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PROMISED LAND(3) - (2008/06/19 (木) 15:52:42) の1つ前との変更点
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*&color(red){PROMISEDLAND(3)}
「………馬鹿な、お前は……死を選んだというのか」
ディス・アストラナガンから放たれた瘴気が消えた瞬間、ゼストの力は一瞬で周囲を焼き尽くす。
地面には、残骸のようなディス・アストラナガンが、朽ちた姿で横たわっていた。
呆然と、ただただ立ち尽くすことしかゼスト……いやユーゼスにはできない。
「私を倒すという役目はどうした?そんなところで何を寝ている!?起きろ!」
ディス・アストラナガンの胸をつかみ、強引に眼前に引き寄せる。
……力を使い果たしたディス・アストラナガンは案山子のように為されるがままだ。
「認めん……こんな結末、私は断じて認めない」
乱暴にディス・アストラナガンの体を揺すると、その首が力なく折れ、大地に転がった。
もうその赤い瞳は何も写していない。
ユーゼスは、勝った。
ついに超神となり、宿業の相手を打ち破った。
「今ならお前の世迷言も聞いてやる。お前と私の差はなんだ?
他者がなんだというのだ?―――答えろ、クォヴレー・ゴードン!」
応える声は、ない。あるはずがない。それは、ユーゼス自身知っている。
いつ、どんな時も感じていたもう一人の自分の存在が感じられない。
それが、死を何よりもユーゼスに感じさせる。
「う………おおおおおおおおおおおおおああああああああ!!」
ユーゼスが哭いた。
こんな結末、望んでいなかった。
ただ、イングラムと戦いで、全力で乗り越えたかっただけなのに。
イングラムというもう一人の自分を超えなければ、前に進む意味がなかった。
だから、ここまでゼストの光臨と決着に拘ったというのに。
自分が理想にたどり着く直前で、必ずイングラムは立ち塞がった。
それを超えてこそ、超神になる意義がある。
だというのに……これは何だ?
「イングラムの紛い物が、仲間のために………
何故だ、イングラム。何故お前は全てをクォヴレーに託した」
やはり、応える声はない。
「お前は言っていただろう。
『この世界でも……どの世界でもユーゼスを倒すのは俺の役目だ』と。
だと言うのに、お前が先に消えてどうなる。私はまだここにいるぞ?」
もう、真の意味でユーゼスを知る人間はいない。
話で聞くことはできても、知識として理解することはできても、所詮それは歴史にすぎない。
その時、誰が何を抱いたか?どのような思いを胸に逝くのを見送ったか?
もっとも重要な部分を、ユーゼスと共有できる人間は……もうない。
ユーゼスは、乗り越えた。
……『並行世界の番人』を。
ユーゼスは自由だ。
もはや、だれからも干渉されることはない。
誰にも依って立つ必要がない、完全なる自立。
隣に並ぶ者はいない。
永遠に生き続けるユーゼスにとって、他人など列車の窓の外の風景と同じだ。
自分が動かずとも……過ぎ去り消えていく。
今までもそうだった。
誰もが、あっという間に過ぎ去っていった。
いちいち失うたびに心を動かしては、正気でいられないほどに。
いや、嘘だ。
一人だけいたのだ。
自分を知り、自分と永遠を共有し戦う存在が。
ユーゼスは乗り越えられなかった。
……『イングラム・プリスケン』を。
本当の意味での、孤独。
これから歩む、螺旋を描かない新たな未来には、誰もいない。
「なに、を……私は悩んでいる。これが、私の選んだ道だ。結末だ。
……これから、始まるのだ。新しい、神話が。全てが……」
ユーゼス、独りは寂しいだろう?
幻聴に、ユーゼスは思わず耳を押さえた。
頭の中に反響するクォヴレーの声。
「お前も……イングラムも、何故他者を求める?他者のため全てを投げ打つ?」
ユーゼスは飽き果てるほどの流転で見続けた。
親しい他者の死で、心を乱し変わっていく人間たちは、掃いて捨てるほどいた。
親しくなればなるほど、別れは辛く心をかき乱すものであることは傍観者のユーゼスでも現象として理解できる。
生命体にとって死は最大のストレスだ。
ならば、もはや他人とはいえない存在の死も、最大のストレスといえるだろう。
だから、ユーゼスは誰にも心を許さなかった。
自分は理想をかなえるために生きているのだ。
変わっては、今まで積み立ててきた道のりの意味がなくなってしまう。
死は、自分にとって無意味だ。
自身が死んでもまた次の舞台が自動的に用意され、自分は配置される。
他者が死んでも、書き割りに過ぎないユーゼスの心を動かすことはない。
だというのに、今の自分は何だ。ラミアの死を感じ、何を考えた?
