(焦げた靴下をゴミ袋に投げ込んでいく小太りの男) この物語はフィクションです。 実際の団体、個人、政庁当局とは一切関係が…って夜星! ビデオは駄目だって言って… (砂嵐になる画面) ―とある猫士からのテープ /*/ レンジャー連邦政庁禄外伝 狩人狩り1~胎動~ /*/ レンジャー連邦、政庁の長い廊下を一人ぶらぶらと歩く小太りの男。 男の名は、青海 正輝と言った。 イカにもツマラナイと言った風情を漂わせながら欠伸などかましつつ窓の外を見る。 外では浅葱 空がこの国には珍しいメイド服をこれ以上無い程ばっちりと着込み広い中庭に洗濯物を展開している。 その中の小さな純白を見つめ恍惚とした表情を浮かべる青海。 ―イカんイカん。 頭を振る青海。 匂いも何もない靴下に反応してしまうとは。 青海は迷っていた。 愛だ…。 青海は愛に迷っていた。 「イカか…靴下が…それが問題か。」 独白する。 台詞の内容とは裏腹にど真剣の青海。 その背中には男の哀愁とゆーかなんとゆーか影すら背負うように見える。 ふぅとため息。 試してみるか…己を。 /*/ その頃、同じ政庁の一室で吏族室の椅子に座る楠瀬。 口は組んだ両手で隠され、目は光を反射した眼鏡で遮られその表情を伺う事が出来ない。 「嫌な臭いだ。けがれた趣味に心を奪われた男の臭いだ。」 いつのまにか背後に立っていた蝶子が楠瀬に歩み寄る。 「また…現れたの?」 「これから現れるのでしょう。奴らは決して消える事は無い…。忌々しい事に。」 蝶子は歩きだす。 その手には一枚の黒い紙が握られている。 「どこへ行かれるのですか?狙われているのは貴女なのですよ?」 振り向く蝶子。 何を当たり前の事をと言わんばかりに告げる。 「闇があれば光があるように。冬の終わりが春であるように。奴らが現れるその時に、私たちは現れる。」 謡うように告げる蝶子。 「それは乙女の心を護るその為ににれの樹の枝葉の下から現れる最終防衛機構。乙女の守りの守りの守りの守り。奴らが現れるその時に対応して現れる一つの心。」 蝶子は歩きだす。 「風紀委員会を召集します。楠瀬、指揮を。敵は恐らく青い正義です。」 /*/ 青空の下。 政庁の端。 少し高く作られた物見台の上で青海は歌っている。 ―イカタコイカイカイカイカナ サイボーグであるその身を揺らして。 ―イカイカタコタコイカイカナ なんて事の無い日常の1コマ。 ―オゲィロコモコオメツミレ 愛を歌うにはいい日だと涙を流しながら。 ―イカイカイカイカイカイカナ イカナから靴下へ。 崇拝対象が移るその時に決まって流れる涙。 変わる自分が悲しいのか、それとも故郷に帰りついた歓喜の涙なのか。 纏っていたマントを掴み、宙に放り投げる。 その下から現れたのは黒いタキシード。 驚くほどに白い化粧に深紅のルージュ。 ニィィと口を歪ませ勢い良くズボンに手を突っ込む。 だしたその手には一つの靴下。 まるでイカナのような赤。 それを迷う事無く顔にあてがう青海。 動きが止まり膝から崩れ落ちる。 瞬間、ガクガクと首を揺らし始める青海。 噴水のようなアーチを描く鼻血。 太陽の光で浮かび上がる虹。 「フッフフフフフフフッハーッハッハッハハハハハハ!!」 顔を押さえ狂ったように笑いだす。 「さあゲームの始まりだ。」 /*/ 「駄目です!第三次防衛ライン、易々と突破されました!!」 「対I=D用機雷も通用しません!敵ハンター尚進軍中です!!」 歯噛みする楠瀬。 「…化け物め。」 /*/ 爆発、爆発、爆発。 閃光と爆音。 上がる土煙。 火薬の臭い、巨大な音。 「結界か。」 舌打ちするソックスブルージャスティス(青海ではない(本人談))。 辛うじて目を閉じる事で閃光を回避したものの衝撃で巻き上がる砂塵と爆発音によって視覚と聴覚がまともに働いていない。 「しかし…風紀委員が動いているな。このやり方は…楠瀬か!」 とするなら恐らくこの機を見逃すはずが無い。 必ず畳み掛けてくる。 ソックスブルージャスティス(青海ではない(本人談))は移動を開始する。 視覚も嗅覚もあてにはならなかったが、ハンターとして鍛え上げられた嗅覚は、目的地を色鮮やかに指し示していた。 一流のハンターは3キロ先の靴下すら嗅ぎ分ける。 土煙を抜ける。 拓かれる視界。 刹那、更なる爆発、爆発、爆発。 上がる砂煙。 すでに機雷群は抜けたはずだ。周囲の臭位に気を向ける。 この臭いは…。 「砂浜 ミサゴか!」 上がる砂煙が収まり、少しづつ聴覚も回復する。 「久しぶりね。ソックスブルージャスティス。」 両肩にロケットランチャーを構えるミサゴ。 「一年ぶりか…。」 セクシーポーズを取るソックスブルージャスティス(青海ではない(本人談))。 「会いたかったわ。一年前からずっと。あの屈辱、忘れてないですよ。」 弾の切れた左肩のロケランを投げ捨てる。 「なかなかの良い靴下だった。」 真顔で腰をグラインドさせるソックスブルージャスティス(青海ではない(本人談))。 「…死になさい。」 ロケランから放たれる4基のミサイル。 上がる爆発。 この程度で仕留められる奴ではない事をミサゴは知っていた。 弾の切れたロケランを投げ捨て、跳躍するように駆け間合いを詰める。 煙の中からくないのように飛んでくる無数の装甲靴下。 ミサゴはそれをスライディングをするように全弾回避。 勢いを殺す事無く間を詰める。 その手にはいつのまに出したのか二丁のルガー941。 晴れる砂煙。 突き付けられたルガー。 ―0距離!殺った! 激発。 響く銃声。 貫かれるスーツ。 「あと一歩。足りなかったな。」 上空から響く声。 上を見るミサゴ。 びきにぱんつ一つで回転しながら落下するソックスブルージャスティス(青海ではない(本人談))。 いや、ネクタイも残っている。 涙目になるミサゴ。 ソックスブルージャスティス(青海ではない(本人談))の右足に燦然と輝く赤い靴下(7ヵ月物)。 ミサゴの顔面に決まるそっくすきっく。 臭いやら光景やらでミサゴの意識は遠退いていく。 「この…へん…たい…。」 にやりと笑うソックスブルージャスティス(青海ではない(本人談))。 「最高の誉め言葉だ。」 勝利のセクシーポーズ。 余計なものを省いたため色気は120%にアップしている(当社比)。 高速でグラインドする腰。 ソックスブルージャスティス(青海ではない(本人談))はミサゴの靴下を奪うと走りだす。 狙うは藩王の靴下一つ。 ソックスブルージャスティス(青海ではない(本人談))の戦いはおわらない。 まだ、覚醒は始まっていない…。 つ・づ・く! NEXT→レンジャー連邦政庁禄外伝 狩人狩り2~覚醒~ (文責:双樹真)