提督たちの憂鬱 支援SSほか@ まとめウィキ内検索 / 「ネタ72_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「接触」その4」で検索した結果

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  • ネタ72_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「接触」その4
    740 :ひゅうが:2016/07/07(木) 17 25 53 艦こ○ 神崎島ネタSS――「接触」その4 「こんなものを見せて、我々に何をさせる気なのかね?我々はこんなものを見せられてはいそうですかと返す程度の無能ではないぞ。」 「さすがは俊英をうたわれた米内提督だ。話が早い。」 「というよりは君らが露骨すぎるのだ。君らが我が帝国に単純ならざる感情を持っていることは理解したよ。いやというほどね。」 米内光政は肩をすくめた。 ここで腹の探り合いをする気がないのは理解した。 映像の持つ魔術的な作用も。 「わが鎮守府は、今後約70年間の医学的・科学的成果を大日本帝国に提供する用意があります。 加えてわが鎮守府が実効支配する島嶼のうちいくつかを防衛目的で提供し、さらには本島から採掘される豊富な資源も。」 「具体的には?」 掛け...
  • ネタ73_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「接触」その6
    398 :ひゅうが:2016/07/11(月) 19 20 34 艦こ○ 神崎島ネタSS――「接触」その6 ――西暦1937(昭和12)年1月20日 「この協定が、西太平洋上における平和を意味するものとなること、そして『四か国』がともに友好を深めあうことを願ってやみません。」 生真面目そうなクイーンズイングリッシュで述べられたスピーチに、拍手が響いた。 記者だという「青葉」や、急きょ艦隊から報道班経験を有する士官を記者にしたてた連中がフラッシュをたき、四人の提督が握手を交わす。 南方の太陽が提督たちを照らし、続いて「鎮守府」本庁舎の尖塔に島の旗である海色羅針旗とともに日の丸が掲げられた。 本庁舎前に急きょ設置された旗竿にはためく英国や米国海軍旗、そして帝国海軍の軍艦旗を見下ろすようにはためく姿に、式典に招かれた連合艦隊の士官や兵士たちが万歳三唱...
  • ネタ72_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「接触」その3
    524 :ひゅうが:2016/07/05(火) 22 50 01   艦こ○ 神崎島ネタSS――「接触」その3 「先導艦より信号。『前方ノ将旗ヲ掲ゲタル艦ガ旗艦「やまと」ナリ。』」 「返信。『先導ニ感謝ス。』」 駆逐艦「時雨」は、わずかに速度を緩めた。 が、前方を先導する謎の艦隊の駆逐艦「吹雪」は巧みに速度を上げつつ針路を変更した。 「いい腕だ。」 米内は思わずそう漏らした。 艦という巨大な物体は、針路を変更すると当然それまで進行していた方向向きの運動量が減少する。 学校の数学でよく習う運動ベクトルだけでなく、要は水の抵抗の問題だ。 そのために後続艦はわずかに速度を緩めるかして追突を防ぐのであるが、前をゆく「吹雪」はそれを見越して速度を上げながら針路を「時雨」に譲ったのだった。 しかも見苦しくない程度で。 これができる...
  • ネタ72_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「接触」その2
    345 :ひゅうが:2016/07/03(日) 20 06 56 艦こ○ 神崎島ネタSS――「接触」その2 「前方300(3万メートル)、長門型戦艦2、さらに後方、未知の大型戦艦2! まだまだいます!」 「マストに挙がっているのは?!」 「軍艦旗を確認!…旭日旗です!」 「馬鹿な…」 「上空、単葉機複数!」 「こちらも戦闘機を出しましょう!鳳翔と龍驤にはこちらも単葉機があります!」 「『目標』艦隊より発光信号!」 「なんといっている?」 「『こちら・・・カンザキトウチンジュフ所属艦隊。ワレに敵意なし。GF長官殿との会同を求む。』」 長官!と声をかけられるまで米内光政は頭を回転させ続けていた。 軍艦旗だと? 彼らは帝国海軍の軍艦だということか? いやそれにしても『海底軍艦』や『新戦艦高千穂』のよう...
  • ネタ73_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「接触」その5
    285 :ひゅうが:2016/07/10(日) 22 00 20 艦こ○ 神崎島ネタ――「接触」その5 「おい…こりゃぁ…」 「大都会じゃないか。誰だ?艦隊が立派でも島は立派とは限らないとかいった奴は?」 「そりゃお前だよ。」 「ああ俺か。そりゃすまん。」 兵たちがわいわい声を上げている。 士官たちも同様だったが、一時期の緊張が嘘のように艦隊の雰囲気は和らいでいた。 「見目麗しい娘さんたちが操る艦が相手となると、戦艦の乗組員でもほほが緩むものですな。」 「本来は困るのだが、ああも手をふってこられてはなぁ…」 米内GF長官は苦笑をもって接触3日目の朝を迎えていた。 連合艦隊司令部の参謀たちや、艦長たちも同様である。 昨日、演習と称して艦隊運動や砲戦演習を行った艦隊は、いずれも18ノットで南下。 艦隊の案内で、神崎島...
  • ネタ72_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「接触」
    108 :ひゅうが:2016/06/30(木) 22 37 03 艦こ○ 神崎島SS――「接触」 ――昭和12年1月8日 太平洋 連合艦隊第1艦隊 第1戦隊旗艦 「長門」 「しかし、本当なのかね?正体不明の新島が出現したというならまだしも、そこから戦闘機の迎撃を受けたというのは?」 「間違いありません。でなければ、演習予定を繰り上げてまでGFにお呼びがかかりません。それに――」 「わかっているよ参謀長。由々しき事態だ。『日の丸をつけた未確認戦闘機が謎の島にいる』というのは、ね。」 連合艦隊司令長官 米内光政中将はそういって双眼鏡で彼方を見つめるしぐさをした。 「単葉引き込み脚の戦闘機。そんなものを持つ勢力が小笠原のすぐそばの島に居座っているか。」 「陸軍も大慌てでありました。」 「無理もない。昨年の2.26事件以来陸さ...