あろうことか、過去もしも側にいてくれる人がいたならば、などと無意識に考えていたではないか。
それでも自分を心から信じ、共に進もうとした人間もいままで、何人かはいた。
だが、ラミアのときのように、それらの手を振り払って騙し利用し切り捨てたのは自分なのだ。
「これでは……喜劇だ……滑稽なだけだ……!」
なんてことはない。
頑なに今の自分を守り、差しのべられていた救いの手を振りほどいた自分。
変わることを恐れ、拒絶してきた。……自分の理想を言い訳に。
なんてことはない。
何故クォヴレーもイングラムも他人を受け入れたのか、なんてことの答えは一つ。
傷つくことを恐れず、変化を受け入れていたからだ。だから、イングラムはクォヴレーに道を譲った。
「なるほど、だれからも否定されるわけだ……私の理想は」
最初は、たしかに理想を叶えることが目的だった。
だが、途中から折れ曲がり、人を拒絶するための理由となった。
拒絶の道具にしているものが、受け入れられると考えること自体愚かしい。
「だが……いまさら戻れはしない」
それこそ、今やめては、いままで死んでいった者たちを愚弄することになる。
さんざん殺しておいて、やめるなどという選択肢は残されていない。
ゼストの手から放たれた白い光が、ディス・アストラナガンを優しく包む。
光の中で、ディス・アストラナガンが解けていく。
「私は、私に還る。……一つに戻る時が来たようだ」
ディス・アストラナガンを溶かした光が、ゆっくりとカラータイマーに吸い込まれていく。
ゼストの体に、黒いラインが刻まれていく。……まるで光の巨人のように。
姿は神聖ラーゼフォンのままだというのに、それだけで酷く様変わりしたように見える。
使えなくなっていた右腕を確認する。
ひび割れていた隙間は、黒いラインが覆うように修復しており、もはや問題はない。
根本的な肉体の脆弱さは、調整が必要なので改善されたわけではないが、前よりは安定している。
「……!黒い、十字架………」
少し眉をあげ、瞳を開ける。
右手の手のひらには、十字に亀裂が入っていたのだろう。
それを埋めるため、手に刻まれた模様は……紛うことなく十字架だった。
一度、右手を握る。
十字架を、強くつかむように。
途端、流れ込む果てしない記憶の断片の数々。
取り込んだ二人の、欠片だ。
「………懐かしい記憶だ」
ゴッドネロスと戦うガイアセイバーズ。
神官ポーをけしかける自分の姿。
SRXの姿のまま封印されたRシリーズの姿。
レーザーブレードを振りかざす宇宙刑事たち。
もう、満足に思い出すことも難しい記憶が、次々と鮮明に押し寄せる。
「……知らない記憶か」
SRXの後継機が、空間を割き、ガドルヴァイクランと戦っている。
真・龍王機と戦いを繰り広げるマシンたち。
星を切り裂くヴィジョン。
これは、クォヴレーの記憶だろう。
共通点は一つ――どの戦いも、決して二人とも独りではなかったことだ。
酷く空虚だ。
ラミアを取り込んだ時を思い返す。
ゼストを確保した瞬間、身を覆った虚脱感の正体は、擦り切れた良心の囁きだったのか。
その後すぐのクォヴレーたちに対する皮肉の数々を思い返す。
思えば、あの時不自然なほど自分は高揚していた。……いや、無自覚的に無理に感情を高揚させていた。
あれは心に入り込む虚無を隠すための、演技だったのかもしれない。
「自分を隠し、偽って……何になる」
自分は戦うことを拒否していたのではないか。
理由をつけてネシャーマたちを彼らにぶつけた。
自分らしくもない、煽るような言動を繰り返し、向こうから仕掛けてくるように促した。
ゲート内でも、自分からは最低限しか攻撃しなかった。
次々と解けていく感情の縄。
感情の裏側にあったものが、整然と浮き上がる。
イングラムを失った時の寂寥感は、孤独からわき上がったものだ。
ヴァルシオンでクォヴレーに敗北した時のゼストへ執着は、『彼らに負けた』という事実から目をそらすため。
記憶を奪い、デスゲームに巻き込んでも、決して2人に勝った気がしなかった。
ゼストに関する心の動きも。
今までの変遷全て。
どれもこれも……説明がつく。
結局、自分は……どうしようもないくらい矛盾している。
理想のためと言っておきながら、イングラムとの決着に、無駄に拘っていた。
そして、いざイングラムを本当に失えば、喪失感に苛まれる。
――――……が必要だった。
「……くだらん」
――――………人が必要だった。
「本当にくだらん」
――――…………他人が必要だった。
「いまさら……そんなものがなんになる」
――――……………を信じ、受け止めてくれる他人が必要だった。
「そんなものは、私の理想の足枷に過ぎん」
――――………………自分を信じ、受け止めてくれる他人が必要だった。
「私は……泣いているのか?」
頬をつたうものを、そっと指で触り、驚いた。
『例え……仮面を纏っても、心の弱さは隠せないのだ……』
「その声は……」
ユートピア・ワールドの中、霧が集まり、ゼストによく似た姿を形作った。
色は、銀と赤……ホンモノの光の巨人の象徴する色。
「そうか……君も私と同じように因果律を書き換える力を得たのだったな……ゾフィー」
『いつも、私は君を心配していた。久しぶりだ、ユーゼス』
私を止めるため、禁断の力を手にした以上、通常の因果律の輪に還れるわけがない。
おそらく、それが理由でここに幽閉されていたのだろう。
どうにか、いつもの仮面を心にかぶる。……私は変わらない。泣いてなどいない。
「なるほどな……フォルカが言っていた。君に力を借りたと。……私を救うなどと戯言も言っていたがな」
『ユーゼス……』
「そんなことはもうどうでもいいのだよ。それよりどうだ?この姿は。あの時に勝るとも劣らない。
完全に融合した私は、本当に君たちと同質の存在になったのだ。もう、君たちに憧れることもない」
『……度の越えた強がりはよすんだ。見ていて……つらい』
ゾフィーに向かって掌を突き付ける。
「……口のきき方を考えてもらおう。フォルカに力を明け渡した君を倒すことなど雑作もないのだよ」
『それで君の気が済むのならやればいい。私たちは……罪を償わねばならないのだから』
「………ッ!その何もかも分かったような態度が気に食わないと言っているのだ!
