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英霊ナノハに関する第一回報告書第五次中間報告 制作者『調べ屋』アマネ 関連項目 タカマチナノハの簡易歴史表・後 『十一年目』:『流れ弾』と言う名の妨害を受けつつも戦果を出し続けていたが、 ある時、今まで潰してきた勢力の残党が集結して戦争を仕掛けてきた。 強力な結界にてゆりかごを閉じ込め、様々な魔法生物や、GDのコピー、 さらにはゆりかごのコピー艦まで作っており、玉座には死んだはずの先代聖王が 魔法で無理矢理『死んではいない』状態で置かれていた。 戦闘の内容は別の機会に譲るとして、結局はナノハが元特殊鎮圧部隊のメンバー 『クロノス』『運命(ゲレーゲンハイト)』『疾風(シルフィード)』と 戦闘機型デバイスのAI『You-Know(ユーノウ)』の三人と一機 (戦闘機は特殊鎮圧部隊全体の所有物だったが、武装が殆ど搭載されておらず、 半ば埃を被ってゆりかご内に保管されていたところを、ナノハによって発掘。攻撃手段をビットにて確保、 『眼』と持ち前の空間認識能力で見事乗りこなす。そして、その操作を学習させ、 他のメンバーでもビットを効果的に動かせるようにサポートAIとして『You-Know』が生み出された。) に守られながら、チャージし、『スターライトブレイカー』にて、 (コピーされ、多少劣化しているとはいえ現役当時のゆりかごを) 外壁から動力炉→玉座→外壁までを撃ち抜いた。 (尚、暫定的にスターライトブレイカーとしているが、発射シークエンスは ほぼ別物であり、『集束砲』ならぬ、『収束砲』となっている。) その後しばらく行動不能になるものの、ゆりかごを逃がすため、スターライトブレイカー+にて、 ゆりかごを覆っていた結界を破壊、自身の生命維持魔法の分の魔力をトリガーとしたため、 その場で生き絶える。その後、新聖王──つまりはヴィヴィオのクローン元──は、 ナノハが父、先代聖王を殺した理由を知り、ナノハを赦す。と同時に謝っていた。 (それまでは、殺した理由は知らなかった。その訳は、血は繋がっていないが、 ナノハのことを本当の母親のように慕っていたため、 自分の葛藤がこれ以上大きくならないために、故意に知らずにいた。 ──ただし、ナノハ本人は嫌われていると思っていた。) その後新聖王は、ナノハの居た証拠を残さず、しかし決して忘れられることないよう厳命、 先代聖王とナノハの遺志を継ぎ、聖王統一戦争を続けた──。 因みに、その新聖王が得意とし、最期まで愛用し続けた魔法の一つに、 ナノハが考案した、ミッド式で発動し、古代ベルカ式で射つ。といった独特のものがある。 ──────────────────────── 二十メートル程の間合いで対峙する両タッグ、そして── 「はっ───」 「─────」 まずは声を上げ、先陣を切るランサーと、無言でそれを迎え撃つセイバー、 ここまでならば先程と同じだが── 「ふっ───」 横手からアーチャーの投げた陰陽剣──干将・莫耶が迫る。 しかし、ランサーは慌てない。彼には『矢除けの加護』があるし、それに何より── ガン!ガン! 迫り来る陰陽の軌跡。その間に割り込む金色の──『何か』 「ぬっ?」 ──そう、今度の相棒。ナノハのオプションビットである。そしてナノハ本人は──。 「──アクセルチャージャー起動、ストライクフレーム、ドライブ」 『オープン』 左手を前に突き出し右手を引く、つまりは右手で殴る体勢で 離れたところから様子を伺っていた。 セイバーを打倒する策は練った、後はタイミングのみ── ──それにしても。 「──羨ましいな」 ポツリと呟くナノハの目線は三人の英霊に注がれていた それぞれ三者三様の動きで、お互いを越えようとする英雄達。 例えばセイバー、その小柄な体躯とは裏腹に一発一発がとんでもなく重い。 しかも速い、決して止まらぬ斬撃は連撃と呼べるだろう。 そしてランサー、全身のバネを使い、目にも止まらぬ速度で二人を押し留めている。 それは、自分と打ち合っていたときよりも更に速く、セイバーが連撃ならば、 こちらは総てが一繋がりの動作といえよう。 アーチャーも負けてはいない、パワー、スピード共に、明らかに劣るのだが。 それでも彼はついて行く、どこか昔の教え子を彷彿とさせるその戦い方は、 たゆまぬ努力と経験と言う名の年月のなせるものなのだろう。 まるで違う三人の戦闘スタイルだが、それには共通して一種の『美しさ』があった。 先のSDFもそうだ、あの時硬直したのは躱されたからではない。 『矢除けの加護』『直感』『心眼(真)+千里眼』 この三人のスキルによる相乗効果の動きは、まるで完成した舞踏を見ているようだった。 それにナノハは──不覚にも──見惚れてしまっていたのだった。 無論ナノハとて、接近される前に大抵の相手は仕留められる自信はあるし、 なにより格闘には見切りを付けている。 向いていない事を研くより、見込みのある砲撃を研いた方が生存率も上がるし、助けられる人も多くなる。 ──だが、それでもやはりこうも思ってしまうのだ 『羨ましい』と…… それは、なんの力も借りずただ己の肉体のみで成しえる奇跡、自分には決して真似のできない、危うくも美しい刃の舞である。 「──さて」 だが──、いつまでも見惚れているわけにもいかない。ここからは一発勝負の連続、 相手の土俵──接近戦での綱渡りなのだから。 「リインなら『分の悪い賭けは嫌いじゃありません』 ……とでも言うんだろうけどなぁ、確実に百年は後だろうけ‥ど‥‥」 と、自分で言って思い出した。 ──そうだ、未来(さき)を護り創るのが、私の役割。 はやてちゃんの未来を繋ぐため………ヴィヴィオに未来をあげるため 「負けられない。……スバル、軒を担がせてもらうよ」 呟き、右腕のコンソールに表れる文字は── 『ディバインバスターA.C.S』 (ランサーさん、いつでもどうぞ) そしてこの戦闘での相棒に念話を繋ぐ。 返事はない、必要もない 。 ──さあ、 「こい……!」 ──たった一人でセイバーとアーチャー二人の足止めをするランサー 三つの異なる軌跡が頭を、首を、腕を、胴を、足を的確に狙ってくる。 