  • ネタ73_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「幕間(反転)」
    429 :ひゅうが:2016/07/11(月) 21 19 12 神崎島ネタSS――「幕間(反転)」 「本日、帝国は喜びをもって発表いたします。 はるか2000年以上の昔、朝廷よりわかれた日本の一部が再びわが皇土へと合流したことを。 歓迎しましょう。分れし皇国の民の帰還を。」 ――1937(昭和12)年1月21日 内閣情報局総裁発表 「かの島はファシズムに反対するか。問題はエンペラーがそれに何と返答するかだな。」 「相互不可侵協定はあくまで現地軍によるもの。我々の対処はこの後により変わります。」 ――1937(昭和12)年1月21日 ワシントンD.C 「尊王討奸」 ――1937(昭和12)年1月23日 少壮集団「さくら会」橋本欣五郎 「産業の統制こそ帝国の重工業化に不可欠。そのためにはあの島の資源がどうしても...
  • ネタ79_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「1937年6月」その5
    533 :ひゅうが:2016/08/12(金) 23 11 46 神崎島ネタSS――「1937年6月」その5 ――1937(昭和12)年6月29日 神崎島鎮守府「中央即応集団」基地 「提督より命が下った!」 妖精さんこと温水逸雄大佐は、指揮台の上から声を張り上げた。 「わが隊は、これより長躯太平洋から東シナ海を抜け、上海へ向けて長距離飛行を断行する。 途中、詫間空および佐世保空から同任務にかかる帝国海軍航空隊と会同。 以後か彼の指揮下にて上海を目指す!」 言葉を切る。 彼らの機体は大型である。乗員の数も、小さなものでも14名。 大きなものだと25名を数えるのだからその責任は極めて大きい。 「第一戦略爆撃隊は即応できない!上海の特殊な地勢が理由であり、それこそがわが中央即応集団がゆく理由である!」 温水は、か...
  • ネタ73_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「2月26日」その2
    565 :ひゅうが:2016/07/12(火) 20 31 57 艦こ○ 神崎島ネタSS――「2月26日」その2 竹芝埠頭からは長い桟橋が伸びている。 そこには出迎えの軍楽隊や見物の民衆が並び、希にみる巨人飛行艇の着水を見守った。 今や国民的な娯楽となったラジヲのアナウンサーも中継マイクロフォンに上ずった声で実況を続けている。 軍楽隊の手により流されるのは、1月に作曲されたばかりの古典風軍楽曲「吉志舞」だ。 新進の天才作曲家として知られる伊福部昭の作成した主題を陸海軍が翻案したというこの曲は、作曲者が明らかにされてはいない。 静かな第一部を演奏し始めたのは、水上を埠頭へ向かう飛行艇の到着時に第二部がくるように配慮した結果だった。 プロペラの回転数を変えつつ埠頭へ向かってきた全幅75メートルに達する巨人機は、たっぷり1分半ほどで耳慣れない甲高い金...
  • ネタ73_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「2月26日」その1
    532 :ひゅうが:2016/07/12(火) 17 22 57 艦こ○ 神崎島ネタSS――「2月26日」その1 「わざわざ2月26にしなくともよかったのではないですか?」 「いえ、先方がこの日にちが空いているといっていましたからね。」 「提督を囮にするようで気が進まないのは私も同じよ。」 「私たちの中で交渉ごとが得意なのは、元外交官の妖精さんのほかはお前くらいしかいないからな。 私はご覧の通りだし…大和は、なんというか箱入り娘だ。」 「むぅ!」 「それに、守り切れるだろう?大淀。お前なら。」 「ええ。もちろん。」 「うわぁ…なんてドヤ顔…わ、私だって!初期艦の誇りにかけてお守りします!」 「私の決め台詞をとらないでください!」 ――1937(昭和12)年某日 神崎島にて ――19...
  • ネタ80_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「第2次上海事変」その1
    136 :ひゅうが:2016/08/19(金) 18 09 55 艦こ○ 神崎島ネタSS――「第二次上海事変」その1 ――同 7月1日午前3時 上海 黄浦江岸 観音開きの扉が開き、跳ね橋のようになっている通行板が埠頭におりた。 大陸の河川らしく、「埠頭」があるこの「河港」は下手な漁港のそれよりも規模が大きかった。 停泊している船舶は、普段よりもやや少ない。 現地に生きる人々は、国民党軍の槍先はもっぱら日本人に向いていることを知っていたし、彼らとつながりのある人々は早々と脱出していた。 欧米人は関わり合いにならぬようにしており、日本総領事がどれだけ要請しても舟を出そうとはしなかった。 つまりは、ここにいたのは親国民党か中立勢力ばかりということになる。 そのため、陸戦隊も無茶を通せた。 出港用意を調えながらも日本人だけ乗船を拒否する船を退去させ...
  • ネタ74_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「風に乗る」
    410 :ひゅうが:2016/07/17(日) 19 18 57 神崎島ネタSS―――「風に乗る」 日本経済は、1931年以降回復基調にあった。 言うまでもなく満州事変に伴う経済圏の拡大が景気(文字通りの「気分」として)を上向かせたことに加え、軍拡に伴って重工業需要が増大したことによるものである。 もともと日本経済は昭和初期の金融恐慌以来どん底にあえいでいた。 その間に財閥の寡占化という名の不良債権処理が進んでおり、世界恐慌による被害が相対的に少なかったという事情もある。 だが、傷は深い。 中産階級として勃興しつつあった農家は小作貧民に転落しつつあり、都市生活者は失業者という名の貧困層へと移行しつつあった。 このような時代、経済再編に成功した財閥への恨みつらみと、政争を繰り返す政党政治への幻滅が世情を支配しても不思議ではない。 かくて、軍部の台頭と...