お前たちはまだ私より高い場所にいるつもりか!?
私を誰かが救うのではない、私が誰かを救うのだ!私がお前たちに代わり平和を守る!」
『……原因を作った私たちには、君を救う資格はない。だから……私は……』
「黙れ!!」
手から放たれた光の矢が、ゾフィーを貫通する。
しかし霧のようにぼんやりとした存在であったゾフィーは、そのまま空気の中に拡散して消えるだけだった。
もう、気配は感じない。この世界から遠くには行けないはずだが……どこに消えたのか。
「……もう、すべて終わりだ。これで……すべて終わった」
ゲート内の空間に長時間いることはできない。
フォルカ、ミオ、シロッコは何処かの世界に飛ばされ……そこで平穏をつかむだろう。
いや、フォルカは次元転移で自分の世界に戻るだろうし、ミオも召喚で帰れる可能性がある。
ジ・Oのバイオセンサーなら、最初から自分の世界を狙って落下できるかもしれない。
木原マサキは、因果地平の彼方に幽閉した。
あそこから脱出することはグランゾンでは絶対に不可能だ。
無駄な力の誇示をする気はもうなくなった。
完全な……勝利。もはや自分を脅かすものはない。
筈だった。
「……!?な、なんだというのだ、この揺れは?」
ユートピア・ワールドが揺れる。
断層など何もなく、自陣など起こるはずもない世界が突然激震を始めたのだ。
世界の崩壊など起こるはずがない。この世界は戦うために作った特別。
ウルトラ6兄弟の力を結集して放つ、宇宙すら容易に崩壊する一撃を受け止めたこの世界が、何故?
「まさか、あれで勝った……などとは思っていないだろうな?ユーゼス」
白い空に、黒い空間の断裂が走る。
そこから聞こえてくる、傲岸不遜な男の声。
忘れるはずもない、その声は………
「木原……マサキ……!」
空間をこじ開け、金と蒼の腕がこちら側に露出する。
馬鹿な……腕は落としたはず。それに、あのグランゾンに再生機能など搭載していない。
いや、そもそもグランゾンでは、因果地平から帰ってこられる筈がない。
ならば何故!?
「ククク……ハハハハハ……ハァーハッハッハッハッ!
いい顔だ、何が起こってるのか、いまいちわかっていない……無知なクズらしいイイ表情だぞ!」
粉々に空間の一部を砕き、その全貌が露わになる。
「馬鹿な……!それは……」
高位の神の後光のように金の輝きを背負い、グランゾンより蒼が強い姿。
グランゾンの装甲をさらに高めると同時、サイバスターにも劣らぬ機動力を確保した力。
カバラ・システムを使い、機動兵器の枠を超え神性を手に入れた魔神皇。
「ネオ・グランゾンだと……!?」
ここに、もう一柱の神が降臨する。
【現在位置/ユートピア・ワールド3日目???】
【ゼスト(ユーゼス・ゴッツォ)=真聖ラーゼフォン(ラーゼフォン)
パイロット&機体状況:胸にカラータイマー装着。体に黒でウルトラマンモチーフのラインが入っている。
怪我は、ディス・アストラナガンを取り込んだ際完治しました。
第一行動方針:ネオ・グランゾンに対処
最終行動方針:ゼストの完成
備考:さまざまなことに関して、かなり悟りました。
備考:真聖ラーゼフォンの顔はユーゼスの素顔=イングラムの顔です】
【木原マサキ搭乗機体:ネオ・グランゾン(スーパーロボット大戦OG外伝)
機体状況:ネオ化。完全回復。
パイロット状態:ネオ化の影響で完治しています。
第一&最終行動方針:ユーゼスを殺す
備考:グランゾンのブラックボックスを解析(特異点についてはまだ把握していません)。
首輪を取り外しました。
首輪3つ保有。首輪100%解析済み。クォヴレーの失われた記憶に興味を抱いています。
機体と首輪のGPS機能が念動力によって作動していると知りました。ダイダルゲートの仕組みを知りました。
ユーゼスの目的を知りました。】
「よけろ!また衝撃波が来るぞ!」
誰よりも前に出て戦っていたフォルカが、後ろにいたシロッコたち二人に声をかける。
直後、ヴァルク・バアルの全身より生み出された魔方陣から、オメガウェーブが全方位に放たれた。
「くっ――!」
衝撃波の渦にグラビトン・ランチャーを叩き込む。
するとその場所だけは衝撃波がねじ曲がり、すっぽりジ・Oとブラックサレナが通れるくらいの穴をあけた。
急いでそこにもぐりこみ、けん制でビームライフルを放つ。
結晶が砕けるが、即座に再構築し、増殖、強化……いや進化していく。
もうほとんどヴァルク・バアルとしての原型は残っていない。
その姿は……知る人がいればこう言い表しただろう、『ズフィルード』と。
【うああああああああああっっ!!】
リョウトの叫び声が、ゲート内部を震わせる。
叫びと共に突き出される右腕が、何かをつかむように広げられた瞬間、ヴァルク・バアルが発光する。
その光は、天使の姿に酷似していた。
「く、まだ落ちんか!?」
理解できない出来事だらけの中、ようやくつかんだシロッコの真理。
何をするかは不明だが、明らかにそのまま行動を許してはまずいことになる。
それに素直に従って、ビームライフルを標準し、叩きつける。
しかし、体に当たったビームライフルは相手の結晶をそぎ落としただけ。
手に向けて放たれた一撃は、不可視の力に阻まれて歪曲する。
「散れ!固まるのは危ういぞ!」
シロッコは、相手を止めることを半ばあきらめ、回避することを前提に指示を出す。
フォルカたちも返事をするのも惜しいと急いで拡散する。
直後、来た。
「……!?なんだ!何故だ、なぜ動かんジ・O!」
完全に固定され、まるで動かないジ・O……いや自分。
機体だけでなくコクピット内にいる自分まで、指一つ動かせないのだ。
どうにか、眼球だけを動かしてヴァルク・バアルの手の中を凝視する。
―――あれは……ジ・Oだと!?
