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812 :ひゅうが@夏風邪中:2014/07/02(水) 12:56:13 戦後夢幻会ネタSS―― その0.5「吉田機関 1950年」 「あいつらはバカか?わずか5年前に軍事で国を滅ぼしかけておいて、また同じことをしようとしているんじゃあないか!!」 「まぁまぁ。吉田さん。激昂して暴支膺懲なんて叫びださないだけ大きな進歩ですよ。 それに軍人が本気で懲りている点も。」 そうは言うがね、阿部君。と、日本国内閣総理大臣 吉田茂は顔をしかめながら言った。 「この一次防の計画案を見ると八つ当たりもしたくはなるさ。いくらあの半島が敵の手に落ちたとはいってもこれはやりすぎだよ。」 「戦艦をはじめ旧海軍艦艇はすべて現役復帰、陸軍15個師団ですか? 今はこの3分の1が限界でしょう。復興に加えてパットン閣下への義理で2個管区隊もあそこへ送っているのですから――」 ここは日本橋のとある料亭。 挙国一致内閣を樹立して憲法改正を発議したばかりの吉田は、戦時中から彼の顧問であり終戦の仕掛け人であった男たちをここに呼んでいた。 海上警備隊警備局長 阿部俊雄(註:憂鬱世界では嶋田繁太郎)、大蔵省復興局長 下村治(憂鬱世界では辻政信)、宮内庁侍従 徳川義寛(同 近衛文麿)、国家地方警察本部監察官 後藤田正晴(同 安倍源基)、そしてここにはいないが彼らの同志的な存在として、海上警備隊警備艦隊司令 吉田英三(同 南雲忠一)、保安庁第一保安局保安事務官 林敬三(同 東条英機)らが存在している。 その人脈は幅広く、政界・財界・言論界に大きな勢力を誇り、戦時中からかの(この世界の)東条一派と暗闘を繰り広げていたとも、終戦の際には近衛や米内といった人々を動かしてついに勝利をおさめた「反東条派の首魁」であるともいわれる。 そんな彼らは頭脳集団と利権集団といった向きが大きく、吉田茂も彼らには便宜を図り、図られる仲となっていたのだ。 それに、戦時中の特高連中から彼らの手で救い出され終戦工作に助力されている個人的な恩義もある。 現実主義者であり文民統制に(旧日本軍人としては非常に珍しく)積極的な連中であるだけある程度は信用もできる。 813 :ひゅうが@夏風邪中:2014/07/02(水) 12:56:44 「正直なところ、私たちとしてはせいぜい空母をそうですね、最大でも4くらい走り回らせるだけで精いっぱいです。大型艦艇をといってもいい。何せあれは油食らいですから。」 「『しなの』かね?」 吉田は少しだけ眉間のしわを緩めた。 樺太から邦人20万を脱出させた殊勲艦。千島列島北端においては米陸軍支隊2500名と重巡インディアナポリス乗員2000名を救い、復員事業では主として大陸や南方から30万名を満載して内地へと帰還させたフネ。 直接的に撃沈したような敵艦こそ「国籍不明の潜水艦」をあわせて6隻ほどだが、その活躍は終戦時に報道され今も国民の人気が高い。 レイテはもとより、あの沖縄沖の結末を知られているだけに「しなの」を解体するとでも言えば国会前に何十万人か集まるほどには、あのフネは愛されていた。 「『しなの』以外に、『かつらぎ』と『かさぎ』、あとは『ながと』程度でしょうね。正直なところ我が国の本土防空体制を整える前に半島へ兵を出すのは反対なのですが…」 「まぁ掃海作業部隊を大増強できるのはいいことだよ。」 吉田は、阿部が本気で困っている様子なのを見て少し矛をおさめた。 軍人があまり好きでない吉田としたら、この男はかなり微妙な立ち位置の男なのだった。 「復興計画についてもケチをつけられにくくなった。本土に攻撃を受ける事態を防げれば、日本にとってはいいことずくめだよ。」 だが、と吉田は続けた。 「対馬、あれは問題だよ。それに道北も。」 仁川上陸作戦に警察予備隊部隊が参加した見返りとして、対馬へは米軍の支援のもと第3管区隊が投入され「治安維持」の名目で全土を奪還している。 その過程であの自称義勇軍の旧式戦艦は「ながと」に沈められており、「北」の二カ国に口を極めて罵られていた。 「正当な領土である対馬への日帝の侵略」「日本による帝国主義的野望の犠牲となった北海道を解放せねばならない」 要するに、自分たちがぶんどろうとしたものを守る番人が帰ってきたのが彼らは気に入らないのだった。 「ウラジオには海上戦力としてはたいしたものは存在しません。潜水艦による港湾襲撃やら奇襲爆撃を警戒する必要はありますが、現状では日本本土へと手を出す可能性はあまり考えられないでしょう。ただし――」 「スターリンの気まぐれを除いてか。」 「はい。」 旧関東軍将兵のうち10万ほどがシベリアに抑留されているのは、スターリンによる「思いつき」が理由であるというのは有名な話だった。 「大蔵省としては、国防に必要な資金は惜しまないつもりですが、それも大きくなりすぎると困ります。」 それまで黙っていた下村(辻)が鼻を鳴らした。 「復興には金が必要だからな。よくわかっているとも。」 「そして教育の再生のためにも。」 言葉をつづけた下村に吉田は自然な好意を持った。 なぜか阿部が引きつった表情をしているが―― 「とりあえずは、我々は後方支援に徹する。何せ国連軍とはいってもあの地には彼らがいるからな。 深入りや過剰攻撃は慎むべきだろう。」 このときは吉田も、そして阿部たちも、独裁者の気まぐれがもたらす惨禍をまだ知らない。

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