「ネタ[架空戦記版]45_硫黄島の人さま_戦後夢幻会ネタSS――硫黄島の戦いその2」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

ネタ[架空戦記版]45_硫黄島の人さま_戦後夢幻会ネタSS――硫黄島の戦いその2」(2016/08/10 (水) 10:09:01) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

287 :硫黄島の人:2015/06/07(日) 03:40:58 後編 西中佐の操る鋼の騎兵たちは、砂と岩を踏み砕いて進んでいった。 彼らは初めの哨戒線に加えて、さらに二つの陣地を突破させていた。戦車は無事だが、歩兵には少なくない損害が出ている。 特に先ほど突破したばかりの陣地は、砲撃にも怯まず最後まで阻止攻撃をやめなかった。 攻撃開始からおよそ半時間、米海兵隊は態勢を立て直しつつある。だが、同じように西たちも目的地に辿り着きつつあった。 もともと硫黄島は東西に8km程しかない比較ちいさな島だ。本来であれば機甲戦が行われるような場所ではなかった。 直に海岸が見えてくる筈だ。 「3号から1号、前方800に敵戦車、2個小隊」 「了解」 部下からの報告に西はキューポラから身を乗り出し、双眼鏡を構えた。振動で焦点を合わせづらかったが、敵影を確認することはできた。急拵えの陣地らしきものも確認できる。それと同時に、自らも車内に身を隠す。 彼の直率する第一中隊は残存9両、ほぼ同数である。距離は約750m、長砲身の主砲をもつチハ改にとって最適の戦闘距離だ。 「1号から全車、停止せよ。徹甲3発、目標敵戦車」 その命令を受け取ったチハ改の一号車では装填手が薬室に砲弾を押し込み、砲撃手が即座に敵に照準を合わせる。 発砲は敵味方ほぼ同時だった。 砲撃手はさすがに連隊長車の射手を務めるだけはあった。彼の放った砲弾はM4中戦車の砲塔正面に直撃し、貫通した。僚車も含めて一済射で三両を撃破できた。 逆に、M4の放った砲弾は全てが外れるか、前面装甲に弾き返された。チハ改の特徴である砲塔をを持たないが故の低い車体ときつく傾斜した60mmの装甲の真価が発揮された。 その後の中隊の射撃で敵を打ち倒し、残りも突貫と随伴歩兵の白兵戦で突破できた。これらは全て十分足らずの出来事であった。 そして防衛陣地を抜けると、遂に彼らは海岸線へと辿り着いた。 「突撃!!」 288 :硫黄島の人:2015/06/07(日) 03:41:39 西は裂帛の気合いを持って、命じた。 先ほどの戦闘で一両が履帯をやられていたが、その車両も主砲の仰角を高くとり砲弾を撃ち込んでいく。 残りの全車はアクセルを踏み込み増速しながら、米軍が犇く海岸へと侵入していった。後方には歩兵も続く。大半は撤退したが、敵陣を少しでも混乱させるための決死隊だ。 チハ改が発砲し、ハーフトラックが吹き飛んだ。ほかにも次々と破壊が生み出されていく。 狭い海岸を、業火と爆音が支配した。 無論、米軍もただやられっ放しになっているわけではなかった。手当たり次第に兵を集め反撃していく。 わずか、二分で3両のチハ改が撃破された。バズーカや手りゅう弾によってだが、一両は重機関銃によって薄い側面の装甲を蜂の巣にされた結果だった。 だが西たちは止まらなかった。 チハ改はお互いの間を適度にとりつつ、米軍の集積地へと食い込んでいった。砲声と爆発、悲鳴と怒号はやむことなく続いていく。 西は天幕が寄り集まっている場所を視認していた。おそらく司令部、ないしは施設群だ。どちらにせよ重要目標であった。 「目標11時、突貫!榴弾、うてぇ!」 西は普段の優美さを感じさせない、獰猛な表情で命じた。自らの放った砲弾の爆音とは別に、大きな爆発が聞こえた。それが敵か味方の物かは分からない。後方では、歩兵同士の戦いも続いている。 海岸の状況はまさしく混沌であった。 「一号より、全車。敵司令部に到達せり。蹂躙せよ」 雑音ばかりで応答は聞こえなった。西のチハ改は天幕をなぎ倒し、75mm砲弾を打ち続ける。 西は指揮を執りつつも、ペリスコープを覗き少しでも周囲の情報を得ようと努力し続けた。そして、混沌の中で一両のM4を発見できたのは幸運なことだ。 「敵4時!!」 命令と同時に、操縦手は転回をかけた。半ばドリフトのようになりながら主砲を敵に向ける。だが一瞬の差で間に合わなかった。 289 :硫黄島の人:2015/06/07(日) 03:42:39 西は、自分が光に包まれたのを感じるとともに意識を永遠に失った。 一号車が撃破されてから数分後、硫黄島全域をたった一つの轟音が駆け巡った。その火柱とキノコ雲は暗い夜空によく映えた。 別の方向から突入した戦車隊によって米軍の弾薬集積所が爆破されたのだ。その光景をみて、日本軍司令部の栗林中将は作戦の成功を感じ、僅かに目をつむった後、作戦参加全部隊に撤退を命じた。 西竹一中佐が率いた戦車第26連隊は、自らの全滅と引き換えに硫黄島攻略戦のさらなる泥沼化を決定づけた。 そして、日米の戦争はもう一つの島嶼防衛戦をもって、終結へと向かっていく。 あとがき 遅くなりましたが、後編がやっと投稿できました。あと一話で完結する予定です。 リアルの都合でいつになるかは分かりません(泣) なお、当方のssはwikiの掲載は大歓迎です。 もし掲載してくださる方がおられたら、題名をきちんと付けていなかったので、硫黄島の戦い①、②という風でお願いいたします。 投稿失敗したのでもう一度、やりました。申し訳ありません。

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: