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社会心理学

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社会心理学(Social Psychology)



援助行動(helping behavior)


定義

 他者が自らの力では克服できそうもないような困難な状況に陥ったり、あるいは、そのまま放っておけばそのような状況に陥ってしまいそうな場合に、その状況を避けたり、そこから抜け出したりできるように、多少の損失を被ることは覚悟の上で他者に力を貸す行為(中村, 1987)。

研究史

 心理学で援助行動の分野が研究されるようになったのは、1964年にアメリカのニューヨークで起こったキティ・ジェノベーゼ事件が発端である(水田, 2007)。

状況類型

 援助状況は「緊急事態」「寄付・募金」「日常的援助」「自発的援助」の4つに分類できる(松井, 1990)。

援助に対する反応

 援助を受けた人は援助者の印象や魅力を高く評価するが、必ずしも起こるわけではなく、援助や援助者に対して肯定的に反応しないこともある(相川, 1984)。これの理由は心理的リアクタンス理論衡平理論帰属理論心理的負債理論自尊心の脅威モデル等によって説明される(相川, 1989)。

引用文献

 相川充 (1984). 援助者に対する被援助者の評価に及ぼす返報の効果 心理学研究 55(1), p8-14.
 相川充 (1989). 援助行動 安藤清志・大坊郁夫・池田謙一 (編) 社会心理学パースペクティブ1――個人から他者へ 誠信書房 pp.291-311.
 中村陽吉 (1987). 「援助行動」の心理学への導入 中村陽吉・高木修 (編) 「他者を助ける行動」の心理学 光生館 pp.2-4.
 松井豊 (1990). 援助行動の意思決定における情報模索過程の分析 実験社会心理学研究, 30(2), 91-100.
 水田恵三 (2007). 援助行動 潮村公弘・福島治 (編) 社会心理学概説 北大路書房 pp.63-72.

心理的リアクタンス理論(psychological reactance theory)


理論に用いられる概念の定義

 態度の自由(attitudial freedom)
 自由とは自分がある特定の行動をとり得るという信念を示す(今城, 2002)。
 リアクタンス(reactance)
 失われた自由を回復しようとする、または失われそうな自由を確保しようとする動機づけ状態を示す(今城, 2002)。
 自由への脅威(treat to freedom)
 何らかの事象によって自由の行使がより困難になったとの認知を示す(今城, 2002)。

理論の概要

 Brehmが提唱した理論であり、説得の抵抗における理論の一つである。他にも同様の理論として、接種理論(McGuire, 1964)が提出されている。
 ブーメラン効果のメカニズムを、心理的リアクタンスという自由回復を目指す動機づけの側面から説明している。
 行為を禁止され、自由に行えなくなると、自由を回復するために人は禁止された行為をあえて行う。逆に、強制されることでも自由は脅かされ、リアクタンスが喚起される。つまり、他者が意図したこととは逆の方向に個人を動機づける。
 態度の自由の認識→自由への脅威・制限(脅威の認知)→心理的リアクタンスの喚起→説得への抵抗(ブーメラン効果ないしは態度変化の減少)というプロセスを経て生起すると仮定される(上野, 1989)。

リアクタンスの前提条件(preconditions for reactance)

 心理的リアクタンス理論では、自由の期待と重要性が前提条件になる。自由が確信され重要である場合に、その侵害に対するリアクタンスも大きくなる。
 これらの前提が満たされた場合に、同調を求める圧力は逆方向に態度変化をもたらす。逆に、前提が満たされていない場合、リアクタンス喚起は小さい。
 前提が満たされた場合、自由が失われそうになると、それを回復したいという欲求が高まる。すなわち、自由への脅威がリアクタンスを喚起させる(上野,1989)。

効果の測定方法

 リアクタンスの存在はその行動的表出によってのみ検出される。動機づけとしてのリアクタンスには、自由回復行動リアクタンス歓喜の主観的反応があり、それらを測定することで効果を測定することができる(上野, 1989)。

自由回復行動

 リアクタンスは自由回復に役立つ行動、すなわち自由の行使と自由侵害者に攻撃を生じさせる。リアクタンスの直接的な現れは自由回復を目指す行動であり、侵害された自由の行使(exercise of the threatened freedom)が代表である(今城, 2002)。

リアクタンス喚起の主観的反応

 リアクタンス喚起には常に主観的反応が伴うため、自由の直接的回復が生じにくい場合には下記の主観的反応の方がリアクタンス動機づけの指標として適切である(今城, 2002)。
 (1)禁止された行動の魅力(attractiveness of the threatened or eliminated outcome)
   ある行為の遂行が困難になると(自由への脅威)、それに対する欲求が増大し、その行為は以前より魅力的に感じられる。
 (2)敵意(hostility)
   自由を侵害されると、自由侵害者に敵意が生じる。この敵意は、自由回復のための攻撃が行われない場合でも経験され得る。また敵意ほど強くないが、リアクタンス喚起によって相手への好意度が減少する場合がある(derogation)。
 (3)自己支配(self-direction)
   リアクタンス喚起時には、自分はやりたいことだけをやれば良く、少なくともその自由に関しては自分が行動の全支配者である、と感じる傾向が強まる。ただし、行動の決定権が自分にあると感じても、実際に自由に行動できるとは限らない。

