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683 :ひゅうが@恢復中:2014/07/06(日) 08:04:42  戦後夢幻会ネタSS――その1.1「37時間戦争」 ――1951年1月2日(東部時間)午後11時30分 「何だと?!」 ヘンリー・A・ウォレス大統領は家族の団欒を邪魔された不機嫌さを吹き飛ばされ、顔面を硬直させた。 「間違いないのか?」 「はい大統領閣下(ミスタープレジデント)。トウキョウのパットン元帥からも間違いないとの報告が入っています。 現地ホッカイドウの大学に放射線の専門家がおりましたので急きょチトセから偵察機を飛ばしました。 また、ジャップ…失礼日本政府も地震研究所からの報告でこれを確認しています。」 国防総省から駆り出された連絡士官を横に侍らせ、ハリー・S・トルーマン副大統領はわずかに顔をしかめつつタイプされた文章を大統領に手渡した。 「信じられん。空軍は何をしていたのだ?」 「問題の機体は、レーダー反応その他がわが軍のB29に酷似していた模様です。 近郊で目撃した日本陸軍の兵士た赤い星をつけたB29といっていますのでそれほどよく似ていたのでしょう。」 「アレをコピーしていたのか。そういえば機体の返還交渉が不調に終わっていたな。」 ウォレスが首を左右に振る。 トルーマンは、この尊敬すべき「アメリカの良心」が二重の意味で衝撃を受けていることを気の毒に思った。 あの機体――先の対日戦で北海道を爆撃したB29のうち3機ほどがソ連領内に不時着したことは大統領以外にも把握している者が多い。 西海岸を主としてまわっていたトルーマンもその件はよく耳にしている。 このウォレス大統領は、前任者であるルーズベルト大統領とは違って副大統領などの周辺スタッフによく助言を求める。 だがそれは、彼が優柔不断なためではない。前大統領のもとで副大統領をつとめていたウォレスは、彼が亡くなってから大統領が秘密にしていた様々なことに衝撃を受けていたのだ。 有り体に言えば、密室の決断は大概は誤りに終わると彼に悟らせたのは、大戦末期のソ連の動きが理由だった。 現在も裏付け作業が続いている「ヴェノナ」情報、それからわかっているように当時の政府内部には裏切り者がたくさんおり、あまりに多くのことを潜在敵国に漏らしていた。 それだけでなく、決断に至っては外部からの誘導により「彼ら」に利益をもたらすという文字通りの反逆行為と化している。 そうしたことを避けるには、できるだけ多くの声に耳を傾けるべきだとウォレスは考えていた。 ただし、「信頼できる」人物に限って。 そうした大統領の「信頼」は、副大統領の指名を争ったトルーマンにとっても気持ちがよいものである。だからこそ彼はこのような夜中にも関わらずウォレスの横にいたのだった。 「なぜ、ホッカイドウ…いやアサヒカワなのだ?確かに彼らはルモイとアサヒカワを境にした北部を占領させるようにしつこく要求してきていたが。」 「かの地は、エトロフ島やチシマ列島のわが軍基地との連絡基地です。 武器弾薬や必要品の空輸に加えて、人員を各地の基地へ送り込むために主として使用されていました。 現在の行先は、エトロフ島やウルップ島、ヤキジリ島やテウリ島などのソヴィエト極東の監視基地や戦略爆撃機地となっています。」 「つまり、これは報復か?彼らなりの。」 「それに、おっしゃったように政治的意味もあるのでしょう。サハリン…いえカラフトを強引に占拠した後のスターリンは日本北部への進駐を強硬に主張していました。 その最後の要求がルモイとアサヒカワのラインですからね。意趣返しとも。」 「意趣返し? 濡れ手に粟の日本列島分割と太平洋への出口確保に失敗したから? あそこには10万人の人間がいたのだぞ!」 ソファーから立ち上がり、そしてウォレスは力なく座った。 684 :ひゅうが@恢復中:2014/07/06(日) 08:05:29 「100万の死は統計上の数字に過ぎない、か。よくわかったよ。あれは化け物だ。 でなければ化け物のようなナチスを倒せるものか…。」 心配そうにこちらを見る妻をやさしく「すまないが下がっていてくれ」と送り出してからウォレスは考える仕草を見せる。 暖炉では薪がパチパチと燃えており、ナイトガウン姿のウォレスを照らし出す。 まるで禿山の一夜のように、この夜のホワイトハウスには様々な魑魅魍魎が集まってきているようにトルーマンは感じた。 「ハリー。」 「はい。」 来た。とトルーマンは姿勢を正した。 「報復をすべきだと思うかね?確かにアツギ基地には6発の『ロイヤルストレートフラッシュ』を備蓄している。超低温倉庫には3トンの重水素も存在している。 