魔理沙が目を覚ましたとき、そこは真っ暗な世界だった。 周りを見渡してみても何も見えない、すぐ近くにあるはずの自分の手がどんなに近づけても見えない。 さらに無音。どんなに耳を澄ましても何も聞こえない。 地面を叩いて音を出してみるも、その音は反響せず、一瞬で消えてしまう。 ここはどこなんだろう、と魔理沙は思う。地面は石畳。近くに壁はないし何もない。 魔理沙はとりあえず立ち上がってみた。自分は地面に横たわっていたから。 立って、改めて周囲を見渡してみる。やはり何も見えない、聞こえない。感じない。 不安になって魔理沙は自分の体を撫で回してみた。大丈夫、触覚はある。 あれ? 体を撫で回し、触覚を確認して魔理沙は気付く。 服は? 身に着けていると思ったものに手が触れない。 頭の上から、足の先まで。 順番に手を這わしてみるが、自分の肌にしか触れない。 屈みこみ、周囲を調べてみる。 何もない。 !? ここに来てようやく、魔理沙はこの状態の異常さに気付いた。 身包みはがされて、どことも知れぬ真っ暗な空間に放置されている。 ここはどこだ? 先ほどのような漠然とした疑問ではなく、今度ははっきりと思った。 「おーい!」 声を上げてみる。先ほどと同じように、声は一切の反響をせず一瞬で消えてしまう。 恐怖に駆られ、今度は走り出す。 ぶつからない。広い空間。 それでも、一分くらい走っただろうか。魔理沙はとうとう何かにぶつかる。 石の壁。地面と同じ。 そんなものでも、魔理沙は嬉しかった。ようやく出会えた変化。離すものか、と。 壁に手を沿え歩き出す。迷路脱出の左手の法則。 しばらくの間、壁伝いに歩く。 右、左、左、右、右…。 自分が、最初の壁から見てどの方向に向かっているのかが分からなくなってきた頃、魔理沙はようやく"光"を見つけた。 真っ暗な中にぽつんと光る、虹色の光。 先ほどまで頼りにしていた壁に別れを告げ、魔理沙はその光のほうに走り出す。 だんだん近くなってくる。ぼんやりとした点だった光が徐々に形を作っていく。 そして、その光が何であるかに思い至ったとき、魔理沙は足を止めた。それは、もう目の前だった。 「あ、魔理沙。起きたの?」 こちらを振り返り、屈託なく笑う声。悪魔の妹、フランドール・スカーレット それが、見知っている生き物であり、自分に親しくしてくれるものであるとの認識から魔理沙の心に安堵が広がる。 「フランか、助かったぜ」 「うふふ」 「なぁ、ここはどこなんだ?どうして私はこんなところにいるんだ?」 「ここはね、私の部屋だよ。魔理沙がここにいるのは何でだろうね」 「フランの部屋…、紅魔館の地下室か。でもどうして…」 「思い出せないの?」 くすくす笑いながら逆にフランが尋ねる。 その様子を見て、魔理沙は自分の記憶をまさぐり始める。確か… パチュリーのところに行っていたんだ。 いつものように門番をなぎ倒し、パチュリーの図書館で他愛のない話をしていたんだ。 この前借りた本は面白かっただの夏服を出していたら服の隙間からでっかい蜘蛛が出てきてびっくりしただの…。 そんな話をしていたらフランが来たんだ。いつものように、ニコニコして。 それで、それで、話をした。内容は…なんだったかな、思い出せない。それで、それから… 「思い出した?」 フランが顔を覗き込んでくる。 その声に現実に引きずり戻される。 真っ暗な、地下室。 「ああ、途中まで。フランと会って、話をして。そこまでだ」 「なら全部じゃない。そうよ。私と会って、話をしてたの」 「何を話したんだっけ」 「うふふ、忘れちゃったわ」 嬉しそうに、楽しそうにフランは話す。虹色に光る羽がぴょこぴょこ揺れる。 大切なところを、そう思う箇所をわざとはぐらかそうとするフラン。そんな様子に魔理沙はまた不安を覚え始める。 「なぁ、フラン!」 