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 478 :yukikaze:2014/11/02(日) 00:32:50
 では投下。何というか微妙な出来に・・・
 
 戦後夢幻会ネタSS――「誇り未だ失わず」
 
 1950年9月。
 対馬は塗炭の苦しみにあえいでいた。
-6月に始まった半島での争いが瞬く間に拡大したことを、島民たちは対岸の火事であると
-認識していた。
-彼らにしてみれば、数年前に終わった戦争の記憶が生々しかったことから、わざわざ
-積極的に戦争を起こす連中に好き好んで付き合おうとは思っていなかったし、更にそれが
-事あるごとに戦勝国であると気取り、自分達の漁業の邪魔ばかりする連中が当事者なのだから
-それこそ「馬鹿同士殺し合っていろ」と冷たい評価になるのも無理はなかった。
+6月に始まった半島での争いが瞬く間に拡大したことを、島民たちは対岸の火事であると認識していた。
+彼らにしてみれば、数年前に終わった戦争の記憶が生々しかったことから、わざわざ積極的に戦争を起こす連中に好き好んで付き合おうとは思っていなかったし、更にそれが事あるごとに戦勝国であると気取り、自分達の漁業の邪魔ばかりする連中が当事者なのだからそれこそ「馬鹿同士殺し合っていろ」と冷たい評価になるのも無理はなかった。
 
 だがそれも、8月9日の釜山陥落で終わりを告げた。
-勇ましい事を言いながら、いの一番に逃げてきた南の大統領がずうずうしくも対馬に居座るだけ
-でなく、勝手に対馬を自分達の領土にしてのけたのである。
-それだけでも島民の憤懣を掻き立てるのに十分であったが、この大統領が北への徹底抗戦を
-するべく、島の男子たちを強制的に徴兵したり、島の物資を根こそぎ収奪するなどするに至り
-島の住民たちがいつ暴発してもおかしくない状況になる。
-彼の大統領からすれば『日帝三十五年の恨みからすればこれ位の事は当然』なのだが、彼らの
-民族的気質からは許容されても、統治者としては愚行以外の何物でもなかった。
-もっとも、この大統領は、島民が立ち上がるよりも前に、形勢不利なことに敏感だった大統領護衛
-師団によって島から叩き出されたのだが、新たに島の支配者になった、かつてはゴロツキであった
-この師団長は、大統領以上に暴虐な統治を繰り広げることになる。
-後世対馬の住民が、対馬奪還時にこの護衛師団に苛烈な報復を行う遠因になるのだが、しかし
-この時はまだ、護衛師団の面々は自分達の運命を予期することはなく、いつもの如く乱暴狼藉を
-楽しんでいた。
+勇ましい事を言いながら、いの一番に逃げてきた南の大統領がずうずうしくも対馬に居座るだけでなく、勝手に対馬を自分達の領土にしてのけたのである。
+それだけでも島民の憤懣を掻き立てるのに十分であったが、この大統領が北への徹底抗戦をするべく、島の男子たちを強制的に徴兵したり、島の物資を根こそぎ収奪するなどするに至り島の住民たちがいつ暴発してもおかしくない状況になる。
+彼の大統領からすれば『日帝三十五年の恨みからすればこれ位の事は当然』なのだが、彼らの民族的気質からは許容されても、統治者としては愚行以外の何物でもなかった。
+もっとも、この大統領は、島民が立ち上がるよりも前に、形勢不利なことに敏感だった大統領護衛師団によって島から叩き出されたのだが、新たに島の支配者になった、かつてはゴロツキであったこの師団長は、大統領以上に暴虐な統治を繰り広げることになる。
+後世対馬の住民が、対馬奪還時にこの護衛師団に苛烈な報復を行う遠因になるのだが、しかしこの時はまだ、護衛師団の面々は自分達の運命を予期することはなく、いつもの如く乱暴狼藉を楽しんでいた。
 
 『こちらサクラ。キキョウ状況送れ』
 『こちらキキョウ。目標の排除完了』
 『サクラ了解』
 
 短いやり取りの後、対馬沿岸部にある監視所の一つに静けさが舞い戻っていた。
 床には何体かの物体が横たわっていたが、監視所にいる男にとっては何ら価値を見いだせなかった。
 そう。男にとってこの中にいる者は狩るだけの存在でしかないのだ。
-勿論、顔や体に無数のあざを生じさせながら、部屋の隅で毛布にくるまりガタガタと震える女性達は
-保護すべき対象ではあるのだが。
+勿論、顔や体に無数のあざを生じさせながら、部屋の隅で毛布にくるまりガタガタと震える女性達は保護すべき対象ではあるのだが。
 
