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そして狩人は息を潜める - (2007/06/11 (月) 00:14:18) の編集履歴(バックアップ)


そして狩人は息を潜める


「……ファンネルの残りは一つだけ、か。
 これからは後の事を考えていかないと、生き延びるのは難しくなってくるだろうな」
 自機の消耗具合をチェックしながら、アムロは重い溜息を吐く。
 ――先の事を考えずに戦い過ぎた。
 これまでにアムロが仕留めた敵機の数は、確かに相当数に及ぶ。
 だが、幾多の戦いを経た代償として、機体の消耗も激しくなっていた。
 特に補給の効かないファンネルを失った事は、致命的とすら言えるだろう。
 このまま戦い続けていったとして、勝ち抜く事は出来るのか……?
 アムロの脳裏に甦る、昨夜出会った強烈な威圧感を放つ機体――東方不敗の零影。
 もしあの機体と戦う事になったとして、この傷付いた機体で倒す事は出来るのだろうか……。
「くっ……何を弱気になっているんだっ……!」
 自らの弱気を叱責し、アムロは闘志を奮い立たせる。
 戦う事を決意したのは、他の誰でもない自分自身だ。今更、後戻りなど出来るはずが無い。
 殺し合う事を止めてしまうには、あまりにも自分の手は血に汚れ過ぎてしまっている。
 もはや、賽は投げられてしまったのだ。
 戦う以外の選択肢など、とっくの昔に失われている。
「そうだ……戦わなければ、生き残れないんだ……」
 これからは戦闘を終えた後の事まで考えた上で戦っていかなくてはならない。それは事実だ、認めよう。
 だが、だからといって戦いを否定する訳ではない。
 敵を仕留める機会があるならば、それを決して逃しはしない。
 ……そう。自分は決して倒れる訳にはいかないのだ。

「ん……? あ、あれは……っ!?」
 その存在に気が付いたのは、それから数時間後の事だった。
 遙か彼方を進んでいく、規格外な巨体を誇るMA。
MSとは明らかに違い過ぎる大きさのそれに、アムロは思わず驚愕の声を上げていた。
「仕掛けるか……? いや、だが……」
 この会場内を飛行している以上、あれは倒すべき敵の機体だ。
 だが、あまりにもサイズが違い過ぎる。
 ファンネルを殆ど失った今の状態で、あれだけの巨体を叩き伏せられる保障は無い。
 いや、叩き伏せる事が出来たとしても、あれだけのサイズを誇る機体だ。
戦闘不能に追い込むまでには、かなりの時間を要するだろう。
 もし、戦っている間に他の機体が来たとすれば……。
 そして、それが自分と同じ殺し合いに乗っている人間だとしたら……。
「戦っている相手の隙を付いて、後ろから撃つ事も難しくはない」
 卑劣な戦術だ。だが、それだけに効果は大きい。
 恐らくは自分も、そのような隙があれば見逃す事無く行うだろう。
 ……幸いにも、向こうに気付かれた様子は無い。
 向こうの機体が巨大過ぎる為に、こちらから向こうを確認する事は容易でも、その反対は困難なのだ。
「そうだな……ここは、様子を見るか……」
 あれだけの巨体だ。離れた場所から様子を伺い続ける事は、それほど難しい事ではない。
 そう考えて、アムロ・レイは静観を決め込んだ。



【アムロ・レイ 搭乗機体:サザビー(機動戦士ガンダム 逆襲のシャア)
 パイロット状態:良好
 機体状態:シールド、ファンネル残数1、装甲表面が一部融解
 現在位置:C-5
 第一行動方針:慎重に機を窺い、隙のある相手を確実に仕留める
 第二行動方針:東方不敗に警戒
 最終行動方針:ゲームに乗る。生き残る】

【二日目 9:00】