396: 加賀 :2019/05/07(火) 07:02:47 HOST:p1289069-ipngn200207osakachuo.osaka.ocn.ne.jp では投稿します 「五藤少将、何としても加賀は救ってください……」 「いや、その前に四隻ともだろ……」 「でも加賀なんですよ!」 「おいおい……」 出撃前、橋本は五藤少将とそう話していた。なお、松田は試作一号機(瑞雲)の前で踊っていた。 「橋本少将、場合によっては私は今回帰れないかもしれない」 不意に呟いた五藤少将の言葉に橋本は直ぐに態度を変えた。 「……レイテ沖の小沢中将になるつもりですか?」 「最悪の場合はな。幸いにも日向という敵を引き付ける材料がある」 「まさかあの会議での発言はそれを……」 「それも含んでいる」 やっと理解した橋本の表情に五藤はニヤリと笑う。 「俺は嶋田さんや南雲さんみたいに上手く兵を操る事は出来んからな。精々向こうに嫌がらせる程度だ」 「五藤少将……」 「俺は警戒隊の艦隊司令官となっている。一航艦の間抜けどもを叩きのめしてやるさ」 五藤らと源田の言い争いは今ではGF中のネタになっていた。噂では五藤少将はMI作戦後に飛ばされる可能性もあったのだ。 「では行ってくる。生きていたらまた会おう」 「……今度もコミケを開きましょう!」 橋本の言葉に五藤は苦笑しつつも手を振り警戒隊旗艦『日向』へ乗艦するのである。 5月26日、『日向』率いる警戒隊は柱島泊地を抜錨。厳重な無線封止をしつつ日本を出撃する。それに1日遅れての27日には南雲中将の第一航空艦隊、更に28日には山本長官率いる主力艦隊や上陸船団が出撃し目標であるミッドウェー島へ目指すのである。 6月3日、主力艦隊の旗艦『大和』ではミッドウェー島付近で敵空母らしい呼び出し符丁を傍受した。 「これは一航艦に知らせるべきだろう」 山本はそう指示を出したが首席参謀の黒島は反対した。 「これは一航艦宛にもなってますので一航艦も傍受しているでしょう。それに我が艦隊は無線封止中ですので封止を破れば敵に気付かれる恐れがあります」 「ふむ……」 黒島の具申にも一理あったので結局はそのままとした。しかし、一航艦は傍受しておらずあまつさえ警戒隊も傍受していなかった。 だが警戒隊司令官の五藤は初めから分かっていた。 「初めから空母がいると想定する。なに、六戦隊は防御に関してはMOで経験している」 五藤少将はMOでの教訓を元に弾幕射撃の構想を練っていた。また松田大佐も自身が作成した航空攻撃に対する操艦マニュアルの『爆撃回避法』を警戒隊は元より一航艦の各艦長に配布していた。 六戦隊の四人の艦長も航空攻撃を経験した身として成る程と頷く場面があったので他の警戒隊艦長もマニュアル本を航海中も読んだりして習熟するようにしていた。 6月5日0130(日本時間)、第一航空艦隊はミッドウェー島への空襲として友永大尉を指揮官とする攻撃隊を発艦させた。 勿論、ミッドウェー島へ向かうのでミッドウェー島に備えられた対空レーダーもこれを探知しミッドウェー基地でも迎撃の戦闘機隊が離陸。続いてTBF雷撃機、B-26、SB2U爆撃機、SBD爆撃機の混成攻撃隊が離陸して第一航空艦隊へ向かうがこれを日向と青葉の21号電探が探知した。 「直ちに一航艦へ通報!」 五藤は直ぐに決断をして一航艦へ通報した。電文を受信した一航艦も零戦隊を上空に上げる事で迎撃の対処をした。 警戒隊も飛来する事を警戒して試作一号機を上げる事にした。試作一号機は20ミリ機銃が搭載しているので一機ではあるが無いよりマシである。 0400、攻撃隊指揮官の友永大尉は一航艦へ『カワ・カワ・カワ』の電文を打電した。 「友永大尉より入電!『カワ・カワ・カワ』!爆撃効果不十分!」 「………」 「予備の攻撃隊を陸用爆弾に換装してミッドウェー攻撃に出しましょう」 「確かに敵空母はいないのだな?」 「6機の索敵機から通信は有りません。心配は無用です」 草鹿の言葉に南雲は換装を決断した。同時刻、スプルーアンス少将の第16任務部隊は攻撃隊を発艦させた。その数は117機であり真っ直ぐに第一航空艦隊へ迫る。 0550、日向と青葉の21号電探は敵機を探知した。探知した数は今までより数倍である。 「これこそ敵機動部隊から発艦した攻撃隊だ!?直ちに一航艦へ通報!」 五藤は再度一航艦へ発信させる。 「全艦無電を発信!意味は不明で良い!敵攻撃隊を此方に引き寄せるぞ!」 直ちに警戒隊は最大出力で無電を発信した。最大出力で発信した事で一航艦は元より飛行していた米攻撃隊も受信、一部を向かわせた。向かわせたのはホーネットのSBD爆撃機35機である。 397: 加賀 :2019/05/07(火) 07:03:21 HOST:p1289069-ipngn200207osakachuo.osaka.ocn.ne.jp 松田は電探員から敵機の一部が此方に向かっている事を聞いて上空に試作一号機を一航艦に向かわせた。 (今行かせれば間に合う筈……) 間に合うかはギリギリのところだった。そして程なく警戒隊は攻撃に晒される。 「敵機急降下!」 「とぉーりかぁーじ!」 やはり狙われたのは日向だった。しかし、それを回避するのは自ら爆撃回避法を編み出した松田である。松田は紙一重でSBD爆撃機の急降下爆撃を回避し水柱を上げさせる。 「流石は松田か……(瑞雲教過ぎるのが玉に瑕だがな)」 そう思う五藤である。五藤は敵攻撃隊の一部を引き付ける事に成功したと思っていた。しかし、引き付けたのはホーネットのSBD爆撃機であり本命のエンタープライズとヨークタウンの爆撃機は引き付ける事が出来なかったのだ。 そして0722、空母加賀の見張り員は雲の切れ目から何かを見つけた。 「敵機直上!急降下ァ!」