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なのはVSミスブルー中編 - (2008/04/30 (水) 13:23:19) のソース

既に原型を留めていない地形
フルメタルジャケットで武装した小隊同士の貪欲な殲滅戦じみた撃ち合い
犯し合い 滅ぼし合い 食らい合う この砲弾による削りあいは、しかし

この二人にとっては、牽制の鍔迫り合い以上の意味を持たなかった

そして先に仕掛けたのは高町なのは
自らの陣地を捨て、王将に楔を打たんと滑空する
相手の弾幕をものともせずに蹴散らし
一度は敵を追い詰めたかのように見えたエースの飛翔は

相手の「弾幕」を超えた、更なる魔弾の「壁」によって自陣に押し戻されてしまう

「くっ………」

強襲は失敗 
防壁のおかげで致命傷はないものの、被弾によるダメージは決して軽くない
そして、決めにいって決められなかったという精神的な焦り


だがそれ以上に――

現状、自分の置かれている状況に 白き魔道士は歯噛みする

「………いつの間に、、こんな…」
「貴方がピュンピュン飛んでる時にコツコツと、ね」

現在二人の立ち位置は 地上の青子に宙空のなのは
その周囲を、色とりどりのスフィアが囲んでいる、仕切り直しの状態
決定的に違うところ     ――それは

その100を超える魔力弾の中に、桃色のスフィア
つまりは、なのはのものが一つも無い という事だった

「しかし、凄い飛行技術だったね。 かなりビックリしたよ」

決して無傷ではない  
身体のそこかしこに、空戦魔道士の二度の近接攻撃を受けた擦過傷を負いながら 
涼しい顔をまるで崩さずに、蒼崎青子は語りかける

「でもさ、一つ聞きたいんだけど…… 二度目のアレ  
 いやひょっとすると一度目からか…… 本気でやれば勝ってたんじゃない?」 

青子とて気づいている
この相手は自分に対し、明らかに攻撃の手を緩めていた
そして仕留められる所で仕留めず、自分に三回もの反撃の機会を与えてしまっている
自分らのレベルの戦いで、相手に三回もチャンスを与えては、このように引っくり返されて当然なのである

「その仕様、生身の私を吹き飛ばすなんて造作もなかったハズ
 どうしてそうしなかったの?」

それは、なのはに取っては愚問でしかない問いだった
相手をみだりに殺傷しない事を前提に戦うのが管理局の魔道士
ひいては自分に科したルールなのだから

「でも、貴方も………手加減していた」
「ん? ああ、これは別に、ね 手を抜いてたってワケじゃないよ?」

「嘘、つかなくてもいいよ……だから、こういう戦法を取ったんだから」


そう、初めの撃ち合いは 二人にとっての鍔迫り合いだった
だが、なのはとて百戦錬磨のエース  
多くの魔道士や騎士と交戦してきた経験から 手を合わせた時点で、自ずと相手の力量を肌で感じる事が出来る
故に その時点で分かってしまったのだ  敵の力量の底知れなさ――深さを

このまま撃ち合いを続ければ不利になる 
その前に、何とかペースを握らなくては……そう思い立ってのチャージだったのだ

現に、周囲に散開する100以上のスフィア
その、自分が操作出来る限界の 倍以上の魔力弾を
縦横無尽に操作し 相手の軌道を読み 敵を追い詰める
いつも相手に対して自分がやっていた事を、遥かに高い次元でやられたのだ

なのはとて、敵が自分の力量を上回る事など常に想定して戦っている
場合によっては、オーバードライブによるビット射出も視野に入れていたのだが……
この手数の差は もはやそれでも相殺できまい

(この人………ケタが、、違う)

「ケタが違う?」

思っていた事を口に出され、内心息を呑むなのは

「いや、何かそんな顔してたから       ――それは違うよ?
 単に選択肢の問題ね  貴方には空という逃げ場があって私にはない 
 逃げ場がないから必死で撃ちまくる 相手のタイプがどんな、であれね
 それだけの事よ」

特化型ゆえに一つの武器を磨き上げる、という事だろうか
でもそれは―――

「私も、、そのつもりで技を磨いてきたよ」

「そうでもないでしょ  そんだけ飛べて、硬くて、敵と殴り合えれば
 いくらでも選択肢はある。  少なくとも私よりは、ね」

そう、自分には翼もなければ 立派な盾や鎧も持っていない
この脆弱な身で、地上に根を下ろして戦わなくてはいけない

故に より速く より多く より強く―――

そんな条件の下、一息で間合いを詰めてくる疾風のケモノや不死身のバケモノ 
無限に増殖する怪異を砲殺してきた それはマジックガンナーの矜持

「まあ、私の方が尖ってたって事かな。 撃ち合いでは負けないよ、私は」
「……………」

決してなのはの才能が劣っていたのではない
だが、管理局に所属し 様々な任務をこなしていかねばならない身では
特化した技術だけでは、とても対応出来ない
だから、苦手な近接も必死で覚えた  幅を広げざるを得なかった  
どちらが悪いとか、間違っているとはそういう事ではない