だが彼はその全てを、守り弾き、散らし、往なし、躱す、 それは、彼らしからぬ『守り』の戦い。耐えに耐え、堪えに堪え、ついに待ち望んだ『声』が頭に響いた。 (ランサーさん、いつでもどうぞ) 「──やっときたか、待ちくたびれたぞ」 ニヤリと笑い呟くと、セイバーをある方向へと受け流し、もはや眼中に無いと言わんばかりに、アーチャーとの殺し合いに没頭する。 「──────?」 今までとはまるで違う対応に、意図が読めず困惑するセイバーだが── 「──なるほど、そういうことですか」 見れば視線の先にはキャスター──ナノハが、右腕に大量の魔力を宿しこちらをうかがっていた 「真っ向勝負、というわけか、……いいだろう、受けて立つ」 剣を構える。構えは──下段、先程の小細工など関係ない、小細工ごと叩き斬る。 「セイバーのクラスの名に掛けて──ゆくぞ、キャスター」 そしてセイバーは、音よりも速く踏み込んだ── ──来た! セイバーが構える、どうやら真っ向勝負に乗ってくれたようだ。 「──一撃必倒」 手に足に桜色の羽根が出現する。 そして待つこと数瞬── セイバーが、踏み込んできた! その速度はまさに神速、真っ正面から一直線にこちらへ突撃する姿は、 小柄な体躯と合わさって、もはや『点』としか認識出来ない。 ──だが、『真っ正面』からの『点』の軌道なのだ、ならば── 彼女の『眼』が捉えられぬ筈が無い! セイバーの剣が振り上がり、ナノハの身を両断せしめんとするその刹那── 「ディィバイィィィン、バスタァァァ!!」 カウンターの要領で彼女は主砲をブチ込んだ── 音よりも速く踏み込み、振りかぶるセイバー、相手の右腕の魔力の事など気にせず、 一気にカタを付けるつもりなのだろう。自信過剰ともみえる選択だが、 彼女には大半の魔力攻撃が通用しない上、先の戦闘で相手の技量は見切っている。 ──全力の一刀ならば一撃でカタが着く! そう判断し、踏み込む。もし先程の小細工があっても そんなものは関係ない、小細工ごと叩き斬らんとする斬撃である。 「ディィバイィィィンバスタァァァ!!」 こちらが振り下ろすと同時に大量の魔力が一塊となって、右拳から撃ちだされる。 ──無駄な事を、魔術では私には届かない……。 だが、セイバーの予測とは少し違っていた。 確かに『セイバー』にはナノハの魔法は大半は通用しない。 だが── (──────!?) ──彼女の持つ『剣』にならば話は別である ナノハの狙いは最初から剣、セイバーの剣はナノハの主砲の、 ……そのあまりの魔力量に止められていた。 拮抗する両者、ならば剣を抜けばいいようなものだが、現在の状況は、例えるなら 激流の中に剣を突っ込んだ状態であり、下手に動かすと剣を持っていかれかねない。 故にセイバーは動けない。だが、それはナノハも同じこと。激流の向きを変えてしまったら、 今度こそあの一刀は防げない。つまり、両者とも引けず膠着状態── 「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 この状態を打破するため、自らの攻撃を押し込む両者、そして── ぶあっ!! 突如爆発的な風が巻き起こり、二つの大きな変化が起こる。 一つはセイバーの剣があらぬ方向へと跳ね上がり、 もう一つは、烈風によって、二人の態勢に違いが生じたことである。 「─────ぬぅッ!」 風をまともに受けて上体が流れたセイバーと── 「─────くぅっ!」 風を受け流しなんとか踏み止まったナノハ、風の理由は分からない。 だが──! ──ここしか、無い! 踏み込み、タックルをしつつセイバーの腰に抱きつき── 「A.C.S、ドライブ!」 『A.C.S』 ぎゅん! 「ぐ、うぅ─────」 A.C.Sの加速突撃でそのまま宙へ押し上げた。 ──上空三百メートル付近── ──これは、マズイ 先程まで居たナノハが、いきなり自分を放り出したのが、ついさっき。 未だ惰性で上昇を続けているものの、このままでは地面に降りるまで、完全な無防備である。 ──くっ、この間にアーチャーを仕留める気か?……それにしても先程の風はいったい……? などと考えつつ着地に備えるセイバー、着地後は宝具の使用も辞さない覚悟で ──いや、最悪士郎だけでも、なんとか逃がす方法を…… と、そのとき彼女のスキル『直感』が警鐘を鳴らす。その直感に素直に従い剣を真横に振ると── ガキィイン! と手応えと金属音が帰ってきた。何事かと目を見張ると自分の周囲に金色の物体 ──ナノハのオプションビットである──が、周りを廻っておりさらには、 ナノハ本人も悠々と追い掛けてきた。そして、まじまじとこちらを見ると── 「形は『視えて』いたけど……ふぅん、凄い剣だね」 いきなりそんなことを言ってきた。 ──なっ!? 急ぎ己の剣を見れば、風の鞘は消え、光り輝く刀身が剥き出しになっている。 ──そうか、先程の風は‥‥風王結界のものだったか 「簡素ともいえる拵えに、美しささえ感じさせるその風格、私が知っている剣の中でも最高ランクだよ」 ──まずい…… 「さっきの風は見えなくするための‥‥結界?みたいなものだったのかな? ……最高ランクの上に、隠さなきゃいけないぐらいの有名な剣。とくれば……」 ──くっ、真名を……? 焦るセイバーをよそに 「──私以外には分かるんだろうなぁ。」 残念そうに呟くナノハ ──何?……分からない…のか? と、ここで上昇の頂点に達したようだ、一瞬空中に静止し、そのまま落下を始めた。 徐々に離れていくナノハとの距離、そのときナノハが何かを囁いた、 それは、よく聞こえなかったが、最後の言葉だけは聞き取れた。 「───────ごめんね」 何のことだ?と、思った瞬間、周りを廻っていたビットが、一斉にこちらへ突っ込んできた。 こちらへ殺到するビット、その一つを弾いた間に、残り二つのビットは視界から消え失せた。 完全に見失ってしまったが、しかしセイバーの直感は、次の攻撃をの位置を看破する! 「──後ろか!」 その予測通りに剣を後ろに回すと、確かに何かぶつかった手応えと、 カァァァン!