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調べ屋の報告書─英霊ナノハについて─その四 - (2008/12/09 (火) 07:39:50) のソース

英霊ナノハに関する第一回報告書第三次中間報告

制作者『調べ屋』アマネ

関連項目

ナノハとなのはの関係

『ナノハ』この名前が最初に出たのは、聖王統一戦争後期である。
それ以前の歴史には名前が出てこず、出現して十年の時を境に、一切名前が出てこない事から、
『幻の英雄』とも呼ばれており、実際僕もそう思っていた・・・
『高町なのは』の存在を識るまでは・・・


『ナノハ』と『高町なのは』は余りにも似ていた、『ナノハ』は数少ない伝承によれば
桜色の魔力光を持ち、一度砲撃を放てば聖王が持つ『聖王の鎧』すら撃ち抜いたという
言うまでもなく、聖王とは古代ベルカ時代の王であり、ベルカ自治区では今尚信仰の対象である。
そして古代ベルカといえば、知っての通り近接特化の術式である。(例外はいるが。)
伝承の記述「砲撃で撃ち抜いた」では、近接主体の古代ベルカに、
砲撃魔法の使い手がいたことになり、更には魔力量が低いとされる古代ベルカに、鎧を撃ち抜くほどの
大魔力容量の持ち主がいたことになる。これは魔力量が低い為、
それを補うためにカートリッジシステムをデバイスに装備したという
歴史を持つ古代ベルカでは考えづらく。
よしんば居たとしても、何故砲撃魔法を使っていたのかが分からない。結局僕はこの調査を保留にしていた。
だが、新暦75年、いわゆるJS事件で興味深い事が分かった。
その事件で聖王のクローン体である。『ヴィヴィオ』が聖王と化し、聖王の鎧を発動させたが、
そのヴィヴィオの仮の母、『高町なのは』が聖王の鎧を撃ち抜き、ヴィヴィオを助けたというのだ。
高濃度のAMF下での聖王の鎧を撃ち抜く程の大出力砲撃、
しかも、高町『なのは』の魔力光は桜色だという、更に『ナノハ』には
『聖王の義母』の名でこの時代に伝わっている。
僕はこの奇妙な一致に興味を覚え、調査を見直すことにした。
まさか数百年も後に、この報告書が役にたつとは思わなかったが、
いや、人間長生きはしてみるものである──。


──真夜中の公園、どことなく危ない雰囲気が漂うこのフレーズだが、
今現在、それは紛れもなく真実であった。何しろ──霊長の守護者達が四体、一堂に会しているのだから。
「へへっ。楽しそうなことやってるじゃねぇか。」
そう言うのは蒼い槍兵──ランサーである。手には既に朱い魔槍──ゲイボルクが握られており、
その気になれば、直ぐにでも戦闘を始められるだろう。


「──何用ですか、ランサー。」
相手を仕留められるところを邪魔された為か、不機嫌を隠そうともせず、ランサーに問うは、
同じく蒼装束の女騎士──セイバーである。
その傍らにいる赤い外套の騎士──アーチャーと、
ランサーが声を掛けセイバーの動きが止まった瞬間、一気に間合いを放した
白い外套の女──ナノハは共に無言で出方を伺っている。
「いやなに、そこの白いのと、さっきまで殺りあってたんだが──」
そんな不機嫌はどこ吹く風とランサーは続ける。
「途中で逃げられてな、気になって探してたんだが、
・・・そうかマスターの危機だったか。それなら納得だ。
主を守るのはサーヴァントの務めだものな。・・・さて、今度はこっちの質問に答えてもらう。」
それまでの飄々とした雰囲気は消え去り、
「さっきも言ったがよ、──女一人に二人掛かりとは何事か。」
一変して厳しいものになる。
「その女、侮れないのは事実だ、しかし主の身を第一に考え、己が身を犠牲にすることも厭わぬ
紛れもない英雄に対し、二人掛かりで挑むとは・・・、セイバーのクラスも堕ちたものだな。」
「黙りなさい。紛れもない英雄?無関係な街の住人を犠牲にするような外道がか?
・・・ランサー、貴方は誤解している。このような外道に払う敬意などはありません!」
侮蔑の言葉を切って捨てるセイバー、その言葉に大体の合点はいったが、しかしランサーは敢えて語らず
「・・・そうか、だが二対一とは、やはり気に食わん。俺はナノハにつかせてもらう。」
「・・・そうですか。クー・フーリンとも在ろう者が、
その様な外道に肩入れするとは・・・正直、幻滅です。」
「ふん、どうとでも言え。」 
共に言葉は尽き、最早語るは魔槍と聖剣のみである。
「────鋭ッ!」
「─────応!」
──そして、蒼の英雄は同時に地を駆けた──