「待って魔理沙、もうすぐ夜になるわ」 「それが…」 どうした、と言おうとして止まる。分かるのか?時間が。 「そろそろお出かけしなくちゃ。魔理沙、続きは帰ってからね」 牙を覗かせながら言う、そのまま虹色の翼を広げる。 「おいっ!」 「またねー!」 言うが早いや、フランは暗闇の中を飛んでいってしまう。虹色の光がどんどん遠ざかっていく。 「待てよ!」 魔理沙も置いてきぼりは嫌だとばかりに走り出す。箒はない。すっぴん。走るしかない。 全速力で走るが、翼で飛ぶフランにはぜんぜん追いつけない。 一つ目の角を曲がり、二つ目の角を曲がったところで、魔理沙は完全にフランを見失ってしまった。 先ほどまでと同じ、真っ暗な空間の中で自分の荒い呼吸だけが聞こえる。 しばらく息を整え、落ち着いて近くの壁を探す。先ほどまでより簡単に見つけられた。 角を曲がったばかりなのだから当然と言えば当然なのだが、それでも魔理沙は安堵感を感じずに入られなかった。 壁を背に座り込む。これからのことを考える。 フランは帰ってくると言った。なら、今はここでおとなしくしているのが最善か。 寝よう。魔理沙は横になり目を閉じる。こんな真っ暗で無音のところで寝付けるだろうかと思いながら。 魔理沙が起こされたとき真っ先に考えたのはこんな所でも案外眠れるものだなと言うことだった。 体を揺さぶられる感覚で目を覚まし、寝ぼけ眼であたりを見渡す。 まぶしい。暗闇の中にずっといたせいか、少しの光でも異様に明るく感じてしまう。 「魔理沙、魔理沙」 「ん・・・、フランか」 起こしているのはフランドール。羽が放つ虹色の光の中に浮かび上がる姿と声でそれと分かる。 心配するような、呆れているような表情で魔理沙を見下ろしている。 「もう、さっきの場所にいないから探しちゃったよ、なんでふらふらと徘徊するのよ」 「はは・・」 お前を追いかけたんだ、とは言えない雰囲気だった。 そのまま何も言わず口ごもっていると、フランは頬をプーっと膨れさせて抗議してくる。 「あははは、悪い悪い。ちょっとじっとしていられなくってな、少し歩いた」 「無謀だなぁ、普通こんな真っ暗なトコ歩こうなんて思わないよ?」 「そう言うなよ、好奇心だよ。 それよりもフラン」 「なーに?」 さっきの話だけど、と魔理沙は切り出す。色々聞きたいことがある。 なぜ私はこんなところにいるのか、ここから出してはもらえないのか、服はどこにやったのか 「ああ、なるほど。魔理沙にとっては大事なことだよね。私はそんなことどうでもいいんだけど」 「そうだ、私にとっては大事なことだ。いきなりこんな目に合わされるなんてかなり理不尽だぜ」 「じゃあ教えてあげる。これはおしおきだから出す気はないし、ここで服なんて要らないでしょう」 「・・・な?」 あっさりと、フランは一言で答えてしまった。魔理沙はその内容をすぐには理解できず呆けてしまう。 「え、え?なんだって?おしおき?」 「そうだよ。おしおき。まさか魔理沙、おしおきされる理由が分からないなんて言わないよね」 「え…?」 思い当たらないわけではない。今まで散々紅魔館では暴れてきたから。 「分かるみたいだね。じゃあ後は簡単だよ。おしおきなんだから出さないし、こんなところでは服も要らない。 最初は危ないから箒と八卦炉だけ取り上げようっていう話だったけど パチュリーが何仕込んでるか分からないからって身包み剥いだだけだけどね」 わかった?とフランが魔理沙の顔を覗き込みながら聞いてくる。 その表情が、とても妖怪らしく、妖しかったので魔理沙はうんうんと頷いてしまう。 「うん!じゃあもう良いね。この話終わりっ!」 魔理沙の返事に満足したのか、笑顔でフランが立ち上がる。そのまま羽を広げて… 「ちょ、ちょっと待ってくれ!」 「何?まだあるの?」 