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111: 影響を受ける人 :2017/02/05(日) 22:15:11
この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。
オリジナル設定、個人的解釈が入っています。
それでも良い、という方のお読みください。
提督憂鬱×ストパン+零
第百二話 ―扶桑海事変-06―
ネウロイ側の大攻勢に、扶桑皇国軍は苦戦を強いらていた。
しかし作戦の推移としては順調と言ってよく。作戦段階は次のステップに無情にも進められていく。
速度調整を行っていた台風が、“ヤマ”の方に向けて進路をとった。
それを知らぬ相手は、大量に降り始めた雨に辟易し始める。
最前線となっている打撃艦隊の方には大量の雲が流れているが、雨や風は吹いていないので支障は出ていない。
故に安全な後方にいた“ヤマ”は、大量の水である雨を避けるために移動を開始した。
そんな事は許さないリーダー格の“スズメバチ”であったが、部下も嫌気がさし始めており。
その訴えを無視することは出来なかった。
憮然としつつも士気を落とす事を良しとは思っていないので、「何かあったならばすぐに進路を変える。」という条件を飲ませるだけにとどめた。
そして彼等は、台風の目に遭遇する。
雨が降らず。日差しが見える空間を見つけた部下の誘導により、彼等は“ヤマ”が出しうる最大速度で移動。
この時、この戦場まで台風を強化しながら連れてきた天候術士達は退避しつつ、秋月隊がその任務を継いでいた。
だが、予想していたよりも台風の制御は難しいものだった。
(くぅ・・・ これはなかなか手ごわいわね。一応制御は出来るけど・・・)
隊長の秋月璃子は、冷や汗を流しながらも周りを見渡す。
副隊長の木更津千早が眉間に皺を寄せているのに対し、天宮春香はちょっと眉を上げている。
「天宮さん。もう少し制御をうまくしなさい。」
「ふぇ?」
「副隊長が貴方の分も負担しているから、少し楽なだけなのよ」
「す、すみません!?」
注意を促すと、慌てて制御力に魔力を回し始めた。
千早は内心で溜息を吐きつつも、軽く隊長に対して頭を垂れる。
そして・・・ 目標が台風の目の中に侵入してきた。
「お、おおきい・・・」
改めて大きさを再確認した春香の声は震えていた。
それは他のメンバーも同様であり、璃子も知らず知らずの内に生唾を飲み込む。
そして号令を下した。
「全員傾注! これより、結界を張ります!!」
――北郷部隊が駐屯する基地――
“オニグモ”が打撃艦隊に食らいついたという報は、すぐさま北郷章香の元に届けられた。
章香は副官の旭川梨奈と共に地図で距離を確認する。
飛び立つ時間を暗算で計算し、司令室を出て行く。
「作戦開始ですかぁ。」
「ああ、ここで勝たなければ。皇国に明日は無い。」
「重すぎて、息が詰まりますねぇ。」
「軽い話ではない。」
「軽すぎて空の向こうに行けたらいいですねぇ。」
「いや、それは上がり過ぎだろう・・・」
緊張感の欠片も無い会話をしつつ、二人は会議室に入った。
そこにはすでに突入部隊として再編成された新北郷隊メンバーがすでに着席している。
一応部隊別に分かれているが、最も背のデカイ真嶋志麻が存在する関係上階級別では無く、背の大きさ順で座っている。
それでも真嶋志麻のデカさは際立っているが。
「すでに察していると思うが、我々の出撃時刻が決まった。
そして輸送機で戦場近くまで運搬してもらう。
陸軍側もほぼ同時刻に出撃するだろう。
敵は罠にかかり、我々は敵の護衛戦力を削る。
敵戦力は“スズメバチ”が主力だが、おおよそ20%前後だろうな。
“アホウドリ”が4体ほどいる。これは早急に片づける必要性がある。」
ちらりと視線のみを動かして坂本美緒の顔を見る。
戦場に出て以来、かなり重要な任務を割り当てられる事となった少女の表情は、真っ直ぐ此方を見返している。
己のなす事をしっかり把握しているからだろう。
内心で安堵の溜息を吐き、すぐに視線を前に戻す。
112: 影響を受ける人 :2017/02/05(日) 22:15:57
「続いて護衛戦力を削った後だが・・・ 懸念材料である敵の増援をどうするかだ。
一番良いのは打撃艦隊が素早く到着し、敵を粉砕する事だ。
だが、そう上手くはいかないだろう。最悪も想定し、対処せねばならない。
あちらさんも罠だと気が付けば、増援も速力を上げてくるだろう。
今回の台風を利用した罠は戦艦を守る為のシールドを張る事と、内部から出るのを防ぐ結界を張る事のみに集中運用されている。
我々は出入り可能だが、相手は出ることは出来ない。しかし侵入は可能だ。
侵入された場合。出来うる限り戦力を減らす。
“オニグモ”の相手は特殊武装を下賜されたメンバーで対処する。」
対大型ネウロイの攻略法はまだ確定されていない。
キチガイじみた性能を持つ武装を渡されたメンバーで攻略する事が、最も安全であるという結論が江藤敏子との話し合いで決められている。
「他に質問はあるか?」
最後に隊員達に聞き、全員の顔を見渡す。すると、珍しく志麻が手を上げていた。
何か不備でもあったのだろうか?
