ここは、どこだ。 『まだ、眼を醒まさぬか』 だれだ、おまえは。 『ふむ、まだ「因子」とやらが足りていないのか・・・』 なんのことだ。なにをいっている。 『脆弱だな、我がヨリシロよ。それでは再び舞い戻ることはまだ無理か』 おまえは・・・ 「・・・はっ!」 目を覚ました時、悠斗はベッドに横たわっていた。 「俺は・・・」 その時「あの惨状」を思い出し、頭を抱える。 「なんで・・・俺はあんなことを・・・」 あの声の主は誰なのだろうか。最後に言っていた事が気になる。 『お前が使命を忘れているのであれば仕方ない。貴様は「記憶の欠片」でも探せばよい』 (記憶の欠片・・・それが俺に必要なものなのか?) 「大尉、入ってもいいか?」 坂本少佐の声が聞こえた。あの姿を見られたのが、少し苦しい。 「あ、はい・・・どうぞ・・・」 「大丈夫か、大尉。時々魘されていたが・・・」 その心配すら、悠斗には心苦しかった。 「・・・それで、俺はどうすればいいんですか」 「無理をするな、大尉。今は休養を・・・」 坂本を手で制止し、悠斗は立ち上がった。 「俺は、戦わなきゃいけないんです。もしかしたら、戦うことで何かが分かるかも知れないんです」 真剣な眼差しの悠斗に対し、坂本は、 「・・・わかった、ついて来い」 と振り返り部屋を出た。 「・・・ありがとうございます」 小さく、悠斗は呟いた。 ブリーフィングルーム――― 「・・・みんな、ごめん」 入っていきなり悠斗は頭を下げた。悠斗の性格上、ここは謝らなければと感じたのだろう。 「なぜ謝る必要がある?」 最初に発言したのはバルクホルンだった。 「しかし、あのときのアレは」 「いーじゃん、もう終わった事なんだからさ」 そう遮ったのはフラウだった。 「でもっ」 「はいこの話おしまーい!それよりさ、コウヅキ博士からお仕事の話だってさ」 「・・・俺たちに?確かに、リオンが配備されてたし・・・何かあるのか・・・?」 その時モニターに通信が入った。 「おっはようおっはようボンジュール♪」 マラカスを振りながら踊っているアマガツがそこにいた。現時刻、午前7時である。 「・・・そ、それで、お話とは・・・」 ミーナ隊長が切り出した。流石に引いている。 「ああ、そうだね。実は、タクラマカン砂漠へ偵察に行って欲しいのだよ」 「・・・なぜそこへ?」 坂本少佐が疑問を投げかけた。 「ほら、例のアンノウンだよ。戦力だけ削るとは、置いてかれたパイロット達が可哀想だよねぇ」 「あいつの正体は分からないのか?」 シャーリーは机に突っ伏しながら言った。 「特機・・・としかなぁ・・・。岩投げたりしてきたって報告がまわってきたから武器は無いと考えてもいいかな」 (拳だけの・・・特機・・・) 悠斗は聞き覚えのある単語のような気がした。 「それと、連邦の部隊が付近で展開しているようだから、発見されないように。では、幸運を祈る」 「了解!」 通信が切断されそして坂本少佐が号令を出す。 「さて、聞いての通りだ。すぐに出撃するぞ!」 「はい!」 そして一斉に準備にかかるメンバー。そしてその中、悠斗は「ある言葉」を思い出す。 (記憶の欠片・・・そこにあるのか・・・?) 一週間前、月・マオインダストリー 「草加君、新造したゲシュペンストのテストによく志願してくれたな」 「いえ、僕もグレイブヤードですし。それに、これは僕の役目ですから」 目の前のゲシュペンストを前にし、リン・マオと草加雅人は話していた。 (陽菜、これで君を守る。どんな敵が相手でも・・・そう、全ては) 「・・・夢のため、か?」 靴音と共に、一人の男が現れた。その服装は連邦の制服ではなかった。 「おまえは・・・キバ!?生きて・・いたのか・・・!?」 「ああ、おかげさまでな」 この時、リン・マオはある違和感に気づいた。 「お前・・・どうやってここに入った?」 キバが不敵な笑みを浮かべた瞬間キバは二人の視界から消えた。そして、 「・・ぐがッ」 キバはサーベルを逆手もちにし、草加の心臓を貫いた。