そう口にしたかったのは山々だが、それすら満足にできなくなっていた。
相手の手の中には、小さなジ・Oが映っていた。しかも、武器や道具を持つ手まで再現して。
指に力を入れる様子で、手の中の空間を狭めるヴァルク・バアル。
その様子にシンクロし、自分のいる周囲の空間がたわみ、歪んでいく。
――空間ごと再現し拘束、圧縮している!?信じられん!
シロッコに知る由もないが、これは『偶像の原理』を利用したズフィルードの力だ。
『偶像の原理』とは、オリジナルの姿を真似し、その力や源質を封入すること。
……例えばガンエデンの力を光として重ねることでズフィルードがこの力を行使するように。
だが、これは逆も言える。
つまりミニチュアの世界――この場合ズフィルードの手の中のジ・O――を再現する。
そして再現した世界で起こる事象を現実に移行させるのだ。
高位アインストも使用するこの力の名は――『ジーベンゲバウト』。
たった1機で、全長10km以上の大きさを誇る巨人艦隊数万機をたたき落とすズフィルードの神罰。
「シロッコさん、だいじょぶ!?」
動けなくなった様子を見て何となく危険な気配を感じたのだろう。
ブラックサレナがズフィルードの行為を阻むため突撃する。
しかし、
「ちょっ……――」
当たり前の話だが、手は2つあるのだ。
反対側の手の中にブラックサレナの姿が映し出された途端、ブラックサレナまでもが完全に停止する。
半端にミオの言葉も途切れたままだ。
手を本格的に閉じ始めたのを見て、焦る2人を背に、白い矢がヴァルク・バアルに突き刺さる!
「うおおおおおおお!!」
ヴァルク・バアルの動きを止めるべく、拳を一心不乱に打ち込むフォルカ。
しかし、再生、再結晶化を行うヴァルク・バアルはそれでもなお姿勢を崩さず、拳を握ろうとする。
――頼むぞ、これが最後の希望だ……
やはり口に出せずとも、食い入るように両機を見つめる。
フォルカの拳が、相手を破壊するのが先か、はたまたヴァルク・バアルが自分を握りつぶすのが先か。
もう、すべてはここにかかっている。
そして―――
【うああああああ、あああああ、ああ!?】
ついに、もだえ苦しむヴァルク・バアル。
フォルカの拳がヴァルク・バアルを貫いたのは……次の瞬間だった。
その途端、硬直が溶けて体が自由になる。
「終わったか……」
フォルカの拳が、ヴァルク・バアルを粉々にするのを見て、シロッコは息をつく。
しゃべれることのありがたみを感じ、なんとなく喉をさすってしまった。
「まったく、慣れたつもりだったがそれでも驚かされる」
「本当に……これで終わったの……」
ジ・Oの側にいるブラックサレナの中から、ぐったりした声が漏れる。
「進化再生する、空間ごと握りつぶす……どんな技術で再現しているのか途方もつかんよ。
木星から戻り、世界のすべてを俯瞰したつもりになっていたが私も甘いようだ」
「ってそんなこと言ってる場合じゃないでしょ!?あの二人はどこに消えたのか探さないと……」
「……無理だろうな。我々には、次元を超える力などもたん」
フォルカも、ヤルダバオトを走らせ、二機の側に近付いてくる。
そして、二人に話を切り出すが……あっさりシロッコはそれを蹴散らす。
「俺の力なら、超えられるかもしれん、やってみる価値は――」
「……使った後は、戦えんのだろう。これ以上戦力が減っては行けはしても勝てんよ。
それに、どこか適当な世界に飛ぶのでは意味がない。二人がどこに行ったか見当がつくのかね?」
どうしようもないほどの正論を受けて、フォルカが沈黙する。
そこそこ以上に頭は切れるようだが、やはり見通しが甘いというか……まだまだだな、とシロッコは嘆息する。
「我々がとるべき選択は2つ。
クォヴレーを待ち、ここで待機する。……しかし、危険も多い。ユーゼスの口ぶりではどうなるかもわからん。
