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レンジャー連邦回顧録~春だ!花見だ!宴会だ!(前編)~」 から 次の単語がハイライトされています :


春に降る雪
冬鳴く蝉
砂漠に桜ってのも中々おつだとおもいません?

―北国に住む自称ポッチャリ系の独白

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「オーライオーライ」

一人の男が画版片手にピンク色の何かを背負ったアメショーに指示を出している。

額にはのうきんの約束と書かれた一枚のメダル。
詳しくは語らないが、男がある国へ旅行に行った際に手に入れたマジックアイテムである。
その効果はとある大人物に一つだけ言うことを聞かせられると言うもの。
こんな遠く迄来させちゃって悪いかなぁと思いつつ男はすごくいい笑顔で指示を出し続けた。
うん。お土産に生きカカオを持たせてあげよう。

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「お花見…ですか?」

目の前で熱く語り終えた双樹を見て首を傾げるミサゴ。
「えぇ。こんな時ですしやっぱり明るくぱーっと騒ぎたいじゃないですか」

大袈裟な動きで語る双樹。
彼はもろもろの研究費で尽きた私財では足りなくなった花見代を何とか手に入れようと躍起になっていた。

「仕方ないですね…最近は国庫も安定してきましたし…」

ため息一つ

「少しだけですよ?」

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レンジャー連邦回顧録
~春だ!花見だ!宴会だ!~(前編)

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政庁廊下。
花見だー!花見にゃー!
騒ぎ立てる双樹と夜星が走り抜けたその数分後。
廊下を歩く三人の男女。
真ん中の男性が若い二人の男女を引き連れるように歩いている。

「いや、相変わらず元気でござるな。双樹殿は」

先導する武人のような中年の男性が笑いながら腕を組む。

「どうもどこからか桜を手に入れて来たようでござるな。いや、風流、風流」

「お花見、やるんですか?」

最近レンジャー連邦にやってきた遊佐 呉が小首を傾げて尋ねる。

「そうみたいでござるな。かなり前から双樹殿は走り回っていた故、恐らくは。ご両人は参加はどうなされるかな?」

「うーんどうしましょうかねぇ」

小首を傾げる遊佐。

「俺は…どうするかな」

そういいながら遊佐と同様最近レンジャー連邦にやってきた情野 銀鉄がコインを弾く。

「コイツで決めないか?裏なら参加。表なら非参加」

「構わないでごさるよ?」

「わかりました」

「よし…BET!」

コインが、宙を舞う。

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政庁某所。
何故か【KeepOut】と書かれたテープが貼られた厨房前に舞花は居た。
その身を可憐なメイド服に包み、かつての修業の成果を遺憾無く発揮しようとここまでやってきたのだが…。

「何なんでしょう…これは一体」

妙にうねうねとのたうつ緑の何かが、扉からはみ出ている。
近くにしゃがみ人差し指でつっつく舞花。

つんつん

うねうね

つんつんつん

うねうねうね

「?」

舞花が小首を傾げたその時、背後からかかる妙に焦った双樹の声。

「舞花さん!?ダメだ!離れて!!」

どかーん
扉が弾け飛ぶ

ぴぃぃぃぎぇぇぅぅぅぅぁぁぁぁぁあ

身の丈4mはあろうか、通常よりも遥かに大きな生きカカオが咆哮と共に現れる。
食用の為か、野性の物に存在する牙は失われている。

「ニ、にに逃げ、逃げますよー!」

左手には擲弾発射機を。
右手には舞花を抱えて走り出す双樹。
背後からは廊下をぶち壊しながら食用の生きカカオが迫る。

「な、なんなんですか!?あれは!!」

舞花が小脇に抱えられながら叫ぶ。
左手の擲弾発射機を弄りながら双樹も叫ぶ。

「食材です!夜星!舞花さんは任せた!!」

渡り廊下に差し掛かった時点で舞花を中庭に投げる双樹。

「任せるにゃ!!」

双樹の声に答えるように黒髪金眼の夜星(人型)が空中で舞花を受け取り遠くヘと駆けていく。
それを横目で確認し、跳躍して向きを反転する。

グキ

妙な音が辺りに響いた。
よく見れば双樹の足首が妙な方向に折れ曲がっている。
思い切り捻ったらしい。

「運動不足!?ギャァァァァァァァァ」

天地が逆転したような恰好で生きカカオに照準を向ける。
引き金を引く双樹。

ちゅどーん

政庁南部渡り廊下が紅蓮の炎と爆煙に包まれた。

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同時刻、政庁執務室。

ちゅどーん

遠くに聞こえる爆音に眉をひそめる城華一郎。
机上を走る筆を止めずに呟いた。

「双樹くんだな」

「双樹さんでしょう」

華一郎の向かいで同じように筆を走らせていた蝶子が同意した。
ため息をつく蝶子。

「きっとまたどこか壊しましたね…もう。お給料から引いておかないと」

「はははっ。災難だね双樹くんも」

「自業自得です。双樹さんが色々壊した分を国庫から出してたらすぐに滅亡しちゃいます」

バターン!!

