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ネタ49_Monolith兵さま_憂鬱日本欧州大戦 -筆ひげの野望- - (2014/06/11 (水) 22:07:57) の編集履歴(バックアップ)


178 :Monolith兵:2014/06/11(水) 21:12:28
ネタSS「憂鬱日本欧州大戦 -筆ひげの野望-」

 1939年9月17日、ソビエト社会主義連邦はこれまでのポーランド第二共和国との国境変更協議の決裂、及びポーランド国内のウクライナ人とベラルーシ人に対する弾圧の停止を大義名分としてポーランドに宣戦布告した。
 ポーランドは日本からソ連が欧州で軍事行動を起こす可能性を示唆されており、またここ数ヶ月のソ連との交渉ではあらかさまに軍事的恫喝を繰り返していた為に、ソ連との国境線の防備を強化していた。また、ドイツとの関係改善により、ドイツとの国境に配備する部隊の削減に成功し、その分をソ連国境へとまわしていた。それと共に、ソ連との国境を守る部隊には臨戦態勢をとるように命令を出していた。
 そして、ポーランドは日本から輸出された97式中戦車(57mm砲搭載先行量産・試作型)や92式軽戦車やそのファミリー車両(自走砲、自走対戦車砲など)を多数輸入することに成功していた。
 その為、80万にも及ぶソ連軍の最初の攻撃に耐え切る事が出来た。日本によって弱体化されたソ連が、日本によって強化されたポーランド相手に攻めあぐねたのだ。


 ソ連によるポーランド侵攻と、ポーランド軍がソ連軍を撃退したと言う情報を知った夢幻会は狂喜した。史実ではドイツにあっという間に防衛線を抜かれ、ソ連の参戦によって僅か1ヶ月で占領された事を知る彼らにとって、ポーランド軍がソ連軍の攻撃を凌いだと言うのは希望を見出すには十分な情報だった。

 だが、報告を聞く内に彼らの喜びは消え去っていき、苦虫を磨り潰したような顔へと変わっていった。ポーランド軍は確かにソ連軍を撃退で気はしたが、その代償に歩兵師団が39個あるうちの10個歩兵師団が壊滅しその他の歩兵師団もかなり損害を受けていた。そして機甲部隊はその殆どが失われてしまったのだ。更には各種火砲や小火器なども多く失われ弾薬も払底しつつあった。もはやポーランドには開戦前の半分の戦力も無かった。
 それを補うために、戦時動員により予備役の動員が進んでいるといっても、その大半は軽装備の歩兵であった。また、予備役の兵士らに配る小火器も不足がちであり、火砲や装甲車両は言わずもがなだった。
 いくら日本が援助したと言っても、ポーランドの財政には限りがあり、ポーランドの装甲車両は7TPなどの豆戦車が半数以上を占めていた。

 また空軍もP.11という一応は単葉全金属製戦闘機が主力ではあったが、その最高速度は僅かに400km程度であり、ソ連軍の戦闘機にバタバタと落とされてしまっていた。それでも何とかソ連軍の侵攻を防ぐ事に成功していた。
 しかし、次のソ連軍の攻勢には耐えられそうに無いと言うのが陸軍の分析だった。

179 :Monolith兵:2014/06/11(水) 21:13:02
「英仏の反応は?」

「完全に静観に徹するようです。艦戦武官を出す話もあるようですが、精々その程度のようです。」

 東京のとある焼肉店にて、夢幻会の会合のメンバーは田中情報局長からポーランドの情勢の報告を聞いていた、なお、この焼肉屋も例のごとく夢幻会の人間が経営している店であり、しっかりと防諜をしつつ焼肉に舌鼓を打っていた。

「ソ連軍は史実同様不手際を出してはポーランド軍に撃退されるを繰り返しているようです。ですが、損害を無視して侵攻したためにかなりの損害が出た模様です。」

「ふむ。次の一撃でポーランドの防衛線は崩壊するのに、英仏は動かない。これではソ連軍がポーランドを併合してしまうな。そして、ポーランドを併合した次はドイツだ。流石にそうなれば英仏の尻にも火がつくとは思うが・・・。」