あのルメイが張り切って運用している『ピースメイカー』も現地にはある。」 トルーマンは黙って言葉を待つ。 核兵器の運用は、大統領の専権事項だ。 ニューメキシコ州アラゴモートという場所で人類が神の火を手に入れた日にそうなった。 「この攻撃は、本格的米ソ戦争の引き金とならないか。 ただでさえソ連軍介入はないだろうという希望的観測の結果がこれだ。」 トルーマンは考える。 確かに事態は加速度的に悪化している。だが… 「私は――やるべきだと考えます。」 続けて。とウォレスが目で促す。 「閣下。あそこは、日本は占領下です。ただし、『保障占領下』の。 主権を制限された状態の国のため反撃されないからとあの超兵器を投入する。 閣下、これを許せば我々はドイツでも同様の脅威にさらされるでしょう。 我々はわからせるべきです。何度でも。あれを使えば必ず何かの報いが生まれるということをあのスターリンが理解しなければ、何度でもこの殺戮は繰り広げられると私は思います。」 トルーマンが思ったのは、これが新たなパールハーバーだということだった。 ならば、威力に驚愕し、ためらう大統領にこれが「戦い」であることを思い出させなければならない。 悲劇の引き金を引いたのはだれか。 パールハーバーの場合、お膳立てをしたのは先代大統領とその背後の赤い連中だ。 今回は、隠す必要がなくなったあのモスクワの独裁者が直々に出てきた。 もしかしてあの自称鋼鉄の男は神がかりか何かか? いやそれはどうでもいい。 「ハリー。」 「はい。」 「今度こそ、止めるぞ。」 何を、とはいわなかった。 ――1951年1月4日、モスクワ放送が高らかに懲罰を宣言したまさにその時、厚木基地を3機のB36「ピースメイカー」が飛び立った。 後方から唐突に加えられた「敵」への攻撃に自らも混乱するソ連極東軍は、高度1万3000を飛翔する怪鳥の迎撃に失敗。 ウラジオストク軍港に対しMk4mod2核弾頭1発が使用された。 弾頭シェル外郭に液体重水素を有するこの弾頭はTNT火薬220キロトン相当の出力で旭川と同様の惨劇を出現させる。 だが、これに対する反応もまた爆発であった。 1月5日、空に張られた厳戒態勢を嘲笑うかのように北海道函館市に対して攻撃が加えられた。 結局、これに対する反撃は「3倍攻撃」によってようやく危機のエスカレーションは停止することになる。 人類は、自らの行いに恐怖した。
683 :ひゅうが@恢復中:2014/07/06(日) 08:04:42  戦後夢幻会ネタSS――その1.1「三十七時間戦争」 ――1951年1月2日(東部時間)午後11時30分 「何だと?!」 ヘンリー・A・ウォレス大統領は家族の団欒を邪魔された不機嫌さを吹き飛ばされ、顔面を硬直させた。 「間違いないのか?」 「はい大統領閣下(ミスタープレジデント)。トウキョウのパットン元帥からも間違いないとの報告が入っています。 現地ホッカイドウの大学に放射線の専門家がおりましたので急きょチトセから偵察機を飛ばしました。 また、ジャップ…失礼日本政府も地震研究所からの報告でこれを確認しています。」 国防総省から駆り出された連絡士官を横に侍らせ、ハリー・S・トルーマン副大統領はわずかに顔をしかめつつタイプされた文章を大統領に手渡した。 「信じられん。空軍は何をしていたのだ?」 「問題の機体は、レーダー反応その他がわが軍のB29に酷似していた模様です。 近郊で目撃した日本陸軍の兵士た赤い星をつけたB29といっていますのでそれほどよく似ていたのでしょう。」 「アレをコピーしていたのか。そういえば機体の返還交渉が不調に終わっていたな。」 ウォレスが首を左右に振る。 トルーマンは、この尊敬すべき「アメリカの良心」が二重の意味で衝撃を受けていることを気の毒に思った。 あの機体――先の対日戦で北海道を爆撃したB29のうち3機ほどがソ連領内に不時着したことは大統領以外にも把握している者が多い。 西海岸を主としてまわっていたトルーマンもその件はよく耳にしている。 このウォレス大統領は、前任者であるルーズベルト大統領とは違って副大統領などの周辺スタッフによく助言を求める。 だがそれは、彼が優柔不断なためではない。前大統領のもとで副大統領をつとめていたウォレスは、彼が亡くなってから大統領が秘密にしていた様々なことに衝撃を受けていたのだ。 有り体に言えば、密室の決断は大概は誤りに終わると彼に悟らせたのは、大戦末期のソ連の動きが理由だった。 現在も裏付け作業が続いている「ヴェノナ」情報、それからわかっているように当時の政府内部には裏切り者がたくさんおり、あまりに多くのことを潜在敵国に漏らしていた。 それだけでなく、決断に至っては外部からの誘導により「彼ら」に利益をもたらすという文字通りの反逆行為と化している。 