  • ネタ77_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「三匹がゆく! in Britain」その6
    659 :ひゅうが:2016/08/01(月) 21 18 57 神崎島ネタSS――「三匹がゆく! in Britain」その6 ――1937(昭和12)年5月10日 ロンドン 日本大使館 「テートクぅ!!」 跳んだ。いや飛んだ。 全員が一致した感想を抱く。 空中で一回転した金剛は、ようやくのことで、秩父宮殿下とともに神崎島から飛来することができた神崎提督に飛び込んだ。 「あ!ずるい!…じゃなかった。何をやってるの!」 足柄の一喝に、いわゆる大好きホールドで固まっていた金剛はすたっと床に降り立ち、ものすごい勢いで壁際に後ずさった後、軽く腰を折り来客に向けて淑女の礼をとった。 「よい細君を選ばれましたな。」 ウィンストン・チャーチル卿が顔をくしゃっと丸めて揶揄するかのようにいった。 「いえ閣下。」 金剛が(...
  • ネタ73_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「2月26日」その4
    662 :ひゅうが:2016/07/13(水) 00 03 59 艦こ○ 神崎島ネタSS――「2月26日」その4 たとえばの話をしよう。 たとえば、天皇機関説が政治問題になったときは、自宅への投石に百人単位が動員できた。 たとえば、争議とあれば1000人以上の人間が暴徒となってぶつかりあった。 鉄砲玉はいくらでもいた。 そんな奴らを帝国陸軍も、そして政党も利用した。 その成れの果てがこの光景だった。 まず第一に、サイドカーをつぶすために日本では珍しいトラックが突っ込んできた。 続いて爆発。 これは労働争議の合間に盗み出されたダイナマイトのうちのいくらかが使用された。 発砲されたのはシカゴ・タイプライターと呼ばれるM1921トンプソン・マシンガン。 トラックに隠れていた鉄砲玉どもが発砲し、警護官が一瞬ひるむ。 「天誅ーっ!!」 ...
  • ネタ80_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「第2次上海事変」その7
    732 :ひゅうが:2016/08/23(火) 15 43 37 神崎島ネタSS――「第二次上海事変」その7 ――1937(昭和12)年7月2日 午後1時30分 上海 全景 何事にも、最悪の時期に最悪の事態が起きてしまう瞬間がある。 そしてそれは往々にして、一方と他方において一致するものであった。 このとき、上海を包囲した上海「奪還」軍は選択を迫られていた。 彼らとしては、作戦の要点である日本軍の動きを縛る避難民の足止めと日本軍への対艦攻撃を目標としたのであるが、それはことごとく裏目に出ていた。 攻撃を要請した時間にあって、欧米艦隊が予想以上の素早さで上海に展開したことがまず間違いのもとだった。 今更だが、航空機による海上艦の識別は極めて難しい。 もともと数十年かけて使い潰す勢いで使用するためにまず大きさで種別を判断するのが難しい。 ...
  • ネタ73_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「海軍次官の憂鬱」
    912 :ひゅうが:2016/07/14(木) 20 50 22 艦こ○ 神崎島ネタSS――「海軍次官の憂鬱」 ――1937(昭和12)年2月27日 海軍省(赤煉瓦) 『本日、天皇陛下御自ら神崎博之提督に対し元帥号が授与。あわせて神崎島鎮守府設置の御裁可を得ました。 帝国の海洋領土は一気に拡大し、西太平洋のほぼ全域が――』 河西三省アナウンサーの声がラジオから響く。 昨年のベルリン五輪で日本中を熱狂させた実況放送の担い手は、昨日の襲撃未遂事件(早くも第二次2.26事件と呼ばれている)以来一睡もしていない疲労を感じさせない調子で新たな帝国領土の誕生を告げていた。 それを少しばかり不機嫌な風に聞きながら、山本五十六海軍次官は鼻を鳴らした。 ここは海軍省の次官室。 相手にしているのは、徹夜明けにも関わらず涼しい顔を崩さぬ黒いブレザー型軍服の「女性...
  • ネタ74_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「来島者」
    752 :ひゅうが:2016/07/19(火) 04 44 38 艦こ○ 神崎島ネタSS――「来島者」 ――「天皇ハ帝國ノ統治ニ当リ 其ノ権能ヲ代行セル者トシテ帝国議会並ニ重臣会議ノ協賛ヲ得 内閣総理大臣ヲ任命ス」      日本帝国憲法(昭和第一次改正)第四条第二項 ――「内閣総理大臣ハ天皇ヲ輔弼シ其ノ権能ヲ代行ス」      同 第五五条第二項 ――西暦1937(昭和12)年3月8日 神崎島 神崎島鎮守府本庁舎 「本日付をもって、大日本帝国高等弁務官として着任した山下奉文中将であります。」 「同じく堀悌吉中将であります。」 「神崎です。お二方の着任を歓迎いたします。」 敬礼をささげられた神崎は緊張していた。 よりにもよってこの二人が着任されるとは…と。 山下奉文については言わずもがな。 ...
  • ネタ80_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「第2次上海事変」その8
    741 :ひゅうが:2016/08/23(火) 16 33 17 艦こ○ 神崎島ネタSS――「第二次上海事変」その8 ――同 (非公式)日本租界境界 「だそうな。」 「いやですねぇ。街道上の怪物よろしく敵を防ぎ、その先では装甲車を先頭に避難民を守りつつ撤退戦を行うとは。まるでスターリングラードだ。」 「いやいや、私たち、ドイツアバター。」 「細かいことはいいんです。バウアー中尉。」 自分たちが乗っているのもアメリカ戦車ですし。という副官相手に、バウアーは苦笑した。 妖精さんという生き物は、基本的に無個性だ。 しかし史実やどこかの平行世界から得た記憶や情報…SF的にいえばクオリァを手にすることでまるで人間のように振る舞うことになる。 実際、生物学的には人間そのものなのだ。 神崎島の住人は、そのようにして今も増えている。 ...
