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スバティアin三咲町9話」を以下のとおり復元します。
突然の出来事、目標から感知される力が突然膨れ上がった事、それを肯定するように隻眼の色は光 
り輝く黄金となっていた事、そして敏捷になる動き、答えは簡単だ。 

―――リミッターの解除ですか。 

シエルは思う、1日戦争終結後管理局で言う第97管理外世界の裏世界の住人は極秘裏に管理局に 
こちらの手駒を細胞として送り込んでいる、バチカンとて例外ではない。それは再び管理局の野心 
がこちらに向かないようする為、そして管理局の技術の極秘裏収集、そして管理局そのものの情報 
収集を行う事、最も管理局内部でも地球上の魔法技術情報収集の為何名か諜報員を派遣している、 
ある意味イーブンな関係でもある、そして収集された情報――― 

・ジェイル・スカリエッティ事件 
・高ランク魔導士に対するリミッター取り付け 
・ジェイル・スカリエッティの申し子「戦闘機人」 

先ほど『チンク』と言う彼女から発せられた言葉から推測して恐らく『戦闘機人』と思われる、そして予測される従来存在する機械部分の高速化、いわゆるリミッターを解除する、 
だから彼女の動きや瞳の色が変わったのだろう。だが負けるつもりはない、何故なら自分はバチカン最凶を誇る埋葬機関の1機関員でもあるからだ。 
それに敏捷性でいえばまだこちらに分がある、そしてリミッターを外すと言うなると、『稼働時間』の大幅な短縮、何であれ身体に膨大な圧力がかかる事は目に見えている。 
なら自分の選択する戦術は一つ。 

―――何もどっぷりと構える必要はない、時間を稼いで相手の限界まで酷使させる。 

動きは機敏なれど、攻撃は投擲ナイフによる攻撃、しかし例え爆発する投擲ナイフといえども自分の身体は傷つける事が出来ても、 
致命傷を与えられる事はほぼ不可能、致命傷を狙うには頭部、心臓、頚動脈を狙うしかない、そしたら行動パターンはおのずと読める。 
人から見れば卑怯、姑息かもしれない、だが自分にとってそんな言葉なんて関係ない、最適かつ、最良の方法で相手を『殺す』 
それは埋葬機関として働いてきた自分が歩んでいた道なのだから。 

体の機能をそして機人として戦闘能力を左右する機械部分がうなり声を上げている、身体がアツイ、ラジエーターはフル稼働してその機械から生み出す熱を排気する、だがそれでも体中を熱が駆け巡る。 

―――短期間で決着をつけねばならないな… 

リミッターを外して体の中にある猛獣が怒り狂い暴れまくっている感覚こそあれ、チンクの頭は極めてクリーンであった、 
あの時スバルのリミッター解除はただ怒りで我を忘れていたものであった。そして相手の戦術を読む、 
そして丸で自分の攻撃を誘うように定期的に行われる攻撃から推定して、恐らく相手は自分の戦闘継続時間が大幅に短縮されたのを感知し、 
積極的な攻勢を行ってこない。 

―――いい判断だ。 

たしかにリミッター解除を行って、従来の機動性は格段に上がったがそれは決してシエルを完全に上回ったとはいいきれない、 
寧ろ若干劣っている可能性もある。無理もない、本来自分はトーレ姉やノーヴェ、セッテのような高機動戦闘を是にしておらず 
どちらかと言うとウェンディみたいな中距離サポートを主にしているからだ、だがリミッター解除は何も高機動化、能力の底上げだけではない。 

―――傷は治っているな。 

左肩を見る、先ほど黒鍵で貫かれた部分はリミッターを外した事による強烈な再生能力によって治ってこそいないが、傷口は塞がっていた。 
だがシエルも似たような状況であったクレイモア攻撃で受けた負傷はほぼ治っているから。 

