「調べ屋の報告書─英霊ナノハについて─その三」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

調べ屋の報告書─英霊ナノハについて─その三 - (2008/11/29 (土) 07:35:45) のソース

英霊ナノハに関する第一回報告書二次中間報告

制作者『調べ屋』アマネ


──そこは戦場だった。戦場には多くの人が傷つき果てていくものである、
だが、彼女はそれを由とせず、自ら囮となって、
多くの人を救った。──しかし、その代償は己の右腕と、二十年来の愛杖との別れ、
そして、この世界からの別れでもあった──


「──え?」
目が覚めると、知らない天井が目の前にあった。頭がぼんやりとしてはっきりしないが、
知らない天井だということは分かる。つまりは知らない場所というわけで・・・
考えていくうちに段々不安になっていく彼女、そこへ
「おっ、目が覚めたのか。」
一人の男が現れた、彼女は(なにか違和感を感じながら)ベッドから身を起こすと、男を観察した、

身長180センチぐらい、身体はよく鍛えてあるようだが、筋骨隆々というよりは、しなやかな体つき、
そして、ブロンドの髪にオッドアイ・・・オッドアイ?

彼女がなにか思いつこうとする前に、
「ふんふん、右目と右腕の調子はいいみたいだな。いやー良かった。」
などと、言いつつ男は自分の両手をとって、
(・・・あれ?、右腕がある?)
「ところで、だ──あんた、俺の后にならないか?」



「──て、なんでやねぇぇぇぇん!!」
そこで夢が終わった。・・・嗚呼、すばらしきかなツッコミ魂
自分の声で目を覚ますとは・・・
「・・・あれ?」
ツッコミを入れた少女──八神はやてが目を覚まし最初に見たものは──
驚いた表情でこっちをみている槍の男と、何処かで見たような女だった

時間を少し戻そう

──時刻は午前一時過ぎ、大半の人々が眠る夜の街で、人知れず、戦う二つの影があった。
一つは青装束に朱い魔槍を持つ男、
もう一つは白い法衣に部分鎧、手には黒い槍とも杖ともつかない棒を握っている女。
戦いの内容は簡単だ、男が攻めて、女が流す、女が撃って、男が落とす
この繰り返しである。戦闘開始直後こそ、女──ナノハは宙に低く浮かび、
男──ランサーの槍を受け流しつつ、魔弾を飛ばしていたが、
死角を狙っても、不意をついてもランサーはすぐに叩き落とす。
埒が空かないと判断したのか、ナノハは地面に降り立ち、
棒から魔力刃を展開、接近戦に切り替えるがこれが不味かった。 
地に降り立つや否やランサーは、怒涛の攻撃を開始、
もう一度空に上がることを許さず、ナノハを地に釘付けにした。



宙にいたのなら、受け流し方次第で、どうとでもしただろうが
今いるのは、地面という相手の土俵、結果、ランサーの一方的な攻撃によって打ち倒される──
はずであった、彼女が「高町なのは」のままであったなら──

危なげながらもランサーの攻撃をなんとか凌ぐナノハ
しかし、矢張り徐々に追い詰められていき・・・
「これで、しまいだ!」
ランサーが詰めの槍を放ったとき・・・!
ナノハは何を思ったか棒から右手を離し──
「──!?」
ジャララン!という摩擦音を出しながら右腕を突き出して槍の軌道を反らし、
ゴッパッア!と、そのままランサーの顔面に拳をぶち込んだ。
たまらず後ろへ吹っ飛ぶランサー、ナノハそこへ間髪入れずに
「クロスファィヤー・・・」
周りの魔力スフィアを収束させ・・・
「・・・シュート!」
愛弟子の十八番のアレンジである、桜色の砲撃を叩き込んだ!

──さて、どうかな?

