<br />
 担当医の式部によると、四日まえ病院入り口で保護されたらしい。<br />
 身体は健康なのに、自分が誰かも判ってない状態だった。<br />
 記憶を呼び戻すために、霧崎の指示で逆行催眠をかけていたところだった。<br />
 どうやら、あの“密室”で風海に呼びかけていた声は、霧崎だったようだ。<br /><br />
 事件当日、何があったのか。 風海は、問われるままに語りだした。<br /><br /><br />
 久しぶりの非番だったその日、ゆうかの電話で呼び出された。<br />
 「付き合って。」という誘いに、風海は二つ返事で了承した。<br />
 (ひょっとしてデートかな?) いそいそと出かける風海。<br /><br />
 ゆうかは目的地を伏せたまま、風海を連れて地下鉄へ乗り込んだ。<br />
 いつの間にか電車は、誰もいない駅に停車していた。<br />
 ゆうかは、風海を急かしてうす暗い駅に降りた。<br />
 そして、電車は二人を残して発車した。<br /><br />
 降りた駅は、建設中に放棄された廃墟のようだった。<br />
 「やっぱり、〔名前の無い駅〕はあったのね!」<br />
 ゆうかによると、ここが都市伝説でささやかれていた<br />
 「最初から名前がない駅」だというのだ。<br /><br />
 「デートじゃなかったんだ。」少なからず落胆する風海。<br />
 「それ、絶対ありえないから!」ゆうかは、デート説を完全否定した。<br />
 薄暗いなか、彼女の顔が少し赤らんだように思えたのは、風海の勘違いだろうか?<br /><br />
(前半部、続く)<br /><br /></dd>
<dt>49 :<a href="mailto:sage"><b>流行り神</b></a>:2009/11/03(火) 20:26:29
ID:2jN9edTS0</dt>
<dd> ゆうかの話では、本当の目的地はこの駅の先らしい。<br />
 「この先には『……』があるはず。」<br />
 風海の記憶は、ここで途切れた。<br /><br /><br />
 話を終えた後で、風海はゆうかがまだ戻ってないことを知らされた。<br />
 ゆうか捜索に参加したい風海は、式部に退院させてくれるように頼む。<br />
 式部は、自分を同行させることで許可を出した。<br />
 こうして、風海は部下の小暮、ゆうか関係者の霧崎、主治医の式部の<br />
 三人とともに探索に向かうこととなった。<br /><br /><br />
 一行は、事件当時に乗った路線の終着駅からさらに奥へと続く線路を見つける。<br />
 唯一の手がかりとみて徒歩で奥へと歩き始める。<br /><br />
 奥へと進む途中で、内臓をくりぬかれた遺体を発見する。<br />
 遺体の状態から、性別は男性、年単位で放置されていたことがわかる。<br />
 一行は、ゆうか救出を優先させるため、遺体をそのままにして先を急いだ。<br /><br />
 とうとう建設途中で放棄されたと思しき地下鉄の駅にたどり着く。<br />
 間違いなく、事件当日に二人が降り立った駅だった。その先に怪しいトンネルも見つかった。<br /><br />
 トンネルを抜けた先は、墓場となっていた。<br />
 この墓場のために、地下鉄工事が中断されたようだ。<br />
 先の遺体を祭ったらしい粗末な墓石もみつかった。日付は昭和二十年前後と古かった。<br />
 墓場を調べたい霧崎を残し、ほかの三人は更に奥へ進んだ。<br /><br />
 墓場の先に、昭和二十年代に作られたと思われる研究施設が見つかった。<br />
 その通路を歩いていると、男連れの犬童警部に出会った。<br />
 白い総髪の男は、歴戦の兵士の風格を漂わせていた。<br />
 その男こそ、電話で助言してきた“謎の男”であった。<br /><br />
 男は名を告げないまま、自分の要件を明かした。<br />
 この施設は、彼が所属する“組織”が放棄した研究施設だった。<br />
 最近、ここで行われていた悪魔の実験を再開させる計画が持ち上がった。<br />
 再開反対派の彼は、仕事仲間の犬童に頼み、<br />
 竜脈の力でここを破壊しようとしていたのだ。<br /><br />
 カルト否定派の式部は、龍脈の話に反発し、<br />
 さらに「悪魔の実験」について男に詰め寄った。<br />
 だが、男は「知らないほうがいい。」と交わしただけだった。<br /><br />
 「ここは一時間後に崩壊する。避難したまえ。」<br />
 「ここに女性が一人、迷い込んでいます! ご存知ありませんか」<br />
 風海の問いに、犬童らの顔色が変わった。<br />
 二人は、制限時間は延ばせないこと、別件で手が貸せないことを告げて、去っていった。<br /><br />
(前半部、続く)<br /><br /></dd>
<dt>50 :<a href="mailto:sage"><b>流行り神</b></a>:2009/11/03(火) 20:27:47