もう一つは、フォルカの力でどこかに転移することだ。……もっとも、元の世界に戻るのは絶望的だが」
この状況を打破する第3の選択肢を考えているのか、諦めて絶望しているのか黙り込む2人。
シロッコは、二人を急かすべく口を開く。
なにしろ、ここのことが詳しくわからない以上、次の瞬間崩壊する可能性だってあるかもしれないのだ。
「私としては後者を選びたいところだがね。奴の言うように、こんなところで魂だけになるつもりもない」
「だが、それではユーゼスが……」
「フォルカ・アルバーグ。我々は万能の神ではないのだよ。できることとできないことがある。
言われたもの、託されたものが必ず果たせるとは限らない」
やれやれ、どこまでもユーゼスを救う気のようだ。
それはいたって結構なわけなのだが、少し気負いすぎるところがあるのが難点だ。
これが若さか、と頭を押さえる。
後者の選択を選ぶには、フォルカの助力が必須なのだ。
彼を説き伏せねば話にもならない。
短いが、事情が事情だ。これで考えるのは切り上げてもらうべく口を開こうとしたとき、
『そこまでは……わたしが案内しよう』
「誰だ!?」
反射的にビームライフルを声がするほうに突き付ける。
すると、そこにいたのは………
「ゾフィー!?」
赤と銀の流星模様と、胸の中心に輝く太陽。機動兵器に匹敵する大きさの巨人が立っている。
これが、ユーゼスの目指した……『ウルトラマン』!?
しかし、その姿は不安定だ。質の悪いビデオのノイズのように、時々ぶれている。
胸の星も、光を放つというより、今にも消えそうに点滅を繰り返していた。
「あの世界から出られたのか?」
『いや、違う。どうにか、力を振り絞って、世界の狭間に出るのが……今の私では限界だった』
ゾフィーの右腕が、風に飛ばされる砂のように散っていく。
『ユーゼスは……今ユートピア・ワールドにいる。私が……いたあの世界に』
「……そして、お前はそこに飛ばしてくれると?」
『……君たちにも事情がある。押し付けはしない。だから、一人一人選択してほしい。
三度なら、私のすべてを振り絞れば可能なはずだ……』
「選択?」
ゾフィーが静かに首肯した。
『君たちがいた世界、君たちのいた時間に帰るか……ユーゼスの世界に行くか』
三人が、息をのむ。
三人の最後の決断は―――
【ミオ・サスガ搭乗機体:ブラックサレナ(劇場版機動戦艦ナデシコ)
パイロット状況:強い決意。首輪なし。
機体状況:EN中消費。装甲が少し破損。中のエステバリスカスタムのモーターが磨り減っているため、なにか影響があるかも
現在位置:次元の挟間
第一行動方針:???
最終行動方針:ユーゼスの打倒。最後まで諦めず、皆のことを決して忘れず生きていく。
備考:ディス・アストラナガンの意思(らしきもの?)を、ある程度知覚できます
イングラムが知覚したことを、ミオもある程度知覚できる(霊魂特有の感覚など)
フォルカと情報を交換しました。
マサキの危険性を認識、また生存を確認】
【フォルカ・アルバーク搭乗機体:神化ヤルダバオト(バンプレストオリジナル)
パイロット状況:首輪なし
機体状況:EN小消費
現在位置:次元の挟間
第一行動方針:???
最終行動方針:殺し合いを止める。
備考1:フォルカは念動力を会得しました。
備考2:ソウルゲインはヤルダバオトの形に神化しました。
備考3:ミオ・シロッコと情報を交換しました】
【パプテマス・シロッコ搭乗機体:ジ・O(機動戦士Zガンダム)
パイロット状況:軽度の打ち身(行動に支障はなし)、首輪なし
機体状況:右脚部消失。右隠し腕消失。ビームライフルをいくつか所持。
T-LINKセンサー装備。
グラビトンランチャー所持。ブライソード所持。もしかしたら他にもガメてるかも。
現在位置:次元の挟間
第一行動方針:???
第二行動方針:マサキを排除
最終行動方針:主催者の持つ力を得る。(ゼストの力に興味を持っている?)