果たして、桜色の砲撃が晴れたそこには──
「いやいや、今のはかなり驚いたぜ。」
ランサー、未だ健在。体のあちこちは焦げたり煙がでてはいるものの、
本人は致命傷は受けていないようだった。
「──結構いいところに入ったと思ったんだけどなぁ・・・。それ、貴方のスキルですか?」
未だに構えたままだが、無表情を崩しナノハが聞く、それに応じるように、ランサーも、
「自分のスキルをばらす奴は居ねーよ。知りたかったらそっちのマスターに聞きな。」
「教えてくれたら、こちらも何か一つぐらい答えますよ?」
その言葉にランサーは少し考えて、
「・・・いいだろう。あんたの言うとおり俺には『矢除けの加護』があるんでな、
投擲武器は使用者が見えてれば、まあ、まず当たらねぇ。」
(・・・その割に今のが当たったということは、今のは投擲とみなされなかった。
ということだね。ということは・・・)
「つまりは、今のを凌いだのは別の方法ってことですか。」
いきなり妙なことを言うナノハに、しかしランサーは苦笑し
「・・・へっ、頭のいい女ってのはこれだから・・・、まあいい、今度はこっちの質問だ・・・」
「ランサーさん、鼻血出てますよ。」
ランサーの言葉を遮って、これまた変なことを言いだすナノハ
「お?おう。すまねえな。」
何だかよく分からないが鼻血を拭うランサーに

「・・・よし、ではこれで貸し借り無しですね。」
「はっ?」
間抜けな声をあげるランサーを余所に、再び戦闘を開始しようとするナノハ、
「い、いや、ちょっと待った!」
「・・・何ですか?」

慌てて呼び止めるランサーに、どことなく不機嫌な様子で応じるナノハ
「こっちの質問がまだ・・・」
「だから言ったじゃないですか、『鼻血が出てる。』と。」
「いや、あれは質問の答えじゃねえだ・・・」
「そっちだって、私の質問に答えてないじゃありませんか。」
「いや、矢除けの加護のこと、言っただr・・・」
「私は『クロスファィヤー・シュートを凌いだ方法はスキルですか?』って、聞いたんですよ?
ですが、貴方は関係ないスキルのことを話しました。
つまりは、私の質問には答えてない、ということになると思いますが?」
ランサーの言葉をことごとく遮り、さらには論破してゆく英霊ナノハ
「まあ、教えてもらったことは事実ですから、こちらも何か一つ、つまりは
『鼻血が出てる。』ということを教えたんです。分かりましたか?」
なかなか無茶苦茶なことを言うナノハに、しかしランサーは静かに──
「──貴様、何を待っている。」
そう言い放った。
「────」
苦い顔をし、沈黙するナノハにランサーは更に続ける。
「どうにもさっきから喋り過ぎだ、なぁ、おい、何を待ってるんだ?」
・・・実はランサーにとっては半ばハッタリなのだがはたしてナノハは・・・
「──やっぱり、口八丁は苦手だなぁ。」
引っ掛かかったようだ。しめた。とばかりにニヤリと笑うランサー
「いやいや、途中までは良かったと思うぜ。だが──最後のはくどい。」
ナノハは溜め息をついて、
「さっきのスキルの話から思っていたんですけど・・・貴方って以外に聡いですね。
・・・クロスファイヤーを防いだ方法、貴方の隠し玉とみましたが?」
敵に聞かなくても自分のマスター(はやて)に聞けば分かる疑問(ステータス)を、
聞く方も聞く方だが、言う方も言う方である。ということか。
「さあな。・・・さて、何かを待っていると分かった以上、決着を着けさせてもらう。」
そう言い放つと、ランサーは己が魔槍に魔力を込める、
(この魔力量は・・・ディバインバスタークラス?少ないような気もするけど、間違いなく宝具の発動!)
ナノハは発動させまじと、最速の弾速と発動スピードを誇るクロスファィヤー・シュートを使おうとし、


「──て、なんでやねぇぇぇぇん!」





はやてが目を覚ましたのはこの瞬間だった。

──英霊召喚による気絶からの予想外に速い覚醒に驚いたランサーと、
はやての覚醒を待っており、あくまで声に驚いたナノハ、先に硬直から抜けたのはナノハだった。
「──はやてちゃん!リイン連れて逃げて!リイン!はやてちゃんに分かる範囲で状況説明!」
「うぇ!?」
「はいです!はやてちゃん行きましょう!」
ツヴァイに急かされ、よく分からないまま走り去るはやて、そしてナノハは・・・
震脚一発、どっしり構え、両側面から背面にかけてカバーするように
「アクセルシューター・ファランクス!スタンバイ!」
都合、40程のスフィアを展開。最早遠慮はいらぬとばかりに、
「GO!」
攻撃を開始した。その時ランサーは見た、相手の右目は翡翠色を輝きを放っており、
右腕の鉄甲にはコンソールが現れ、こう表示されていた
『メインシステム戦闘モード起動します』と・・・
それは、先程自分の顔面に一発入れられたのと同じ状態だった。
疑問はあるが取り敢えずは、目の前の事態を打破するべく、ランサーもまた動く、
自らの間合いに入るべく、飛んでくる魔弾を魔槍で叩き落とし、
縦横無尽に地を駆けつつ、ナノハに接近するランサー
ナノハは空へ逃げようともせず、槍と化した棒──デバイスをランサーに向け迎え撃った。
そして──