  • ネタ79_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「1937年6月」その3
    444 :ひゅうが:2016/08/12(金) 19 24 41  神崎島ネタSS――「1937年6月」その3 ――1937(昭和12)年6月29日 東京 「なぜだ。」 内閣総理大臣 廣田弘毅はうめきながらいった。 「早い。」 「ですな。『史実』なら武力衝突は7月7日の盧溝橋事件、ついで8月3日の第二次上海事変により全面戦争へ発展するはず。なのにこれは、1ヶ月あまりも早い!」 戦慄するかのように、永野修身海軍大臣がいった。 「しかしこれは我々の動きが確かであったことも示しています。 …我々は、歴史を変えつつあるのです。」 そうだな。と廣田は応じた。 そう思わなければ、この修羅場はやっていられない。 続いて彼は現在の情勢について、軍令・軍政担当の武官達に問う。 まだ大本営の常設化と施行令の改訂がなされていないた...
  • ネタ74_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「その天命これ新たなり」
    516 :ひゅうが:2016/07/18(月) 00 00 48  艦こ○ 神崎島ネタSS――「その天命これ新たなり」 ――1937(昭和12)年3月7日 竹芝桟橋 「ばんざーい!ばんざーい!!」 この方は、なんとおっかないのだ。 歓呼の声が響く中、神崎博之は笑顔であの御方と歓談していた。 「御苦労だったな。」 「もったいのうございます。」 すべてが前代未聞だった。 10日に及んだ帝国本土滞在は、「日神基本条規」と呼ばれる帝国と神崎島の関係の確認書類への署名によって終結した。 多々ある条文をその都度語ることはできないが、要約すれば以下のようになる。 神崎島には道府県制は敷かず、暫定的に皇室御料地として扱う。 あまりに多くの資源を有し、軍備を有するために手の届かぬところにおいたという扱いだが、実態は多くの秘密を有する彼...
  • ネタ81_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「第2次上海事変」その16
    155 :ひゅうが:2016/08/25(木) 19 03 22 神崎島ネタSS――「第二次上海事変」その16 ――同 上海 市街地 「随伴歩兵へ。さっきと同じように側面掩護を。」 『カールグスタフはまだか?』 「バカスカ撃ちすぎだ佐藤!」 『ヒイ!』 『ボケッ!』 無線の向こうから「畜生いつか殺してやる」という声が聞こえた気がした。 もう死んでるだろうが。と突っ込もうかとも思ったが、バウアーはその欲求を無視することにした。 あいつらはふざけているようでなかなか死なない男たちだ。 大仰に弔辞を読んでいるところに平気で帰ってくるような空気を読まない阿呆ども。 なお、放っておいてもそのまま帰ってくるからどっちにせよあまり関係はない。 M24に随伴した日米の混成部隊は、市街地での火力支援を続けつつ、都市区画を奪い...
  • ネタ86_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「人間の限界」
    616 :ひゅうが:2016/10/03(月) 21 17 26 神崎島ネタSS――「人間の限界」 ――同 神崎島 南波照間諸島沖 神崎島鎮守府 第2水雷戦隊 「陽炎、同期が落ちていますよ。」 『り、了解…』 「神通さん。連続『3日目』、しかもこのうねりの中では――」 「…そうですね。無理はしすぎない方がいいですか。荒天下演習は――」 「ですです!」 軽巡「神通」の艦橋の空気が緩む。 演習に参加していた帝国海軍の中堅士官たちもほっとした表情を見せている。 ここ数か月、神崎島鎮守府所属艦隊はフィリピン海上や西太平洋上でこうした艦隊演習を繰り返しており、それに帝国海軍から観戦武官が必ず派遣されるのもまた常となっていた。 今回やってきたのは、有賀幸作や木村昌福といったいわゆる「史実」で実戦派として知られた士官たち。 そして...
  • ネタ79_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「1937年6月」その2
    353 :ひゅうが:2016/08/12(金) 11 39 10 神崎島ネタSS――「1937年6月」その2 ――1937(昭和12)年6月26日 中華民国首都 南京 「なんてことだ。」 南京駐留の大使館で、特使という名の雑用係をおおせつかった男、松岡洋右はかすれた声を上げた。 「それでは、貴国上層部は、短期的な対日戦の覚悟を決めたと。」 「その通りです特使。」 憂いの深い表情の男性、行政部長 汪兆銘は緊張しながら日本語で肯定してのけた。 「私は、公的にはまた病気で休暇をとっていることになっています。」 「聞いています。閣下は1月までドイツにおられた。病気療養のために。」 「その間、私はかの国とのパイプを深めることに腐心しました。だからです。 かの国の軍はヒットラ総統とは別の意思で動くことが多い。」 ...
  • ネタ94_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「御指名」
    445: ひゅうが :2017/01/08(日) 22 13 43 艦こ○ 神崎島ネタSS――「御指名」 ――1937(昭和12)年8月20日 帝都東京 本所 「ああ面白かったよ。」 喜色満面で笑う米内光政大将の姿に、山本五十六中将は愛想もこめて苦笑いをしてみせた。 ぷくぷくと沸き立つ鉄鍋の上では、軍鶏の身が躍り、ややしなびてきた牛蒡が少しずつ震えるようになっている。 「私が司令長官の間は戦争は起こるまいというから思い切りやらせてもらったが、やはり相手がいるのはいいね。」 からりと笑う。 暑い盛りであるのに鍋を囲んでいるから二人とも背広の上着は脱いでいた。 先ほどまで、第3艦隊参謀であった小沢治三郎大佐となにがしか話し込んでいたらしいが、山本がきてからすぐに彼は去ったために何を話していたかはわからない。 だが、今のような陽性の雰囲...