補足行動方針:これが終わったら最高級紅茶を試す
(ミオと、まあフォルカとクォヴレーにも賞味させてやらなくもないな)
備考:マサキを危険視。
フォルカと情報を交換しました。
ユウキ・ジェグナン厳選最高級紅茶葉(1回分)を所持】
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| 第258話「[[覇龍 煌めく 刻>覇龍 煌めく 刻(1)]]」| 投下順| (未)|
| 第258話「[[覇龍 煌めく 刻>覇龍 煌めく 刻(1)]]」| 時系列順| (未)|
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| 第258話「[[覇龍 煌めく 刻>覇龍 煌めく 刻(1)]]」| ユーゼス・ゴッツォ| (生存中)|
| 第258話「[[覇龍 煌めく 刻>覇龍 煌めく 刻(1)]]」| クォヴレー・ゴードン| -|
| 第258話「[[覇龍 煌めく 刻>覇龍 煌めく 刻(1)]]」| ミオ・サスガ|(生存中)|
| 第258話「[[覇龍 煌めく 刻>覇龍 煌めく 刻(1)]]」| フォルカ・アルバーグ| (生存中)|
| 第258話「[[覇龍 煌めく 刻>覇龍 煌めく 刻(1)]]」| パプテマス・シロッコ| (生存中)|
| 第258話「[[覇龍 煌めく 刻>覇龍 煌めく 刻(1)]]」| 木原マサキ| (生存中)|
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*&color(red){PROMISEDLAND(3)}
「………馬鹿な、お前は……死を選んだというのか」
ディス・アストラナガンから放たれた瘴気が消えた瞬間、ゼストの力は一瞬で周囲を焼き尽くす。
地面には、残骸のようなディス・アストラナガンが、朽ちた姿で横たわっていた。
呆然と、ただただ立ち尽くすことしかゼスト……いやユーゼスにはできない。
「私を倒すという役目はどうした?そんなところで何を寝ている!?起きろ!」
ディス・アストラナガンの胸をつかみ、強引に眼前に引き寄せる。
……力を使い果たしたディス・アストラナガンは案山子のように為されるがままだ。
「認めん……こんな結末、私は断じて認めない」
乱暴にディス・アストラナガンの体を揺すると、その首が力なく折れ、大地に転がった。
もうその赤い瞳は何も写していない。
ユーゼスは、勝った。
ついに超神となり、宿業の相手を打ち破った。
「今ならお前の世迷言も聞いてやる。お前と私の差はなんだ?
他者がなんだというのだ?―――答えろ、クォヴレー・ゴードン!」
応える声は、ない。あるはずがない。それは、ユーゼス自身知っている。
いつ、どんな時も感じていたもう一人の自分の存在が感じられない。
それが、死を何よりもユーゼスに感じさせる。
「う………おおおおおおおおおおおおおああああああああ!!」
ユーゼスが哭いた。
こんな結末、望んでいなかった。
ただ、イングラムと戦いで、全力で乗り越えたかっただけなのに。
イングラムというもう一人の自分を超えなければ、前に進む意味がなかった。
だから、ここまでゼストの光臨と決着に拘ったというのに。
自分が理想にたどり着く直前で、必ずイングラムは立ち塞がった。
それを超えてこそ、超神になる意義がある。
だというのに……これは何だ?
「イングラムの紛い物が、仲間のために………
何故だ、イングラム。何故お前は全てをクォヴレーに託した」
やはり、応える声はない。
「お前は言っていただろう。
『この世界でも……どの世界でもユーゼスを倒すのは俺の役目だ』と。
だと言うのに、お前が先に消えてどうなる。私はまだここにいるぞ?」
もう、真の意味でユーゼスを知る人間はいない。
話で聞くことはできても、知識として理解することはできても、所詮それは歴史にすぎない。
その時、誰が何を抱いたか?どのような思いを胸に逝くのを見送ったか?
もっとも重要な部分を、ユーゼスと共有できる人間は……もうない。
ユーゼスは、乗り越えた。
……『並行世界の番人』を。
ユーゼスは自由だ。
もはや、だれからも干渉されることはない。
誰にも依って立つ必要がない、完全なる自立。
隣に並ぶ者はいない。
永遠に生き続けるユーゼスにとって、他人など列車の窓の外の風景と同じだ。
自分が動かずとも……過ぎ去り消えていく。
今までもそうだった。
誰もが、あっという間に過ぎ去っていった。
いちいち失うたびに心を動かしては、正気でいられないほどに。
いや、嘘だ。
一人だけいたのだ。
自分を知り、自分と永遠を共有し戦う存在が。
ユーゼスは乗り越えられなかった。
……『イングラム・プリスケン』を。
本当の意味での、孤独。
これから歩む、螺旋を描かない新たな未来には、誰もいない。
「なに、を……私は悩んでいる。これが、私の選んだ道だ。結末だ。
……これから、始まるのだ。新しい、神話が。全てが……」
ユーゼス、独りは寂しいだろう?
幻聴に、ユーゼスは思わず耳を押さえた。
頭の中に反響するクォヴレーの声。
「お前も……イングラムも、何故他者を求める?他者のため全てを投げ打つ?」
ユーゼスは飽き果てるほどの流転で見続けた。
親しい他者の死で、心を乱し変わっていく人間たちは、掃いて捨てるほどいた。
親しくなればなるほど、別れは辛く心をかき乱すものであることは傍観者のユーゼスでも現象として理解できる。
生命体にとって死は最大のストレスだ。
ならば、もはや他人とはいえない存在の死も、最大のストレスといえるだろう。
だから、ユーゼスは誰にも心を許さなかった。
自分は理想をかなえるために生きているのだ。
変わっては、今まで積み立ててきた道のりの意味がなくなってしまう。
死は、自分にとって無意味だ。
自身が死んでもまた次の舞台が自動的に用意され、自分は配置される。
他者が死んでも、書き割りに過ぎないユーゼスの心を動かすことはない。
だというのに、今の自分は何だ。ラミアの死を感じ、何を考えた?