ジャジャジャジャジャ!!
ランサーの繰り出す雨の様な突きのラッシュを、ナノハはその場から、一歩も動かず捌き始める!
それは先程の危うく、動作の大きい、受けとめたり、杖を振って弾く捌き方ではなく、
杖の柄を滑らせる様な、必要最小限の動作の捌き方だった、
ナノハの周りには捌かれたランサーの槍が着弾し道はどんどん抉れているが
二人は一向に構わず、静かな、しかし激しい攻防を繰り広げる、
もっとも、表面上はどうあれ 内心は二人ともお互いに舌を巻いていたのだが
例えばナノハは・・・
(目と手の補正と、バリアジャケットの防御があってやっと凌げる速度なんて!
・・・凄い通り越して呆れるね。)
そう、先程、必要最小限の動作で防御していると言ったが、
正しくは『出来うる限り最速の動作で捌いている』であり、
捌き切れない分は、バリアジャケット任せの状態で辛うじて無傷を保っている状態のナノハ。
一方ランサーも・・・
(突きは逸らして、払いは出させねぇってか?
おまけに護りは硬いときやがる、・・・おもしれぇ。)
先程から突きだけでなく払いも、攻撃に混ぜようとしているのだが、


払いの動作に移ろうとした出端に、相手の魔弾がこちらを襲うので、
いかに矢除けの加護があるとはいえ、下手に踏み込むと、体勢を崩され、
先刻の様な一撃をもらわないともかぎらない。

(さっきの程度の魔術ならどうとでもできるが・・・)
──おそらく、この相手にはまだ隠し玉がある。
それを出される前に勝負を着けたいところだが、
相手の防御は鉄壁。生半なことでは崩せない。
(──だが。)
しかしランサーはこうも思う
『鉄壁だが完璧ではない。』と・・・
相手はこちらが払いをしようとすると、攻撃を仕掛けてくる。
つまりは、相手は何故か、突きには強いが、払いには弱い。ということだ。
更にもう一つ、相手は宙に逃げずに、両側面から背面にかけて魔弾を準備した上で、
真っ正直からこちらに相対した。こちらに効率よく攻撃するため・・・
とも取れ無くはないが、自分の勘では、おそらくあの布陣は正面のみに、攻撃を限定させるため。
となれば、相手は側面から背面には、あの防御は出来ないのだろう
つまりは鉄壁どころか穴だらけの防御陣なのだが、しかし、それでもあれは完璧ではないが鉄壁だ
何故ならば、払うにしろ後ろに回り込むにしろ、あの魔弾の絶妙な布陣が防御の死角をカバーする。
よって、ランサーは突きのラッシュで相手の正面防御を上回ることに集中し、
幾度か穂先が相手を掠めているのだが、相手の衣服も、何らかの護りなのか、
捌かれ、勢いを殺された槍では、貫くことは許されない。
つまりは、魔弾、槍、衣服の三重の護りで攻撃を凌ぎ、
隙あらば魔弾もしくは槍で攻撃をする。
という戦闘スタイルか。


──自分の弱点を理解し、余程の修練を積まねば、この様な戦法、思いついても使えまい
ランサーは思う。『全力を出し尽くしたい。』と・・・
近接の技量と言う点ならば比べる迄もなく、自分の方が上手だろう。
しかしこの相手はその差を埋める戦略にて、自分と接近戦で渡り合っている。
『卑怯だ』とは思わない、何故なら自分の方が槍では強いのだから。
ならばその差を埋める努力をするのは当然、それで打ち倒されたなら・・・そのときはそのときだ。
だからランサーは思う。『この相手は死力を、全力を尽くして闘える相手だ。』と・・・
自分任務は諜報活動、その役目はもう果たした。ならば、あとは撤退すればいいだけなのだが。
この相手は楽しすぎる、まだ終わらせたくない。そう思っているうちに──逃げられちまった。


──ランサーの推測は的を得ていたが、ただ一つ戦闘スタイルにおいては、間違っていると言わざるを得ない。
この報告書を読んでいるものならば、知っているはずなので割愛させてもらうが、
彼女が地面で戦うこと自体が、なんらかの理由がある証であり、
ましてや、近接主体で戦うなど・・・とてもではないが、全力全開とはいえないのである。
まあ、それの理由は後で明かすとして──