そうしたことを避けるには、できるだけ多くの声に耳を傾けるべきだとウォレスは考えていた。 ただし、「信頼できる」人物に限って。 そうした大統領の「信頼」は、副大統領の指名を争ったトルーマンにとっても気持ちがよいものである。だからこそ彼はこのような夜中にも関わらずウォレスの横にいたのだった。 「なぜ、ホッカイドウ…いやアサヒカワなのだ?確かに彼らはルモイとアサヒカワを境にした北部を占領させるようにしつこく要求してきていたが。」 「かの地は、エトロフ島やチシマ列島のわが軍基地との連絡基地です。 武器弾薬や必要品の空輸に加えて、人員を各地の基地へ送り込むために主として使用されていました。 現在の行先は、エトロフ島やウルップ島、ヤキジリ島やテウリ島などのソヴィエト極東の監視基地や戦略爆撃機地となっています。」 「つまり、これは報復か?彼らなりの。」 「それに、おっしゃったように政治的意味もあるのでしょう。サハリン…いえカラフトを強引に占拠した後のスターリンは日本北部への進駐を強硬に主張していました。 その最後の要求がルモイとアサヒカワのラインですからね。意趣返しとも。」 「意趣返し? 濡れ手に粟の日本列島分割と太平洋への出口確保に失敗したから? あそこには10万人の人間がいたのだぞ!」 ソファーから立ち上がり、そしてウォレスは力なく座った。 684 :ひゅうが@恢復中:2014/07/06(日) 08:05:29 「100万の死は統計上の数字に過ぎない、か。よくわかったよ。あれは化け物だ。 でなければ化け物のようなナチスを倒せるものか…。」 心配そうにこちらを見る妻をやさしく「すまないが下がっていてくれ」と送り出してからウォレスは考える仕草を見せる。 暖炉では薪がパチパチと燃えており、ナイトガウン姿のウォレスを照らし出す。 まるで禿山の一夜のように、この夜のホワイトハウスには様々な魑魅魍魎が集まってきているようにトルーマンは感じた。 「ハリー。」 「はい。」 来た。とトルーマンは姿勢を正した。 「報復をすべきだと思うかね?確かにアツギ基地には6発の『ロイヤルストレートフラッシュ』を備蓄している。超低温倉庫には3トンの重水素も存在している。 あのルメイが張り切って運用している『ピースメイカー』も現地にはある。」 トルーマンは黙って言葉を待つ。 核兵器の運用は、大統領の専権事項だ。 ニューメキシコ州アラゴモートという場所で人類が神の火を手に入れた日にそうなった。 「この攻撃は、本格的米ソ戦争の引き金とならないか。 ただでさえソ連軍介入はないだろうという希望的観測の結果がこれだ。」 トルーマンは考える。 確かに事態は加速度的に悪化している。だが… 「私は――やるべきだと考えます。」 続けて。とウォレスが目で促す。 「閣下。あそこは、日本は占領下です。ただし、『保障占領下』の。 主権を制限された状態の国のため反撃されないからとあの超兵器を投入する。 閣下、これを許せば我々はドイツでも同様の脅威にさらされるでしょう。 我々はわからせるべきです。何度でも。あれを使えば必ず何かの報いが生まれるということをあのスターリンが理解しなければ、何度でもこの殺戮は繰り広げられると私は思います。」 トルーマンが思ったのは、これが新たなパールハーバーだということだった。 ならば、威力に驚愕し、ためらう大統領にこれが「戦い」であることを思い出させなければならない。 悲劇の引き金を引いたのはだれか。 パールハーバーの場合、お膳立てをしたのは先代大統領とその背後の赤い連中だ。 今回は、隠す必要がなくなったあのモスクワの独裁者が直々に出てきた。 もしかしてあの自称鋼鉄の男は神がかりか何かか? いやそれはどうでもいい。 「ハリー。」 「はい。」 「今度こそ、止めるぞ。」 何を、とはいわなかった。 ――1951年1月4日、モスクワ放送が高らかに懲罰を宣言したまさにその時、厚木基地を3機のB36「ピースメイカー」が飛び立った。 後方から唐突に加えられた「敵」への攻撃に自らも混乱するソ連極東軍は、高度1万3000を飛翔する怪鳥の迎撃に失敗。 ウラジオストク軍港に対しMk4mod2核弾頭1発が使用された。 弾頭シェル外郭に液体重水素を有するこの弾頭はTNT火薬220キロトン相当の出力で旭川と同様の惨劇を出現させる。 だが、これに対する反応もまた爆発であった。 1月5日、空に張られた厳戒態勢を嘲笑うかのように北海道函館市に対して攻撃が加えられた。 結局、これに対する反撃は「3倍攻撃」によってようやく危機のエスカレーションは停止することになる。 人類は、自らの行いに恐怖した。

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