「改めてやり直しといこうか…代行者」 
「ええ、こちらも、局員」 

命のやり取りをしているにも関わらず両者とも不釣合いな笑みを浮かべる、それは純粋に強敵と対峙できた所以なのか… 

            『短い第二ラウンドが起こる』 

両者共互いに己の武器を投擲する、そしてチンク距離を詰めようと前進し、シエルはがっつり組む事無く適度に反撃を加えながら後退する。 
だがいつまでも後退出来るわけではない、シエルもチンクの能力を知っている(誤認)為背後の森林まで逃げようとせずに何とか広場の中で 
円を描く様に動き続ける、だが円形に動くと言う事は後退する事は直線で逃げるよりも効率が悪い、距離は徐々に縮まっていく。 

―――時間稼ぎでも、逃げているばかりでは意味がないぞ、代行者! 

地を踏みしめ、一気に加速をつけシエルの下に向かう、両手に握られたのは2本のスティンガー、それを躊躇なく一本はシエルの心臓を、 
もう一本はシエルの脳髄を狙う…このスティンガーは特殊弾頭型であり刺せばそれで一気に勝負をつけられる、だがシエルも予期していたように 
それらの攻撃をかわすと共に拳をチンクに向けて叩き込もうとする。 

その拳は並の人間なら一撃に殺す事が出来る威力をもつ、しかしチンクもその拳を再生したばかりの左腕でいなす。次はシエルの左足から蹴り、それを右腕で防ぐ、 
無論右腕の負担も凄まじく形容しにくい不愉快な音が発せられ、骨や機械部に異常が発生するがリミッターを解除した事によってそれを覆うように凄まじい勢いで再生されていく。 
次いで左足を防ぐとすぐにひっこめ勢いをつけ右足による回し蹴りを行う。それをチンクは身を低くする事によって回避しようとする、しかしそれを予測していたのか勢いのついている 
右足のスピードを体の筋力などで無理やり制止させそのまま踵落としの要領でチンクの頭上に振り落とす、それも両手をクロスさせて受け止める。 
しばしの押し合いにチンクは競り勝ちクロスさせた腕を押し上げシエルの体勢を崩す、その隙を狙いナイフを突きつけようとするが、シエルも崩した体勢のまま左足で地を蹴り、一気に後退する。 


―――いまの一撃をかわすか。 

元々不得意であった格闘術、しかしスバルやギンガが教えてくれたお陰で前より格闘術の腕は上がっていた、しかし悪く言えば付け焼刃といったものであったが 
シエルと近接戦と何とか立ち向かえる点ではすごいものだがチンクの心は晴れない、 

 何故ならシエルとの距離がまた開いた… 

――――チィ! 

思わず舌打ちをする、時間稼ぎ作戦をやられるとこっちが不味い、何とかして自分との長期戦が不味い事を知らしめ、相手もこちらと同じように短時間で 
こちらを叩き潰してもらうように向わせなければかなり不味い。焦燥が現れるが冷静に分析すると、まだやれる手はある、 
シエルが後退したすぐ右には公園の木が立っており、そしてシエルの背後には単純な公園林となっていた。 

そう彼女はまだ勘違いしているのだ自分のISを。 

―――いけるか。 

そしてもう投げあいで数が少なくなり始めたスティンガーをその木に狙って打ち込む、撃ち込んだのはAPHE型ではなくただのAP型しかも爆発するようにセットしない… 
刺さる先を本能的に探知したシエルは瞬時に左前方斜めに飛びのく、右は木、そして後方には森林、予想される破片によるダメージを考えるのならそれが一番最少であるから。 
だがそれもチンクの読み通りだった。 

―――やはり代行者はこちらのIS能力を分かっていない。 

シエルの後方からスティンガーを出現させる、その前にシエルが黒鍵を放つがそれを回避する、だがここで疑問を持つべきだった、 
一本だけ妙に刃が小さかった事と、投げるタイミングが若干遅かった事に… 
だがそれに気にせず一斉発射、それに驚愕する間もなくこちらに向うスティンガーをシエルは回避する、 
だがそれは必然的にチンクとの距離を詰める。そしてチンクはスティンガーを投擲し、 
一気に前身をかけて勝負を決めようとする。 

―――距離が詰まっている以上、投げる為のタイムラグはかなり厳しい、なら投げるより手に持ったまま落とした方が有利、 だが落とすことで隙が出来る…頭がガラ空きだ。 

地を蹴ろうとするが… 

―――体が動かない! 