  • ネタ80_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「第2次上海事変」その10
    861 :ひゅうが:2016/08/23(火) 23 35 25 神崎島ネタSS――「第二次上海事変」その10 ――同 上海上空 「おうおう…好き放題にやってくれる!」 空母「鳳翔」航空隊に所属する岩本徹三一等航空兵は、怒りに燃えながら空を飛ぶ編隊をにらみ付けた。 上空に上がれたのは、「鳳翔」航空隊が有する96式艦上戦闘機11機。補用機までも出している。 後方の「龍譲」からも追って20機が急行中とのことだったが、今はこの11機が上海を守る最後の砦となっていた。 「毒ガスを使用だと?畜生。欧州大戦で何を学んだんだ。」 彼らの乗る96式艦戦は、発動機換装とともに12.7ミリ機関銃を翼下のポッドに携行した特別製だ。 もちろん無線はクリアな音声の新型となっている。 おかげで、地上から上がった悲鳴のような言葉も容易に聞き取れていた...
  • ネタ80_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「第2次上海事変」その11
    931 :ひゅうが:2016/08/24(水) 16 21 21 神崎島ネタSS――「第二次上海事変」その11 ――同 日本総領事館前 臨時指揮所 「どういうことだ…」 「おそらく、租界に展開する外国兵はすべて敵だと思ったのでしょうね。」 大川内がこともなげに言った言葉に、ちがう、そうじゃないんだ。とマッカーサーは首を振った。 「仮にも白旗を掲げた軍使を撃つのか?!」 「戦場ですから。欧州ではなかったのですか?」 なかった…とかすれた声でマッカーサーはいった。 「そんな最低限の法規を守らないならば、戦争はただの皆殺しの応酬になってしまう。」 そうでしょうな。 と大川内は返した。 「驚いていないようだが。」 いらだった様子でマッカーサーが言う。 むしろ、こんなことに気付かないものなのか、と...
  • 海神(リヴァイアサン)の雷
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  • ネタ73_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「艦政本部の憂鬱」
    943 :ひゅうが:2016/07/14(木) 22 54 08  艦こ○ 神崎島ネタSS――「艦政本部の憂鬱」 「これは…反則だろう…」 「なんだ…これは…戦艦だけで数十?」 「あの優男と女学生みたいなのは…こんな修羅場を潜り抜けてきたのか…」 新戦艦検討会議で、思わず漏らされた少壮佐官たちの声。 室内にはカラカラというフィルムを巻き取る音以外に、そんな声と映写機の映像だけが流れていた。 『オノレェ!』 『敵中枢棲姫に命中多数!』 『全艦に打電!「天佑を確信し全艦突撃せよ。われに続け!」』 『さすが提督ネ!Follow me!!』 映像の中はハワイによく似た幻の島、タイヤキ・ヘッド岬砲台は沈黙。 パルフェ・ハーバーに陣取る巨大な水上要塞がすさまじい砲火を吐き出す中、空を圧する超重爆撃機の大軍が必殺の2...
  • ネタ86_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「官僚たち」
    705 :ひゅうが:2016/10/04(火) 02 44 32 神崎島ネタSS――「官僚たち」 ――同 日本帝国 帝都東京 内務省 日本列島改造計画本部 「黒部発電所建設は、これで軌道に乗ったといってもいいですな。」 「うむ。第3発電所だけで8万kW、第4発電所で33万kW。先日着工したばかりの有峰ダム系列で20万kW。 これだけで我が国の発電能力は3割増しに向上する。か。話を聞かされたときは笑い飛ばすようなことだよ。剛毅、だな。」 「湾岸の多段階式(コンバインド)火力発電所群とあわせれば100万kWだ。5割増しだよ。 熱効率6割に達する新型発電所の完成は、わが帝国の慢性的な電力不足を電力余りといえる状態にまで改善することになる。」 「本音をいえば、あの資料にあった加圧水型原子炉による商用発電が使えれば便利だがね。 138万...
  • ネタ86_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「黒部」
    568 :ひゅうが:2016/10/03(月) 16 53 50 神崎島ネタSS――「黒部」 ――1937(昭和12)年7月8日 日本帝国 富山県 黒部渓谷 「はー…すごいでっかいの。」 「おう。これがてぃーびーえむっていうものなんだと。」 「海カゲロウ(ふなくいむし)みたいやな。」 「これで掘りぬいたんけ。」 「氷かき機みたいにまわって岩盤を粉にしながら掘ったんだと。」 精一杯のおめかしをした人々が、口々に巨大な機械を見上げていた。 彼らが暮らす宇奈月温泉に「どうやら貫通したらしい」というしらせが入ったのは3日ほど前のこと。 それと前後して、町の酒屋に大量の酒樽の注文が入ったことで噂は確信へと変わった。 はるか上流、黒部川の奥において進められていた工事の第一段階は成功裏にそれを終えることができたのだ。 ...
  • ネタ80_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「第2次上海事変」その4
    570 :ひゅうが:2016/08/22(月) 19 23 47 艦こ○ 神崎島ネタSS――「第二次上海事変」その4 ――1937(昭和12)年7月2日 午前10時10分 上海総領事館前 「避難船第一陣が投錨を完了しました!」 「護衛のために、各国の河川砲艦が揚子江上流に展開しています。」 「ありがたいことだな。」 大川内特別陸戦隊司令は、昨夜の飛行艇隊飛来から状況が好転し始めたことを感じていた。 台湾の東港との間の距離は800キロ。 この間を97式大艇は5時間ほどで、神崎島の2式大艇改「晴空」と超大艇「蒼空」は3時間ほどで往復して人員を輸送し続けていた。 現在までに移送できた人数は1万名をこえている。 そして、それに続いて神崎島鎮守府所属の大型揚陸艦「あきつ丸」と、高速客船が到着したのだ。 それを見た共同租界からも脱出希望者が殺...