扉が砕けそうな勢いで開く。
次の瞬間二人の眼前を駆ける白と黒の何か。

ずどどどど

「おっ花見にゃー!」
「きゃぁぁぁぁぁぁ」

ばりーん!

白と黒の何かは窓を蹴り破り彼方へと消えていく。
執務室に満ちる沈黙。

「今のは…」

「舞花さんと夜星くん?」

首を傾げる二人。

「お花見ですか」

「お花見みたいですね」

夜星が走り去った方向をみて呟く二人。

「折角ですから気分転換に顔を出してみましょうか」

笑って言う華一郎。

「そうですね。双樹さんには伝えなきゃいけないこともありますし」

笑顔で言う蝶子。

「伝えなきゃいけないこと?」

小首を傾げる華一郎。
光り輝く笑顔で頷く蝶子。

「えぇ。ここの修理代です」

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政庁中庭。
浅葱、小奴、サクの三人がそれぞれ微妙にデザインの違うメイド服に身を包み、洗濯物を干していた。
それをマキアートが誰に言われたわけでもないのに不満そうに手伝っている。
その後ろの方では、愛佳、にゃふにゃふ、じょに子が気持ち良さそうにひなたぼっこをしていた。

「ありがと、マキアート。手伝ってくれて」

サクがシーツの皺を取るためにバサバサやりながら笑顔でマキアートを見る。

「別に。好きでやっているわけじゃない。昼寝の邪魔を早く取り除きたいだけだ」

顔を赤らめ、視線を逸らしながらシーツを干すマキアート。

「まったく…素直じゃないね、マキアート」

シーツの束を運ぶ小奴がにやにやと笑いながらマキアートに軽く肩を当てる。

「嫌われちゃうよ?」

「なっ!?」

シーツを落とすマキアート。

ずどどどど

「おっ花見だにゃー」
ちゅどーん
「きゃぁぁぁぁぁぁ」

ずどどどど

「今のは…何でしょう…?」

急な爆音と何かの爆走にシーツを干すポーズのまま呆然と何かが走り去った方向を見る浅葱。

「夜星と舞花さんだねー」

にゃふにゃふが仰向けにごろりんちょと回りながら言う。

「お花見って…あそこの桜でやるのかしら?」

人型に変じた愛佳が背伸びをする様にシーツの向こうを覗く。

一面に広がる大量の白いシーツが、風にはためいている。
その向こうにぽつりと固まるように立ち、花びらを散らす桜があった。

その様に何かを感じたのか、猫型のまま、じょに子が旋律を奏で始める。

「~♪♪」

歌とも唄ともつかない旋律が辺りに満ちる。
どこか戦いに張り詰めた心の糸をゆっくりと緩めるような、そんな旋律が。

「お花見…ねぇ」

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政庁某所。
物見台。
台というよりは塔に近い物見やぐらのその上で三人の男が並んで空を見上げている。
右から順に大中小。
ある種バランスの取れた斜線を描いていた。

「なぁ、虹ノ…」

中にあたる青海が空を見上げたままだるそうに呟く。
「…ん?」

大に当たる虹ノ七色がやはり空を見上げたまま呟く。大とはいっても背丈の話でこちらは随分スタイリッシュだが。

「靴下を…くれないか…」

「断る」

左端の山下が訝しげに青海を見上げる。

「…何で靴下なんですか?」

「………」

俯く青海。

「~♪」

そっぽを向いて口笛を吹く虹ノ七色。

「…?」

小首を傾げる山下。

「少年…世の中にはまだ君が知るべきでない闇がたくさんあるんだよ…」

どこか寂しげに笑って山下の肩を叩く青海。

「そんな事でごまかせるとでも?」

じー。
ジト目で青海を見る山下。

「信用無いな!」

輝く笑顔で虹ノ七色が青海の肩を叩く。

ちゅどーん

「ん?」

「なんだ?」

「何でしょう?」

遠くから聞こえて来た爆発音の方向を見る三人。
黒い煙がもくもくと上がっている。

「あいつか?」

「双樹さんでしょうか?」

「双樹だな」

青海が頷きながら呟く。
続いてその顔に不敵な笑みが浮かぶ。

「イベントの匂いがするな…」

その言葉に頷く虹ノ七色。

「トラブルの匂いもな。…行くか?」

「あたぼうよ!」

駆け出す青海と虹ノ七色。

「え?え?」

いきなり走り出す二人にあたふたする山下。

「ぼ、僕も行きます!まってくださーい!!」

駆け出す山下。

誰も居なくなった物見台に、いつの間にやって来たのか翡翠が遠くに見える海を眺めている。

「海は…いい…」

続く
(文責:双樹真)

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最終更新:1970年01月01日 09:00