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レンジャー連邦回顧録~春だ!花見だ!宴会だ!(中編)~」 から 次の単語がハイライトされています :


素材が大きい場合、低い温度でじっくりゆったり長時間かけて揚げましょう。

―料理読本『美味しいから揚げの作り方』より抜粋
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レンジャー連邦回顧録
~春だ!花見だ!宴会だ!~(中編)
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政庁外れ。武道場。
目をつぶり正座をして相対するアスカロンとドランジの横で、同じく正座をする豊国が目を白黒させながら体を揺らしている。
三人が瞑想を始めてすでに3時間が経過している。

―は…はぅ…このままじゃボクの足が持たないよ…

自称、剣神族のアスカロンならばなにか面白い神話や伝承を知っているのでは無いかと話を聴きに来たのだが…
豊国はうなだれる。

―いつまで続くんだよぅ…

相変わらず二人は微動だにしないまま向かい合っている。

ちゅどーん

遠くから聞こえる爆音に軽く揺れる地面。

「敵襲か…?」

ドランジがすぅと目を開き立ち上がる。

「あの方向は…中庭?」

いつの間に開いたのかアスカロンが開いた襖の先に見える遠い黒煙を見て呟いた。

「中庭…みたいだね…」

足が痺れたまま立てない豊国が手を付いて黒煙を見る。

「アスカロン。君はアメショーを。私は流星号で出る」

ドランジの言葉にアスカロンは頷いてハンガーへ走り出す。

「えっ?えっ!ちょ…ちょっと!」

びりびりびり
敵襲かもしれない爆発に対応しようとするが、立てない豊国。

ドランジはその様子に軽く微笑んで豊国を椅子に座らせる。

「動けるようになったら君も頼む」

軽く豊国の頭を撫でて走り出すドランジ。

「えーと…」

呆然としつつ、痺れる足を気にしながら誰も居ない武道場を見渡す豊国。

がらがらがら

「こんにちはー」

武道場の扉が開き、一人の金髪の美少年が現れる。

「ハニー君?」

「こんにちは。ミロさん」

そういって周りを見渡すハニー。

「ドランジさんに一手ご教授していただこうかと思ったんですが…
えーと、お一人ですか?」

ドランジ、という単語に先程の爆発を思い出す豊国。

「いや、それがね、なんか爆発がちゅどーんで敵襲が!」

その言葉にふわりと笑うハニー。

「あぁ。それならさっき双樹さんが…」

ずどどどどど

「おっ花見にゃー!!」
「きゃぁぁぁぁあ!!」

ずどどどどど

駆け抜ける白と黒。

「…お花見?」

お花見と爆発が結び付かずに首を傾げる豊国。

「まぁそーゆーことです」

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政庁会議室。
砂浜ミサゴと楠瀬藍が向かい合うように帳簿とにらめっこしている。

「中々上手くいきませんね…」

楠瀬が眼鏡を外し眉間を押さえる。

「国庫も最近は潤ってきてはいますが、戦闘の気配は消えませんし、まぁ福利厚生にお金が多少なりとも出せるだけマシでしょうかねー」

ため息一つ。
ミサゴは帳簿とのにらめっこを再開する。

「そうそう、この『福利厚生費』ってなんなんですか?結構出てますけど」

眼鏡をかけ直し、首を傾げる楠瀬。

「あぁ、それはですね。小笠原旅行社への加入金とかお花見代とか」

「お花見代?」

「えぇ。さっき双樹さんが妙に…」


ちゅどーん

「は?」

「えっ?」

窓の外に上がる黒煙。

「えーと…」

ずどどどどど

「おっ花見にゃー!」
「きゃぁぁぁぁあ!」
「きゃぁぁぁぁぁ!」
「きゃぁぁぁああ!」

ずどどどどど

廊下の外から続いて聞こえる悲鳴と叫び。

「夜星くんと…マグさん?」

「じにあ!!」

駆け出す楠瀬。
扉を蹴り破り、廊下へと踊り出る。
慌ててそれを追うミサゴ。
廊下では、腰を抜かしたようにマグノリアと猫士じにあ、マーブルがへたりこんでいた。
周りにはクッキーやジャム、茶器セットが散乱している。

―あぁなるほど

ミサゴは得心したように頷く。
きっと休憩に誘いに来てくれたところを夜星に巻き込まれたのだ。

―あれ?でももう一人悲鳴が聞こえたような気がしたけど?

「ねぇ楠瀬さん…あの…もう…ひと…り…」

もう一人の悲鳴について聴こうと楠瀬を見たミサゴは凍りつく。

「よくも…よくもじにあを…!」

どこから出したのかその右手には青竜刀。
眼鏡は怒りに輝いている。

―こ…これは危ないです!

ミサゴは確信した。

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政庁東、無情の丘。
地面が激しく揺れる。
砂塵が舞い上がる中を巨大なミミズと戦うものが居た。

「右だ!」

猫士ドランに指示を出す冴木 悠。
その手には使い慣れた64式小銃。
型は古いが精度と威力は高い。
ドランとは別方向に駆けながら連射へと安全装置を切り替える。
タイミングを計りドランと目を合わせる。
言葉は要らなかった。
積み重ねられた練習に裏打ちされたコンビネーションはただ目を合わせることそれだけで互いの思惑を互いに知らせた。
目標を中心に円を描くようにステップ。
のたうちまわる目標に弾丸を的確に撃ち込む。
だが目標は停まることは無い。
痛みか生きる意志か。
その巨大すぎる身体に数百もの弾丸を蔵しながらも暴れ回る。

カチカチ

鋼管が開いたままトリガーが空を切る。
目標を挟んだ向こう側のドランも弾切れなのか激発音が消える。
なお暴れ回る目標に絶望が辺りに満ちる…かと思われた。
砂塵の向こうに冴木の笑み。
勝利を確信したように呟いた。

「チェックメイト。これで終わりだ」

胸のホルスターに装着された手榴弾を目標へと投げ付ける。
パンという小さな炸裂音と共に上がる小さな炎。
それは、何もないはずの砂漠に燃え広がり、大ミミズを瞬く間に飲み込んだ。
冴木は駆け寄るドランに向かい軽く手を挙げ、罠が無事発動したことを確認する。

「しかしこんなもの…どうするんだろうな?真さんは」

炎が止み、沈黙した大ミミズを見ながら冴木は呟いた。

続く
(文責:双樹真)

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最終更新:1970年01月01日 09:00