綿月依姫は期待と不安を同時に抱いていた。長年慕い続けた自分の師匠との対戦。
自分がどこまで八意永琳に通用するかという期待と、そして、
自分がどこまで八意永琳に通用するかという期待と、そして、
「八意様のお教えが、大した教養の無い村人に理解できるのかしら……?」
という不安である。
とはいえ勝負は勝負、手を抜いては失礼であろうと、依姫もまた村人の家へ家庭教師に向かう。
今回の勝負は家庭教師、各対戦者が人里の村人3人の家へ向かって教え、
それを2週間続けて、その成果で勝負するもの、
教えた内容が難しければ難しいほど勝負の評価にはプラスされるが、教わった村人がそれを習得できなければ評価にはならない。
ちなみに教わる村人は、全員大の大人が選ばれている。
とはいえ勝負は勝負、手を抜いては失礼であろうと、依姫もまた村人の家へ家庭教師に向かう。
今回の勝負は家庭教師、各対戦者が人里の村人3人の家へ向かって教え、
それを2週間続けて、その成果で勝負するもの、
教えた内容が難しければ難しいほど勝負の評価にはプラスされるが、教わった村人がそれを習得できなければ評価にはならない。
ちなみに教わる村人は、全員大の大人が選ばれている。
依姫が選んだ教科は「防犯・防災」だった。何を教えるかは自由と言われたのだから問題は無い。
自分の得意分野であり、また、日夜野生の獣や天災、妖怪の脅威に関わる村人にとっても馴染み深いジャンルだ。
事実、村人たちはよく学んだ。座学から実技までみっちりと教える依姫に反抗することも無く、
素直に話を聞き、時にはわからないところを問いただし、依姫の教えを存分に吸収した。
途中、座学の難しいところで詰まるところもあったが、そこは依姫がその都度機転を利かし、
具体的な人里と妖怪の関係を例え話に挙げることでわかりやすく説明し、丁寧に教えを進めていった。
……その時間に、依姫自身もまた充実感を覚えていた。
サボりがちな月の兎とは違い、彼らは熱心に自分の教えを受けてくれる。
そしてその成果が如実に現れる。
それも当然で、幻想郷の人間と月の兎では、防災に対する意識が格段に違う。
片や、生存競争を余儀なくされた穢れた土地に住む人間、片や、争いなど滅多に起こらぬ土地に住む、穢れを知らぬ兎。
意欲に差が出るのは、当然の結果だと言えた。
自分の得意分野であり、また、日夜野生の獣や天災、妖怪の脅威に関わる村人にとっても馴染み深いジャンルだ。
事実、村人たちはよく学んだ。座学から実技までみっちりと教える依姫に反抗することも無く、
素直に話を聞き、時にはわからないところを問いただし、依姫の教えを存分に吸収した。
途中、座学の難しいところで詰まるところもあったが、そこは依姫がその都度機転を利かし、
具体的な人里と妖怪の関係を例え話に挙げることでわかりやすく説明し、丁寧に教えを進めていった。
……その時間に、依姫自身もまた充実感を覚えていた。
サボりがちな月の兎とは違い、彼らは熱心に自分の教えを受けてくれる。
そしてその成果が如実に現れる。
それも当然で、幻想郷の人間と月の兎では、防災に対する意識が格段に違う。
片や、生存競争を余儀なくされた穢れた土地に住む人間、片や、争いなど滅多に起こらぬ土地に住む、穢れを知らぬ兎。
意欲に差が出るのは、当然の結果だと言えた。
そして2週間が過ぎ、結果発表の日。
依姫が教えた生徒たちは立派にその結果を出した。教えた依姫からすれば、満点をあげてもいい出来だったと言える。
そして一方の永琳だが、こちらは「薬学」を教えていたらしい。そして、その教えた生徒はと言うと、
依姫が教えた生徒たちは立派にその結果を出した。教えた依姫からすれば、満点をあげてもいい出来だったと言える。
そして一方の永琳だが、こちらは「薬学」を教えていたらしい。そして、その教えた生徒はと言うと、
「ウヒヒヒヒ、ハイテンション時に脳内にて発生する薬物に一定量の電気的刺激を与えることで五感を超越した第七感をウヒヒヒヒ」
「え、え、え、永琳様の作られたこのお薬を傷口に塗布するだけで我々は新たな器官を生み出す可能性を……」
「うっぷえっぷ、蓬莱の薬には新たな可能性が、この1UP菌糸類と混ぜてこねて焼成すれば前世への扉が、ぐぇーっぷ」