ID:2jN9edTS0</dt>
<dd> 二人と入れ替わるように、霧崎が三人と合流した。墓からは何も手がかりはなかったという。<br />
 薄暗い施設の中を歩き回って、四人はようやくゆうかを見つけた。<br /><br />
 ゆうかと合流したとき、ポルターガイスト現象がおきる。<br />
 実は、東京の某所で「死者の霊魂を人為的に操作する」研究が<br />
 行われていたという噂が流れていた。<br />
 彼女は、この地下施設がその場所だと当たりをつけて、<br />
 噂を検証する目的でここに来たのだった。<br /><br />
 再び、式部はそれを聞いて反論した。<br />
 「この現象は、不審者排除の仕掛けよ。」<br />
 発言直後、癇癪を起こした子供のように部屋が荒れだした。<br />
 ここに長居は無用。風海はゆうかの手を引いて、脱出を促した。<br /><br />
 誰かが追ってくる気配を感じつつ、駅を目指す一行。<br />
 しかし、疲労していたゆうかを連れた風海は、ほかの三人とはぐれてしまった。<br />
 風海は、手近な部屋に飛び込んで、謎の追跡者をかわした。<br />
 一息ついている間、二人はこれまでのことを確認しあった。<br />
 風海がゆうかと別れたのは、ゆうかを逃がすために囮になったためらしい。<br />
 自分だけで逃げ出したのではないと知って、風海は安堵した。<br /><br />
 程なくして、部屋の外で何かが徘徊している気配がした。<br />
 なんとかやり過ごして、時間内に脱出しなければ。<br />
 風海は、ポルターガイストを抑える方法を探そうとした。<br /><br />
/* ここで、ポルターガイストをどう捉えるかで、ルートが分岐します。<br />
/* まずは科学ルート、次にオカルトルートの順に投下します。<br />
/* バッドエンドの分岐箇所は、該当する所に印をつけてあとで解説します。<br /><br />
2)-1 科学派<br /><br />
 ポルターガイストの原因は、やっぱり何かの仕掛けに違いない。<br />
 風海は、ゆうかの反発を覚悟して自分の考えを正直に言った。<br />
 しかし、ゆうかは即座にいくつかの事例を挙げて、あり得ないことではないと返答した。<br />
 彼女の目標は、オカルト現象を科学的に捉えること。<br />
 その為に、ゆうかは科学知識を蓄えていたのだ。<br /><br />
 部屋を出た二人は、廊下を這っているケーブルをたどって機械室を目指した。<br />
 途中から人外の白い影に追いかけられつつ、二人は目的の部屋に駆け込んだ。(*1)<br />
 (白い影も作られた現象なのか?)一抹の不安を抱きつつも、<br />
 風海は機械にイスを叩きつけ、完全に破壊した。<br />
 壊しているあいだ「電気よりもおぞましいもの」(ゆうか談)が部屋の外で<br />
 暴れていたが、機械の沈黙とともにおさまっていった。<br /><br />
(科学ルート、続く)<br /><br /></dd>
<dt>51 :<a href="mailto:sage"><b>流行り神</b></a>:2009/11/03(火) 20:29:56
ID:2jN9edTS0</dt>
<dd><br />
 ほっとしたのもつかの間、今度は建物が地震のように揺れた。<br />
 気を取り直して部屋を出たとき、風海は狼狽した。<br />
 電力は供給されていないのに、二人を誘導するように廊下の電気が点っていたのだ。<br />
 「あのポルターガイストは、ここに呪縛されていた魂だったのかも。<br />
 機械が壊れたおかげで解放されたんじゃない? 電灯はそのお礼なのかな。」<br />
 ゆうかはそう結論づけたが、風海は信じられなかった。<br /><br />
 不思議な道しるべを頼りに、二人は出口までたどり着いた。<br />
 出口付近で三人と合流して出たとき、見計らったように地下世界は崩壊した。<br /><br />
 「お前たちは、あの施設で何を見たんだ?」<br />
 脱出した後で、霧崎に問われた二人は、見聞きしたことを話した。<br />
 「なるほど。霊的なものを人為的に作り出して制御することを目的とした、<br />
 実験場だったのだろうな。」<br />
 霧崎の結論に、ゆうかは反論しようとしたが口をつぐんだ。<br />
 さすがの彼女も、いま話す気にはなれないのだろう。<br />
 小暮は、完全に理解できずにいる。<br />
 「今回は、現代の科学で完全に否定できるものでもないみたいね。」<br />
 そう言った式部は、昔を振り返るように「あの時と同じ思い……」と呟いた。<br /><br />
 そこへ、犬童が労をねぎらいに一人でやって来た。総髪の男はどこかへ言ったという。<br />
 「細かいところを気にしてたら、身が持たんで。」<br />
