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424 :名前が無い程度の能力:2008/07/16(水) 05:32:25 ID:ptDwe8G20 霧雨魔理沙はいつものように図書館から本を借りていこうと、紅魔館に立ち寄り、そこの門番、紅美鈴と対峙していた。 「悪いことは言わないから帰った方がいい」 美鈴は魔理沙をにらみすえて言う。 「何を言っているんだ?」 「今すぐ帰りなさい。パチュリー様は本を返さないあんたに怒り心頭、次にあんたが図書館に入れば…消し炭にされかねないよ」 「死ぬまで借りているだけだって言ったろう?私は約束は違えてないぜ」 魔理沙は自信たっぷりに言う。悪びれぬ彼女を見て、美鈴は決心する。 このまま図書館に通せば、間違いなくパチュリーの本気が魔理沙に襲い掛かる。 「死ぬまで返さないんでしょ?だったら殺せばいいのよ」 パチュリーはそう言った。彼女はやると言ったらやる女だ。失敗作とはいえロケットまで作り上げたのだ。 彼女なら、本を取り返すためだけに人を殺しかねない。そのために徹底的な布陣を敷いているのを、美鈴は知っていた。 ここで魔理沙の無意味な自信を完膚なきまでに砕かないと、この魔理沙は本当に死ぬことになる。 「…まぁいい、忠告はした。後悔しないことね」 「脅しは効かないぜ?」 「脅しでもなんでもないんだけどなぁ…行くぞ!」 地面を踏みしめる「ダンッ」という音が聞こえると同時に、魔理沙はスペルカードを宣言する。 「マスタースパーク!」 開幕マスタースパーク。これで美鈴は毎度毎度、馬鹿の一つ覚えのように吹き飛ぶ。 範囲も広く、これを避けられる者はほとんど存在しないのだ。今回も例外なくそうなるだろう、と魔理沙は読んでいた。しかし。 「…え?」 「どうしても通るというのなら、崩山彩極砲を使わざるをえない!」 マスタースパークを低姿勢のまま器用に避け、そのまま一気に突っ込んでくる美鈴。 「うそ、だろ…?」 それを見て魔理沙は、かつてないほどの戦慄を感じていた。 「(…負ける?私が?嘘…?だって今までこいつ、マスタースパークを避けたことすら…)」 「こんな単調な攻撃、避けられない方がおかしい」 美鈴の拳が腹に埋もれ(無論手加減はしてある)、魔理沙は声にならぬ悲鳴を上げる。 「吹っ飛べ!」 そのまま抵抗も出来ずに打ち上げをもらい、魔理沙は声も出さずに空へと消えていった。 吹き飛ばされながら、魔理沙は涙を流す。不思議と痛みは感じなかったが、これも美鈴の拳が絶妙に手加減されていたからにすぎない。 「…私…今まで、手加減されていたのかな…」 美鈴がマスタースパークを避けるなどということは、今まで決してなかった。 しかし考えてみれば、あんな単調で面白味もない吹き飛ばすだけの攻撃を見切れないわけがないのだ。 それを自分は、「範囲を広げ、一撃の威力を高めた結果」だと勘違いしていたのである。 そして自分は、ただの一撃も耐えられず、拳3発でこうして高空にまで放り上げられた。 「…舐められてた、ってわけか…」 ふわり、と体が浮いて、体が落ちていく。魔理沙は箒を股にはさみ、半ば強引に体勢を立て直すと、涙を流しながら自らのねぐらへと戻っていった。 美鈴の拳に砕かれたのは、骨や肉ではない。彼女の矜持…自分がそこそこ強いと思っていたその自信だった。 血涙を流すような努力の成果に、天狗になっていた結果がこれである。 「…パチュリー様があの白黒に好意を寄せていると思ったから、今まで通してやってたんだけどなぁ…」 美鈴は何事もなかったかのようにあくびをして、自分で作った弁当の小籠包を頬張る。 「まぁ実際のところ、パチュリー様は『もしかしたら本を返しにきたのかもしれない』という一縷の望みに賭けていたに過ぎなかった。  けれどあの白黒は本を返さないどころか、ますます盗んでいく始末。それで「死ぬまで返さない」なんてねぇ…  そんなので好かれる方がおかしいって、もっと早く気づくべきだったなぁ、私も」 じんわりと舌に染みる中華風のスープを味わいながら、美鈴は呟いた。 「これで態度を改めてくれれば、パチュリー様もきっとあの人間に協力してくれるだろうしね」

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