生き方、在り方の違いが 今回たまたま結果に現れたに過ぎないのだ

なのはも重々それを理解していた
故に、自らの得意分野で上回られた
その事実に対し 動揺など微塵もなく――

「じゃあそうゆう事で。」


今まさに、襲い来る弾丸の雨を前にして
危機を脱するため 高速で思考を巡らせる

引き出しの中をまさぐる
10年に渡る戦技の追求
絶望的な戦況を幾多も引っくり返してきた
「勝利の鍵」に、諦めるなどという言葉はない


そして辿り着いたのは、最も古い―――なつかしい記憶
かつて 親友にして 最大のライバルである 一人の魔道士との激戦
その1000発にも及ぶ雷光の槍をその身で受けきった
我が身の鎧を信じて耐え切った

そんな記憶

「はは、戦技っていうか……結局は不器用な力押し、、
 原点回帰の気分だよ、レイジングハート」

数多な戦場を、共に駆けてきた相棒に語りかけるやいなや
迫り来る魔力光をキッと睨みつけ―――


白い魔道士は 宙を焦がす爆炎にその身を包まれていた

青子s view ――――――

「あー…………」

髪の毛をくしゃっとかきあげる私
ちょっと聞きたいのだけど 
誰か、あの子の知人とかがいたら是非、教えて欲しいんだけど


――――    死 徒 か 何 か で す か あ の コ

いや、格好から言って アンドロイドの未来型・魔法少女とかそんなんか…
とにかくあのコ、一体何なの? って話で……

いや、突然なのは百も承知だよ
でも、こんな突拍子も無い疑問を持った私を果たして誰が責められるだろうか 
いや責められない

私の予想してた展開はこうだ
まず、完全包囲されたあのコは360度、どの方向でもいいから逃げる
一か八かのフライトで。   そこに半分ほど、叩き込んであげる予定だった
残り半分は、当たる前に相殺
彼女の周囲で破裂でもさせて、耳や目にダメージを与えるって寸法

これでだいたい適量のダメージ → 気絶
晴れて、エセ魔法使いの不届き者にお仕置き完了&情報搾り取って
メデタシメデタシ

脳内で、こういう絵を描いてたんだけど―――

だからね。
仁王立ちでスターマインに対して向き合ったあのコを見た時 完全に絶句してしまった
多分私、親にも見せられないマヌケ面をしていたと思う
そう、恐怖で硬直して食らった、とかじゃない

自ら受けた   受けるべくして受けた 

防護膜がどうとか言ってたから、耐久力には余程、自信があるのだろうが…
それでも、あれだけの魔弾の直撃
どれだけの衝撃になるか、分かったもんじゃないでしょ?

だから―― 撃たれれば死ぬ 弱っちい人間に過ぎない身で
しかもあんな細い線の女が
あのテの選択肢を選ぶ光景を、脳が受け入れられなかった


それだけの事、なんだけどね…

さて、濛々と立ち込める硝煙の中

相手の姿は見えないが  、、、いる
私の魔弾掃射を虚仮にしてくれた女が、あの煙の向こうで私を狙っている
見えなくても分かる

小さいのをチマチマ撃ってたさっきまでとは明らかに違う
控え目に見てもドデカイ魔力が、爆発的に高まっている
更にそれが一点に集中して―――その砲身が今、私の方に向いている

なるほど。 それが切り札か
私の攻撃を確信を持って耐え切り、あの煙の向こうで
あんな童顔の顔に似合わない獰猛な牙を研いでいるワケだ

ああ、何かゾクゾクしてきた…

両手をグーとパーにして、胸の前でパン!と合わせる
あれだけの魔力だ  豆鉄砲で迎撃できるハズもなく
こちらも、それなりの物を用意しないといけない  

さて、私に火をつけてくれた責任……重いからね


「さっさと来なさい―――受けたげるから」 

煙に巻かれて未だ見えない空の相手に対し 私は一方的に吐き捨てた

なのはs view ――――――

「、、う   、、痛ぅ……」

時間にして数秒
感覚にして永遠に思えた爆撃
でも、、、何とか………耐えたよ…

<master>

途中、何度も意識がなくなりかけた――
終わった後も、油断すると視界がブラックアウトしそうになる
それを唇を噛んで堪える……これで終わっちゃったら
何のために耐えたんだか分からない

<master condition yellow>

「うん、、大丈夫……全開のプロテクション、何とかなったね…」

カートリッジも大分消耗したし、正直キツかったけど――
でも、のんびりなんてしてられない
敵は、さっきの地点から一歩も動いていない
レイジングハートが確認してくれた
……狙い通り
速攻で弾道計算・射角修正、いつもの手順を完成させ
煙の向こうの、見えない相手をロックする

最後に <勇気の心> の名を冠する、私の相棒 
その柄をぎゅっと握り締める
慣れ親しんだ、その感触――それが私にいつも力をくれる

今度は……………こっちの、、番だよ!