「どうした?」
「いや。細かいのは相変わらずわからねけどざ。やっている事は、がわんねだろう?」
「そうだな。囮と本命。大陸でやっている事と、対して変わらないな。」
「わがりやすくでいいげんどな。でもよ。あいつ等だでっよ。わかっていると思うぐあ?」
「つまり・・・ 何か隠し玉が有ると?」
「それが難なのかは、わかんんえげどな。」
ふむ、と考え込む。
改めて言われると、そうかもしれないという考えが浮かぶ。
なにしろ突撃しか能の無い奴思っていた“オニグモ”が、急速後退をした時などがいい例だろう。
この場合は・・・“ヤマ”が何か隠し玉を持っている事か?
それとも?
「考えていても埒が明かんな。」
「こういう場合はぁ。臨機応変に、迅速に対処すればいいですよぉ。」
「・・・その言葉。 ・・・小説に書いてあった、ダメな指揮官の物ではないか?」
梨奈に対して旗本サエが突っ込みを入れると、ちいさな笑い声が部屋に満ちる。
どうやら程よい緊張感と余裕を持っているようだ。
これならば安心して空を飛べるだろう。
「これ以上の質問は無いな。
ならば解散とする! 時間はそれほどない。
各自装備の点検を怠るな!!」
――狐狸部隊が駐屯する基地――
整備員が格納庫内を走り回っている。
これから出撃をするウィッチ達の、ストライカーの始動の為だ。
大陸で経験した様に、フォークリフトで台座ごと滑走路まで運搬される手はずとなっている。
視線の先では輸送機が、大きな翼をもったグライダーを引っ張って。
「くぅ~」
狐火隊隊長穴吹智子は軽く背伸びをする。
腕を伸ばし思いっきり背を伸ばして置く。昨晩はちょっと興奮していたのかなかなか寝付けなかった。
身体を伸ばすのを止め、大きく息を吐くと、視界内に利き腕に装着した籠手がみえる。
初めて使った時は驚いて腰が抜けそうになった。
しかし・・・
「むふふふ♪」
使い魔がキツネである自分にはぴったりだと思うし、コン平も頷いている気がする。
上機嫌ににやついていると、新たな副隊長が呆れて小突いてきた。
「あぃた。」
「もうすぐ出撃なんですから。しっかりしてください。」
「わかっているってば。」
(ほんとか・・・?)