  • ネタ77_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――幕間「わが祖国」
    403 :ひゅうが:2016/07/31(日) 21 38 49 艦こ○ 神崎島ネタSS――幕間「わが祖国」 ――1937(昭和12)年5月1日 大英帝国 帝都ロンドン 祖国…祖国… 言葉が幾度も頭の中をリフレインする。 敗戦…廃墟からの出発…理想…逆コース… 歴史は時の流れを遡り、あるいは下り、出来事は相互の関係をもってまるで伏流水のようにあらわれては消える。 傾斜生産、経済再編成、そして日米安保条約… あのトイレットロールというのは傑作だった。意気込みすぎて長文を書きすぎたのだろう。 当時の烙印をおされた我が国は、後ろ指を所与のものとして再出発を図らざるを得なかった。 そしてそれに乗り国家の再建を果たすために、国民の力を結集することに「戦後日本」は成功した。 新体制運動や国民的運動というやつが、結局は近衛公や軍部の...
  • ネタ74_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「国防は軍人の専有物に…」
    274 :ひゅうが:2016/07/17(日) 00 56 47 神崎島ネタSS――「国防は軍人の専有物に…」 ――西暦1937(昭和12)年3月4日 帝国陸軍 富士裾野演習場 「撃てぇ!」 統制官天幕からの号令に従い、巨大な鉄の猛獣が脈動した。 刹那も置かずに砲口から巨大な火炎がほとばしり、砲口制退器から左右に砲煙が噴出した。 発砲可能を示す赤い小旗が爆風と衝撃波にたなびき、数秒遅れて天幕に轟音が響いた。 「まるで重砲だ。」 「その通りです。主砲は122ミリ。もとは軍団砲兵のカノン砲です。」 「ロスマン中佐。ドイツは、こんな怪物を運用するのか。」 「いいえ。これはWW2後期のソ連軍の重戦車の系譜に属するものですね。前線突破用にソヴィエトはこれを8000両ほど生産しています。」 「は・・・」 戦車第8連隊...
  • ネタ80_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「第2次上海事変」その2
    252 :ひゅうが:2016/08/20(土) 00 04 47 艦こ○ 神崎島ネタSS――「第二次上海事変」その2 ――1937(昭和12)年7月1日 大陸はるか上空 人間には気付きにくいが、地球の大気には質量がある。 重さ、容積、そしてそれらはごくごく細かい粒でできている。 文字で表すよりも数式であらわした方が正確である作用によって、それらは対流し、そして外部からの電磁波の放射を散乱し、そしていくらかを制動。 結果としてそれらは青色の光の散乱という形で頭上に広がることになる。 だが、よく知られているように海面からの距離が遠ければ遠いほど空気は薄くなる。 そして、高度1万メートルともなれば大気圧は地上の5分の1である。 ほとんど呼吸などできようはずもない。 これが1万5000を超えると「ほとんど」が「まったく」に変わり、そして2万を...
  • ネタ78_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「ある朝」
    848 :ひゅうが:2016/08/08(月) 23 00 00 艦こ○ 神崎島ネタSS――「ある朝」 ――1937(昭和12)年6月12日 神崎島 海軍中将堀悌吉の朝は早い。 元来が健康に気を使い、酒もタバコも控えている彼の夜は早かった。 その上、ここ最近は新たな日課が加わっている。 「おはようございます堀提督。」 「おう。おはよう。」 ジャージという動きやすい服装に着替えた彼は、いつもの通りの待ち合わせの場所、神崎島戦史博物館前に6時25分ぴったりに到着する。 緯度としては沖縄や小笠原とほぼ同じ神崎島であるから、6月にも関わらず気温は高い。 待ち合わせ先では、彼と同じ習慣を身に着けた随員のいくらかだけでなく、島民たちが待っていた。 それに、いくらかの艦娘たちも。 中でも、彼のなじみの艦――言い方に誤解が混じるかもしれないが...
  • ネタ83_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「去る者、来る者」
    976 :ひゅうが:2016/09/15(木) 00 32 18 神崎島ネタSS――「去る者、来る者」 ――1937(昭和12)年7月4日 上海 「では、我々はこれで失礼いたします。大川内司令。」 「うん。御苦労だった。バウアー中尉。停戦協定発効に伴い我々も撤収するが、今度は本土で会いたいものだ。」 踵を打ち鳴らして敬礼する眼帯姿の女性――というより少女に見える人物に、大川内伝七少将も同様に答礼。表情を緩めた。 実のところ、彼女らはマッカーサー率いる米比軍から残留を強く要請されていたが、本国…というか本島の命令ないし、国際法に従うという名目で可能な限り撤収が急がれた経緯があった。 75ミリ砲を搭載し高速で戦場をかけ、そして下手な中戦車の主砲を弾き返す戦車をマッカーサーは手元に置きたがったのだ。 一度など、言い値で代金を払うからと強引に持って行か...
  • ネタ74_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「狂愛」
    68 :ひゅうが:2016/07/16(土) 00 38 48 艦こ○ 神崎島ネタSS――「狂愛」 ――西暦1937(昭和12)年2月27日 「楽しかったかい?」 「はい!思いっきり体を動かすのは楽しいです! でも…外に出られないのはちょっと気が滅入りますね。司令官。」 吹雪がほほ笑んだ。 背後では、なんとか笑みらしきものを作っている陸海軍の若手士官や警護官たち。 死屍累々――もちろん比喩的表現として――という有様だった。 おおかた、首相官邸での会話の間暇をしていた吹雪をちょっと遊んでやるくらいの気持ちだったのだろう。それが、思いのほか熱が入ってしまったのだろう。 若い士官にとっては、見た目子供な相手に手もなく投げ飛ばされては黙ってはいられまい。 ふと、神崎はこの場に島風や長良あたりを連れてこなくてよかったと思った。 彼女たちは...