――――――――――――

今まさに破壊の鉄槌を振り下ろそうとするSランク魔道士
それを真っ向勝負で斬り返さんとする魔法使い

尋常ではない力量の二人の、その魔力の高まり 気力の昂ぶりに
渓谷全体の空気が震える

その押さえ切れないほどの魔力を先に放出したのはSランク魔道士
砲撃魔法――高町なのはの代名詞にして、自信のキャリアにおいても
最も愛用した、その技の名前を、歌うように高らかに紡ぎ出す

「ディバイイン ・・ バスタァァァァァーーーーーー!!!!!」

桃色の荒れ狂う閃光はまるでブレがなく、見事なまでの直線を描く
大気を切り裂き 煙幕を吹き飛ばし その向こう
目標・ミスブルー蒼崎青子に迫る

ふぅぅぅ―――

コンマ一秒後には始まるであろう
野蛮で 粗野で ひたすらに暴力的な力比べを前に一息――
身体中に万遍なく 酸素を取り入れるべく一息――
そして――

「ふっっ!!」

短い息吹を一息!
用意していた渦巻く破壊の力
その爆発的に暴れ狂う渦を、青子はその左手から解放していた

――――――――――――

なのはs view ――――――

耳をつんざくような衝突音

「っっ!!!?????」

予想外の衝撃に驚く
この感覚、魔力がぶつかり合った時の!?
砲撃が読まれていた!?

煙は晴れ 私と青子さんの姿が浮き彫りになる
私の放ったディバインバスターに真っ向から砲撃を被せてきた青子さん
そうだ……あれだけの砲戦を行える人
大砲を持ってないと考える方が不自然だった

でも、レイジングハートは相手の砲撃の動作や魔力波を感知しなかった
なら、まるっきりタメ無しで撃ってきた?
抜き打ちの砲撃でカウンターを狙ってきた、、なのにこの威力!

私のバスターと青子さんの砲撃は全くの五分
空間の中央で耳障りな音を立てて押し合い鬩ぎ合っている
だけどっ!

私はすかさず、ブラスター1の安全装置を外す 
余力を残して勝てる相手じゃないし、まだ全然底が見えない
なら、ここで決める! 一撃必殺モードを解放

「ブラスターシステム起動! ブラスター1!!」

ドクン、という体幹の芯に響くような衝撃
限界を突破した事による過負荷が、私の身体を貫く  
この感覚だけは――何度味わってもキツイ

その代償と引き換えに、私の砲撃は加速度的に水増しされていき
青子さんの砲撃を飲み込んで――――

「なっ!??」

目を疑った
限界突破により水増しされた私の砲撃が、自分を凌いでいる
それをいち早く察知したあの人は……
砲撃ごと飲み込まれるその前に力勝負を捨てて、横にサイドステップ

結果、私の砲撃はスレスレで青子さんに当たらず 
その横を掠め 誰もいない大地を抉り取っていた

砲撃同士がぶつかり合ってる最中に………回避行動するなんて…… 
何ていう、、神業
だが、それだけではなかった
今の絶技が曲芸に見える程の 本物の神業――
それを私は見る事に、、いえ その身に受ける事になる

「せぇぇぇぇぇいっ!!!!!!!」

!!???
回避した青子さんが、右手を私にかざす
捨て身のブラスターで決め切れなかった事で動揺を隠せなかった私に対し
かわした姿勢のまま、二発目を撃ってきた!

そんな、、バカな…
大砲の連射―――― 

私だって砲撃は沢山撃ってきたし、少しは理解してるつもり
だから断言出来る……大砲は、あんな頻度で撃てるものじゃない…  
連射出来ないから大砲っていうんだよ…?
無理すれば出来ない事もないけど、
まず間違いなくデバイスや魔力回路が焼け付いてしまう

ショックは隠しきれなかったけど、ほとんど反射的にシールドを形成
こちらの砲撃の終わりを狙われて、かなりシビアなタイミングだったけど何とか間に合う
でも―――

「く、、、うあっ…… あああああっ……」  

防御ごと削られていく――
ひたすら耐える
つくづく信じられない……連射によって威力は下がってるだろう、、
そんなのは希望的観測で さっきの一撃目と何ら変わらない二撃目の砲撃が
私の防御を犯していく