戦闘の終了は唐突だ、今の今まで、打ち合っていた相手が『しまった。』という顔をした瞬間、
相手の周りにあった魔弾が一斉にこちらに殺到し、さらには
「・・・ッ、エクセリオォォンバスタァァァ!!」
と、いきなり大砲をブッ放してきやがった。
そして、こっちがルーンで咄嗟に凌いだときには、相手の姿は消えていた。
そして、消える前に頭のなかに響いた言葉──
「『ごめんね。』か・・・ったく、なんだってんだよ。」
一人立ち尽くしていたランサーだが、やがて何処かへ消えていった──


──右腕のコンソールには『フラッシュムーブ』の文字があり。吐き出す息はやや荒い。

──少し無茶だったかな。

しかし必要な行為だった、リインから入ってきた念話から、はやてちゃんの位置は分かっている。
なんでも、赤と青の騎士に、少年少女の四人組に攻撃を受けているという。

──リインをサーヴァントと間違えられたかな。

あり得る話だ、だいたい英霊をほぼ自力で召喚するほどの魔力を道端で使えば、
『ここに魔導師がいるぞ。』と、大声で言っているようなものだ、
(・・・あれ?こっちでは魔術師だっけ?というか、だから場所を移動させたんだったなぁ。
なのに移動させたところに鉢合わせするなんて・・・)

──相変わらず、運が悪い・・・と、あれだね。

見ればそこは公園で、確かに赤青二人の騎士と少年少女二人の合計四人が、
今にもツヴァイとはやてに攻撃をしようとしている。
(・・・いや、赤毛の男の子は、なんとか止めようとしてくれているのかな?)
──なら、
「まずは二体のサーヴァントを無力化したあと、話をきくべきだね。」
そう呟くと、ランサーとの戦闘で使っていた杖──デバイスを構え、
「ディバイン・・・」『神をも打倒す・・・』
呟くと同時にコンソールにも文字が流れる。
翡翠に染まった右目が目標を捕捉し、右目とのリンク機能を持った右腕が微細な誤差を修正する。


※ナノハのスキル『捕捉連動』
義眼と義手のリンク機能により右目で捉えたものならば、右腕に限り
たとえ至近距離からの弾丸ですら、掴めるほどのスピードと正確性を誇る駆動が可能
本来は精密狙撃用の機能だが、戦闘ではこのリンク機能を応用し、正面からの『点』の攻撃には滅法強い。


「・・バスター。」『・・凶桜』

言葉と、コンソールに文字が流れるのと同時に、桜色の光が生まれ、閃光が騎士達に迫る、
が、そこで青い騎士が気が付いたようだ、こちらに跳躍し、盾になるつもりか、しかしもう遅い。
桜色の砲撃は青い騎士を飲み込み──はしなかった。
「・・・えっ!?」
なんと、青い騎士に当たった側から、砲撃が弾き散らされていく。
(高ランクの対魔力!?成る程。リインじゃ、どうしようもないわけだ!)
こちらも攻撃手段の大半が封じられたわけだが、なくなったわけではない。
魔法が使えなかったり、通じない場合のための攻撃手段は持っている。
取り敢えずは、アクセルシューターで牽制しつつ、急ぎ、はやてと騎士達の間に割って入るナノハ、
「大丈夫?はやてちゃん!リイン!」
はやて達の安否を確かめつつ、油断なく騎士達と相対するナノハ、
取り敢えず相手と穏便に話をするべく言葉を考えるが、しかし──
「あ、はい。平気ですタカマチさん。」
この発言に、思わず腰砕けになってしまう。これには相手も一瞬固まった。
(『タカマチさん。』か・・、結構こたえるなぁ・・・っと。)
が、青い騎士だけはこの隙を逃さず、問答無用で切り掛かってきた。
ナノハはデバイスで受けとめようとするが、
「────え!?」
剣と噛み合った瞬間、デバイスがあっさりと破壊された。

※青い騎士──セイバーのスキル『魔力放出』
武器、ないし自分の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させる。
強力な加護のない通常の武具では、一撃の下に破壊されるだろう。