体が何かに拘束をかけられたように。 

―――チェーンバインド? 

だが身体には鎖が絡みついていない。 

――――何かの拘束術? 

だが魔方陣と呼ばれるものは確認されていない…そして此方に向う5本の黒鍵、動いていない以上 
直撃は必須、確かにダメージは貫通のみとは言え、頭部、人工心臓、魔力ジェネレーターに直撃し 
たらこちらの死亡は必須、衝動的にプロテクションを張る。それに阻まれ黒鍵の刃は防がれる。 

「魔力を使った、防御壁ですか…」 

「成る程、こちらの黒鍵では貴女の盾を抜くには少々威力不足ですか…」 

「先ほどの一撃を喰らっていた方が楽だと言えますが…仕方ありませんね」 

違う装飾を施された黒鍵を取り出す。 
「シエル…かなり本気ね」 

遠目で見ていた真祖は呟く。 

―――成る程、相手の防御を抜くには第7聖典…純粋威力でもかなりの威力を持つが…黒鍵ではほぼ不可能、聖典は使用せず、 
   しかしあれで動けない以上恐らく次の攻撃は…予想はつく。 

「えげつないことするなぁシエルは…ホント大人気ないんだから」 

そして真祖は動けない機人を哀れむ。 

「可哀相に…碌な死に方しないわあの子」 

―――何をしかける? 
チンクはシエルが何をして来るのか分からなかった、しかしやるとして想定されるのは… 

A、高威力武器による貫通攻撃 
B、動けない事を利用する攻撃 

―――恐らく後者であろう。 

違う装飾された黒鍵から感じられる魔力ではこちらのプロテクションを打ち破る事は出来ない、そして何故動けないのか確認された、 
なんとか動く事が出来た首で周りを見確認する。街灯で照らされた自分の影に小さなナイフが刺さっていたのだ、 
恐らくさっき投げたのがそうだったのだろう。 

―――影縫いと言う奴か…なら… 

からだに搭載されている機動部が猛烈な勢いで動く、そしてその影縫いから解放されるように、 
だがそれを望むほどシエルはお人よしでも甘くもなかった。 

「主よ、この不浄を清めたまえ!」 

チンクの周辺に刺さる違う装飾が施された黒鍵、そしてその黒鍵から炎が吹き出た。 

―――『火葬式典』 

教会では禁忌とされている魔術を使用したある意味外道武器、対死徒用として開発されたシエルは容赦なく分類では死徒ではないチンクに使用した。 

「うぐ…ぁ」 

チンクは悲鳴をあげた、プロテクションにより炎は自分を飲み込む事はない、融点にしてもマグマや溶鉱炉、 
もしくはフィアフルフレア級、エンシェントノヴァ級の魔法を喰らわない限り、 
プロテクションが融ける事はない、だがこの技は今、チンクにとって最悪と言える技といえる。 

1、周辺の酸素が減少する事による呼吸困難、スカリエッティ最高の傑作である戦闘機人は通常の人よりはるかに頑丈に作られている為 
 多少の酸素不足とてどうにでもなる、しかし酸素不足になると脳などに異常が発生されるし、延々としていれば酸素供給がなくなり 
 酸欠に陥り機能停止の可能性も高い。 

しかし、2番目の方が性質悪すぎた。 

『警告、警告、体内温度上昇中、その場合緊急冷却機能が作動します』 

体中に響く緊急メッセージ、いくらプロテクションとは言え、熱まで完全に遮断出来ない…熱ぐらいは大丈夫だし、 
この程度ならラジエーターの能力でかなり防ぐ事はできる、だが今はリミッター解除を行っている、 