という金属音。 防いだ!と確信したその瞬間、今度は横手から衝撃が来た── ──想像してみて欲しい、ろくに身動きも取れない空中で、三つのビットが、 あらゆる角度からかなりの速度で激突してくるのだ。いかな陸の王者といえど、足場もない空中では、 躱すことも、受けとめることも出来ず一方的にやられてしまう── ──筈なのだが、 「ふっ!」 「くっ!」 白と蒼が交差し一瞬の火花が生まれる。 ──まずいなぁ、段々合わせてきてるよ。……ランサーさんといい、 ほんと、呆れる位の格闘センスだね。……空戦のセンスもあるんじゃないかな? そう、最初こそ慣れない空戦に一方的にやられはしたものの、徐々にタイミングを掴み── ギャギン!「──はっ!」「うそぉ!…っとぉ、」 弾いたビットを足場代わりにナノハに切り掛かってきたのだ。 それがどれほどの荒技かは、ナノハの発言が証明している。 ──彼女は相手がどんな力を持っていようと、自分がどんなに不利だろうと、ポーカーフェイスは崩さない、 元来、彼女が英霊として扱われたのはただ単に、オンリーワンを持っていたからにすぎない、 その時代のその場所に在るはずのない魔導技術──ミットチルダ式魔法と砲撃魔法さらには空戦での実践ノウハウ 言い方は悪いが、それが在ったからこその神格化。信仰対象である古代ベルカ聖王家の中でも別格の扱いを受けているのであり 彼女が本来の世界、本来の時代で一生を終えた場合、英霊と成りえるかはその生涯の功績しだいである。 ──そして誰よりもそのことを知っているのもまたナノハ、故に彼女にとっては、相手は自分より上で当たり前、 たとえ想定外の存在でも、驚きこそするものの顔にはださず、ごく自然に受け入れ、打倒する策を考える、 だから彼女はポーカーフェイスを崩さない。そんな、相手に情報を与える暇があるのなら、全て思考にまわす── それが凡才の身で在りながら英雄として扱われた者の、本物の英雄に対する術とばかりに──。 だが、その彼女が──顔に出した、それこそがどれほどの体術であったかを如実に表している── その後も、ビットで攻撃するが、その度に、ことごとく足場代わりにされ、 最早ビットは足場を与え、回避や攻撃に利用されるだけと悟ったか、ビットを仕舞い、 ナノハ自身の体当たりに切り替える。その動きは、まさに空戦の妙技、並みの相手ではなぜ攻撃が当たらず、 いつ攻撃をされたのかも分からぬままに撃墜される。それほどの卓越したマニューバである。 だがそれを──セイバーは──当ててきた、恐るべきはセイバーの直感とセンス。もっとも本人は── ──当てるだけで手一杯か!くっ、地上であれば既に切り伏せているというのに……、 こうなっては、アーチャーの援護に期待したいところだが…… チラリと地上の様子を見るが── ──────────────────────── ──カン!キン! と、小気味のいい音を発しているのは、陰陽の夫婦剣と朱色の魔槍 「どうした!?上の様子が気になるかよ!」 「そういう君こそどうなのだランサー、先程から随分上を気にしているようだが──」 「はっ、抜かせ!」 カン!カン!キキン!ヒュン……!カーン!カカン……! ──アーチャーはアーチャーで、ランサーと戦闘中であり、援護は期待できそうにない。 ──仕方がない、何とか凌ぐしかない。か…… と、不満そうであったが。 その後も、二度三度と交差するが、最早双方、ダメージらしいダメージは与えられず、またしても膠着状態になってしまった。 ──このままじゃジリ貧だね、『空戦出来ない』なんて、侮ったのはこっちの方、か……それなら! 「少し痛い目に合ってもらうよ──地面に叩き落とす……!」 ──何か仕掛けてくるか? そう思った理由は簡単だ、ナノハが自分の正面──地面と垂直の位置に移動したからである。 (つまり現在セイバーは背中から落下している。) ナノハはセイバーと向き合い、魔方陣を展開、身体中に羽を展開しこちらへ突っ込んできた──! ──────────────────────── セイバーを正面に捉えナノハは勝負を仕掛けるため、かつての親友の切り札を発動する。 「いくよ、セイバーさん…Get Set.偽・ソニックフォーム!」 『Ready.』 瞬間、マントが消え両足首の他に両手首に、そして背中にはX字を描くように羽が生え、 ツインテールとなった髪型の髪留めの位置からも羽が生える。 これぞナノハの高機動フォーム、装甲はそのままにフィンの数を増やし、 機動力を強化した、『偽・ソニックフォーム』である。 ──────────────────────── ──一直線にこちらに突っ込んでくるナノハ、展開した羽の所為なのか、その速度は先程の比ではない。 ──しかも、 「──ト、バスター!」 聞き取れはしなかったが、桜色の閃光が眼前一杯に展開される、この期に及んで通用しないのは ナノハにも分かり切っているはず、とすれば目眩ましか、 ──だが! 「もらったぞ、キャスター!」 その程度でタイミングを損ねる程、この剣の英雄は甘くない! 聖剣は吸い込まれるように伸び──守るようにかざされていたナノハの右腕を半ば切り裂き──そして停止する。 「バカなっ!?」 「取ったぁぁぁあああ!!」 驚くセイバー、吠えるナノハ。 ──ナノハが吠える、生前の彼女を知っているものなら、まず間違いなく耳を疑うであろう。 ──先程どんなことでもポーカーフェイスを崩さない。と、書いたが 一つだけ人並みに感情を表すことがある。(それでもかなり冷静だが。) それは『空戦』何故ならば──それは彼女の唯一絶対の、本物の誇りであり──空戦では── 空の戦いでは、たとえどんな相手でも、負けるわけにはいかないのだから── 左腕でセイバーの顔面を鷲掴み、剣がめり込んだ右腕は、それでも正確に命令されたことを実行する。 『フラッシュムーブ』 ──アクセルフィンに魔力を追加することによって、瞬間的な高速移動を可能とする魔法 『フラッシュムーブ』 それを、フィンの数が大幅に増えているこの形態で使うとどうなるか? 答えは── ドン! ──空気の壁を突き破るほどの爆発的な加速力得る。