加東圭子よりも年上の副隊長は、不審そうな顔で睨みつける。
さすがにそんな目で見られてはにやけるのを止めなければならない。頬を軽く叩いて気合を入れ直す。
ほぼ同時に整備員から声を掛けられた。
「移動しますよ。しっかり捕まって下さい。」
「了解。頼むわね。」
「ええ。戦果、期待しています。自分、狐火隊に賭けていますので。」
「了解、了解。期待しなさいな。」
最後に頼みますよと言って離れると、衝撃が背中の方から伝わってきた。
そして浮遊感が少しだけあった後、視界が前方に移動していく。
格納庫から出ると、眩しい日差しが飛行場を照らしており、非常に眩しい。
定位置に着くまで各自改めて装備した道具の具合を見ている。
しかし誰しも無言で有り、話しかけるものはいなかった。
113: 影響を受ける人 :2017/02/05(日) 22:16:44
智子も愛刀の位置を確かめ、次に銃器を弄る。ついでに術符がきちんと入っているかも見やる。
そうしている内に定位置に着いたのか、ガクンと衝撃が入った。
目の前には真っ直ぐに舗装された空への道がある。
「よし。狐火隊、出撃!」
「「「「「了解!」」」」」
最初に智子が飛びだし、次いで副隊長と隊員が飛び出す。
すぐにフォークリフトが全速力で脇にずれ、第二陣として隊員二名と弾薬係に任命された中森彩子が飛び立つ。
智子は十分滑走した後に上昇に入り、既定の高度に達すると水平飛行に入る。
眼下を見れば新設された第三の部隊、犬化隊の出撃する場面が見えた。
「うし。犬化隊出撃!」
「「「「「了解!」」」」」
彼女等も狐火隊や、狸釜隊同様に危なげなく固定台から飛び出す。
元狐火隊副隊長は、上手く部下を掌握しているらしく。短い協調訓練でも、特に目立った問題は起こしていない。
対して狐火隊は、新たな部下が頭痛の種になりつつあった。
「問題無しだね。」「トラブル無しつまらない。」
「アンタ等ねぇ・・・」
不服そうに言う双子の姉妹が智子の横に並んだ。
不和ヒビキ・スズ両名は特殊武装の特性上、切込みを担う狐火隊の隊員として入れられた。
が、その個性的過ぎる姉妹の連携は、姉妹間ではいいのだが隊員と協調となるといささか問題が多い。
智子同様に特殊武装を気に入った姉妹は、隊長になる前の智子張りに前線に突撃して行く。
それを止めるのが隊長の役割なわけだが・・・
(鎌鼬隊隊長に、どうやって制御していたのか聞けばよかった・・・)
後悔先に絶たず。
忙しかったという言い訳があるが、それでも努力すべきだったろうと、後悔しきりだ。
当初は同じ接近戦趣向の同志だったのに・・・
そんな苦労をはた目から見つつ、隊長職を無難にこなす圭子は副官としてやってきた元狛犬隊副隊長の、江草貴子をみやる。
「どう。武装の調子は?」
「大丈夫ですよ~ 【鬼支腕(きしで)】のお蔭で腕の負担は無いですし~」
大型機関砲を獲物とする彼女だが。今回初めて装備した武装を 背負って いる。
倉崎製が用意できる最大口径37ミリのベルト給弾式機関砲だ。
対大型装備として開発が進められていた装備で。まだ試作段階の武装でもある。
しかし完成度は高く、あとは問題の洗い出しだけという代物だ。
ちなみにベルト給弾式なのは、転生者の中で「カッコいいから」という理由だけで開発した馬鹿のせいだったりする。
「はやく、ぶっ放したいですね~」
「そうね。その機会が有れば、遠慮なく叩き込んで。」
「了解です~」
元々狛犬隊の副官だったこともあり、安心していろいろ任せる事ができる。
圭子自身、サボる智子の尻拭いをし続けた事もあるので安定感は抜群だ。
犬化隊は、主に後方から援護射撃をする任務を帯びている。
狸釜隊は中距離での戦闘がメインであり。加藤武子の大隊直率の部隊は遊撃だ。
全員が集合したのを確認した武子は、輸送機に近づく。
「これより我々は目標地点に向かう。運搬よろしく頼む。」
『ああ、まかせてくれ。こんなロートルだが、それ位は出来るさ。』
輸送機を操縦しているのは、高齢のパイロットたち。
最前線で戦うには厳しく、おとなしく輸送任務に就いた男達だ。
そんな彼等は、彼女等を運ぶ任務を受けた事を誉れとしていた。
『安全に、送り届けてやるよ。』
以上です。
輸送機が引っ張っているグライダーは、非力ながらも発動機付きで操縦手もいます。
倉崎製の、ウィッチに負担をかけずに最前線に連れて行くための試作兵装です。
鋼管布張りの簡単な作りで、攻撃喰らえば簡単に落ちます。
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111: 影響を受ける人 :2017/02/05(日) 22:15:11
この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。
オリジナル設定、個人的解釈が入っています。
