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調べ屋の報告書─英霊ナノハについて─その二 - (2008/11/23 (日) 18:49:36) の編集履歴(バックアップ)


英霊ナノハに関する第一回報告書一次中間報告

制作者『調べ屋』アマネ
協力者『青崎』(『天河』『御統』)


関連項目

英霊とは

人であれ、動物であれ、機械であれ、偉大な功績を残したものは
輪廻の枠から外され、一段階上の存在となる
英霊とは、死した英雄が崇め祭られて疑似的な『神』とされたもの。

以下、詳細は別紙参照の事──


それは簡単な任務のはずだった──
第97管理外世界『地球』において、断続的だが強力な魔力反応を感知。
管理局は八神はやて(当時特別捜査官)とヴォルケンリッターに調査を命じた。
仮にも闇の書事件を起した八神はやてへの、戦力の一点集中を危惧する声もあったが、
高町なのはや、八神はやて本人の例もあり、予想外の実力者がいた場合に備え、
念には念をと、リンディ・ハラオウン提督が半ば強引に押し切り、八神一家総出で調査に向かった。
とはいえ、八神一家が全員そろった場合、よほどの実力者で無いかぎり、
危害を与えるのは不可能に近く、高町なのはが撃墜された事と、
八神一家新たに加わった、リインフォースツヴァイの事への配慮であると思われ、
実質休暇のようなものであるはずだった──。


冬木市──

南側を山々に囲まれ、北に海岸線を望む自然豊かな地方都市である。

その冬木市に、なにやら妙な一団がやってきた。

「──やっと着いたなぁ、ここが冬木市かぁ。」
栗色の髪に髪留めを着けた少女が言うと、ピンク色の髪をポニーテールに纏めた女性が、
「時刻は真夜中の午前一時過ぎ・・・、嫌われていると知ってはいるが、
こうまであからさまなものも珍しい・・・、主はやて、大丈夫ですか?」
「平気や、流石にちょっと眠いけどな。ありがとう、シグナム。」
はやてと呼ばれた少女が、ポニーテールの女性に言葉を返す。
「先に着いているシャマルとザフィーラがとってあるホテルまで、おぶっていっても構いませんが?」
「大丈夫やて、それよりヴィータの方は大丈夫か?」
はやてとシグナムが振り向けば
「うぅ~、ねみぃ。」
はやてとシグナムの後ろにいた赤毛の少女──ヴィータは今にも歩きながら寝てしまいそうだ。
「・・・まあ、大丈夫でしょう。」
「なのはちゃんの事、ずっと気にしてたしなぁ・・・。疲れるのも無理ないか・・・。」
ちなみに、八神家の末っ子であるツヴァイは目下、既に爆睡中である。



そんな会話をしていたとき──

トスッ──

「──んーん?分からねえなぁ、サーヴァント、って訳じゃなさそうだが・・・。」
不意に、気配が生まれた。
『!?』
二人が振り向けば、そこには青い装束の男と──血を流して倒れているヴィータの姿があった。
「・・・っ!ヴィータ!?」
「・・・ッ!レヴァンティン!」
はやてはヴィータに近寄ろうとするが、それをシグナムが押し留め、
自身は即座にデバイスを起動、騎士甲冑を身に纏う。「──ほう。妙な魔力の原因はそれか、サーヴァントではないようだが、なかなかの強者と見た。」
言うや否や、凄まじい殺気を放つ青装束の男、
対するシグナムは、身構えながらも
「・・・いくつか問うてもいいか?」
「ああ、構ねぇぜ。」
「お前は何者だ。目的はなんだ。何故こんなことをする。」
すると、男は呆れた様子で。
「──まず、自分から正体を明かすサーヴァントはいない。
目的は、──そうだな、強いて言うなら戦いこそが目的だな。
そして、何故かは趣味と・・・。」
言いながら、男は緩りと構え。
「・・・っ!」
「そういう命令だからだ!」
言葉と同時に、飛び掛かってきた。
それを迎え撃つシグナム。
戦闘が始まった──



──魔剣と魔槍がぶつかり合い火花を散らす。
既に60合ほどお互いの武器をぶつけ合うなか、
「つっ、くっ・・・!サーヴァントとはなんだ!。」
「ほう。まだ喋れるぐらいの余裕はあるのか。思った以上にやるな。」
防戦一方ながら更に質問をするシグナム
対する男は感嘆の声をあげると槍の速度を更にあげる。
たまらず防御に集中するシグナム
「────っ!」
「どうした?口数がへってきたぞ?」
──そうは言うものの青装束の男──ランサーは内心喜んでいた。
目の前の女剣士の言動から察するに、相手はサーヴァントではない、
只の人間でもないようだが、ランサーにとってはそれはどうでもいいこと、
要はサーヴァントか否か、だ・・・
相手がサーヴァントならば自分は初見では全力では戦えず、
相手が人間ならば制約は受けないが全力を出すまでもない相手、
しかし目の前の女──確かシグナムと呼ばれていたか。
ならば、サーヴァントではないため、制約を受けずしかし自分の全力にもこうして凌ぎ、
隙あらば反撃を狙っている(無論、隙など毛頭見せる気はないが。)
死力を尽くした戦いを求める自分にとっては、嬉しい相手である。
──しかし、そこで思考が待ったを掛ける。


目の前の相手は確かに強い、では、さほど力を入れずに戦っていた先ほどの打ち合いはどういう事か。
自分は先ほど、相手が声を自分に掛けられてから初めて速度を上げ始めた、
つまり、それまではこの相手ならば容易く防げるはずの攻撃である。
当然、返す刀で傷を負わされてもおかしくない状態だった筈なのだが、相手はそれをしなかった。
先手を取られたので立て直していた・・・にしても、やはり違和感は拭えない、
ここは相手に何かしら理由があったと考えるのが自然か、ではその理由とは・・・!