だ! 本来の『真・ソニックフォーム』とは、装甲を削り軽量化することで機動力を確保するが、 それゆえバリアジャケットの防御力を著しく劣化させてしまう弱点(というか特性)も持っていた。 だがナノハは出力を増やして速度を稼ぐ、防御力の低下はない、機動力、俊敏性ではオリジナルに劣るものの、 こと加速と、トップスピードに於いては、オリジナルと同等、ないし凌駕する! 音速の壁を突き破ったナノハは一秒と掛からずセイバーと共に、地面へと落下し── ドーン!! 「がぁ、ぁ、ぁ………!!」 セイバーを背面から地表に叩きつけ、鎧を砕き更に──! ズガガガガガガガガ!! ──そのまま引きずりながら、地面を砕きつつ直進── ドカッ!! 「うっ!?…ッか……!」 ──していたナノハの腹部に音をも踏み抜く脚力での蹴りが入る。着地の衝撃でガタがきていた バリアジャケットは、衝撃を抑えきることが出来ず、ナノハは大きく吹き飛ばされた。 ──────────────────────── 未だ打ち合いを演じている二人だが、どこか別なところに注意を払っているようで、ついには鍔迫り合いにまでなってしまった。 「たっく、てめぇ!やる気あんのか!?」 「それは、私の台詞だがな、ランサー。私はただ、タカマチの砲撃を警戒しているだけだ。──生前食らったことがあるのでな」 「……俺もさっき食らったが──肉をヤスリで削られるような感覚だったぞ。どういう魔術だアレ?」 「ああ、タカマチの魔法は非殺傷設定だろうからな、人間は昏倒程度で済むだろうが、英霊にはその様な効果になるのだろう」 「──やけに詳しいな。…ナノハのこと知ってんのか?」 「生前に食らった。…と言っただろう。少なくとも街の住人から魔力を奪う、 などといった、器用な真似など出来ない。…と、知っている程度には面識がある。」 「じゃあなんで止めなかった…って、聞く必要はねぇか。──サーヴァントなら…」 「ああ、戦うだけだ」 そのまま鍔迫り合いを続けるアーチャーとランサーだが…… ──「取ったぁぁぁあああ!!」 その声を聞いた瞬間、二人は見事なまでに同じタイミングで、その位置から飛び退き── ズドン!ズザァァァァァァァァァ!! その間をナノハとセイバーが滑っていった── と── ドカッ! 鈍い音をたててナノハが吹き飛ばされて地面に転がり、セイバーはそのまま地面を滑り── ズガン!! 「がっ……!!」 木に激突した── ランサーとアーチャーは直ぐ様フォローに入るべく、それぞれのパートナーの下へ駆け寄る。 「ごふごふ‥は‥ぁ‥ぁ‥ぁ‥‥‥」 「っ~~~~~はぁ、はぁ……」 駆け付けたパートナーに守られながら、なんとか立ち上がる。だが、 ──双方、受けたダメージは、決して小さくはない、セイバーは鎧の至るところにヒビが入り、 特に背面は完全に砕け衣服どころか素肌までズタズタになってしまっている。落下の衝撃か、内臓にもダメージがいっているようだ。 一方のナノハの方はバリアジャケットのおかげで着地の衝撃こそ、最小限に押さえることが出来たが、 セイバーに蹴られた腹部を押さえている、そして何より── 「──機械の‥腕‥でしたか。成る程‥道理で‥ああも‥簡単に‥腕を‥盾に‥出来るわけ‥ですか。メイガス。」 「いやいや‥この腕は‥特注品でね‥きちんと‥痛みは‥感じるん‥だよ?感覚は‥カット‥出来るけど‥ね。 そっち‥こそ‥あの‥速度で‥叩き‥つけ‥られて‥よく‥しゃべ‥れるね」 回復の時間を稼ぐためか、会話を始める両者。そしてセイバーを剣を受け止めたナノハの右腕、 落下の衝撃か、剣がめり込んでいたところから大きく抉れ、内部機構が剥き出しになってしまっていた。 ──それにしても…… 「はぁ、はぁ、──一つだけ聞かせてほしい、メイガス。何故無関係な街の住民から 魔力を奪うのか、貴女ほどの者ならそのような真似などせずとも……」 セイバーはどうしても納得が出来なかった、この騎士の魂と魔術師の狡猾さを併せ持つ様な相手が、 何故無関係な街の住民から、魔力を奪うなどという非道な真似をしたのか。 果たして──ナノハは──セイバーの台詞に、ぽかん、とした顔の後…… 「ふ、はははははは!」 何故か笑い始める。 「な、何が可笑しいのです、メイガス!」 「はははは!──はぁ、はぁ、……いや、ごめんね?そういえば、その理由で戦ってたんだよね、ふふふふは」 (おいおい、忘れてたのかよ……) (まぁ、タカマチらしいと言えばらしいが……) (……………………) 絶句する三者をよそに、ひとしきり笑った後── 「まず答えますセイバー、私は誓って、無関係な街の住民から魔力を奪ってはいません。」 不意に口調を変え雰囲気まで変えて、話し始める。 「──その話、信じる証拠は?リンは──アーチャーのマスターはこれは間違いなくキャスターの仕業と言っていたのだが」 目付きが鋭くなり、如何なる虚偽も許さないとばかりにナノハの目を見るセイバー。 「確かに、街の住民から魔力を奪う。どの程度の規模かは知りませんが、 『連続昏倒事件』と呼ばれる程ならかなりの規模なのでしょう。 そんな芸当が出来る者は、キャスター以外のなにものでもない筈」 「──?……では、矢張り貴女ではないのか」 「いいえ、何故なら──私はキャスターではないからです」 ナノハの台詞に思わず叫ぶセイバー。口にはしないものの、アーチャーも顔に動揺が滲みでている。 「バカな!それほど卓越した魔術のウデ、それこそキャスター以外のなにものでもない!」 「それでも、私はキャスターではありません。何故ならば──私は今日召喚されたばかりの、イレギュラーな英霊ですので」 「……イレギュラー?」 「……詳しい話はマスターを交えてしましょうか」 そう言うと、ナノハは凛と士郎を降ろし、はやてに念話つないだ──