 男は部屋の周囲を見渡し、つまらなさそうに鼻を鳴らす。
-監視所と銘打っているが、そこには通信機材も地図もなく、まともな監視所とはとても言えない
-代物であった。
-大方、北の命令を受けて慌てて作ったのだろうが、それはあくまで名目上の物でしかなく、実質は
-警邏と称して島々を略奪して回るゴロツキ連中が、自らの快楽の場として利用しているだけに
-すぎないのだろう。
-所詮は、自らの力で近代化する能力も意思もない癖に、プライドだけは異常に高く、そして
-相手が弱ったと見るや裏切ることしか能のない連中だけあった。 
+監視所と銘打っているが、そこには通信機材も地図もなく、まともな監視所とはとても言えない代物であった。
+大方、北の命令を受けて慌てて作ったのだろうが、それはあくまで名目上の物でしかなく、実質は警邏と称して島々を略奪して回るゴロツキ連中が、自らの快楽の場として利用しているだけにすぎないのだろう。
+所詮は、自らの力で近代化する能力も意思もない癖に、プライドだけは異常に高く、そして相手が弱ったと見るや裏切ることしか能のない連中だけあった。 
 
 479 :yukikaze:2014/11/02(日) 00:33:22
 「フン」
 
 男はもう一度鼻を鳴らす。
 まあ連中にはそろそろ自分達の愚行のツケを払わせるべきであろう。
 都合の悪い事を忘れるのは連中の特技のようだが、そうは問屋が卸さない。
 髪の毛をつかんで引きずり倒し、眼を開けさせ思い出させてやろう。
 怒った時の日本人がどれほど恐ろしいのかということを。
 連中が二度と馬鹿な妄想を抱けないほど徹底的なまでに。
 だからこそ、呉鎮守府第101特別陸戦隊の生き残りである自分達は志願してこの地にいるのだ。
 沖縄で勇敢に散っていった仲間たちに顔向けができるように。
 
-「ここの制圧は終了だ。次に向かうぞ。ああ。女性たちには十分な手当を行え。やむを得なかった
-とはいえ、ここまで救出が遅れた俺達に出来るせめてもの償いだ」
+「ここの制圧は終了だ。次に向かうぞ。ああ。女性たちには十分な手当を行え。やむを得なかったとはいえ、ここまで救出が遅れた俺達に出来るせめてもの償いだ」
 
 男の命令に、残りの男達も深くうなずく。
 軍人は民間人を命に代えても救出する。
 その大原則を破るつもりなど彼らにはさらさらなかった。
 仮に破った場合、宜野湾で横たわっている連合艦隊の英雄達に泥を塗ることになる。
 すすり泣きながら手当を受け、感謝の言葉を発する女性たちの声を背に、男は監視所から外に出る。
-海から吹く潮風が、先程から嗅がされていた生臭い其れを吹き流し、男はようやく不快な気分から
-脱することになる。
+海から吹く潮風が、先程から嗅がされていた生臭い其れを吹き流し、男はようやく不快な気分から脱することになる。
 
 「隊長。あれを・・・」
 
 一人の部下が、小声で海原を指さす。
 普通の者なら何も見えないだろうが、夜間訓練を施されている男達には手に取るように分かった。
 
 「早かったな。当然か。彼女にとっても我慢が出来ないだろうしな」
 
 遥か沖縄で、今なお一人で戦っているとされる戦艦大和。
-ならば日本海軍で唯一の稼働戦艦であり、『日本の誇り』と称された彼女が、今の状況を黙っている
-筈がないのである。
+ならば日本海軍で唯一の稼働戦艦であり、『日本の誇り』と称された彼女が、今の状況を黙っている筈がないのである。
 
 「残念だったな半島の連中」
 
 男は低く笑う。彼らの無知と愚かさに。
 
 「『日本の誇り』を怒らせた報いを味わうがいい」
 
 この日、対馬に、戦艦長門を旗艦とする対馬奪還艦隊が襲来。
-コマンドによる奇襲で総司令部が壊滅し、右往左往する対馬防衛師団を嘲笑うように、警察予備隊
-1個管区隊が上陸。わずか3日で対馬の開放を宣言するに至る。
+コマンドによる奇襲で総司令部が壊滅し、右往左往する対馬防衛師団を嘲笑うように、警察予備隊1個管区隊が上陸。わずか3日で対馬の開放を宣言するに至る。
 
 1945年の敗戦以降、爪牙を失いながらも誇りを胸に抱き続けた英雄達が、再び舞い戻った瞬間であった。