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ………」

手に力が入らなくなってきた
防御は限界、これ以上は耐えられない
BJの耐久力に任せて、もう一度チャージを敢行する?
そんな考えが頭をよぎるのも一瞬―――

「あ、…………」

そういえばこんな光景、前にあったような――
そんな場合じゃないハズなのに、昔の記憶に苛まれる

ああ、そうだ……これ 私がフェイトちゃんに勝った時に似てる
総合力で遥かに上回るフェイトちゃんに対し
起死回生のチャンスを掴み、砲撃を捻じ込んだ

ただ記憶と違うのは、今 砲撃を打ち込まれてるのは私――
皮肉にも、また私は自分の得意パターンで この人にやられてる

二発目を何とか凌いだ凌いだ私の目に、最初に飛び込んできた光景――

「これで、、、どうよッ! 
 スヴィアブレイクッ スライダァァーーーーー!」 

私に向かって飛翔し
伸び上がって、右足で蹴り上げるように撃たれた
蒼崎青子さんの ―――― 有り得ない 三連発めの砲撃だった

――――――――――――

―――スヴィアブレイクスライダー
ミスブルーの「破壊に特化した」魔術最大の奥義
高速詠唱による、全開魔力放出の三連撃
幾多の闇に巣食うバケモノ達を 問答無用で消し去ってきた破壊の極地である
10の力に対し、15の砲撃で一度は優位に立ったかに見えたなのはだったが
10+10+10の力を叩き込まれては為す術も無く――

――ここに勝負は

なのはのいた宙空に人影はなく
その真下の大地に堕ちた形跡もない
三発目の砲撃、なのははバリアもシールドも張っていなかった
いかに重装甲を誇るなのはでも、完全に消耗した状態で
あの力の塊をまともに受ければただでは済まない 

エースオブエース・空の英雄の消えた大空に
その名残を惜しむかのように、一陣の風が吹き付けていた

――決した

青子s view ――――――

二発目で決めるつもりだった
三発目なんて撃つつもりなかった

力自慢の人間ほど、あの一撃目のスカしに対応できない
完璧なタイミングでのクロスカウンター
それに反応して、防護盾を形成
並の反応速度、判断能力じゃない

追撃してしまったのは、私自身が自分で考えるよりも遥かに火がついてたのと
こいつは撃っても大丈夫、、という予感めいたものだった

そもそも、戦ってすぐに このコに違和感を感じていた
何の躊躇いも無く 「魔法使い」 を名乗ってる 
私が 「魔法使い」 だと言っても無反応
まるで何も知らない駆け出しのヒヨッコじゃない?

だのに……えらく強い

魔力の運用はまだまだ荒い もっと洗練の余地はあると思う 
でもそういう事じゃない――

魔術師にしろ何にしろ、強いに越した事はないけれど、目的はあくまで真理の探求
根源の渦、6法、何でもいい……
つまりは普通では到達し得ない境地への挑戦…そんな感じのやつ? 
多くの魔術師がそういう奴らなんだと思う 
だから、はっきり言ってしまうと魔術師とかそういう人種は戦い専門ってわけじゃない
ソレを専門にしてるのは「戦士」って言うんだよ、RPG的に

そう そんな違和感―――
このコはまるで、魔力を、「戦う」事、、それ自体を目的として磨き上げたような……
「戦技」というのだろうか?  よく使わない言葉なので、あまり知らないけれど
魔法使いはもちろん 魔術師とも一線を画した在り様なのは間違いない

魔術における技術では私の勝ちだった
撃ち合いという (恐らくは)相手の得意分野でねじ伏せてやった

にも関わらず、
力で負ければ技でいなし
技で上をいかれたら力で押し返し
全て負けたら戦略で覆す

あげく、私に全開三連打を出させてなお、、、

「こういう事になっちゃってるワケね……」

私は何とも言えない、といった表情で
動きを封じられた自分の姿を見やり、、、 一人愚痴る

三発目の青子の追撃

レイジング・スターレイの直撃を受ける瞬間
なのはのフラッシュムーブによる回避がギリギリ間に合う

そのまま、青子の斜め後方の上空に身を移したなのは
ブラスター3解放
ビット射出により青子の周囲を包囲
そのままケージ型のバインドを形成し、捕獲する

そして、立ち位置的にも 
青子が何らかの方法でバインドを破り、反撃に出たとしても
必ず自分の砲撃が早い――
そんなベストポジションにて完全に青子をロックオンしていた

この間、僅か数秒
相手の全力・魔力放出後の僅かな隙――
青子ですら反応し得ぬ 電光石火の早業であった