英霊ナノハに関する第一回報告書第五次中間報告 制作者『調べ屋』アマネ 関連項目 タカマチナノハの簡易歴史表・後 『十一年目』:『流れ弾』と言う名の妨害を受けつつも戦果を出し続けていたが、 ある時、今まで潰してきた勢力の残党が集結して戦争を仕掛けてきた。 強力な結界にてゆりかごを閉じ込め、様々な魔法生物や、GDのコピー、 さらにはゆりかごのコピー艦まで作っており、玉座には死んだはずの先代聖王が 魔法で無理矢理『死んではいない』状態で置かれていた。 戦闘の内容は別の機会に譲るとして、結局はナノハが元特殊鎮圧部隊のメンバー 『クロノス』『運命(ゲレーゲンハイト)』『疾風(シルフィード)』と 戦闘機型デバイスのAI『You-Know(ユーノウ)』の三人と一機 (戦闘機は特殊鎮圧部隊全体の所有物だったが、武装が殆ど搭載されておらず、 半ば埃を被ってゆりかご内に保管されていたところを、ナノハによって発掘。攻撃手段をビットにて確保、 『眼』と持ち前の空間認識能力で見事乗りこなす。そして、その操作を学習させ、 他のメンバーでもビットを効果的に動かせるようにサポートAIとして『You-Know』が生み出された。) に守られながら、チャージし、『スターライトブレイカー』にて、 (コピーされ、多少劣化しているとはいえ現役当時のゆりかごを) 外壁から動力炉→玉座→外壁までを撃ち抜いた。 (尚、暫定的にスターライトブレイカーとしているが、発射シークエンスは ほぼ別物であり、『集束砲』ならぬ、『収束砲』となっている。) その後しばらく行動不能になるものの、ゆりかごを逃がすため、スターライトブレイカー+にて、 ゆりかごを覆っていた結界を破壊、自身の生命維持魔法の分の魔力をトリガーとしたため、 その場で生き絶える。その後、新聖王──つまりはヴィヴィオのクローン元──は、 ナノハが父、先代聖王を殺した理由を知り、ナノハを赦す。と同時に謝っていた。 (それまでは、殺した理由は知らなかった。その訳は、血は繋がっていないが、 ナノハのことを本当の母親のように慕っていたため、 自分の葛藤がこれ以上大きくならないために、故意に知らずにいた。 ──ただし、ナノハ本人は嫌われていると思っていた。) その後新聖王は、ナノハの居た証拠を残さず、しかし決して忘れられることないよう厳命、 先代聖王とナノハの遺志を継ぎ、聖王統一戦争を続けた──。 因みに、その新聖王が得意とし、最期まで愛用し続けた魔法の一つに、 ナノハが考案した、ミッド式で発動し、古代ベルカ式で射つ。といった独特のものがある。 ──────────────────────── 二十メートル程の間合いで対峙する両タッグ、そして── 「はっ───」 「─────――」 まずは声を上げ、先陣を切るランサーと、無言でそれを迎え撃つセイバー、 ここまでならば先程と同じだが── 「ふっ───」 横手からアーチャーの投げた陰陽剣──干将・莫耶が迫る。 しかし、ランサーは慌てない。彼には『矢除けの加護』があるし、それに何より── ガン!ガン! 迫り来る陰陽の軌跡。その間に割り込む金色の──『何か』 「ぬっ…」 ──そう、今度の相棒。ナノハのオプションビットである。そしてナノハ本人は──。 「──アクセルチャージャー起動、ストライクフレーム、ドライブ」 『オープン』 左手を前に突き出し右手を引く、つまりは右手で殴る体勢で 離れたところから様子を伺っていた。 セイバーを打倒する策は練った、後はタイミングのみ── ──それにしても。 「──羨ましいな」 ポツリと呟くナノハの目線は三人の英霊に注がれていた それぞれ三者三様の動きで、お互いを越えようとする英雄達。 例えばセイバー、その小柄な体躯とは裏腹に一発一発がとんでもなく重い。 しかも速い、決して止まらぬ斬撃は連撃と呼べるだろう。 そしてランサー、全身のバネを使い、目にも止まらぬ速度で二人を押し留めている。 それは、自分と打ち合っていたときよりも更に速く、セイバーが連撃ならば、 こちらは総てが一繋がりの動作といえよう。 アーチャーも負けてはいない、パワー、スピード共に、明らかに劣るのだが。 それでも彼はついて行く、どこか昔の教え子を彷彿とさせるその戦い方は、 たゆまぬ努力と経験と言う名の年月のなせるものなのだろう。 まるで違う三人の戦闘スタイルだが、それには共通して一種の『美しさ』があった。 先のSDFもそうだ、あの時硬直したのは躱されたからではない。 『矢除けの加護』『直感』『心眼(真)+千里眼』 この三人のスキルによる相乗効果の動きは、まるで完成した舞踏を見ているようだった。 それにナノハは──不覚にも──見惚れてしまっていたのだった。 無論ナノハとて、接近される前に大抵の相手は仕留められる自信はあるし、 なにより格闘には見切りを付けている。 向いていない事を研くより、見込みのある砲撃を研いた方が生存率も上がるし、助けられる人も多くなる。 ──だが、それでもやはりこうも思ってしまうのだ 『羨ましい』と…… それは、なんの力も借りずただ己の肉体のみで成しえる奇跡、自分には決して真似のできない、危うくも美しい刃の舞である。 「──さて」 だが──いつまでも見惚れているわけにもいかない。ここからは一発勝負の連続、 相手の土俵──接近戦での綱渡りなのだから。 「リインなら『分の悪い賭けは嫌いじゃありません』 ……とでも言うんだろうけどなぁ、確実に百年は後だろうけ‥ど‥‥」 と、自分で言って思い出した。 ──そうだ、未来(さき)を護り創るのが、私の役割。 はやてちゃんの未来を繋ぐため………ヴィヴィオに未来をあげるため 「負けられない。……スバル、軒を担がせてもらうよ」 呟き、右腕のコンソールに表れる文字は── 『ディバインバスターA.C.S』 (ランサーさん、いつでもどうぞ) そしてこの戦闘での相棒に念話を繋ぐ。 返事はない、必要もない。 ──さあ、 「こい……!」 ──たった一人でセイバーとアーチャー二人の足止めをするランサー 三つの異なる軌跡が頭を、首を、腕を、胴を、足を的確に狙ってくる。 だが彼はその全てを、守り弾き、散らし、往なし、躱す、 それは、彼らしからぬ『守り』の戦い。耐えに耐え、堪えに堪え、ついに待ち望んだ『声』が頭に響いた。 (ランサーさん、いつでもどうぞ) 「──やっときたか、待ちくたびれたぞ」 ニヤリと笑い呟くと、セイバーをある方向へと受け流し、もはや眼中に無いと言わんばかりに、アーチャーとの殺し合いに没頭する。 