それでも良い、という方のお読みください。
提督憂鬱×ストパン+零
第百二話 ―扶桑海事変-06―
ネウロイ側の大攻勢に、扶桑皇国軍は苦戦を強いらていた。
しかし作戦の推移としては順調と言ってよく。作戦段階は次のステップに無情にも進められていく。
速度調整を行っていた台風が、“ヤマ”の方に向けて進路をとった。
それを知らぬ相手は、大量に降り始めた雨に辟易し始める。
最前線となっている打撃艦隊の方には大量の雲が流れているが、雨や風は吹いていないので支障は出ていない。
故に安全な後方にいた“ヤマ”は、大量の水である雨を避けるために移動を開始した。
そんな事は許さないリーダー格の“スズメバチ”であったが、部下も嫌気がさし始めており。
その訴えを無視することは出来なかった。
憮然としつつも士気を落とす事を良しとは思っていないので、「何かあったならばすぐに進路を変える。」という条件を飲ませるだけにとどめた。
そして彼等は、台風の目に遭遇する。
雨が降らず。日差しが見える空間を見つけた部下の誘導により、彼等は“ヤマ”が出しうる最大速度で移動。
この時、この戦場まで台風を強化しながら連れてきた天候術士達は退避しつつ、秋月隊がその任務を継いでいた。
だが、予想していたよりも台風の制御は難しいものだった。
(くぅ・・・ これはなかなか手ごわいわね。一応制御は出来るけど・・・)
隊長の秋月璃子は、冷や汗を流しながらも周りを見渡す。
副隊長の木更津千早が眉間に皺を寄せているのに対し、天宮春香はちょっと眉を上げている。
「天宮さん。もう少し制御をうまくしなさい。」
「ふぇ?」
「副隊長が貴方の分も負担しているから、少し楽なだけなのよ」
「す、すみません!?」
注意を促すと、慌てて制御力に魔力を回し始めた。
千早は内心で溜息を吐きつつも、軽く隊長に対して頭を垂れる。
そして・・・ 目標が台風の目の中に侵入してきた。
「お、おおきい・・・」
改めて大きさを再確認した春香の声は震えていた。
それは他のメンバーも同様であり、璃子も知らず知らずの内に生唾を飲み込む。
そして号令を下した。
「全員傾注! これより、結界を張ります!!」
――北郷部隊が駐屯する基地――
“オニグモ”が打撃艦隊に食らいついたという報は、すぐさま北郷章香の元に届けられた。
章香は副官の旭川梨奈と共に地図で距離を確認する。
飛び立つ時間を暗算で計算し、司令室を出て行く。
「作戦開始ですかぁ。」
「ああ、ここで勝たなければ。皇国に明日は無い。」
「重すぎて、息が詰まりますねぇ。」
「軽い話ではない。」
「軽すぎて空の向こうに行けたらいいですねぇ。」
「いや、それは上がり過ぎだろう・・・」
緊張感の欠片も無い会話をしつつ、二人は会議室に入った。
そこにはすでに突入部隊として再編成された新北郷隊メンバーがすでに着席している。
一応部隊別に分かれているが、最も背のデカイ真嶋志麻が存在する関係上階級別では無く、背の大きさ順で座っている。
それでも真嶋志麻のデカさは際立っているが。
「すでに察していると思うが、我々の出撃時刻が決まった。
そして輸送機で戦場近くまで運搬してもらう。
陸軍側もほぼ同時刻に出撃するだろう。
敵は罠にかかり、我々は敵の護衛戦力を削る。
敵戦力は“スズメバチ”が主力だが、おおよそ20%前後だろうな。
“アホウドリ”が4体ほどいる。これは早急に片づける必要性がある。」
ちらりと視線のみを動かして坂本美緒の顔を見る。
戦場に出て以来、かなり重要な任務を割り当てられる事となった少女の表情は、真っ直ぐ此方を見返している。
己のなす事をしっかり把握しているからだろう。
内心で安堵の溜息を吐き、すぐに視線を前に戻す。
112: 影響を受ける人 :2017/02/05(日) 22:15:57
「続いて護衛戦力を削った後だが・・・ 懸念材料である敵の増援をどうするかだ。
一番良いのは打撃艦隊が素早く到着し、敵を粉砕する事だ。
だが、そう上手くはいかないだろう。最悪も想定し、対処せねばならない。
あちらさんも罠だと気が付けば、増援も速力を上げてくるだろう。
今回の台風を利用した罠は戦艦を守る為のシールドを張る事と、内部から出るのを防ぐ結界を張る事のみに集中運用されている。
我々は出入り可能だが、相手は出ることは出来ない。しかし侵入は可能だ。
侵入された場合。出来うる限り戦力を減らす。
“オニグモ”の相手は特殊武装を下賜されたメンバーで対処する。」
対大型ネウロイの攻略法はまだ確定されていない。
キチガイじみた性能を持つ武装を渡されたメンバーで攻略する事が、最も安全であるという結論が江藤敏子との話し合いで決められている。
「他に質問はあるか?」
最後に隊員達に聞き、全員の顔を見渡す。すると、珍しく志麻が手を上げていた。
何か不備でもあったのだろうか?
