■トゥグツァ
●古の時代より成長し続ける、闇の迷宮
トゥグツァは、帝国から遥か南方に位置し、地下洞窟を拡張して建築された妖魔たちの都です。
外から見ると、大地にぽっかりと空いた空洞のようですが、その内部は複雑に入り組んだ巨大な迷宮。大小の通路が錯綜し、妖魔たちの住居や人間の飼育所、魔力貯蔵庫などの施設を繋いでいます。
巨大な結晶や氷に覆われた鍾乳洞、溶岩の煮えたぎる地底部もあり、資源の採取や妖魔の居住地として使われているようです。
その危険さゆえに、かつて反旗を翻した人間たちも、この都を滅ぼすまでには至りませんでした。
妖魔が力を失っている今も、この都に踏み入れば生きて帰れる保証はないと言われていますが、この都に眠る稀少な鉱物などを求めて、或いは捕らわれた同胞を救出するため、侵入する者は後を絶ちません。
●家畜としての人間・選ばれた人間
この都において人間は今も、妖魔の生命と文化的な生活を維持するための資源として飼育される存在です。体力のある個体は資源の採掘や洞窟の拡張に駆り出されることもありますが、多くは睡眠と食事、疑似的な放牧、魔力の供給を繰り返して生活しています。妖魔は供給が可能である人間からなら、いつでも好きな時に魔力を摂取してよいとされています。
トゥグツァの人々は、衣食住から健康状態の保持、繁殖に至るまですべてが妖魔によって管理されています。しかし教育は基本的には施されず、妖魔の指示を理解するために必要な、ごく僅かな言葉を教えられるのみとなります。
生まれたときからトゥグツァに暮らしている人間が、トゥグツァ以外の人間と意思疎通をすることは非常に困難となるでしょう。
こうして「飼育」されているトゥグツァの人間は、一生を都の中で過ごすため、外に世界があることを知らず、逃げ出そうとする者もいません。
ただし、稀に都の外に出ることを許された、選ばれた人間が存在します。
「使者」と呼ばれる彼らは妖魔によって「素養」を見出された者たちであり、幼少期のうちに、魔力を供給する人間から除外されます。
そして、妖魔が服従させた外の人間によって、都の外でも違和感無く振る舞うことが出来るよう教育を受けます。妖魔による洗脳・催眠も一応施されますが、実際に都を出ることが許される頃には、多少寡黙なだけで簡単な会話には問題のない水準になっています。
使者は帝国など人間の居住域に赴き、情報を集めて報告します。時には珍しい資料や親交を深めた人間を、トゥグツァに「持ち帰る」こともあります。
これは勢力を復興しようとする妖魔の長が、主に帝国の内部を直接的に調査するため発案したようです。
ちなみに代々トゥグツァで生まれ育ってきた人間は、暗所に慣れているためやや色が薄く、日光の熱や眩しさに弱いとされています。
●蠢く迷宮の「番人」たち
暗闇の迷宮の中は一見すると無人に見えることもあり、侵入した人間は知らず知らずのうち、都の奥へと進んでしまいます。
しかし土や水、地中を流れる炎、或いは闇そのものと同化できる妖魔は、油断しきった人間の背後を簡単に取ることが出来ます。
妖魔の長によって都の警備を命じられた妖魔は「番人」と呼ばれ、必要であれば侵入者への攻撃を仕掛けます。都の中には大量の魔力が蓄えられていますが、その大半は番人たちに、十全に戦うための魔力源として提供されています。
厄介なのは彼らが侵入者の「撃退」ではなく「捕獲」を目的としている点であり、都の入り口にも侵入自体を阻む防衛機構はありません。つまり如何なる状況であれ、都の中で妖魔に見つかった侵入者には、再び地上に出られる可能性が殆どないということです。
捕らわれた人間は、洗脳が成功すれば使者の教育係となり、失敗すれば家畜の一体として管理されることになっていますが、番人の中には捕らえた人間を、そのまま自分の住処に持ち帰ってしまう者もいるようです。
●獲物を誘い込む古の魔宮
この世界の各地には、魔法文明の時代に建造された、地下深くまで続く「魔宮」が残されています。
これらはかつて妖魔の住居として使われた廃墟であると考えられていますが、実の所は現在も機能しており、全ての魔宮はトゥグツァに繋がっています。
これらの魔宮の最奥には妖魔が残した(設置した)希少資源、つまり宝物があり、腕に自信のある探索者を呼び込んでいます。
いくつかの魔宮は攻略され、探索者に宝物が与えられたこともありますが、多くの場合は数多の罠によって戦意を喪失し、トゥグツァに連れ去られてしまいます。
最終更新:2020年06月04日 23:47