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文族には魔法がある。 それは言の、葉により蓄え、舌にて開く、言い換えという名の、 古い、古い、魔法だった。 /*/ 一輪の薔薇を摘み持つ。 刺は柔肉にぷちゅりと皮の弾けた感触を伝えている。 ある者は馬鹿馬鹿しそうに言った。 そんなものを見せびらかして、どうしようというのだね。 また、ある者は慌てて言った。 大丈夫ですか、痛くはありませんか。 いずれも二の句はそのまま同じ。 そんな花など、持たなければいいのに。 けれど、諸君、と、 その文族は楽しげに言った。 薔薇は蕾か、真紅か、白か、 見せぬ限りは誰にも解らぬ。 これが未来というものだよ。 /*/ T15と私。:或いは私と…… /*/ 幾つものポートレイトが並んだ、棚の上、 眺めれば何ともつかない微笑みが生まれるのは、 掛かった労苦を思ったからだろうか。 これは編成の時。ああ、まったく、何度やってもキリがない。 みんなで書類を広げて、やいのやいのと、検算をしている時の光景だ。 いつも一人で始めるけれど、最後は絶対一人じゃない。 振り返ると、それが妙に印象に残ってて、嬉しかった。 これは外交か。 終わった後に、駆け足で仕事場に戻ることもあるが、 大抵は、下らない世間話でちょっと一杯引っ掛ける。 人見知りをして気が重くなることもあったが、 ひょんなことから知遇が増える、あの突飛感には、 面白みがなくもない。 もっとも、懐かしんでいるからこその感慨で、現在進行形の時には、 たはー、と、困り笑いが口から漏れるのだが。 会議は、色々やったな。見ればすぐ、そうとわかる。 一番、人の数が多くて、一番、楽しそうにしている。 細かいところを詰めるのは面倒だったけど、うん、 立派なものが、その分だけ出来た。 どれも、変わらない日常だ。 その中に一枚、目新しい、青い髪の立ち姿が紛れ込んでいた。 思うに、「それ」を意識し始めたのは、この時だ。 /*/ 過ぎ去った日のことを思うと、 同時に、どうしても浮かんでくる事柄がある。 それは、決して訪れないという意味で過去に等しい時間で、 それは、自分がいなくなった日々のことだ。 考えれば、ほんの少し、寂しさが胸を刺す。 春の日の戯れにふと見た、うたた寝の夢の、 一人、巨大な玉座で愛の永遠を謡い立っていた彼女を思う。 結局のところ、私にとって、ターン15とは、 或いは私と世界の終わりの彼方で詠う彼女の、 未来についての始まりと、薔薇の蕾を眺めながらに、思うのだ。 この薔薇は、どんな花を咲かせるだろうか。
文族には魔法がある。 それは言の、葉により蓄え、舌にて開く、言い換えという名の、 古い、古い、魔法だった。 /*/ 一輪の薔薇を摘み持つ。 刺は柔肉にぷちゅりと皮の弾けた感触を伝えている。 ある者は馬鹿馬鹿しそうに言った。 そんなものを見せびらかして、どうしようというのだね。 また、ある者は慌てて言った。 大丈夫ですか、痛くはありませんか。 いずれも二の句はそのまま同じ。 そんな花など、持たなければいいのに。 けれど、諸君、と、 その文族は楽しげに言った。 薔薇は蕾か、真紅か、白か、 見せぬ限りは誰にも解らぬ。 これが未来というものだよ。 /*/ T15と私。:或いは私と…… /*/ 幾つものポートレイトが並んだ、棚の上、 眺めれば何ともつかない微笑みが生まれるのは、 掛かった労苦を思ったからだろうか。 これは編成の時。ああ、まったく、何度やってもキリがない。 みんなで書類を広げて、やいのやいのと、検算をしている時の光景だ。 いつも一人で始めるけれど、最後は絶対一人じゃない。 振り返ると、それが妙に印象に残ってて、嬉しかった。 これは外交か。 終わった後に、駆け足で仕事場に戻ることもあるが、 大抵は、下らない世間話でちょっと一杯引っ掛ける。 人見知りをして気が重くなることもあったが、 ひょんなことから知遇が増える、あの突飛感には、 面白みがなくもない。 もっとも、懐かしんでいるからこその感慨で、現在進行形の時には、 たはー、と、困り笑いが口から漏れるのだが。 会議は、色々やったな。見ればすぐ、そうとわかる。 一番、人の数が多くて、一番、楽しそうにしている。 細かいところを詰めるのは面倒だったけど、うん、 立派なものが、その分だけ出来た。 どれも、変わらない日常だ。 その中に一枚、目新しい、青い髪の立ち姿が紛れ込んでいた。 思うに、「それ」を意識し始めたのは、この時だ。 /*/ 過ぎ去った日のことを思うと、 同時に、どうしても浮かんでくる事柄がある。 それは、決して訪れないという意味で過去に等しい時間で、 それは、自分がいなくなった日々のことだ。 考えれば、ほんの少し、寂しさが胸を刺す。 春の日の戯れにふと見た、うたた寝の夢の、 一人、巨大な玉座で愛の永遠を謡い立っていた彼女を思う。 結局のところ、私にとって、ターン15とは、 或いは私と世界の終わりの彼方で詠う彼女の、 未来についての始まりと、薔薇の蕾を眺めながらに、思うのだ。 この薔薇は、どんな花を咲かせるだろうか。

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