「どうした?」
「いや。細かいのは相変わらずわからねけどざ。やっている事は、がわんねだろう?」
「そうだな。囮と本命。大陸でやっている事と、対して変わらないな。」
「わがりやすくでいいげんどな。でもよ。あいつ等だでっよ。わかっていると思うぐあ?」
「つまり・・・ 何か隠し玉が有ると?」
「それが難なのかは、わかんんえげどな。」
ふむ、と考え込む。
改めて言われると、そうかもしれないという考えが浮かぶ。
なにしろ突撃しか能の無い奴思っていた“オニグモ”が、急速後退をした時などがいい例だろう。
この場合は・・・“ヤマ”が何か隠し玉を持っている事か?
それとも?
「考えていても埒が明かんな。」
「こういう場合はぁ。臨機応変に、迅速に対処すればいいですよぉ。」
「・・・その言葉。 ・・・小説に書いてあった、ダメな指揮官の物ではないか?」
梨奈に対して旗本サエが突っ込みを入れると、ちいさな笑い声が部屋に満ちる。
どうやら程よい緊張感と余裕を持っているようだ。
これならば安心して空を飛べるだろう。
「これ以上の質問は無いな。
ならば解散とする! 時間はそれほどない。
各自装備の点検を怠るな!!」
――狐狸部隊が駐屯する基地――
整備員が格納庫内を走り回っている。
これから出撃をするウィッチ達の、ストライカーの始動の為だ。
大陸で経験した様に、フォークリフトで台座ごと滑走路まで運搬される手はずとなっている。
視線の先では輸送機が、大きな翼をもったグライダーを引っ張って。
「くぅ~」
狐火隊隊長穴吹智子は軽く背伸びをする。
腕を伸ばし思いっきり背を伸ばして置く。昨晩はちょっと興奮していたのかなかなか寝付けなかった。
身体を伸ばすのを止め、大きく息を吐くと、視界内に利き腕に装着した籠手がみえる。
初めて使った時は驚いて腰が抜けそうになった。
しかし・・・
「むふふふ♪」
使い魔がキツネである自分にはぴったりだと思うし、コン平も頷いている気がする。
上機嫌ににやついていると、新たな副隊長が呆れて小突いてきた。
「あぃた。」
「もうすぐ出撃なんですから。しっかりしてください。」
「わかっているってば。」
(ほんとか・・・?)