 体内の機械は予定の範疇を越えた酷使により膨大な熱を生む、その熱と外気の熱で自身のラジエーターによるが間に合わない。 
そして緊急冷却機能、現魔力などをすべて使用して冷却に当たるもの、しかしそれは自身の魔力ジェネレーターのエネルギーを喰らってしまう事になる、 
そうなるとプロテクションの強度が弱まってしまう、通常ならバーンストライク級、イラプション級の熱波を防げる程度がファイヤーボール級の熱波でもいとも 
簡単に貫通もしくはプロテクションが溶解する可能性はかなり高い。 

―――何とか、何とかしなければ… 

冷静を保つはずが凄まじいほどの焦りが見える、無理もない、体中を駆け巡る熱が自分の思考を阻害しているのだから… 

―――暑い、暑い、熱い、熱い、アツイ、アツイ!!! 

そんな思考が身体を駆け巡る。だが歯を食いしばり、なんとか右腕にエネルギーを注ぎこむ…陰縫いによる拘束を強引に解かせる、 
なんとか動き始めた右腕からスティンガーをその短剣に投げつける、命中しなくてもいい、ただ至近にさえ到達出来れば… 

『警告、警告、現在温度デンジャーゾーンに到達、のこり5秒で強制冷却システムを作動させます』 

警告が起こると同時にスティンガーはその短剣の付近に到達、IS機動させスティンガーを爆発、 
そしてその破片は短剣の刃を砕いた。そして一気に体中を伝わる解放感。 

―――これで勝負をかける! 

その余韻に浸る事無く、その積もったエネルギーを一気に加速に変換させる…体中に蓄積された膨 
大なエネルギー、雨水を貯めたダムのように、そしてそのダムの扉が開き一斉に水が流れ出るよう 
に、エネルギーを解放する、そしてそのエネルギーは動きの為だけ使用する、そのエネルギーを持 
って発せられる速度はそう、丸でスカリエッティ研究所においてフェイト・テスタロッサが発動し 
た新・ソニックフォームのように、そしてその超速度は火葬式典の炎を瞬時に潜り抜ける、無論身 
体を、髪を焼く、だがそのような痛覚は無視する 

『5…4…』 

一気に懐に詰め寄るチンク、動揺するシエル…だが長年戦いを積み上げていた体が反応のしたのか 
突っ込んでくるチンクに向って黒鍵の刃をを振り下ろす。…だがチンクは左腕でその刃が頭に振り 
落とされないようにガードする、無論刃が左腕に喰いこむ、いわゆる肉をかませたと言う奴だ、そ 
の痛覚は相当なものだ。しかし今はその痛みなぞ感じる暇もない、ただ相手に必殺の一撃を穿つ為――― 

「さっき、言ったな…」 

シエルに向けてスティンガーを刺すように、またシエルもチンクにむけて黒鍵を突き刺そうとする。 

『3…2…』 

「ナイフは投げるものではなくて、刺すものだって…」 

「ならば…」 

「望み通り刺してやる!」 

右に握られたスティンガーをシエルの心臓に向けて突き出す、それと同時にシエルの黒鍵もまたチ 
ンクの心臓に向けて突き出す。 

『1…』 

初動のほんのわずかなタイムラグが明暗をわけた、シエルの突き出した黒鍵はチンクの腹を掠め、 
僅かに肉を抉ったにすぎない、一方チンクのスティンガーはシエルの腹部にその刃を潜り込ませる。 

 スティンガーを起爆させる、そのスティンガーは対プロテクション、ガードナー、対 
装甲兵器を目的に開発された、ノイマン型、小さな点を穿ち、そこに高温のメタルジェットを吹き 
込むと言う物であった。(RPGシリーズやパンツァーファーストに近い) 

 何せ実験ではなのはのプロテクションEXでさえ楽々貫通できるものであった…しかし思いっき 
り非殺傷設定をガン無視設定なので、おきまりのなのはさんによる『少し、頭冷やそうか…』となった。 
そしてシエルの体内に高温のメタルジェットが吹き込まれる。 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 