 伏見宮は現状を分析し、ポーランドがソビエトに併合されるのは規定路線であると認識していた。当初の計画でもポーランドの併合は規定事項であったが、ドイツによる侵攻が無いためにもっとよい状況になると思われていた。
 一方、英仏はドイツのポーランド侵攻に対して防衛義務(英波相互援助協定、仏波防衛協定)はあったが、ソ連の侵攻に対する防衛義務は存在しなかった。更に、英仏はポーランドを救うために参戦すると、ドイツを刺激し戦争に発展してしまうことを恐れていた。その為に、ソ連の暴挙を黙認するしかなかった。
 そして日本は同盟を結んでいるはずの英仏が動かない以上、隣国に喧嘩を売る真似をしてまでその更に隣国を助ける義理は無かった。下手にソ連相手に戦端を切って、最悪の場合満州に利権を持つ米国が満州、日本、中国市場を独占するために日ソ戦争を煽って、弱った勝者を殴り倒すという事が起きるかもしれない。
 それを考えると日本もうかつには動けなかった。


「ドイツはどうしているんですか?」

 嶋田は東条ら陸軍組みや田中局長を見ながら尋ねた。

「ドイツは英仏同様に静観するようです。一方でかなりの観戦武官を送り込んでいます。ドイツの軍備については、以前より師団編成のスピードが速まっているようです。ただ、部隊編成のスピードに兵器の供給速度が追いついていない為、酷いところでは小銃の充足率が6割という師団もあるようです。また、東プロイセン防衛の為に購入した97式中戦車を有する機甲旅団を配備するようです。」

 ドイツはソ連によるポーランド侵攻を脅威と捉えていた。ポーランドはその国土の殆どが平野で、国外からの侵攻に対して要害となりうる地形が少なかった。故に、ドイツ政府はポーランドの消滅は時間の問題と見ており、更にポーランド平原を駆け抜けたソ連赤軍がドイツへとなだれ込んでくるのはもはや避けられないと見ていた。
 その為に、一時期見合わせていた軍拡を再び再開させていたのだが、銃火器の生産がそれに間に合わないと言う笑えない話が出てきていた。

180 :Monolith兵:2014/06/11(水) 21:14:14
「まさかのドイツで2人に1丁の小銃か?いや、ドイツの生産力を考えると、ポーランドが消えるまでには改善しているとは思うが…。」

「そのドイツから、新たな提案が来ました。97式中戦車のライセンス生産をしたいとの事です。」

 近衛の報告に、会合の出席者たちは顔をゆがませた。

「な…んだと…?」

「ドイツが作った史実ソビエト戦車がソビエト戦車を蹂躙する日が来てしまうのか…。」

「ドイツは自国の戦車開発に見切りを付けたのか?もしかしてパンターもティーガーも出てこないのか?」

 会合の出席者たちは口々に悲鳴をあげた。ドイツは97式中戦車の存在を知ったときから、新型戦車の開発を進めて来た。だが、それが実を結ぶのはかなり後になる事が予想された。
 そこで既存の戦車の改良で凌ごうと考えたのだが、Ⅲ号戦車は97式中戦車と比べると非力過ぎ、早々に生産の停止が決定されていた。火力支援戦車たるⅣ号戦車は、搭載砲の対戦車能力が低い事が判明したために長砲身75mm砲に換装する予定であった。
 また、対戦車砲も大口径化が進められ、37mm、50mm対戦車砲に続いて75mm対戦車砲の開発も進められていた。

 一方、配備が進みつつあったⅢ号戦車については、92式軽戦車を参考に、Ⅲ号戦車の車体を用いて対戦車自走砲や自走砲を作ろうという試みがされていた。当初は60口径50mm砲を搭載する計画もあったが、対戦車能力が低い為に却下された。
 その代わりに浮上したのが、既に存在したⅢ号突撃砲0型をベースに長砲身化して足りない火力を埋めようと言う計画である。
 これらの計画はまだ試作車両を開発中であるが、開発は順調であり今年中には試作型が完成し、来年の始めには増加試作車両が生産される予定であった。

 だが、ポーランド戦役によって判明したソ連重戦車の火力と防御力を知ったドイツ陸軍では、これらではソ連軍の戦車に十分対抗できないと考えた。これから更に戦車の開発を行うには時間も資金も足りないため、それらの生産は一時見合わせて、97式中戦車を自国で生産しようと考えたのだ。