あろうことか、過去もしも側にいてくれる人がいたならば、などと無意識に考えていたではないか。
それでも自分を心から信じ、共に進もうとした人間もいままで、何人かはいた。
だが、ラミアのときのように、それらの手を振り払って騙し利用し切り捨てたのは自分なのだ。
「これでは……喜劇だ……滑稽なだけだ……!」
なんてことはない。
頑なに今の自分を守り、差しのべられていた救いの手を振りほどいた自分。
変わることを恐れ、拒絶してきた。……自分の理想を言い訳に。
なんてことはない。
何故クォヴレーもイングラムも他人を受け入れたのか、なんてことの答えは一つ。
傷つくことを恐れず、変化を受け入れていたからだ。だから、イングラムはクォヴレーに道を譲った。
「なるほど、だれからも否定されるわけだ……私の理想は」
最初は、たしかに理想を叶えることが目的だった。
だが、途中から折れ曲がり、人を拒絶するための理由となった。
拒絶の道具にしているものが、受け入れられると考えること自体愚かしい。
「だが……いまさら戻れはしない」
それこそ、今やめては、いままで死んでいった者たちを愚弄することになる。
さんざん殺しておいて、やめるなどという選択肢は残されていない。
ゼストの手から放たれた白い光が、ディス・アストラナガンを優しく包む。
光の中で、ディス・アストラナガンが解けていく。
「私は、私に還る。……一つに戻る時が来たようだ」
ディス・アストラナガンを溶かした光が、ゆっくりとカラータイマーに吸い込まれていく。
ゼストの体に、黒いラインが刻まれていく。……まるで光の巨人のように。
姿は神聖ラーゼフォンのままだというのに、それだけで酷く様変わりしたように見える。
使えなくなっていた右腕を確認する。
ひび割れていた隙間は、黒いラインが覆うように修復しており、もはや問題はない。
根本的な肉体の脆弱さは、調整が必要なので改善されたわけではないが、前よりは安定している。
「……!黒い、十字架………」
少し眉をあげ、瞳を開ける。
右手の手のひらには、十字に亀裂が入っていたのだろう。
それを埋めるため、手に刻まれた模様は……紛うことなく十字架だった。
一度、右手を握る。
十字架を、強くつかむように。
途端、流れ込む果てしない記憶の断片の数々。
取り込んだ二人の、欠片だ。
「………懐かしい記憶だ」
ゴッドネロスと戦うガイアセイバーズ。
神官ポーをけしかける自分の姿。
SRXの姿のまま封印されたRシリーズの姿。
レーザーブレードを振りかざす宇宙刑事たち。
もう、満足に思い出すことも難しい記憶が、次々と鮮明に押し寄せる。
「……知らない記憶か」
SRXの後継機が、空間を割き、ガドルヴァイクランと戦っている。
真・龍王機と戦いを繰り広げるマシンたち。
星を切り裂くヴィジョン。
これは、クォヴレーの記憶だろう。
共通点は一つ――どの戦いも、決して二人とも独りではなかったことだ。
酷く空虚だ。
ラミアを取り込んだ時を思い返す。
ゼストを確保した瞬間、身を覆った虚脱感の正体は、擦り切れた良心の囁きだったのか。
その後すぐのクォヴレーたちに対する皮肉の数々を思い返す。
思えば、あの時不自然なほど自分は高揚していた。……いや、無自覚的に無理に感情を高揚させていた。
あれは心に入り込む虚無を隠すための、演技だったのかもしれない。
「自分を隠し、偽って……何になる」
自分は戦うことを拒否していたのではないか。
理由をつけてネシャーマたちを彼らにぶつけた。
自分らしくもない、煽るような言動を繰り返し、向こうから仕掛けてくるように促した。
ゲート内でも、自分からは最低限しか攻撃しなかった。
次々と解けていく感情の縄。
感情の裏側にあったものが、整然と浮き上がる。
イングラムを失った時の寂寥感は、孤独からわき上がったものだ。
ヴァルシオンでクォヴレーに敗北した時のゼストへ執着は、『彼らに負けた』という事実から目をそらすため。
記憶を奪い、デスゲームに巻き込んでも、決して2人に勝った気がしなかった。
ゼストに関する心の動きも。
今までの変遷全て。
どれもこれも……説明がつく。
結局、自分は……どうしようもないくらい矛盾している。
理想のためと言っておきながら、イングラムとの決着に、無駄に拘っていた。
そして、いざイングラムを本当に失えば、喪失感に苛まれる。
――――……が必要だった。
「……くだらん」
――――………人が必要だった。
「本当にくだらん」
――――…………他人が必要だった。
「いまさら……そんなものがなんになる」
――――……………を信じ、受け止めてくれる他人が必要だった。
「そんなものは、私の理想の足枷に過ぎん」
――――………………自分を信じ、受け止めてくれる他人が必要だった。
「私は……泣いているのか?」
頬をつたうものを、そっと指で触り、驚いた。
『例え……仮面を纏っても、心の弱さは隠せないのだ……』
「その声は……」
ユートピア・ワールドの中、霧が集まり、ゼストによく似た姿を形作った。
色は、銀と赤……ホンモノの光の巨人の象徴する色。
「そうか……君も私と同じように因果律を書き換える力を得たのだったな……ゾフィー」
『いつも、私は君を心配していた。久しぶりだ、ユーゼス』
私を止めるため、禁断の力を手にした以上、通常の因果律の輪に還れるわけがない。
おそらく、それが理由でここに幽閉されていたのだろう。
どうにか、いつもの仮面を心にかぶる。……私は変わらない。泣いてなどいない。
「なるほどな……フォルカが言っていた。君に力を借りたと。……私を救うなどと戯言も言っていたがな」
『ユーゼス……』
「そんなことはもうどうでもいいのだよ。それよりどうだ?この姿は。あの時に勝るとも劣らない。
完全に融合した私は、本当に君たちと同質の存在になったのだ。もう、君たちに憧れることもない」
『……度の越えた強がりはよすんだ。見ていて……つらい』
ゾフィーに向かって掌を突き付ける。
「……口のきき方を考えてもらおう。フォルカに力を明け渡した君を倒すことなど雑作もないのだよ」
『それで君の気が済むのならやればいい。私たちは……罪を償わねばならないのだから』
「………ッ!その何もかも分かったような態度が気に食わないと言っているのだ!