絶叫をあげる、シエル、無理もない元々対装甲目標を主眼とした武器が生身の人間に襲い掛かったのだ、 
苦痛は言葉で表せるものではない、そしてシエルの身体は崩れ落ち動く事はなかった。 

『強制冷却開始』 

それに伴い、体の中にあった膨大な熱が排出されていき、リミッター解除も解除され、金色の瞳は元の眼の色となる。 

「勝ったのか…」 

チンクは絶え絶えな言葉を発しながらも倒れ、ピクリとも動かないシエルの姿を見る。何の感慨もなかった、 
かつてゼストと戦った中での昂揚感、右目と引き換えに撃破したとき達成感、目の前の敵はそれに匹敵、 
もしくはそれ以上のものだった、本来なら勝った時の感動が全身に行き渡るのだが、今自分の体を駆け巡るのはただ 

  『猛烈な疲労感』と『帰りたい』の二つだけであった。 

―――不気味であった。 

あのクレイモア攻撃をかけてから、通常の局員ならあれで全身を切り刻まれ命を絶たれる、のっけからの殺傷設定、 
だがシエルはそれを意に返さずにこちらに攻撃をかける、そしてこちらの攻撃が通用しないような、 
そして奥の奥の手を使って漸く倒した、しかし完全に相手を殺したのか実感が沸かなかった。 

―――蘇りそう。 

そう思い浮かべる。 

―――馬鹿な、そんな事はありえない。 

否定する、いくら死ににくいとはいえ、心臓をつかなかったとはいえ、高温のメタルジェットはシエルの内臓を焼き尽くすはずだ。 

―――元々非殺傷設定をオール無視して作り上げたものだ…まして生身の人間が喰らった以上、無事ではすまん… 

そう思う、強制的に思い込んだ。そして左腕と腹部を見る、当然傷口から流れ出てくる血… 

―――リミッター前でも相当出血したからな… 

これからマンションに戻ろうとする以上、これ以上の出血は不味い…もう数えるしかないスティン 
ガーのうち一本を折る、そしてその中にある炸薬を取り出し、ほんの少量だけ傷口に塗る、点火、 
小さな爆発、人の肉を焼く不快な匂い、痛みに顔を顰める…だが傷口は焼いて塞いだ。 

「これで出血の心配はない、帰るか」 

チンクは激戦と損傷で疲労困憊し朦朧とする頭の中でも、自分の帰るべき場所に帰ろうとゆっくり 
と歩を進めた。 

少し時間が立って――― 

「シエル、一部始終見ていたけど随分と無様な姿だね~」 

物言わない代行者の姿に真祖はふざけた口調で言う。 

「く、屈辱です!というか一部始終ではなく最初から最後までみていたでしょ!」 

先ほど、チンクの一撃を喰らって死んだと思われる代行者は動き出し、その場に座り込む。 

まぁそんなやり取りをするアルクェイドとシエル。 

「まぁしかし、貴女を倒すなんて管理局も中々やるね」 

真祖もまた管理局の存在は知っていた。 

「確かに私が今まで戦ってきた局員に比べて遥かに強かった…」 
「あら珍しい、貴女が他人を認めるなんてね…」 
「判断力、戦闘力、攻撃、どれをみれば機関としてやっていける人間ですよ、彼女は」 
「ふ~ん」 

そしてアルクェイドのふざけが真面目な雰囲気をぶち壊す 

「相変わらずシエルってゴキブリみたいな生命力を持っているね」 
「だ、誰がゴキブリですって!」 
「これからシエルの事ゴキエルって呼んであげるね、や~いゴキエル!」 
「キィィィィィ!!!そこに直りなさい真祖!その腐った根性叩き直してあげます!」 
「ニャハハハハ、シエルってすぐ怒るから面白~い」 