一方こちらは外套の英雄──アーチャーとナノハである。
二人は共に無言のままだがナノハには青筋が、アーチャーには冷や汗が
額にくっきりと浮かび上がっていた。
「────」
「────」
「──────」
「──────」
「────────」
「────────」
(なんなのだ、この息苦しさは!)
(アーチャー、あんた何とかしなさい。)
(なっ、バカな凛、君は噴火しかけている火山にむかって火をくべろと!?)
(いいから、このままじゃこっちの心臓が保たないわ。)
そう言われると、アーチャーとしては話し掛けるしかない。


「(──よし。)あー、キャスター。」
「──うん?なにかな?」
恐る恐る話し掛けるアーチャーにナノハは物凄く良い笑顔で応えた。
「こ、こちらもそろそろ始めないか?」
おもいっきり腰が引けてるアーチャーの提案に、ナノハはやけに上機嫌に笑いながら
「フフフ、そうだね。そっちを無力化した後でランサーさんに抗議することにしようか。」
・・・訂正、上機嫌ではなく怒り狂っているようだ。
口調まで変わって(というより素になって)いる。
だがアーチャーはこの言い草が気に障ったのか
「──ほう、軽く言ってくれるな。ならばその自信、試させてもらっても構わんな?」
「試すも何も、先に問答無用で切り掛かってきたのはそっちでしょ。」
さっきの態度は何処へやら、アーチャーはすっかり元の調子を取り戻す。
「成る程。先程のいきなりあのような魔術を放つのは
問答無用とは言わないのか。いや、一つ賢くなったな。」
「自分のマスターがサーヴァントに囲まれていたら、普通は撃つと思うけどなぁ。」
「「・・・・・・・・・。」」
そこで二人は口を閉じ・・・
「─────覇ァ!」
「─────疾ッ!」
魔弾と矢の応酬を開始した!


──ちなみに先程ナノハが額に青筋を浮かべていたのは──
(──ランサーさん?)
(──ん、おうナノハか。これ(念話)、便利だよな。)
(さっきのはどういう事かな?)
(・・・さっきのって何だ?)
(だから、何で誤解を解いてくれなかったの!)
(それは・・・アレだ、そこまでする義理は・・)
(この戦いに乱入してきた時点で
『義理は無い』なんて言い訳通ると思う?)
(・・だってよぉ、教えないほうが面白いじゃねぇか。)
(こっちはマスターの命が掛かってるんだけど?)
(ああ、もう始めるから、またな。)
(ちょっと、ランサーさん!?・・一瞬でも感謝した私がバカだったのかな・・・。)
──などという念話があったからである。いやはや。



──朱い魔槍に不可視の聖剣、駆ける色は共に蒼。
絶え間なく繰り出される朱い軌跡は、令呪の縛りが取れた現在、
最早英霊にすら視認するのも困難な速度である。
対する不可視の聖剣はそのことごとくを防ぎ切る。だが、先の傷と槍の高速化、更には──
「───ッ!」

ガゴン!