そこまで思考がたどり着いたとき・・・!

「──ラケーテン、ハンマァァァァァァァァ!!」
破城槌をも上回る一撃が、横手からブチ込まれた──。


シグナムがランサーと切り結んだとき、はやてとツヴァイ(殺気で飛び起きたらしい)は、
シグナムと思念通話で作戦を練っていた、その結果シグナムがランサーを足止めし、
その隙にツヴァイがこっそりヴィータに近づき治癒魔法をかける。というものだった。
だが、何故かヴィータの傷は治癒魔法でも塞がらず、取り敢えず一時退却し、
シャマルに傷を診せよう。ということになった。

そこで、ヴィータが体に鞭打って、ランサーにラケーテンハンマーをブチかましたのだ。

ランサーが吹っ飛んだのを見た瞬間、戦線から離脱するはやて達──
「やったか!?ヴィータ!」
「──ハァ、ハァ、いや、手応えが妙だ、多分たいしてきいちゃいねぇ。」
などと言いつつ、空中でヴィータの治療を試みるが、やはり何故か治らない。
やはりシャマルかと急ごうとしたとき、それは起こった──


──ランサーは酷く腹が立っていた。
あんなに楽しかった戦いを邪魔され、獲物は宙へ逃げようとしている

──はん。端から逃げるつもりだったか?

そう思うと先ほどまでの心踊る殺し合いをしていた相手に、酷く裏切られた様な気分になる。
だからランサーは己が伝説を使うことにした、なぁに、相手は聖杯戦争とは関係ないが構うものか、
一時とはいえ心踊る戦闘を味合わせてくれた礼もあるその技量に敬意を表し・・・


「──突き穿つ、死翔の槍──!!」
必殺の槍を撃ちだした──

──何かがくる。
そう思った瞬間──
「レヴァンティン!」
「アイゼン!」
とっさに防御魔法を展開させる二人、しかし──
「な・・・!」「にぃ・・・?」
朱き魔槍はそれを苦もなく突き破り、そして──

シグナムの心臓(あるのかは不明)へ炸裂した──


──かに見えた。が、実際に当たったのはシグナムの腹部辺り、
ゲイボルクが投げられる寸前、何故か全員が回避行動を取り始めていたのだ。
よって、辛うじてシグナムは即死の免れた。・・・だが、突然の幸運もそこまで、
本来の形で使われた『突き穿つ死翔の槍』は、一撃で一軍を吹き飛ばす『対軍宝具』
それゆえ、空にいたはやて達は残らず地に叩きつけられた。

「──ほう。まだ原型を留めてやがる。」

魔槍を回収しはやて達に近づくランサー、その言葉通り余波を食らったはやて達だけでなく、

直撃をもらったシグナムも腹に大穴は空いてるものの生きてはいるようだった。
「──しかし、分からねぇ。」

剣士としてあれだけの技量を持ちながら、魔術師の様に空を飛び、
放てば必ず相手の心臓を穿ち、一軍をも吹き飛ばす魔槍を
辛うじてとはいえ心臓から外し、腹に直撃を食らって尚生きている・・・。
そんなモノ、サーヴァントを除けば数えるほどしかいない。
「・・・まあ、今更か。」
そう、その相手は今から確実に止めを刺すのだ、考えても仕方ない。

「このまま放っておいても死ぬだろうが、せめても情けだ、直ぐに楽にしてやる。」
そういって、槍を振り上げるランサー



「あ・・・」
全く体が動かないなか、はやてはその光景を見ていた。
「や・・め、て・・・。」その言葉は届かず、青装束の男は今にもシグナムに槍を降ろそうとしている。


──やめて、私の家族をシグナムをヴィータをリインを殺さないで、
私から家族を奪わないで、ああ、どうか、誰か・・・みんなを──
「助けて・・・!」
槍が振り下ろされた──



──が、その槍が当たる瞬間、
「!?」
シグナムの姿が掻き消えた、いや、周りを見ると、先ほど
凄まじい一撃を叩き込んできた少女の姿もない。そして──
『・・・守護騎士達の魔力還元完了、魔力量、必要値を確認、術式、発動します。』
一冊の本が、凄まじいと言うのも、おこがましい程の魔力を宿し、そこに浮いていた。
「チィッ!」
アレは不味い。そう思ったのか本に突撃しようとするランサー、しかし──
そこに夜天の魔導書の最後の騎士が立ちふさがる!
「ん、なぁ!?」
足元を見るといつの間にか両足が、地面に凍り漬けになっていた。
思わず驚きの声を上げるランサー。
「させま──せん。」
──みんなと約束しましたから!