相容れない立場なのにどうみても単なる友達関係…実際彼女達もそう思っているのかもしれない、 
戦いの場以外では。そしてアルクェイドはシエルに手を差し出す。 

「ほら、その傷じゃまだ動けないでしょ、私が家に送ってあげる」 
「誰が貴女の助けなんか…」 
「はいはい、人の好意は素直に受け取りなさい」 
「全く仕方ありませんね」 

やれやれと言うとシエルはアルクェイドの手を掴む、そしてアルクェイドはシエルをおぶる。ある 
意味微笑ましく、ある意味珍妙な光景だった、吸血鬼が吸血鬼狩りをおぶる、その手の人達が見れ 
ばそれこそ口をアングリする光景だろう。 

「シエル~」 
「何ですか?」 
「太った?」 
「…な、何を言うのですか!別に転校生にメシアンのカレーの早食い、大食いに記録更新された事 
に腹を立ててついつい…なんていうことは」 
「やっぱり太ったじゃん、志貴にいいつけちゃお~と」 
「何でそこで遠野君を出すんですか!卑怯ですよ真祖!」 

そんなやりとりが繰り広げられる、深夜の三咲町 

チンクが犯した最後のミス、それはシエルが第7位でロアが消滅したとは言えほぼ死ねない体質で 
あった事である。最もまた再開することになった時の二人は… 

「やれやれ…」 

傷ついた体でようやくマンションにたどり着いたチンクは、今までチンクがどうなっていたのかお 
構いなしに幸せそうな顔をして寝ている二人に溜息をつく。 

―――全く、私の苦労を知らないで… 

そう思うが、二人の顔を見てそんな沈鬱な気分は吹き飛ぶ。 

―――まぁいいか、今の私は彼女達の剣となり盾となるから… 

そしてとても普通の女の子とは思えないほど腹を出して寝ているスバルに布団をかけ直し、自分の 
持ってきたトランクから一つのカプセルを取り出すと煽った。 

「真っ先にこれの御世話になるとはな」 

それは管理局の一員と働く事を決意し、ドクターと面会した時――― 

「別に構わんよ」 
何か憑き物が落ちたのか、隔離牢にいれられ孤独に時を過ごしていたドクターの表情は偉くさっぱ 
りとしていた。 

「子はいずれ親から独立する、それに口出しする権利なんて誰にもない、むしろそれは喜ばしい事 
だ、どんな事でも」 

「私はまだ夢を諦めていない、それに私の方につこうと、それに反抗するならそれもまたよし、君 
 の決めたならそれでいい、恨みもしない、憎しみすらない…」 

そしてドクターは言う。 

「チンク、娘達を頼む…無論君も無事で居て欲しい」 

ドクターは私に始めて頭を下げた、それは本心からという意味で、そしてドクターはいくつかのカプセルを置く。 

「こんなこともあろうかと、密かに作り上げていたものだ、選別に受け取ってくれ」 

ジェイル・スカリエッティが6課襲撃時におけるチンクの損害を反省し、戦闘機人の作戦時における早期修復を考 
慮して開発した物、独房に隔離されながらも有能である事に変わりなく、黙々と研究に勤しんでい 
た、(ドクター曰く『すんげぇつまんな~~~い』だと)そしてその間に開発したこのカプセルの中 
身は魔力ナノマシンが詰まっており。 

 損傷もしくは磨耗した機械部、そして生身である生態部分の修復、血液、オイル増産などが一つになったある 
意味修復工場が詰まった物と言える。 
無論瞬時と言うわけではない、暫くの間絶対安静が必要である…だが時計を見るとまだスバル達 
が起きる時間ではない。そして溜まった疲労とか戦闘に置ける心労など色々重なりチンクは汚れ 
た体を気にせずに布団に潜り込むと寝た。 

チンクは夢を見ていた、それはティアナ・ランスターの執務官試験の補佐役をナンバーズの中から 
選びたいと言う八神はやての意向で… 

「まぁ、チンクちゃんが責任者やからしっかり選んどいてや~」 

とどうみても無責任丸出しな要請であった。 

(こいつ、アグスタから全然変わっていなんじゃないのか?) 