「──────?」 今までとはまるで違う対応に、意図が読めず困惑するセイバーだが── 「──なるほど、そういうことですか」 見れば視線の先にはキャスター──ナノハが、右腕に大量の魔力を宿しこちらをうかがっていた 「真っ向勝負、というわけか、……いいだろう、受けて立つ」 剣を構える。構えは──下段、先程の小細工など関係ない、小細工ごと叩き斬る。 「セイバーのクラスの名に掛けて──ゆくぞ、キャスター」 そしてセイバーは、音よりも速く踏み込んだ── ──来た! セイバーが構える、どうやら真っ向勝負に乗ってくれたようだ。 「──一撃必倒」 手に足に桜色の羽根が出現する。 そして待つこと数瞬── セイバーが、踏み込んできた! その速度はまさに神速、真っ正面から一直線にこちらへ突撃する姿は、 小柄な体躯と合わさって、もはや『点』としか認識出来ない。 ──だが、『真っ正面』からの『点』の軌道なのだ、ならば── 彼女の『眼』が捉えられぬ筈が無い! セイバーの剣が振り上がり、ナノハの身を両断せしめんとするその刹那── 「ディィバイィィィン、バスタァァァ!!」 カウンターの要領で彼女は主砲をブチ込んだ── 音よりも速く踏み込み、振りかぶるセイバー、相手の右腕の魔力の事など気にせず、 一気にカタを付けるつもりなのだろう。自信過剰ともみえる選択だが、 彼女には大半の魔力攻撃が通用しない上、先の戦闘で相手の技量は見切っている。 ──全力の一刀ならば一撃でカタが着く! そう判断し、踏み込む。もし先程の小細工があっても そんなものは関係ない、小細工ごと叩き斬らんとする斬撃である。 「ディィバイィィィンバスタァァァ!!」 こちらが振り下ろすと同時に大量の魔力が一塊となって、右拳から撃ちだされる。 ──無駄な事を、魔術では私には届かない……。 だが、セイバーの予測とは少し違っていた。 確かに『セイバー』にはナノハの魔法は大半は通用しない。 だが──―――― (──────!?) ──彼女の持つ『剣』にならば話は別である ナノハの狙いは最初から剣、セイバーの剣はナノハの主砲の、 ……そのあまりの魔力量に止められていた。 拮抗する両者、ならば剣を抜けばいいようなものだが、現在の状況は、例えるなら 激流の中に剣を突っ込んだ状態であり、下手に動かすと剣を持っていかれかねない。 故にセイバーは動けない。だが、それはナノハも同じこと。激流の向きを変えてしまったら、 今度こそあの一刀は防げない。つまり、両者とも引けず膠着状態── 「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 この状態を打破するため、自らの攻撃を押し込む両者、そして── ぶあっ!! 突如二人の中心に、爆発的な風が巻き起こり、二つの大きな変化が起こる。 一つはセイバーの剣があらぬ方向へと跳ね上がり、 もう一つは、烈風によって、二人の態勢に違いが生じたことである。 「─────ぬぅッ!」 風をまともに受けて上体が流れたセイバーと── 「─────くぅっ!」 風を受け流しなんとか踏み止まったナノハ、風の理由は分からない。 だが──! ──ここしか、無い! 踏み込み、タックルをしつつセイバーの腰にしがみつき── 「A.C.S、ドライブ!」 『A.C.S』 ぎゅん! 「ぐ、うぅ─────」 A.C.Sの加速突撃でそのまま宙へ押し上げた。 ──上空三百メートル付近── ──これは、マズイ 先程まで居たナノハが、いきなり自分を放り出したのが、ついさっき。 未だ惰性で上昇を続けているものの、このままでは地面に降りるまで、完全な無防備である。 ──くっ、この間にアーチャーを仕留める気か?……それにしても先程の風はいったい……? などと考えつつ着地に備えるセイバー、着地後は宝具の使用も辞さない覚悟で ──いや、最悪シロウだけでも、なんとか逃がす方法を…… と、そのとき彼女のスキル『直感』が警鐘を鳴らす。その直感に素直に従い剣を真横に振ると── ガキィイン! と手応えと金属音が帰ってきた。何事かと目を見張ると自分の周囲に金色の物体 ──ナノハのオプションビットである──が、周りを廻っておりさらには、 ナノハ本人も悠々と追い掛けてきた。そして、まじまじとこちらを見ると── 「形は『視えて』いたけど……ふぅん、凄い剣だね」 いきなりそんなことを言ってきた。 ──なっ!? 急ぎ己の剣を見れば、風の鞘は消え、光り輝く刀身が剥き出しになっている。 ──そうか、先程の風は‥‥風王結界のものだったか 「簡素ともいえる拵えに、美しささえ感じさせるその風格、私が知っている剣の中でも最高ランクだよ」 ──まずい…… 「さっきの風は見えなくするための‥‥結界?みたいなものだったのかな? ……最高ランクの上に、隠さなきゃいけないぐらいの有名な剣。とくれば……」 ──くっ、真名を……? 焦るセイバーをよそに 「──私以外には分かるんだろうなぁ。」 残念そうに呟くナノハ ──何?……分からない…のか? と、ここで上昇の頂点に達したようだ、一瞬空中に静止し、そのまま落下を始めた。 徐々に離れていくナノハとの距離、そのときナノハが何かを囁いた、 それは、よく聞こえなかったが、最後の言葉だけは聞き取れた。 「───────ごめんね」 何のことだ?と、思った瞬間、周りを廻っていたビットが、一斉にこちらへ突っ込んできた――――――。 こちらへ殺到するビット、その一つを弾くが、その間に残り二つのビットは視界から消え失せた。 完全に見失ってしまったが、しかしセイバーの直感は、次の攻撃をの位置を看破する! 「──後ろか!」 その予測通りに剣を後ろに回すと、確かに何かぶつかった手応えと、 カァァァン!という金属音。 防いだ!と確信したその瞬間―――― ―――――ドカッ!! 「がッ……!?」 今度は横手から衝撃が来た── ──想像してみて欲しい、ろくに身動きも取れない空中で、三つのビットが、 あらゆる角度からかなりの速度で激突してくるのだ。いかな陸の王者といえど、足場もない空中では、 躱すことも、受けとめることも出来ず一方的にやられてしまう── ──筈なのだが、 「ふっ!」 