それを見て、あわてて呼び止める魔理沙。不機嫌そうに振り返るフラン。 「放置するなよ、その…色々どうすればいいんだよ」 「色々って何。もう、急いでるのに」 「あの…なんだ、その…食べ物とか、…下のこととか」 「ええ~?お腹空いてるの~?」 「……ああ、食事はどうしたら良いのかな…」 めんどくさそうな顔で魔理沙を見るフラン。 その様子を見て考えられていなかったのだと悟る魔理沙。 …もしかして、ない? 「妖精メイドはここまで入ってこれないし、魔理沙は外に出しちゃ行けないし、困ったなぁ」 「そうなのか?じゃあ、いつもはどうしていたんだ?」 「いつも?」 「フランはずっとここにいたんだろ?」 それを聞き、ああそうかとフランが納得する。今の魔理沙は今までのフランと同じ状況。 「その手があったね、じゃあそれで良いや」 「は?」 一人で納得したかと思うと、フランはおもむろに自らの光る羽を引っつかんだ。 「よいしょ」 メキリ とうもろこしの収穫のような音を立てて羽が取れる。そしてその大きな羽の結晶を魔理沙に差し出す。 「はい」 「…え?」 「一週間は持つよ、大事に食べてね」 呆然としている魔理沙に無理やり羽を握らせる。 「これでいいよね、じゃあ、そろそろ行くね」 そう言って、振り返ろうともせず羽を広げて飛び去ってしまう。 その場に取り残された魔理沙はそんなフランを呆然と見送る。 これを食べる? 手に握られたフランの羽をまじまじと見つめる魔理沙。 淡く緑色に光るその結晶は見た感じ、巨大な飴玉の様でもある。 ぺろ 「甘い」 勇気を出して舐めてみた羽は、甘くて胡瓜のような味がした。 食べ物の問題は、それで解決した。 フランの羽はものすごく優秀だった。 一週間持つとの言葉どおり、舐めれば減っていくが、入るだけで出ないという素晴らしい特徴を持っていた。 だが、その効果を魔理沙が体感したのは既に入っているものを処分してからの事だった。魔理沙はやってしまった。 フランの羽は、明かりにもなったので、魔理沙は積極的に地下室を歩くことにした。 だが三次元に広がる地下室は、魔理沙の予想を超えて遥かに広大だった。 元いた場所にすら戻れず、もらった羽が尽きかけたとき魔理沙はフランと再開した。 「まだこんなところをうろうろしていたんだね」 そんなことを言って、フランは新しい羽を魔理沙に渡した。 今度は薄い菖蒲色で、舐めると甘く、ほのかになすびの味がした。 それからしばらくそんな毎日が続いた。 魔理沙は、フランの羽を頼りに地下室の探索を続け、およそ一週間ごとにフランと遭遇し、新たな羽をもらう。 羽はもらうたびに色が変わり、それぞれ野菜の味がする。 もいだ羽は、時間が経つとまた生えてくるようであり、魔理沙はもいだ箇所に小さな羽が生えてきているのを度々目撃した。 一週間が一ヶ月になり、三ヶ月になり、やがてわからなくなる。 そんな頃、魔理沙は二度目の胡瓜味を受け取ることになった。 「なあ、フラン」 「なによ」 「これ、前に食べたぜ」 「最初にあげたのと同じだからね」 「なあ」 「なによ」 「私はいつになったら出してもらえるんだ?」 「期限を言ったらおしおきにならないじゃない」 そう言って飛び去っていく。いまだ地下室の全体は分からない。 二順目が始まり、しばらく経った頃、魔理沙はあることに気付く。 フランの羽の中に一度ももいでいないものがある。 その羽は深紅に輝いており、ひときわ大きく、立派であった。 それがとても強い興味を引き、魔理沙はフランに切り出してみる。 「その、紅くて大きい奴が欲しい」 「これは駄目」 「いいじゃないか」 「これは、私の大事なところだから」 あっさりと断られる。 大事なものだというので、魔理沙も引き下がることにした。大事な生命線を怒らせるわけにもいかなかった。 