ディスクレパンシー仮説

 送り手と受け手との意見の食い違い(discrepancy)が大きいほどリアクタンス喚起も大きくなり、説得への抵抗も増大するとする仮説(上野, 1989)。
 しかし、この仮説を支持しない研究もあり、高圧的な説得的コミユニケーションの効果は、初期立場の位置、またはリアクタンス喚起の必要条件を満たす程度によって異なると考えられる(今城,1996)。

引用文献

 今城周造 (1996). 初期立場と自由への脅威が心理的リアクタンスに及ぼす交互作用効果 心理学研究, 66(6), 431-436.
 今城周造 (2002). 説得への反発:心理的リアクタンス理論 深田博己 (編). 説得心理学ハンドブック―説得コミュニケーション研究の最前線― 北大路書房 pp.329-372.
 上野徳美 (1989). 説得への抵抗と心理的リアクタンス 安藤清志・大坊郁夫・池田謙一 (編) 社会心理学パースペクティブ1――個人から他者へ 誠信書房 pp.250-267.

ステレオタイプ(stereotype)


血液型ステレオタイプ

 ステレオタイプの一つであり、血液型によって性格が異なるという信念のことを指す(松井・詫摩, 1985)。
 血液型ステレオタイプの正確性はなく、実際には血液型と性格の関連性はない(上瀬, 2002)。
 権威的パーソナリティが高い人は、血液型ステレオタイプを信じやすい(権威主義的パーソナリティ理論)。これは血液型という権威体系に頼って複雑な思考判断を避けたいという心理が働くからであると考えられる(松井・詫摩, 1985)。しかし、このような個人レベルの理論では、偏見の社会的、地方的差が説明できず、また、状況によって偏見傾向が変化することを上手く説明できないという問題がある(上瀬, 2002)。

引用文献

 柿本敏克・上瀬由美子・唐沢譲・久保田健市・大江朋子・大石千歳・佐久間勲・杉森伸吉 (2001). 集団・ステレオタイプ 遠藤由美・池上知子・北村英哉・宮本聡介・外山みどり・山本眞理子(編) 社会的認知ハンドブック 北大路書房 pp.107-140.
 上瀬由美子 (2002). ステレオタイプの社会心理学:偏見の解消に向けて サイエンス社
 松井豊・詫摩武俊 (1985). 血液型ステレオタイプについて 人文学報(東京都立大学人文学部), 172, 15-30.

服従(obedience)


服従と同調との違い

同調は、ある被験者が自分と同じ地位で、自分の行動を左右する権利を特に持たない人々に同調する場合を指す。一方で、服従は、権威に従う被験者の行動を指す(Milgram, 1974 山形訳 2008)。

服従の減退要因


権威者の地位が低くなると服従の程度は減退する(Milgram, 1974 山形訳 2008)。
危害を与える相手との距離が身近になるにつれて、服従の程度は減退する。その要因は以下の6つだと考えられる(Milgram, 1974 山形訳 2008)。
 (1)共感の合図
     相手との距離が近づくにつれて共感の合図(苦悶等)が豊かになるため、服従の程度が減退する。
 (2)否認と知覚の搾取
     相手との距離が近づくにつれて相手の存在を意識の外に追い出すことが難しくなるため、服従の程度が減退する。
 (3)相互作用の場
     相手に観察されているという事実が恥や罪悪感を生み出し、服従の程度が減退する。
 (4)行動のつながりの実感
     相手との距離が近づくにつれて自分の行動と相手にもたらす帰結との関係がはっきりと知覚されるため、服従の程度が減退する。
 (5)初期の集団形成
     相手との距離が近づくにつれて相手との集団意識が芽生え、服従の程度が減退する。
 (6)習得した行動傾向
     相手との距離の近さは報復を想起させるために服従の程度が減退する。

引用文献

 Stanley Milgram (1974). Obedience to Authority. HaperCollins Publishes.
 (S. ミルグラム 山形浩生 (訳) (2008). 服従の心理 河出書房新社)

社会的認知(social cognition)


概説

 社会心理学に認知心理学における情報処理的アプローチを取り入れ、社会的対象についての記憶を、認知心理学的概念を用いて研究する分野であり(北村, 1999; 池上・唐沢・唐沢・大平, 2001)、「社会的現象の研究において、その認知的基盤を情報処理的アプローチの観点から研究する研究パラダイム」と定義づけられている(北村, 1999)。

引用文献

 北村英哉 (1999). 社会的認知研究の動向――対人情報の体制化と知識の活性化をめぐって 心理学研究, 70(5), 427-443.
 池上知子・唐沢穣・唐沢かおり・大平英樹 (2001). 社会的認知の心理学―社会を描く心のはたらき― ナカニシヤ出版
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