「くっ!」 バチィ! 白と蒼が交差し一瞬の火花が生まれる。 ──まずいなぁ、段々合わせてきてるよ。……ランサーさんといい、 ほんと、呆れる位の格闘センスだね。……空戦のセンスもあるんじゃないかな? そう、最初こそ慣れない空戦に一方的にやられはしたものの、徐々にタイミングを掴み── ギャギン!「──はっ!」 「うそぉ!…っとぉ、」 弾いたビットを足場代わりにナノハに切り掛かってきたのだ。 それがどれほどの荒技かは、ナノハの発言が証明している。 ──彼女は相手がどんな力を持っていようと、自分がどんなに不利だろうと、ポーカーフェイスは崩さない、 元来、彼女が英霊として扱われたのはただ単に、オンリーワンを持っていたからにすぎない、 その時代のその場所に在るはずのない魔導技術──ミットチルダ式魔法と砲撃魔法。さらには空戦での実践ノウハウ 言い方は悪いが、それが在ったからこその神格化。信仰対象である古代ベルカ聖王家の中でも別格の扱いを受けているのであり 彼女が本来の世界、本来の時代で一生を終えた場合、英霊と成りえるかはその生涯の功績しだいである。 ──そして誰よりもそのことを知っているのもまたナノハ、故に彼女にとっては、相手は自分より上で当たり前、 たとえ想定外の存在でも、驚きこそするものの顔にはださず、ごく自然に受け入れ、打倒する策を考える。 だから彼女はポーカーフェイスを崩さない。そんな相手に情報を与える暇があるのなら、全て思考にまわす── それが凡才の身で在りながら英雄として扱われた者の、本物の英雄に対する術とばかりに──。 だが、その彼女が──顔に出した、それこそがどれほどの体術であったかを如実に表している── その後も、ビットで攻撃するが、その度に、ことごとく足場代わりにされ、 最早ビットは足場を与え、回避や攻撃に利用されるだけと悟ったか、ビットを仕舞い、 ナノハ自身の体当たりに切り替える。その動きは、まさに空戦の妙技、並みの相手ではなぜ攻撃が当たらず、 いつ攻撃をされたのかも分からぬままに撃墜される。それほどの卓越したマニューバである。 だがそれを──セイバーは──当ててきた、恐るべきはセイバーの直感とセンス。もっとも本人は── ──当てるだけで手一杯か!くっ、地上であれば既に切り伏せているというのに……、 こうなっては、アーチャーの援護に期待したいところだが…… チラリと地上の様子を見るが── ──────────────────────── ──カン!キン! と、小気味のいい音を発しているのは、陰陽の夫婦剣と朱色の魔槍 「どうした!?上の様子が気になるかよ!」 「そういう君こそどうなのだランサー、先程から随分上を気にしているようだが」 「はっ、抜かせ!」 カン!カン!キキン!ヒュン……!カーン!カカン……! ──アーチャーはアーチャーで、ランサーと戦闘中であり、援護は期待できそうにない。 ──仕方がない、何とか凌ぐしかない。か…… と、不満そうであったが。 その後も、二度三度と交差するが、最早双方、ダメージらしいダメージは与えられず、またしても膠着状態になってしまった。 ──このままじゃジリ貧だね、『空戦出来ない』なんて、侮ったのはこっちの方、か……それなら! 「少し――――痛い目に合ってもらうよ……!」 ──何か仕掛けてくるか? そう思った理由は簡単だ、ナノハが自分の正面──地面と垂直の位置に移動したからである。 (つまり現在セイバーは背中から落下している。) ナノハはセイバーと向き合い、魔方陣を展開、身体中に羽を展開しこちらへ突っ込んできた──! ──────────────────────── セイバーを正面に捉えナノハは勝負を仕掛けるため、かつての親友の切り札を発動する。 「いくよ、セイバー。Get Set.偽・ソニックフォーム!」 『Ready.』 瞬間、マントが消え両足首の他に両手首に、そして背中にはX字を描くように羽が生え、 ツインテールとなった髪型の髪留めの位置からも羽が生える。 ――――彼女の生前の親友である『雷刃』フェイト・T・ハラオウンが切り札 装甲を極限まで排し、速度を一気に引き上げる 究極のヒット&アウェイを実現するための高機動フォーム 『真・ソニックフォーム』 それを元にひねり出したナノハの高機動フォームへの答え、装甲はそのままにフィンの数を増すことで 機動力を強化し、自らの運動能力の低さや重量故の応答性の低さは、『眼』や、エリアサーチ・オプションビットを予め配置し、 逸早く周囲の情報を得て反応することで、分厚い装甲のままの高機動故の強烈な慣性における身体への負担は 体内に魔力によるショックアブソーバーを形成することで、軽減した。 故に『偽』得られる結果は同じだが、オリジナルとはまるで違う過程でその速度をひねり出しているのである。 ──────────────────────── ──一直線にこちらに突っ込んでくるナノハ、展開した羽の所為なのか、その速度は先程の比ではない。 ──しかも、 「──ト、バスター!」 聞き取れはしなかったが、桜色の閃光が眼前一杯に展開される、この期に及んで通用しないのは ナノハにも分かり切っているはず、とすれば目眩ましか ──だが! 「もらったぞ、キャスター!」 その程度でタイミングを損ねる程、この剣の英雄は甘くない! 聖剣は吸い込まれるように伸び──守るようにかざされていたナノハの右腕を半ば切り裂き──そして停止する。 「バカなっ!?」 「取ったぁぁぁあああ!!」 驚くセイバー、吠えるナノハ。 ──ナノハが吠える、生前の彼女を知っているものなら、まず間違いなく耳を疑うであろう。 ──先程どんなことでもポーカーフェイスを崩さない。と、書いたが 一つだけ人並みに感情を表すことがある。(…まぁ、それでもかなり冷静なのだが。) それは『空戦』何故ならば──それは彼女の唯一絶対の、本物の誇りであり── 空戦では―――空の戦いでは、たとえどんな相手でも、負けるわけにはいかないのだから──。 左腕でセイバーの顔面を鷲掴み、剣がめり込んだ右腕は、それでも正確に命令されたことを実行する。 