二順目が終わり、三順目が始まる。 この頃になると、いつまでも全容が知れない地下室に魔理沙は苛立ちを覚えるようになっていた。 代わり映えのしない暗闇の中を歩き続ける毎日に変化を求めるようになっていた。 「なぁ、この地下室は一体どこまで広がっているんだ?」 「さあ」 くすくすと相変わらずの笑いを浮かべながらフランが答える。 四順目。 「フランはいつも決まったタイミングで私のところに来るよな、どうやっているんだ?」 「うふふ」 質問をすればはぐらかされ、その質問も底を尽くようになると魔理沙はまたあの深紅の羽が欲しいと思い始めるようになった。 さりげなくあの羽が欲しいと告げ、わざとらしくはぐらかされる。そんなことが頻繁に起こるようになった。 アレが欲しい。 あの、ひときわ大きくて立派な、長くて太いのが。 「駄目だって言ってるでしょ!」 そんなある日、とうとうフランが怒り出した。 「これは魔理沙なんかにあげて良いほど安っぽいものじゃないの。欲しいのならそれなりの見返りを用意して見せなさいよ!」 突然怒鳴られた魔理沙はうろたえながらも引き下がらなかった。 「なぁ、頼むよ。その大きい奴を食べてみたいんだよ」 「しつこい!これはね、私が生まれてきたときからずっと大事にしてきたものなの。あげない!」 「お願いだ!何でもあげるから!!」 「…何でも?」 その言葉を聞いたとき、フランの動きが止まった。 下を向いて、にんまりと笑みを浮かべる。 「本当に、何でもいいの?」 「ああ」 「これ、気に入ったの?欲しいの?」 「ああ」 普通なら、ここでとんでもない取引をしてしまったと感じ、口ごもることだろう。 だが、今の魔理沙にそのような判断能力は残っているとは言い難かった。 髪はぼさぼさに伸び、体も洗わないため薄汚れている。 加えてこの真っ暗で変化のない迷宮に何ヶ月、何十ヶ月という単位で閉じ込められている。 肉体的にも、精神的にももはや正常さを失っていた。 「…じゃあ、いいよ。やさしくしてね」 怪しい笑みを浮かべながらその深紅の羽を魔理沙に向ける。 虹色の羽の中でもひときわ紅く輝くその羽はまるで吹き出したばかりの血の色の様。 「いくぜ…」 「んっ…」 魔理沙の手が触れたとたん、ぴくんとフランが反応する。 「それにしても大きいな、こうやって触ってみると改めて感じるぜ」 「んっはあッ!」 撫でまわすとそれにあわせてフランが身を捩る。神経がつながっているのか 「ま、魔理沙…やるんなら一気に…お願い」 「す、すまない」 たまらずにフランが文句を言う。息が荒く、頬が少しばかり赤く染まっている。 魔理沙もさすがに悪ふざけは無しだと感じたのか、今度は根元のあたりを両手でしっかりと掴む。 「ひあっ!!」 「くっ、暴れるんじゃない!フラン!」 たまらず暴れだそうとするフランを地面に押さえつけ固定する。 「よし、押えた。じゃあ、そろそろほんとに行くぜ!」 魔理沙が力を込め始める。途端にミシィと音がし、フランが苦悶の表情を浮かべる。 「痛い!いたいいたい!」 目尻に涙を浮かべながら叫ぶフラン。それを見て魔理沙は押さえていた方の手を外し、フランの口にあてがう。 「痛いのは分かってる、でももうちょっと我慢してくれ!あと少しなんだっ!」 ミリミリ、メキメキと音を立てて、根本の形が変わっていく。限界まで行ったかと思った瞬間だった、 ブチィ!! 「~~~!!!!!!!!!」 音を立てて羽が取れた。付け根からは血が滴っている。 「と、取れたぜ。痛かったか?」 「・・・・・はぁっ、はあっ。っく、あ…、すごい、こんなに血が…」 「頑張ったな、ありがとう」 息も絶え絶えにあえぐフランを労う魔理沙、だがその視線はフランの羽から既に外れなくなっている。 「すごい…、大きい」 今までのものよりも遥かに大きい。