「────ふっ。」
「くぅ────。」
『ラウンドシールド』
デバイスを破壊した勢いそのままに、ナノハの首を狙うセイバー
ラウンドシールドを展開し、辛くもその一撃を受けるナノハだが、
そのあまりの一撃の重さに意識が飛びそうになる。
更に、今度は赤い騎士──アーチャーの矢がはやてを襲が、こちらはシューターでなんとか迎撃、
しかしこの行動が決定的な誤解を生んでしまう。
「やっぱり魔術師・・・最近の集団昏倒事件はあんたの仕業ね、キャスター!」「えぇ!?」
赤い服の女の子の言葉に驚くナノハ、慌て弁解しようとするが。聞く耳持たず、
「とぼける気?・・・ますます気に食わないわね。アーチャー、やりなさい。」
自らのサーヴァントをけしかけてきた。

「ああ、もう!」
(・・・でも、私も昔はこんなかんじだったのかな?)
(──結構余裕あるなぁ、タカマチさん。)
そこに、はやてからの念話が入る。
(はやてちゃん。空飛べる?)
(──駄目や。まだ魔力が回復してへん。)
(ツヴァイはもう限界だし・・・。取り敢えず時間を稼ぐけど、
無理だと判断したら魔力渡すから飛んで逃げて。)
(そんなことして、タカマチさんは、どうなります!)
(一人ならどうとでも出来るよ。それに・・・、ヴィータちゃん達はその身を犠牲に、
私を召喚したんだから、はやてちゃんを守り切らないと私の立つ瀬がないよ。
それに私はもう死んでる身だし、・・・だから、ね?)
(分かり・・・ました・・。)

はやてとの念話をすませると、こちらに向かっていたアーチャーの迎撃に入いるナノハ。
アーチャーはどんな手段か、手に二刀の刃を生み出し、白兵戦でこちらを仕留めにきた。
更に別の方向からは、セイバーも、キャスターと間違えられている今、
外道にかける騎士道は無い。ということか、
二方向からの剣撃を両の鉄甲と魔法で防ぐナノハ。相手のマスターにもシューターを飛ばすことで
サーヴァントの動きを抑えるが、それでも徐々に追い込まれてゆく。
──ナノハとて、伊達にエースオブエースや古■■ル■聖■家で、騎士団長を勤めてきたわけではない。
自分よりも格上の相手や、自軍より戦力で勝る相手との戦闘など五万とあった。
だが、彼女はそれを相手にしても一歩も引くことはなかった、
極限まで鍛えた近接での技能はそれでも、並の相手よりは上だが、やはり専門家には適わない。
だが、それを補って尚余りあるのは、圧倒的なまでの──空戦技能と砲撃魔法。
極端な話、一軍を送るより、彼女一人を送った方が効率が良い場合も多々あったのである。
(勿論、戦というものは一人で勝てるものではないのだが。)
そう、相手が並のサーヴァントで、戦場が空ならば、たとえ七体相手だろうと、
彼女は──勝利して見せただろう。
しかし、ランサーとの戦闘でも言ったが、ここは地面という、
英雄達がぶつかり合う、極当たり前の戦場。しかし大部分の英雄達がには当たり前でも、
遠い異界の空の英雄である彼女にとっては──門外漢な戦場であるといえる。
そしてなにより、先程並のサーヴァントと言ったが──ここが一番の彼女にとっての不運だが──
此度の聖杯戦争で呼び出された英霊はそのどれもが──あらゆる意味で規格外。
例え一対一で戦っても、『勝利出来る。』と、断言は出来ない猛者揃いである。
それが二体、加えて現在、魔力切れで空を飛ぶ事が出来ないはやてと、
既に限界のツヴァイを庇いながらの戦闘、いかな空では、並ぶ者などいない程の彼女でも、
セイバーやアーチャーの剣に、切り裂かれるのは時間の問題だろう。
──彼が現われていなければ、の話ではあったが。

セイバーにアーチャー、二つ──いや、三つの異なる太刀筋がナノハとはやてを襲う。
彼女の技量ではどちらか一方を捌くのがやっと、そして彼女は迷わずアーチャーの剣を──

はやてを護る方を選択した。
そしてもう一方には右腕を盾にする、おそらくこの義手なら数秒は保ってくれるだろう。
その間にはやてに魔力補給を行い──

「──おいおい、女一人に二人掛かりたぁ、それが英雄のすることか?」

遂に、最終手段を取ろうしていたナノハ、セイバーの剣が腕にめり込むその瞬間、突然声が掛けられた。
その場にいた全員がそちらを向くと──蒼の槍兵がそこにいた。