『フラッシュムーブ』 ──アクセルフィンに魔力を追加することによって、瞬間的な高速移動を可能とする魔法 『フラッシュムーブ』 それを、フィンの数が大幅に増えているこの形態で使うとどうなるか? 答えは── ドン! ──空気の壁を突き破るほどの爆発的な加速力得る。だ! 本来の『真・ソニックフォーム』とは、装甲を削り軽量化することで機動力を確保するが、 それゆえバリアジャケットの防御力を著しく劣化させてしまう弱点(というか特性)も持っていた。 だがナノハは出力を増やして速度を稼ぐ、防御力の低下はない、機動力、俊敏性ではオリジナルに劣るものの、 こと加速とトップスピードに於いては、オリジナルと同等ないし凌駕する! 音速の壁を突き破ったナノハは一秒と掛からずセイバーと共に、地面へと落下し── ドーン!! 「がぁ、ぁ、ぁ………!!」 セイバーを背面から地表に叩きつけ、鎧を砕き更に──! ズガガガガガガガガ!! ──そのまま引きずりながら、地面を砕きつつ直進── ドカッ!! 「うっ!?…ッか……!」 ──していたナノハの腹部に音をも踏み抜く脚力での蹴りが入る。着地の衝撃でガタがきていた バリアジャケットは、衝撃を抑えきることが出来ず、ナノハは大きく吹き飛ばされた。 ──────────────────────── 未だ打ち合いを演じている二人だが、どこか別なところに注意を払っているようで、ついには鍔迫り合いにまでなってしまった。 「たっく、てめぇ!やる気あんのか!?」 「それは、私の台詞だがな、ランサー。私はただ、タカマチの砲撃を警戒しているだけだ。──生前食らったことがあるのでな」 「……俺もさっき食らったが──肉をヤスリで削られるような感覚だったぞ。どういう魔術だアレ?」 「ああ、タカマチの魔法は非殺傷設定だろうからな、人間は昏倒程度で済むだろうが、英霊にはその様な効果になるのだろう」 「──やけに詳しいな。…ナノハのこと知ってんのか?」 「生前に食らった。…と言っただろう。少なくとも街の住人から魔力を奪う、 などといった、器用な真似など出来ない。…と、知っている程度には面識がある。」 「じゃあなんで止めなかった…って、聞く必要はねぇか。──サーヴァントなら…」 「ああ、戦うだけだ」 そのまま鍔迫り合いを続けるアーチャーとランサーだが…… ──「取ったぁぁぁあああ!!」 その声を聞いた瞬間、二人は見事なまでに同じタイミングで、その位置から飛び退き── ズドン!ズザァァァァァァァァァ!! その間をナノハとセイバーが滑っていった── と── ドカッ! 鈍い音をたててナノハが吹き飛ばされて地面に転がり、セイバーはそのまま地面を滑り── ズガン!! 「がっ……!!」 木に激突した── ランサーとアーチャーは直ぐ様フォローに入るべく、それぞれのパートナーの下へ駆け寄る。 「ごふごふ‥は‥ぁ‥ぁ‥ぁ‥‥‥」 「っ~~~~~はぁ、はぁ……」 駆け付けたパートナーに守られながら、なんとか立ち上がる。だが、 ──双方、受けたダメージは、決して小さくはない、セイバーは鎧の至るところにヒビが入り、 特に背面は完全に砕け衣服どころか素肌までズタズタになってしまっている。落下の衝撃か、内臓にもダメージがいっているようだ。 一方のナノハの方はバリアジャケットのおかげで着地の衝撃こそ、最小限に押さえることが出来たが、 セイバーに蹴られた腹部を押さえている、そして何より── 「──機械の‥腕‥でした‥か。‥成る‥程‥道理で‥私の‥剣を‥受け止める‥ことが‥出来るわけ‥ですか。メイガス。」 「まあ‥この腕は‥特注品‥だからね。‥そっち‥こそ‥あの‥速度で‥叩き‥つけ‥られて‥よく‥しゃべ‥れるね」 回復の時間を稼ぐためか、会話を始める両者。そしてセイバーを剣を受け止めたナノハの右腕、 落下の衝撃か、剣がめり込んでいたところから大きく抉れ、内部機構が剥き出しになってしまっていた。 ──それにしても…… 「はぁ、はぁ、──一つだけ聞かせてほしい、メイガス。何故無関係な街の住民から 魔力を奪うのか、貴女ほどの者ならそのような真似などせずとも……」 セイバーはどうしても納得が出来なかった、この騎士の魂と魔術師の狡猾さを併せ持つ様な相手が、 何故無関係な街の住民から、魔力を奪うなどという非道な真似をしたのか。 果たして──ナノハは──セイバーの台詞に、ぽかん、とした顔の後…… 「ふ、はははははは!」 何故か笑い始める。 「な、何が可笑しいのです、メイガス!」 「はははは!──はぁ、はぁ、……いや、ごめんね?そういえば、その理由で戦ってたんだよね、ふふふふは」 (おいおい、忘れてたのかよ……) (まぁ、タカマチらしいと言えばらしいが……) (……………………) 絶句する三者をよそに、ひとしきり笑った後── 「――まず答えますセイバー、私は誓って、無関係な街の住民から魔力を奪ってはいません。」 不意に口調を変え雰囲気まで変えて、話し始める。 「──その話、信じる証拠は?リンは──アーチャーのマスターはこれは間違いなくキャスターの仕業と言っていたのだが」 目付きが鋭くなり、如何なる虚偽も許さないとばかりにナノハの目を見るセイバー。 「確かに、街の住民から魔力を奪う。どの程度の規模かは知りませんが、 『連続昏倒事件』と呼ばれる程ならかなりの規模なのでしょう。 そんな芸当が出来る者は、キャスター以外のなにものでもない筈」 「──?……では、矢張り貴女ではないのか」 「いいえ、何故なら──私はキャスターではないからです」 ナノハの台詞に思わず叫ぶセイバー。口にはしないものの、アーチャーも顔に動揺が滲みでている。 「バカな!それほど卓越した魔術のウデ、それこそキャスター以外のなにものでもない!」 「それでも、私はキャスターではありません。何故ならば──私は今日召喚されたばかりの、イレギュラーな英霊ですので」 「……イレギュラー?」 「……詳しい話はマスターを交えてしましょうか」 そう言うと、ナノハは凛と士郎を降ろし、はやてに念話つないだ──

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