魔理沙はその最大級の獲物をなでさすりながらうっとりとする。 一方でフランはそんな魔理沙を見てにやりと笑う。が、思いの外傷口が痛いのかすぐに顔をしかめる。 「どう、魔理沙。私がずっと大事にしてきたもの、大きいでしょう」 「ああ、すごく大きい。それにすごく硬いし長い」 会話をしていても、魔理沙はフランの方を見ようともしない。 フランも気にしていないのかそのまま会話を続ける。 「あーあ、最後の一本だったのに。霊夢にあげたかったんだけどなあ」 「それは済まないことをしたな。 …でも、何でこれだけあんなに痛がっていたんだ?」 「ん?ああ、それはね、初めてだから。二回目からは痛くないんだけどね」 「…そうなのか」 本当に、大事な物だったんだな。と魔理沙は思った。それなりの物をあげなくちゃいけないな、とも。 「なあ、これ食べてみてもいいか」 「いいも何も、もいだ時点でそれは魔理沙の物だよ。どうぞ食べて。私も勝手に貰うから」 勝手に貰う、そう言ったとき、フランの口が吊り上がる。笑みがこぼれる。 しかし、魔理沙は目の前の羽に夢中であり、そのことには気づかない。 ぺろ 魔理沙が、それを舐めた途端、凄まじく甘美な果実の味が魔理沙を支配した。 快楽。すべての感覚を上書きしてしまうようなその刺激に魔理沙は完全に身をゆだね、そしてそのままゆっくりと倒れる。 暗闇の中に、フランの笑みだけが怪しく残る。 * 「霊夢ー!」 博麗神社にいつものように明るい声が響き渡る。 その声に霊夢が振り向くと、途端にその胸に飛び込んでくる小さな体がある。 「フランじゃない、また来たの?」 「えへへー、いいじゃない」 最近フランは一人で行動することが多くなった。 日光にも耐性を着けたのか、日中でもこうして平気に一人でやってくる。 「そろそろ休憩でしょ、お茶入れてくるねー」 「あっ、こら待ちなさい!」 フランは毎日のように神社を訪れる。 突然空から降ってきてはこうしてお茶を楽しみ、他愛のない話をして帰って行く。 「けど、何か違和感があるのよね」 境内に取り残された霊夢が独りごちる。腑に落ちないといった顔。 「そうかしら」 「うひゃぁ!」 そんな霊夢の後ろから突然沸く影。境界の魔物、八雲紫 「あんたどこから沸いてくるのよ!」 「まあまあ」 霊夢の脇をスッと通りすぎると紫は社務所の中に向かって声を張り上げる。 「フランちゃーん、お茶もう一杯追加ねー」 「どさくさに紛れて何を言うか」 霊夢が不満そうに文句を言う。そんな霊夢を見て紫が微笑む。 「霊夢、フランの何処に違和感があるのかしら」 「えっ?」 真剣な顔で聞かれ、少しとまどう。指を口にやり、少し考えてから口を開く。 「羽と目」 「へえ」 霊夢の返事に満足そうにする紫。 「具体的には?」 「前は、違う色、形だったような…」 さすがに優秀ね、と呟く紫。しかしそのつぶやきは風にかき消されて霊夢まで届かない。 「それと、あともう一つ」 霊夢が苦しそうな顔で思案する。もう一つ引っかかる何か。最近変わった物がもう一つあるような。 「気にすることはないわ」 「紫?」 「あの子はそもそもあんな姿なのよ。あるべき姿に戻っただけよ」 「そう…なの?」 「ええ、何も問題はないわ」 にっこりと微笑んで、縁側に腰を下ろす紫。 それと時を同じくしてお茶を三杯お盆に載せてフランが出てくる。 「むぅ、八雲紫。また邪魔をしに来たのね」 お茶を出しながらふくれっ面をする。その背でコウモリの羽がぴょこぴょこ揺れる。 「あらあら、妬かれちゃってるのかしら。ならお邪魔虫はお茶をいただいたらさっさと退散することにしましょう」 「いや、別に良いんだけどね、いても」 「霊夢ーぅ!?」 あっさり迎合する霊夢にフランが抗議の声を上げる。 フランの蒼い瞳に霊夢の困ったような姿が映る。 