──シグナム達が消える寸前、ある会話があった、それは夜天の魔導書の緊急高速回線によるもので、
繋げてきたの相手は、消えたはずのリインフォースアインス、先ほどの不自然な全員の回避行動は、
リインフォースが「ホクスポクス」という、戦闘中のみ味方のLUCを上昇させる、
アルカナと呼ばれる種類の魔法を使用したから、直撃を食らっても原型を留めていたのは、
「スクルト」という防御力を上昇させる魔法を使ったからだった。
(ちなみにどちらも異世界の魔法である。)
そして、リインフォースはこう聞いてきた。
『お前たちヴォルケンリッターが一度消えるのと、はやて様が死ぬのではどちらを選ぶ?』と・・・
(なんでもリインフォースには現在、新しい主がいるので直接助けに来ることは出来ず、
呼び方も変えたが、やはり、はやての事が大切なので助けたいらしい。)
その質問には、ヴォルケンリッターを知っている者には当然だが
全員(シャマルやザフィーラにも回線を繋いでいる)が『YES.』で即答。
リインフォースも予想していたらしく、即座に、はやてを助ける方法、こちらも『英霊召喚』をするため、
はやての全魔力とヴォルケンリッター全員を魔力還元し、夜天の魔導書にある、術式を発動させた。
その際、守護騎士プログラムから独立しているツヴァイは術式完了までの約11秒間、
たった一人でランサーの足止めを引き受け、そして成し遂げた──。
傷ついた体で、ランサーの対魔力を上回る、渾身の氷結魔法を使ったツヴァイ、
まだ生まれたばかりだが、主を護る騎士の姿がそこにはあった。
そして──
『──術式完了。英霊、召喚。該当英雄──聖王の義母。』
ランサーが睨むなか、召喚は完了した。

渾身の力を振り絞り、消耗したツヴァイは、しかしその姿を目に焼き付けていた。
(ちなみに、はやては全魔力を一気に消費し、現在気絶中である。)
栗色の髪をサイドポニーに結い、白い外套の下に白い法衣を纏い、
所々に部分鎧(特に右腕はやたらとゴツイ鉄甲?)を装備した女性の姿を、
荘厳な雰囲気を身に纏い、ゆっくりと周りを見渡し、納得したように頷くと、
「──つまり、はやてちゃんが私を呼び出した。ということでいいのかな?リイン。」
そんなことを聞いてきた。


いきなり主と自分の名前を呼ばれたツヴァイ
「えーっと、どこかでお会いしたでしょうか?」
困惑したツヴァイが聞くと、女性は少しがっかりした様子で、(それでもランサーから気を逸らさずに。)
「・・・まあ、そうだよね、分かるわけ無いよね・・・。」

パキン!

「・・・8人目のサーヴァント、だと?・・・あの銀髪の姉ちゃんといい、イレギュラーが多いな。」
だが、それでも一瞬気を散らした女性の隙を付き、足枷の氷を砕いて、飛びすさるランサー
「(銀髪の姉ちゃん?・・・まさかね。)・・・それで、どうしますか。ランサー、さん?」
「サーヴァント同士が出会ったのなら、やることは一つだろう?名も分からぬ英雄よ。」
女性は『そういえば。』と言う顔をし、続いてツヴァイの方を見ると少し考えて、
「(まあ、いいかな?)出来れば無益な戦いはしたくないんですけど・・・
仕方がありませんね。──『タカマチナノハ』と言います。よろしく。」
………………………
「馬鹿か貴様は!」
いきなり凄い剣幕で怒鳴るランサー
「聖杯戦争では、己が名を隠すのが常套!それをあっさりと・・・!」
対する女性──ナノハは対して気にもせず、
「言外に『名を名乗れ』と言ったのはそっちだったと思いますが?」
などと言い返す。
「クラスを名乗れと言う意味に決まっているだろうが!」
「ああ、ガンナーでもバスターでも、ダークロードでも、
ホワイトデビルでも、好きに呼んでもらって構いませんよ?」
「・・・・・・」
どことなく疲れた様子で、黙るランサー、それを見てくすくす笑うナノハは
「さて、細工は隆々、・・・いきますか?」
そう言うと、一本の槍とも杖ともつかないものを取り出した、
花の蕾の様な穂先をしていて先端は平らで中心に穴が開いている。
そして、ナノハ自身、先程までの和やかな雰囲気は消え、無表情となり、魔力スフィアを展開する。
それを見たランサーも鋭い殺気を放ち始める。
「魔術師?──その武器は槍か?杖か?それとも砲か?」
「・・・それを迷わせるのもこの武器の目的です。」お互いまだ構えはない。(正確にはナノハは魔力スフィアを四つほど準備しているが。)
しかし、ここの空気は最早、下手な戦場より、よほど濃密な殺気が立ちこめていた。そして──
「ふっ!」「疾っ!」
戦いの火蓋が切って落とされた──