お前たちはまだ私より高い場所にいるつもりか!?
私を誰かが救うのではない、私が誰かを救うのだ!私がお前たちに代わり平和を守る!」
『……原因を作った私たちには、君を救う資格はない。だから……私は……』
「黙れ!!」
手から放たれた光の矢が、ゾフィーを貫通する。
しかし霧のようにぼんやりとした存在であったゾフィーは、そのまま空気の中に拡散して消えるだけだった。
もう、気配は感じない。この世界から遠くには行けないはずだが……どこに消えたのか。
「……もう、すべて終わりだ。これで……すべて終わった」
ゲート内の空間に長時間いることはできない。
フォルカ、ミオ、シロッコは何処かの世界に飛ばされ……そこで平穏をつかむだろう。
いや、フォルカは次元転移で自分の世界に戻るだろうし、ミオも召喚で帰れる可能性がある。
ジ・Oのバイオセンサーなら、最初から自分の世界を狙って落下できるかもしれない。
木原マサキは、因果地平の彼方に幽閉した。
あそこから脱出することはグランゾンでは絶対に不可能だ。
無駄な力の誇示をする気はもうなくなった。
完全な……勝利。もはや自分を脅かすものはない。
筈だった。
「……!?な、なんだというのだ、この揺れは?」
ユートピア・ワールドが揺れる。
断層など何もなく、自陣など起こるはずもない世界が突然激震を始めたのだ。
世界の崩壊など起こるはずがない。この世界は戦うために作った特別。
ウルトラ6兄弟の力を結集して放つ、宇宙すら容易に崩壊する一撃を受け止めたこの世界が、何故?
「まさか、あれで勝った……などとは思っていないだろうな?ユーゼス」
白い空に、黒い空間の断裂が走る。
そこから聞こえてくる、傲岸不遜な男の声。
忘れるはずもない、その声は………
「木原……マサキ……!」
空間をこじ開け、金と蒼の腕がこちら側に露出する。
馬鹿な……腕は落としたはず。それに、あのグランゾンに再生機能など搭載していない。
いや、そもそもグランゾンでは、因果地平から帰ってこられる筈がない。
ならば何故!?
「ククク……ハハハハハ……ハァーハッハッハッハッ!
いい顔だ、何が起こってるのか、いまいちわかっていない……無知なクズらしいイイ表情だぞ!」
粉々に空間の一部を砕き、その全貌が露わになる。
「馬鹿な……!それは……」
高位の神の後光のように金の輝きを背負い、グランゾンより蒼が強い姿。
グランゾンの装甲をさらに高めると同時、サイバスターにも劣らぬ機動力を確保した力。
カバラ・システムを使い、機動兵器の枠を超え神性を手に入れた魔神皇。
「ネオ・グランゾンだと……!?」
ここに、もう一柱の神が降臨する。
【現在位置/ユートピア・ワールド3日目???】
【ゼスト(ユーゼス・ゴッツォ)=真聖ラーゼフォン(ラーゼフォン)
パイロット&機体状況:胸にカラータイマー装着。体に黒でウルトラマンモチーフのラインが入っている。
怪我は、ディス・アストラナガンを取り込んだ際完治しました。
第一行動方針:ネオ・グランゾンに対処
最終行動方針:ゼストの完成
備考:さまざまなことに関して、かなり悟りました。
備考:真聖ラーゼフォンの顔はユーゼスの素顔=イングラムの顔です】
【木原マサキ搭乗機体:ネオ・グランゾン(スーパーロボット大戦OG外伝)
機体状況:ネオ化。完全回復。
パイロット状態:ネオ化の影響で完治しています。
第一&最終行動方針:ユーゼスを殺す
備考:グランゾンのブラックボックスを解析(特異点についてはまだ把握していません)。
首輪を取り外しました。
首輪3つ保有。首輪100%解析済み。クォヴレーの失われた記憶に興味を抱いています。
機体と首輪のGPS機能が念動力によって作動していると知りました。ダイダルゲートの仕組みを知りました。
ユーゼスの目的を知りました。】
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