 これからもっときつくなるかも知れない。警部はそう警告した。<br /><br />
 警部の言葉に、風海は配属後の事件を振り返った。<br />
 そのまま、テーマソング『ファントム』をバックにスタッフロールへ。<br /><br />
 (*1)<br />
  「ふり返りたい」欲求に負けて後ろを向くと、<br />
   二人とも亡霊に身体を引き裂かれてゲーム・オーバー。<br /><br /><br />
2)-2 オカルト派<br /><br />
 やはり、これは幽霊の仕業ではないのか? 風海は、自分の考えを正直に言った。<br />
 その話に対して、ゆうかは、(風海からみてぶっ飛んだ)提案をしてきた。<br />
 「幽霊と交渉しましょう!」<br />
 こちらに害意はないことを彼らに伝えて、見逃してくれるように頼もうと言うのだ。<br />
 交渉方法は、こちらの質問に対してノックの数で「はい」か「いいえ」かを<br />
 答えてもらうという簡単なもの。<br /><br />
(オカルトルート、続く)<br /><br /></dd>
<dt>52 :<a href="mailto:sage"><b>流行り神</b></a>:2009/11/03(火) 20:35:18
ID:2jN9edTS0</dt>
<dd><br />
 と、その時、部屋全体が地震のように揺れた。<br />
 二人が部屋を出ると、通路の先で男の子の白い影が見え、誘うように通路の電灯が点った。<br />
 「ありがとう。」二人は、精一杯のお礼を込めて呟いた。<br /><br />
 不思議な道しるべを頼りに、二人は出口までたどり着いた。<br />
 出口付近で三人と合流して出たとき、見計らったように地下世界は崩壊した。<br /><br />
 「お前たちは、あの施設で何を見たんだ?」<br />
 脱出した後で、霧崎に問われた二人は、見聞きしたことを話した。<br />
 「信じられん。何かの間違いではないのか。」<br />
 小暮の反論に、ゆうかは反論しようとしたが口をつぐんだ。<br />
 さすがの彼女も、いま話す気にはなれないのだろう。<br />
 「今回は、現代の科学で完全に否定できるものでもないみたいね。」<br />
 そう言った式部は、昔を振り返るように「あの時と同じ思い……」と呟いた。<br /><br />
 そこへ、犬童が労をねぎらいに一人でやって来た。総髪の男はどこかへ言ったという。<br />
 「細かいところを気にしてたら、身が持たんで。」<br />
 これからもっときつくなるかも知れない。警部はそう警告した。<br /><br />
 警部の言葉に、風海は配属後の事件を振り返った。<br />
 そのまま、テーマソング『ファントム』をバックにスタッフロールへ。<br /><br />
 (*2)<br />
   質問する内容を一つでも間違えると、<br />
   二人とも亡霊に身体を引き裂かれてゲーム・オーバー。<br /><br />
【余談】<br />
・ここで出てきた謎の男は、おまけシナリオ『退魔師・犬童蘭子』に<br />
 しっかりと出てきます。そして、別のおまけシナリオにも、<br />
 それらしき人物の気配が……。<br /><br />
――――――<br />
*これで、<流行り神>本編シナリオは終わります。<br />
 次からは、おまけシナリオをゲームのリスト順に投下する予定です。<br /><br />
(流行り神:最終話、おわり)<br /><br /></dd>
<dt>53 :<a href="mailto:sage"><b>流行り神</b></a>:2009/11/03(火) 20:37:19
ID:2jN9edTS0</dt>
<dd>投下ミス発生。<br /><a href="http://jfk.2ch.net/test/read.cgi/gsaloon/test/read.cgi/gsaloon/1256555221/52" target="_blank">&gt;&gt;52</a>の先頭が抜けてました。<br /><br /><br />
 ゆうかから強引に交渉役を押しつけられた風海は、半信半疑で交渉を始めた。(*2)<br />
 見逃してもらう約束を取りつけて外に出ると、部屋の前から子供の白い足跡が続いていた。<br />
 足跡をたどった先には、子供を監禁していたと思われる小部屋に行きついた。<br />
 二人を連れてきた幽霊とのやりとりで、この施設が何らかの実験施設であること、<br />
 途中の墓はその実験の被験者のものであることが判った。<br />
 ただ、実験の内容については、幽霊自身が知らないのか返答はなかった。<br />
 例の男が言った“悪魔の実験”、被験者たちの墓場……。<br />
 二人は、しばしやり切れなさにため息をついた。<br /><br /><br /></dd>
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