  • ネタ75_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「連合航空艦隊演習」その4
    958 :ひゅうが:2016/07/24(日) 18 59 59   神崎島ネタSS――「連合航空艦隊演習」その4 ――1937(昭和12)年3月26日 小笠原諸島東方 連合艦隊「第一機動艦隊」 「おい。聞いたか?中攻隊(陸上攻撃機隊)の連中、昨日3回やって3回とも全滅らしいぜ。」 「本当か。連中口ほどにもないな。」 空母「加賀」の艦上で小気味いい笑い声が響く。 それから悪口につながらないのは、いかにガラが悪いこの「加賀」の飛行隊といえども、驚きの方が勝っているからだろうか。 「しかも最後は、うちが使っているような96式艦戦のみ。これには血気盛んな奴らもぐうの音も出なかったらしい。」 「やれやれ。やっぱり俺たちのお守りがいるわけか。」 「航続距離さえあればここまで近づく必要もなかったんだがなぁ…」 搭乗員たちがそん...
  • ネタ79_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「1937年6月」その4
    504 :ひゅうが:2016/08/12(金) 22 23 36 神崎島ネタSS――「1937年6月」その4 ――1937(昭和12)年6月29日 ワシントンD.C ホワイトハウス 「では、そのように。首相閣下。」 太平洋横断海底ケーブルを通じて届けられた流ちょうな英語に対し、フランクリン・ルーズベルト大統領は丁寧に返答してから電話を切った。 「聞いていたとおりだよ。リーヒ長官。君の海軍がまず出発することになる。そして、いざことが起これば、フィリピンの航空隊をタイワンに移動させる。」 「前代未聞ですね。仮にも仮想敵国ですが。」 海軍作戦本部長をつとめるウィリアム・リーヒ提督の反応は、呆れの中に驚きが混じっていた。 さもありなん。 態度が軟化したとはいえ、日本海軍から彼らの仮想敵である。 しかし、日本の外務省がつかんだという南京...
  • ネタ80_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「第2次上海事変」その3.5
    546 :ひゅうが:2016/08/22(月) 17 14 59  艦こ○ 神崎島ネタSS――「第二次上海事変」その3.5 ――1937(昭和12)年7月1日 午前9時 東シナ海 上海沖合200浬 「見えたぞ。ジャップ…いや日本艦隊だ。」 空母「サラトガ」艦上でウィリアム・ハルゼー少将は短くいった。 急な昇進、そして太平洋艦隊からアジア艦隊への増派、ついで上海への出動という慌ただしい日程をこなしたため、少し疲れてはいたが、新任の第1空母群指揮官としてはまずまずの満足をもって彼はこの極東へ来ていた。 そのため、差別的な言葉も自重している。 「ナガトにムツ、そしてイセにヒュウガですね…戦艦4隻。堂々たる大艦隊です。」 ジョン・H・タワーズ艦長も双眼鏡で簡単にそれを判別しつつ返答した。 「だが空母はいないな。」 「日本艦...
  • ネタ83_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――閑話「悪夢」
    275 :ひゅうが:2016/09/10(土) 16 39 37 ※ 実験作兼メタ話。グロ注意です。  神崎島ネタSS――閑話 「悪夢」 こんな夢をみた ――西暦1945(昭和20)年8月6日 午前8時15分 ゆるさない。 「どうしたんですか?何があったんですか?!」 私は、周囲を走り出す人々に次々に声をかけたが、返答はなかった。 頭を奇妙な頭巾のようなもので覆い、(奇妙なことに)都会であると思われる場所にもんぺ姿の女性しかいない状況。 男性も、着ているものはやたらとカーキ色であったり質の悪そうなものが多い。 背広姿の人間など数えるほどだ。 遠くから、消防車のサイレンのような音が響いてくる。 「空襲警報は解除になったはずじゃなかったのか?」 「知らんよ!1機や2機の偵察機の侵入は日常茶飯事だ。」 ...
  • ネタ81_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「第2次上海事変」その15
    121 :ひゅうが:2016/08/25(木) 16 18 59 神崎島ネタSS――「第二次上海事変」その15 ――同 上海上空 「敵第4波攻撃隊なおも接近!方位・高度変わらず。大型機7含む。速い!速力210ノット!護衛戦闘機8も含む!」 「了解。」 いよいよ厳しくなってきた。と岩本は思った。 これまでの戦闘により、戦闘機隊の燃料も心もとなくなっている。 鳳翔搭載機から補用機を出し、龍驤搭載機も入れ替わりで滞空し続けたが、ローテーションにも限度がある。 現在空にいるのはわずか8機。 護衛戦闘機がついてきたことを考えると迎撃しきれるか厳しい。 「『アキツ・コントロール』。接敵時間は?」 『概ね5分。』 「そちらからも戦闘機が発進したと聞いたが到着時間は?」 『概ね10分!』 「5分差か。長躯進出したとは...
  • ネタ75_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「陸軍機械化ことはじめ」
    105 :ひゅうが:2016/07/21(木) 07 48 40 艦こ○ 神崎島ネタSS――「陸軍機械化ことはじめ」 ――1937(昭和12)年3月20日 帝都東京 北の丸 「いや、問題があるわけじゃないんだが…」 近衛師団に所属するある大尉は引きつった顔で目の前にならぶ物体の群れを見つめていた。 「昨日の今日でこれだけの数がくるというのは正直引くぞ…」 「しかたがありませんよ大尉殿。」 隊つきの軍曹がこちらも苦笑しつつ応じた。 「何しろ皆運転なんぞしたことはありません。この間の三長官会議でぶち上げられた陸軍総機械化構想なんてものを実現するにはこの車両が必要になるんです。」 まぁ、そりゃそうかなぁ。と少尉は思った。 彼の目の前でエンジンの音をたてているのは、はるかな未来で「軽トラック」といわれることになるはずの車...