何故か、こんな指揮官に率いられた部隊にコテンパンに負けたのが妙に悲しくなる(といっても模 
擬戦で鬱憤晴らすようにスバルやギンガ、ティアナやエリオとかをコテンパンにうちのめしたけど) 

まぁそんな思いがあれど、責任者として誰を選ぶか…自分と言うのもあるが、こういうのは妹達か 
らやらせるべきだ、という考えでいざ選ぼうとしたけど――― 

「やっぱ、ディズニーラン〇行きたいッス!」 
「いやいや、折角だから沖〇で泳ぎに行こうよ…」 
「そんな所よりやっぱ道頓〇だな、通天閣にも行きたいし、たこ焼きも食べたいな」 

と任務なんかこれぽっちも考えていない、例の3馬鹿トリオ、ウェンディ、セイン、ノーヴェであ 
る。3人は第97管理外世界のパンフレットというか観光案内ブックを読んで盛り上がっていた。 

「あ~、任務忘れていないか?」 

私が言うと 

「彼女達だけでやっていけるから大丈夫だよ」 
「そうっス、今までこんな狭いところばっかりいて退屈していたっス!私たちだってパァーと遊びたいっス」 

と…頭抱えたくなった。 

(駄目だ、こいつらは…) 

そう思い、次はオットーとディードだった。だが格言う二名も… 

「動物園、ズーラシ○や上○にいきたいね」 
「やはり水族館、海○館や八景○とかも」 

お前たちもか 

観光ガイドより真っ先にレポートに眼を通していたディエチならと思った…何だかんだいっても任務 
に忠実だし、Sランクの砲撃を行える事や優しい性格なのだが、切り替えの早さはいいので適任と 
思えた… 

だけど、リンディ・ハラオウンから見せられた97管理外世界の魔法技術や体系のレポート見て… 

その世界の裏は文字通り「デッドアアライブ」な「殺るか殺られるか」と言う非常にデンジャラス 
である上に管理局のエリートでもある強制執行部隊を叩き潰したとなる以上、ディエチではかなり 
荷が重いと言えた…(ディエチは高機動戦相手にはほんとに弱い) 

「所で、なんで彼女達はティアナとスバルをその危険な所へ…」 

私が言うと、リンディは泣きそうなして言った。 

「まだ、あの世界の危険性も知らなくて、こちらがどんなに言っても『大丈夫、大丈夫』って無理 
 矢理押し通すから」 

「あんた、一応彼女達の後見人で上官だろ…」 

ツッコミを入れると同時に改めて思う… 

『何でこんなスチャラカな部隊にギッタンギッタンにやられたんだろう』 

まぁ、妹達にあまり血なまぐさい光景とか、危険な目に合わせたくない思いもあってか、自分が志 
願した、無論ウェンディ以下妹達からの総ブーイングを食らったりするのは別の話 

その頃、とある地下王国 

以前スバルとティアナを襲ったメイド型ロボットと思われる12体のロボットが各々の獲物を持ち 
対象物を攻撃していた。一機が巨大な砲を構え撃ち、一機が二刀を構え対象物を斬り付けてた、一 
機がサーフボードとも思える(又はガンダムシールド)盾を持ち、光弾を撃つ… 

「うふふのふ~どうやらかなり完成されてきたようですね」 

フードを被った少女の不気味な笑い声が響く。 

「流石はスカリエッティさん、やはり、私の苦心の作であるまききゅーやとなみんを進呈した 
 見返りだけはありますね~」 

「でもまだ完全とはいいきれませんね~~~」 

「でも…」 

少女は笑みを浮かべる。 

「私の理論で、もうすぐスーパーメカ翡翠ちゃん達は完成!楽しい楽しい、第二次遠野家乗っ取 
 り作戦の開始ですよ~」 

復元してよろしいですか?