「どうやらドイツは小手先の改良ではソ連軍には対応できないと考えたようです。そこで、早く強力な戦車を手に入れるためにライセンス生産しようとしているようです。」

 永田たち陸軍関係者はドイツの提案に賛成か反対か決めかねていた。現在97式中戦車は大量産されており、製造コストはかなり下がっていた。おかげで当初よりも予算が浮くといううれしい状態だった。この浮いた予算で配備数は予定よりも多くできそうだった。
 だが、ここでライセンス生産を認めれば、国内の生産数は減りコストはともかく配備数は減少する可能性があるのだ。

「こちらとしては利潤は減りますがこれまで以上に生産数は増えるでしょうから構いません、それに陸軍大国のドイツが主力戦車として採用したという実績で、更に他国に採用の動きが出てくる可能性があります。」

「…売る先は考えてくださいよ?」

「勿論です。それと、ライセンスを認める代わりに他国に売却したり貸与したりするのは絶対に禁止する事を明記して置いてください。勿論これまで販売した物についても。」

 三菱関係者はすぐさま賛成した。ドイツが日本の戦車を採用すると言うのはかなりのインパクトになるだろう。これから先、戦場が広がるとイギリスやフランスにも販路を広げられる可能性がある。それを考えるとライセンス生産を認めるのはやぶさかではなかった。

「海軍としては輸送量を減らせる事には賛成です。97式中戦車の情報がソ連に流れないかは気がかりですが。」

 嶋田は海軍として賛成した。しかし防諜について懸念を示した。

「それは流石に無理でしょう。詳細はともかく、ソ連も日本から購入した戦車が強力だという情報は既に掴んでいるようです。」

 辻は嶋田の懸念はもう手遅れだと答える。これは97式中戦車をドイツに販売した時点で解りきった事であった。しかし、出来るだけ詳細な情報が渡らないように努力はしており、その努力の甲斐もあり、ソ連は詳細なスペックまでは把握しきれていなかった。

「…まあいいだろう。ただし、陸軍の戦車の調達速度は現状維持が条件だ。」

 こうして、ライセンス生産についての議題は全員が賛成で認められた。

181 :Monolith兵:2014/06/11(水) 21:15:02
「それからドイツ空軍に関してですが、どうやらBf109の改良が難航しているようです。96式戦闘機を真似て航続力を増やそうとしているようですが、元々の余裕の無さから苦労しているようです。それとFw190が史実よりも早く採用されました。まだ完成された機体とは言えない状態ですが、既に増加試作機を発注しており、金と人が史実よりも投入されたために史実よりも早く実践投入できるようになるようです。」

「それは凄い!Bf109よりも生産性が高いですから、配備スピードは期待出来そうですね。高高度性能が低いのがネックですが。」

「そこら辺はBf109の改良型に期待するしか無いだろう。それに余裕が出来始めたとはいえ、まだまだ史実ドイツほどの経済力は無いのだぞ?」

 ドイツ空軍は96式戦闘機に衝撃を受け、更なる改良と開発を行っていた。だがBF109はまだE初期型が生産に入ったばかりであり、更なる改良には時間がかかる事は明らかだった。
 そこで白羽の矢が立ったのが当時開発中で、Bf109よりも航続距離が若干長いFw190だった。政治力が弱かったために史実で日の目を見るのは時間がかかったこの戦闘機だが、この世界では早くもデビューする可能性が出てきていた。
 一方で問題も起きつつあった。金である。大蔵省の魔王によって毟り取られたドイツ経済は、その魔王本人による支援によっても史実に比べていまだ貧弱であり、各種兵器の開発速度加速はドイツ経済を圧迫していた。一部では開発費用を考えて、「全部日本製でよくね?」と言う声が出てくる位だから、魔王の仕事がどれほど素晴らしい出来だったのか解るだろう。

 なお、兵器の開発情報を何故詳細に知りえているかについては、投資の副産物である。投資によって日本人がドイツに入国することが容易になり、諜報活動もはかどっているのだ。流石に軍需企業そのものは無理だったが、その下請けや流通などから開発状況を推測する事は難しくなかった。
 ちなみに、魔王閣下はドイツの経済再建の支援と同時に、それらの下請け企業からめぼしい特許や技術を見つけては、ライセンスを取得したり重要でない物は買い取ったりしていた。