加東圭子よりも年上の副隊長は、不審そうな顔で睨みつける。
さすがにそんな目で見られてはにやけるのを止めなければならない。頬を軽く叩いて気合を入れ直す。
ほぼ同時に整備員から声を掛けられた。
「移動しますよ。しっかり捕まって下さい。」
「了解。頼むわね。」
「ええ。戦果、期待しています。自分、狐火隊に賭けていますので。」
「了解、了解。期待しなさいな。」
最後に頼みますよと言って離れると、衝撃が背中の方から伝わってきた。
そして浮遊感が少しだけあった後、視界が前方に移動していく。
格納庫から出ると、眩しい日差しが飛行場を照らしており、非常に眩しい。
定位置に着くまで各自改めて装備した道具の具合を見ている。
しかし誰しも無言で有り、話しかけるものはいなかった。
113: 影響を受ける人 :2017/02/05(日) 22:16:44
智子も愛刀の位置を確かめ、次に銃器を弄る。ついでに術符がきちんと入っているかも見やる。
そうしている内に定位置に着いたのか、ガクンと衝撃が入った。
目の前には真っ直ぐに舗装された空への道がある。
「よし。狐火隊、出撃!」
「「「「「了解!」」」」」
最初に智子が飛びだし、次いで副隊長と隊員が飛び出す。
すぐにフォークリフトが全速力で脇にずれ、第二陣として隊員二名と弾薬係に任命された中森彩子が飛び立つ。
智子は十分滑走した後に上昇に入り、既定の高度に達すると水平飛行に入る。
眼下を見れば新設された第三の部隊、犬化隊の出撃する場面が見えた。
「うし。犬化隊出撃!」
「「「「「了解!」」」」」
彼女等も狐火隊や、狸釜隊同様に危なげなく固定台から飛び出す。
元狐火隊副隊長は、上手く部下を掌握しているらしく。短い協調訓練でも、特に目立った問題は起こしていない。
対して狐火隊は、新たな部下が頭痛の種になりつつあった。
「問題無しだね。」「トラブル無しつまらない。」
「アンタ等ねぇ・・・」
不服そうに言う双子の姉妹が智子の横に並んだ。
不和ヒビキ・スズ両名は特殊武装の特性上、切込みを担う狐火隊の隊員として入れられた。
が、その個性的過ぎる姉妹の連携は、姉妹間ではいいのだが隊員と協調となるといささか問題が多い。
智子同様に特殊武装を気に入った姉妹は、隊長になる前の智子張りに前線に突撃して行く。
それを止めるのが隊長の役割なわけだが・・・
(鎌鼬隊隊長に、どうやって制御していたのか聞けばよかった・・・)
後悔先に絶たず。
忙しかったという言い訳があるが、それでも努力すべきだったろうと、後悔しきりだ。
当初は同じ接近戦趣向の同志だったのに・・・
そんな苦労をはた目から見つつ、隊長職を無難にこなす圭子は副官としてやってきた元狛犬隊副隊長の、江草貴子をみやる。
「どう。武装の調子は?」
「大丈夫ですよ~ 【鬼支腕(きしで)】のお蔭で腕の負担は無いですし~」
大型機関砲を獲物とする彼女だが。今回初めて装備した武装を 背負って いる。
倉崎製が用意できる最大口径37ミリのベルト給弾式機関砲だ。
対大型装備として開発が進められていた装備で。まだ試作段階の武装でもある。
しかし完成度は高く、あとは問題の洗い出しだけという代物だ。
ちなみにベルト給弾式なのは、転生者の中で「カッコいいから」という理由だけで開発した馬鹿のせいだったりする。
「はやく、ぶっ放したいですね~」
「そうね。その機会が有れば、遠慮なく叩き込んで。」
「了解です~」
元々狛犬隊の副官だったこともあり、安心していろいろ任せる事ができる。
圭子自身、サボる智子の尻拭いをし続けた事もあるので安定感は抜群だ。
犬化隊は、主に後方から援護射撃をする任務を帯びている。
狸釜隊は中距離での戦闘がメインであり。加藤武子の大隊直率の部隊は遊撃だ。
全員が集合したのを確認した武子は、輸送機に近づく。
「これより我々は目標地点に向かう。運搬よろしく頼む。」
『ああ、まかせてくれ。こんなロートルだが、それ位は出来るさ。』
輸送機を操縦しているのは、高齢のパイロットたち。
最前線で戦うには厳しく、おとなしく輸送任務に就いた男達だ。
そんな彼等は、彼女等を運ぶ任務を受けた事を誉れとしていた。
『安全に、送り届けてやるよ。』
以上です。
輸送機が引っ張っているグライダーは、非力ながらも発動機付きで操縦手もいます。
倉崎製の、ウィッチに負担をかけずに最前線に連れて行くための試作兵装です。
鋼管羽布張りの簡単な作りで、攻撃喰らえば簡単に落ちます。
135: 影響を受ける人 :2017/02/06(月) 21:49:49
感想返信です。
>>114 ham様
>>なお、専門用語では鉄管布張りではなく、鋼管羽布張りと言います。
ご指摘ありがとうございます。
>>123様
>>ところで江草の36ミリはどのようにしてきまったんすか?
>>対戦車砲からの流用ならば、37ミリになるでしょうから。
うぇい!? また間違えた!? いいや、このまま通そう。(無責任
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