やおらセイバーは向きを変え、飛んできた岩石を打ち砕く。
・・・そう。このように、ときたまナノハからの攻撃がくるのである。
最も・・・
「───っとぉ!」
それはランサーも同じくことなのだが。
お互い妨害を受けながらも戦闘は加速していく──



──己のマスターを守るため、足を止めての射ち合いを競う二体のサーヴァント、
それは早撃ちと、精確無比な撃ち落としの連続であり、もし撃ち落とし損なえば、
言うまでもなく串刺しになること請け合いである。
だが二体の英霊はここに来てある疑問を持ち始めていた。つまり、
(この女・・・タカマチ、タカマチか・・・ふぅん、)
(なんかあの・・刀?に見覚えあるなぁ・・・この人、)
『何処かで会ったか(っけ)?』
である。疑問は未だ溶けないが、魔弾と矢の応酬は続く──
その中で、ナノハの右腕のコンソールだけが怪しげに光を灯していた。



「───おっと!」
ランサーは飛んできた魔術を打ち払う。
その間に体勢を立て直したセイバー、都合何度目かの光景だ。


──ランサーへの攻撃はアーチャーのマスター──遠坂凛の物である。
ランサーのスキル゛対魔力゛のランクはC、未だ未熟なツヴァイには、渾身の力を籠めなければ、
通らないが、遠坂凛ならば多少面倒だが、少し大掛かりな魔術を使えば、
十分突破出来るレベルである。しかも味方のセイバーの゛対魔力゛のランクはA、
遠坂凛に限らず現代の魔術師では、天地が引っ繰り返ろうが、
セイバーには魔術では傷一つ付けられないため、何の遠慮も不要ずに攻撃魔術での支援が出来るのだ、
対するナノハはランサーの位置を考慮して援護しなければならない
この差が、危ういところで戦闘を膠着状態に保っているのであった──。


(くそッ!つまんねぇ戦いだ。)
(──・・・ランサー、さん。)
(何だ?こっちは今忙しい・・・)
(共同戦線、張らない?)
(あん?)
(見たところ、あっちは攻撃こそしてないけど、
どうやら完全に手を組んている訳じゃないみたい。
こっちと同じ状況、というわけだね。)
(・・・いいぜ、続けろ。)
(そっちの目的は多分情報収拾でしょ。根拠は、あの時貴方は『八人目のサーヴァント』って言ったよね。
つまり、貴方は私と会った時点で、他の全サーヴァントと会っている事なるし、
今だって、一向に宝具を使おうとしない。つまりは勝負を付ける気が無い。
そして、今の情報収拾の対象は私でしょう?何しろ、ついさっき召喚されたんだからね。)
(・・・正解だ。で?共同戦線を張るこっちの利点は?)
(私の隠し玉を見せることと──魔力供給、じゃあダメかな?)
(・・・魔力供給は魅力的だがまだ足りんな。)
(むっ、失礼だね。・・・じゃあ、この目の詳細を。)
(・・・よし、いいだろう。だが、そっちの利点は?)


(・・・あまりのんびり戦っていると、こっちマスターが風邪をひいちゃうからね。)
(は?、・・・さっきから随分マスターを気にしているが・・ひょっとして、生前の知り合いか?)
(──さて、女性の過去を詮索するのはマナー違反だよ?──じゃあ。)
それでランサーとの念話を切ると──
「──ビット・・・。」
『オプションビット』
先程から準備していたビットを打ち出した、それはアーチャーを掻い潜り・・・
相手のマスター、衛宮士郎と遠坂凛を──
「バインド、空中へ。」
「「!?」」
「──!?、シロウ!」
捕縛し、空中へ持ち上げた。
「くっ、おのれキャスター!」
「別に危害を加える気はないよ?今のところ、だけどね。」
いきり立つセイバーを尻目に、いけしゃあしゃあと言い放つナノハ
その両脇に先程『ビット』と呼んだ物が一つずつ、ゆっくりと並んだ。
「なんだ?その変なのがお前の隠し玉か?」
「うん、オプションビット。私の切り札の一つだよ。」
金色の二等辺三角の中心に紅い玉の入った(つまりはブラスタービットと同じ意匠)
小型兵器を従えた堂々たるその姿には、僅かだが確かに『英雄』に相応しいモノが見てとれた。 それは『高町なのは』にはなかったもの、自身に対する絶対の自負──。
「さあ、仕切り直しだよ。」
マスターを気にする必要が無くなった今、ここからが本当の勝負といったところだろう。
「・・・少し頭冷やそうか。」
今、四体のサーヴァントが激突する──。