  • ネタ75_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「連合航空艦隊演習」その2
    743 :ひゅうが:2016/07/24(日) 04 57 40 ※ 寝落ちする前に投下   神崎島ネタSS――「連合航空艦隊演習」その2 ――西暦1937(昭和12)年3月25日 午前7時30分 伊豆大島南方上空 「見ろ!軍艦旗だ!」 誰かがいった。 双尾翼の間からファーストライトが視界を染め、そして半円の形から急速に円形に近づいていく。 第1航空艦隊は、相互援護を可能なような立体陣形――俗にいう箱型陣形(コンバットボックス)を組みながら南下している。 高度は3000メートル。 中高度侵攻である。 「全機、ついてきているか?」 この第一航空艦隊の先導機(パスファインダー)を担当する入江俊家少佐は無線に向かってやや音量をおさえつつ言った。 この中攻隊が生まれてからわずか数か月。 その間に機体の癖は知り尽くしたといっても...
  • ネタ77_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「観艦式」
    964 :ひゅうが:2016/08/03(水) 16 24 42 艦こ○ 神崎島ネタSS――「観艦式」 ――1937(昭和12)年5月20日 大英帝国 スピッドヘッド沖合 日本にとっての横須賀、あるいは佐世保は、大英帝国にとってはポーツマスにあたるだろう。 英国南部に位置するこの港湾都市は、同時に観艦式の舞台としても歴史ある町であった。 そのため、スピッドヘッド沖合といえば同時に観艦式を称する一般名詞と化しているといってもよい。 このスピッドヘッドは、ポーツマス港を構成するもうひとつの要素、幅6.5キロ、長さ22.5キロに及ぶ海峡である。 ブリテン島と、沖合に浮かぶワイト島の間に形成されたこの海峡は、その地形からわかるように波が穏やかな絶好の泊地だった。 さらにはワイト島の外側には英仏海峡が広がり、南下すると英国王室領チャンネル諸島、そしてノルマ...
  • ネタ80_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「第2次上海事変」その6
    675 :ひゅうが:2016/08/23(火) 03 06 26 艦こ○ 神崎島ネタSS――「第二次上海事変」その6 ――1937(昭和12)年7月2日 午後1時08分 上海沖合 彼らは、不幸であった。 まず彼らの存在自体が祖国の不幸の証であった。 彼らが外国製のジュラルミンの天馬を駆るということは、祖国が外敵に侵略されているということを示す。 彼らが集められた経緯もまた不幸だった。 もともと彼らは祖国の各地でパイロットとなっていたり、空に夢を抱いた者達だった。 だが、祖国の情勢が緊迫化したことにより彼らは空軍に入隊。 その後、友好国による指導を受けてその才能を開花させていった。 だがその過程に彼らの主人は興味を持たなかった。 残ったのは、少なくない数の犠牲者を糧にして生まれたこの国初の空軍。 そしてその攻撃目標は、隣国が誇る大艦隊。 しかも未...
  • ネタ81_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「第2次上海事変」その14
    80 :ひゅうが:2016/08/25(木) 02 06 58 神崎島ネタSS――「第二次上海事変」その14 ――同 東シナ海上 第1空母部隊(群)旗艦 航空母艦「サラトガ」 先ほどから数ダースもの罵声や後世で放送禁止用語といわれる言葉がブリッジには連続していた。 発生源は、第1空母部隊の指揮官である「ブル(猛牛)」ハルゼー少将だった。 「畜生!やってくれたなチ○ク!」 「群司令、詳報が入ってきました。」 「アジア艦隊司令部は、ヤーネル提督は大丈夫なのか!?」 司令官の激怒っぷりに恐れをなした伝令にかわって電文を受け取ったタワーズ艦長は、帽子を片手で直しつつ電文に目を落とした。 現地にいる日本海軍からの詳報である。 「アジア艦隊司令部に被害はなし。重巡『オーガスタ』は第一煙突基部におそらく220ポンド爆弾1発が...
  • ネタ75_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――「連合航空艦隊演習」
    612 :ひゅうが:2016/07/23(土) 22 25 50   艦こ○ 神崎島ネタSS――「連合航空艦隊演習」 ――1937(昭和12)年3月25日午前5時 館山基地 「搭乗員整列!」 白みはじめた空のもと暖気運転をする双発機の群れ。その前で、飛行服に身を包んだ男たちが姿勢を正す。 「連合『航空』艦隊司令長官 山本五十六中将に、敬礼!」 「諸君。いよいよ諸君の日頃の訓練の成果を見せる時がきた。航空艦隊の編成と統合指揮の開始から日が浅いとはいえ、何事にも最初はある。 はじめにいっておくが、仮想敵役をつとめる神崎島航空総軍は手ごわい。」 いやはや。ここで「航空」がついていなければ諸手を挙げて賛成したいのだが…と思いながら、山本五十六は搭乗員たちに訓示をはじめた。 「彼らは電波の目で空を監視しており、戦闘機隊をはるか数百海...
  • ネタ76_ひゅうがさま_神崎島ネタSS――幕間「いざ生きめやも」
    240 :ひゅうが:2016/07/25(月) 23 49 24   神崎島ネタSS――幕間「いざ生きめやも」 ――1937(昭和12)年3月29日 三菱飛行機 「おい、本庄。二郎は?」 「あいつなら…ほら。」 三菱飛行機設計課の黒川圭介係長は、「ああ」とあきれたように溜息をついた。 帰り際に通りかかった本庄季郎技師が肩をすくめる。 彼の一期後輩にあたる設計技師 堀越二郎は、一心不乱に製図台に向かい、何かを書き続けていた。 「あいつ…」 黒川は、またはじまったかと頭を抱えた。 「そんなにすごかったのか?例の島の機体は。」 「すごいなんてものじゃないですよ。」 「全金属単葉戦闘機や爆撃機なのは知っているが、引き込み脚か?」 「いやそれが…何キロでていたと思います?」 本庄は深刻そうな顔でいう。...
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