「ドイツはポーランドが破れた後にソ連がすぐさま侵攻していると予測しているようですね。」

「多少の猶予期間はあるが、それほど長くないと考えていることでしょう。」

「英仏がソ連に宣戦布告するか、ドイツにソ連が攻め込むか、それとも史実どおりフィンランドに攻め込むか…。そのどれかが無いと日本は動けない以上、ドイツ、フィンランド、トルコなどへの支援強化は進めなければなりません。」

 こうして、日本はソ連の周辺国の更なる強化のための支援を行う事を決定した。

182 :Monolith兵:2014/06/11(水) 21:15:35
 その数日後、ポーランド問題に関して閣議が開かれた。

「ポーランド軍は総崩れなのだな?」

「はい。もはやポーランドにソ連に反撃する力はありません。」

「ポーランド軍は後退しています。ソ連軍は主要都市の占領に重点をおいているようで、ポーランド軍はほとんど追撃されていないようです。そして、ポーランド東部の街ピンスクでソ連に亡命したポーランド人たちによるポーランド臨時人民政府が設立されました。」

「ソ連の目的はポーランド占領だけではなく、ポーランドに傀儡政権を設立することだったのか!」

 近衛は頭を抱えた。これまで史実同様ポーランドの併合を目的にしていたと思っていた夢幻会は、ポーランドの次はドイツと考えていた。だが、単純に併合するのではなく、共産主義政府を設立すればどうなるだろうか?各国の共産主義勢力が、これに勇気付けられ活動を活発にする事が予想される。更にそれらの勢力にソ連が支援をし、場合によっては政府による摘発を戦争の口実にするだろう。
 だが一番の問題は、政府に不満を持つ者や利権にあぶれた者たちが共産主義勢力に合流し、”自主的に”革命運動を起こすことだろう。
 近衛は警察と情報局に共産主義者たちやソ連のスパイへの監視と摘発をよりいっそう強化するように指示した後、報告の続きを促した。

「それに伴って、イギリスはソ連に宣戦布告し、ポーランドを支援する事が決定されたようです。フランスもそれに続くようです。」

「もう遅い…。何故もっと早く…、いや。これはただの愚痴だな。」

「わが国も英仏に倣って宣戦布告の用意をしませんと。」

 外務大臣の言葉に頷き、今度は軍人たちの方を向いた。

「陸軍と海軍の準備はどうだ?」

「陸軍は既に1個独立混成旅団の編成は既に完了しています。第2次派遣に関しては2個師団を派遣すべく今調整しているところです。更に2個飛行戦隊を派遣する予定です。」

「海軍も護衛部隊と共に赤城、天城を基幹とした1個艦隊と1個航空艦隊の準備が出来ています。また、護衛艦隊についても準備を進めています。米国への備えとしては41年以降翔鶴型空母、祥鳳型軽空母が戦力かできていくので、長期の派遣となっても問題はありません。」

「陸軍2個師団に1個艦隊、1個航空艦隊に2個飛行戦隊か。これらの派遣に関して何か問題はあるかね?」

 近衛は異論が無いか尋ねるが、誰も異議を挟まなかった。こうして、日本も英仏に倣いソ連に宣戦布告し、部隊派遣をする準備を本格的に進めて行く事になった。

183 :Monolith兵:2014/06/11(水) 21:17:02
 一方、イギリスの首相官邸では今回の事態に関して話し合いがもたれていた。

「まさかこれほどの事態になるとはな。」

 チェンバレンはそう言ってうなだれた。ドイツのソビエト政権が崩壊してヨーロッパに戦争から危機が去ったと喜んだら、今度はソ連がポーランドに侵攻したのである。平和外交を貫いてきたチェンバレンとしてはこれまでの駆動が全て水泡に帰した気分だった。
 ポーランド臨時人民政府の設立はイギリスにとって深刻な問題だった。イギリスにも共産主義者はいる。それらがソ連と通じて、人民政府を設立してソ連軍を呼び込む口実にするというのは考えられることだった。国王を頂点に貴族制をしいているイギリスには絶対に合わない政治制度なのだ。

 ドイツでは、イギリス以上に共産主義を危険視していた。何と言っても、第1次世界大戦の敗戦は共産主義者たちの蜂起だと殆どの国民が思っているのだ。過去にはバイエルンで共産主義勢力が人民政府が設立されたこともある。この時はすぐさま鎮圧され殆どの者が捕らえられたが、ソ連に逃げた共産主義者も多いと見られていた。