博霊霊夢、空を飛ぶ程度の能力。博麗神社の巫女 八雲紫、あらゆる境界を操る程度の能力。スキマ妖怪 フランドール・スカーレット、ありとあらゆる魔法を使用する程度の能力。悪魔の妹 三者三様の笑い声が境内に響く。 今日も平和な一日。 * ――紅魔館 悪魔が住むと言われるこの館には、何重もの封印と扉に守られた地下室がある。 その地下室に面した最も大きい扉には更に幾重にも渡って厳重な封印が施してあり、中に入ることは叶わない。 が、その扉の、唯一空いた鍵穴からこちら側をのぞき込むものがある。 真紅に染まった瞳。 それは、しばらくの間扉のこちら側のやはり真っ暗な光景に目を這わせた後、諦めたかのように遠ざかってゆく。 扉の向こう側で、離れていく一人の少女。 髪はウエーブのかかった金髪であり、その背には虹色に光る結晶のような羽を持つ。 彼女の名前は霧雨魔理沙、ものを破壊する程度の能力を持った狂気の魔法使い。 ---- - 何か元ネタがありそうだが・・・・・・ -- 名無しさん (2009-04-03 02:05:40) - フランの初めては魔理沙だったのか・・・ &br()とりあえずおっきした -- 名無しさん (2009-04-04 23:32:27) - なんか途中からけしからんぞ! &br()…と思ったけど別にそんなことなかった! -- 名無しさん (2009-04-05 14:26:17) - 98のアリスかな? -- 名無しさん (2009-08-24 05:32:28) - ヴァルキリープロファイルにもあったな &br()あれは鬼を殺した奴が次の鬼になるって話だったけど -- 名無しさん (2009-08-24 21:36:59) - フランちゃんが元気でなにより &br()...それよりおぜう様がどこ行ったか誰か知らない? -- 名無しさん (2009-08-25 00:16:51) - ナンテコッタイ! &br()魔理沙は禁断の果実を食べたというわけだね。納得だ -- J (2009-10-24 16:19:45) - 次は………お前だー! -- 名無しさん (2009-12-30 00:21:28) - ギャー!! -- 名無しさん (2010-01-06 08:56:26) - 素材は十分。後は脳内変換で・・・ &br() &br()ふぅ・・・ -- 名無しさん (2010-01-06 21:04:10) - ちょっと食べてみたい -- 名無しさん (2010-01-12 10:39:53) - 最後の紹介で「悪魔の妹」とあるから、とりあえずおぜうは無事なんだな。 &br()フランの羽の効果は、因果律の交換? -- 名無しさん (2010-02-25 10:25:10) - あるべき姿、か &br()レミと同じコウモリ羽はそういうことか -- 名無しさん (2010-05-16 14:44:58) - 俺もフランの羽舐めたい -- 名無しさん (2010-05-27 20:50:36) - フランちゃん可愛いすぎる… -- 名無しさん (2010-07-06 09:46:09) - なんか……エロいw -- 名無しさん (2010-07-06 21:51:58) - 緑が胡瓜味なら赤はトマト味? -- 名無しさん (2010-07-06 23:32:09) - いや血だな -- 名無しさん (2010-10-04 23:03:30) - 甘美な果実らしいからリンゴじゃね? &br()禁断の果実とされているし -- 名無しさん (2010-10-08 21:09:42) - 赤いやつはアプリコットじゃない? -- 名無し (2012-05-30 19:07:17) #comment(vsize=2,nsize=20,size=40)