アットウィキロゴ

ピクサーのクリエイティブカルチャー

少し前の話題になるがピクサーのリードアーカビストのクリスティーヌ・フリーマンによる講演(interbee2008映像シンポジウム)の一部を紹介したい。
短い内容ではあるがピクサーの苦労と成功の経験の結晶とも言える重要な洞察が披露されている。ピクサーに限らず日本のプロダクションにとっても重要なヒントとなることは間違いない。

クリスティーヌ・フリーマンについて

2000年ピクサー入社。アーカイブの責任者を努める。人と情報を結ぶことに興味があり現在(2008年)ピクサー社辞典の作成に向け情報編集を行っている。

toystory3時のスタジオ紹介動画。案内人はクリスティーヌ。



●ピクサーカルチャー

A.ピクサーはテクノロジーを特徴としているが、伝統的技法も巧みに活用
1.作画・彩色・彫像・物語作りといった伝統的技法がピクサーのデザインの原動力

●ストーリーがすべて

A.ストーリーこそがもっとも重要
1.どんなに技術があっても、悪い物語からいい映画が生まれた試しはない
2.ピクサーの物語はユニークでオリジナル
3.信憑性を重視
4.カメラと俳優では実現できない世界を生み出す
5.「芸術はテクノロジーに挑み、テクノロジーは新しい芸術を生み出す」ジョン・ラセター

●ピクサーは人中心

A.ピクサーはアイデア中心の大半のスタジオと一線を画す。ピクサーは次のことを発見:
1.アイデアより人が重要
2.並みのチームに優れたアイデアを与えると、並みの作品が返ってくる
3.優れたチームに並みのアイデアを与えると、優れた作品が返ってくる
4.トレーニング、教育、文化は優れた人をさらに向上させることはできるが、並みの人を優れた人にすることはできない
5.成功するには人材雇用が極めて重要

●成功と失敗

A.成功は願ってもないが、ただし十分なチェックが必要
1.成功は失敗を隠すのが巧み
2.欠陥を発見・修復するために、プロセスをチェック
3.新しいアイデアやアプローチに対してオープン

●語るのでなく、見せる

A.映画は視覚作品
1.当然、視覚的プロセスから生まれる
2.映画制作者は視覚体験としてそのアイデアを共有する
3.プランは作画・彩色・彫像・絵コンテで
4.映画制作者はこの視覚的作業の産物に囲まれて作品に没頭
5.非制作部署もこのアプローチを探求

●能力主義

A.ピクサーは、誰が作ったかに関係なく、優れた仕事を評価
1.リーダーシップと経験を尊重
2.出所に関わらず優れたアイデアにも敬意
3.優れたリーダーは自分のチームにも敬意をもつ

●エド・キャットムルの指向性

A.設立者エド・キャットムルは、優れた社員になるには次の特性が必要と考える:

1.「奥行」本物のスキル、深い知識、熟練
2.「幅」好奇心、興味、奥行きに意味を与える背景
3.コミュニケーション能力
4.人と協力することへの意欲
  →共同作業は他の人のスキルやアイデアを増幅する

●「イエス、それから」

A.ピクサーでは他の人のアイデアはまず肯定してそれを膨らませていくように努めており、「ノー」とか「でも・・・」は口にしない

B.イエス
1.同意はしなくても肯定することは可能。
2.肯定するというのは「言いたいことはわかる、続けて」ということであり、「それは正しい、それで決まりだ」ということではない

C.それから
1.新たなアイデアを付け加えるのであって、すでに出ているアイデアを差し替えるのではない
2.人のアイデアに別のアイデアを付け加えて膨らませていけば、より良い共同作業が生まれる
3.良し悪しの判断はすべてのプロセスで重要だが、チームで何かを創りだす場合プラスになるとはかぎらない

●批評

A.批評は共同制作者にとって重要なスキル。役に立つ基本的なことをいくつか発見。
1.仕事内容を直視する――仕事をした人が問題なのでなく、その成果物が問題であることを忘れない
2.一つのチームとして対応する――批評が困難なときは特に、それをグループで共有すれば感情的になるのが抑えられそこから学習することができる
3.やりかけの段階の仕事に目を向ける――誰でも作業過程での助言はすんなり受け入れるが、もう終わったと思うとなかなか受け入れられなくなる


●遊び

A.遊びは仕事の一部
1.ジョン・ラセターいわく、制作クルーがどれだけ楽しんで映画を作ったかがその映画を見てどれだけ楽しいかにあらわれる
最終更新:2013年07月03日 19:22