 だがそれ以上に深刻だったのがフランスだった。フランスは共産主義者や社会主義者が数多くいるのだ。また、過去には共産主義政権が成立した時期もあり、再びフランス政権を奪取するためにソ連の力を借りると言うことは考えられた。


「ポーランドの敗戦は明らかだ。そして、ポーランドの西にはドイツがある。いずれソ連とぶつかるだろう。それとは別に、我が国とフランスの救援部隊の派遣を考えてもドイツは是非連合国側に引き込みたい。」

 チャーチルはチェンバレンとは対照的に生き生きとした表情で語った。何と言っても大嫌いな赤い悪魔を思う存分叩けるのだ。
 そして、ポーランドが敗北するにしても、軍備を整えるためになるべく長引かせたい。しかし、海軍国のイギリスが派遣できる支援は僅か4個師団。陸軍国のフランスはそれこそ何十個師団も保有するが、緊張緩和がなったとはいえドイツ国境との防備の手を緩めるわけにも行かないし、何よりも兵力を移動させる船が足りなかった。その為に、フランス側もイギリスに毛が生えた程度しか派遣できなかったのだ。
 もしドイツが連合国側ならば、ドイツの鉄道を用いて大部隊の移動が可能になる。当然同盟国との国境を守る部隊は不要となり、それこそ何十個師団をポーランドに派遣する事が可能となる。

「ソ連軍は既にワルシャワにまで迫っている。ポーランド政府はドイツ国境付近の街に移転するようだが、それも長くは持たないだろう…。」

 そう言って、壁に張られた地図を見る。そこにはポーランド軍とドイツ軍、ソ連軍の配置がピンで表されていた。ソ連軍は圧倒的多数で、ポーランドはもはや数えるほどしかなかった。支援軍はこれらのポーランド軍や市民、政府関係者を救出し脱出しなければならない。その進撃路も撤退路もポーランド唯一と言ってもいいグディニアしかなかった。
 それを解決する手段は既に取ってある。ドイツが実質支配するダンツィヒには今頃英仏の船舶が大量に接岸しているはずだ。
 本来、戦時中の国の船が中立国の港に入る事は国際法で禁止されているが、今回は緊急時の入港避難という名目でダンツィヒに入港し、荷物と兵士たちはポーランド領内へ送り込む。そして、戦時中のポーランドはk路えらの物資や人員にやむ負えず手を付ける当筋書きである。

184 :Monolith兵:2014/06/11(水) 21:17:35
 一方のドイツはソ連ほどではないものの多数の軍をポーランド国境に貼り付けていた。無論ソ連軍に備えてである。そして、何よりも東プロイセンにいるドイツ軍の存在は、ドイツを連合国に引きずり込むのに重要な意味を持つ。

「ポーランドを奪取したソ連は、次に東プロイセンを手に入れようとするはずだ。そうなるとドイツは自然と連合国側につかなくて歯ならなくなる。陸軍大国のフランスとドイツ、そして海を我が国に押さえられたソ連は何が出来ようか。」

 そう言って、チャーチルは軽い笑い声をあげた。

「今思えば、日本がナチスドイツを危険視していたのもこれが原因か。それを考えると、ヒットラーが死んだのも日本の謀略の可能性があるな。」

 チェンバレンはヒットラーを暗殺し、ナチス政権を崩壊させたのは日本の策略ではないかと考えていた。それほど信じられないスピードでナチス政権は崩壊し、アデェナウァー政権が権力を取り民主化が進んだのだ。

「あの国はよくやりますな。それに、ポーランドにも多数の兵器を輸出したとか。そのお陰で今までポーランドは持ちこたえることが出来た。今度は我々ががんばる番、と言うわけでしょう。」

「その日本は遣欧軍を編成しているそうだ。まあ、少数だがな。これによって東から日本、西から英仏独。ソ連を完全に包囲できた。」

「後はどれほどポーランドで粘れるかですな。」

 だが、彼らは知らなかった。強力な戦車と尋常では無い火力、そして損害を無視して進む赤軍によって、英仏軍が一方的と言うまでに打ちのめされるのを。


おわり