「え、え、え、永琳様の作られたこのお薬を傷口に塗布するだけで我々は新たな器官を生み出す可能性を……」
「うっぷえっぷ、蓬莱の薬には新たな可能性が、この1UP菌糸類と混ぜてこねて焼成すれば前世への扉が、ぐぇーっぷ」
八意永琳最先端の知識、それをこの3人は存分に教え込まれていた。
言ってることは永琳以外の人間にはさっぱり理解できないが、審査員のさとりが「嘘はついてないし、永琳も正解だと考えている」
と証言したことで、3人の知識は正しいとされた。
流石八意様だ、と依姫は感服した。理解の難しい薬学を、2週間でここまで教え込むなんて。
だが、ここでひと悶着あった。人里PTAのオカーサマがたが騒ぎ始めたのだ。
生徒たちの様子がおかしい、家庭教師の最中に一服持ったのではないか、もしくは重度のシゴキでもやったのでは。
全く度し難いことだ、と永琳と依姫は同時にため息をついた。何の証拠も無いのに、自分たちが正しいと信じて疑わない。
これを黙らせたのは当の二人ではなく、審査員の一人、上白沢慧音であった。
言ってることは永琳以外の人間にはさっぱり理解できないが、審査員のさとりが「嘘はついてないし、永琳も正解だと考えている」
と証言したことで、3人の知識は正しいとされた。
流石八意様だ、と依姫は感服した。理解の難しい薬学を、2週間でここまで教え込むなんて。
だが、ここでひと悶着あった。人里PTAのオカーサマがたが騒ぎ始めたのだ。
生徒たちの様子がおかしい、家庭教師の最中に一服持ったのではないか、もしくは重度のシゴキでもやったのでは。
全く度し難いことだ、と永琳と依姫は同時にため息をついた。何の証拠も無いのに、自分たちが正しいと信じて疑わない。
これを黙らせたのは当の二人ではなく、審査員の一人、上白沢慧音であった。
「勝負は極めて公正公平に行われた、それは私の閲覧しうる歴史にかけて間違いは無い。
確かに八意永琳から生徒たちへの『差し入れ』はあったが、それはあくまで人体に有害にならない程度の栄養ドリンクの類でしかない。
何より、彼ら生徒たちは村人たちへの規範として、熱心に教えを受けてきた者たちばかりだ。
確かに教えを受けることは、時として苦痛を伴うものだ。だが、それでも教えを身に着けたのは彼ら自身の意思の強さによるものだ。
その努力と成果を貶めることは、何人であっても許されはしない」
確かに八意永琳から生徒たちへの『差し入れ』はあったが、それはあくまで人体に有害にならない程度の栄養ドリンクの類でしかない。
何より、彼ら生徒たちは村人たちへの規範として、熱心に教えを受けてきた者たちばかりだ。
確かに教えを受けることは、時として苦痛を伴うものだ。だが、それでも教えを身に着けたのは彼ら自身の意思の強さによるものだ。
その努力と成果を貶めることは、何人であっても許されはしない」
鶴の一声であった。あまりに堂々と、真摯にPTAに立ち向かう慧音。
その姿に他の村人や生徒たちも同調したことで、場が一気に慧音に賛同する流れになった。
PTAも何度か反論の声を上げるものの、慧音の理論的な回答によってたちまちやりこめられてしまい、
ついに、その場で反論する者は誰もいなくなった。
こうして、家庭教師対決の結果は無事に、八意永琳の勝利と相成った。
永琳はその結果に満足げにうなずきながら、禁忌の知識を手に入れた生徒たちに忘却薬の注射を打っていったのだった。
その姿に他の村人や生徒たちも同調したことで、場が一気に慧音に賛同する流れになった。
PTAも何度か反論の声を上げるものの、慧音の理論的な回答によってたちまちやりこめられてしまい、
ついに、その場で反論する者は誰もいなくなった。
こうして、家庭教師対決の結果は無事に、八意永琳の勝利と相成った。
永琳はその結果に満足げにうなずきながら、禁忌の知識を手に入れた生徒たちに忘却薬の注射を打っていったのだった。
後日、永琳の勇姿に感銘を受けた依姫の、月兎たちへの指導はいっそう厳しいものへと変わり、
また寺子屋での慧音の頭突きの音がいっそう大きくなったのは、また別の話である。
また寺子屋での慧音の頭突きの音がいっそう大きくなったのは、また別の話である。