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ドランジ歓迎祭り:続々・悪乗り編」 から 次の単語がハイライトされています :


―・・・仮装パレードっつてもよー、それで決着がつくのかよ?(たんこぶをさすりつつ)
―大丈夫。藩王、摂政、ドランジ氏には藩都の正門にて判定員をしてもらう。ま、俺が優勝だけどな!!(頭に包帯を巻いたままなにか赤い縫い物をしている)
―・・・で、それなに?
―・・・ククク・・・あっと驚かせてやるぜ。
( 3日目 早朝 徹夜で仮装作成中 )

「 3日目 夕 激闘!国民参加・仮装パレード!! 」

快晴時ともなれば灼熱の大地となるレンジャー連邦も、夕刻になり徐々に夜の闇が近づけば涼しさも増してくる。
北の都から藩都へ、ニャーロードの背骨とも言うべき中央道路を南下してくる国民参加の大仮装パレード隊を見物(ついでに審査)すべく、藩都正門の物見台にはレンジャー連邦藩王・蝶子、摂政・砂浜ミサゴ、そして国賓のカール・T・ドランジ氏が談笑に興じていた。

「この国は美しいですね・・・。」

水平線には夕日が沈んでいっている。藩城を除けば最も高い建物である藩都正門の物見台からは、かなたにゆっくりと身を消していく夕日が見える。
この時間はレンジャー連邦が昼の世界から夜の世界へと変わっていく、一種幻想的な雰囲気を感じさせる。

ドランジ氏は窓際に置かれた椅子に身を預けながら、優しげな視線を海に向けていた。
摂政・砂浜ミサゴはその夕日に染まった横顔をポーっと見つめている。

(結局、昨日はどうなったのかしら・・・・。)
青海からの報告はない。
(肝心なところで使えないんだから!もう!!)
プリプリする蝶子。まぁ、幸せそうな摂政が見れただけでもよしとするか。

「先頭が来たようだね。」

ドランジ氏の言葉に窓際に身を寄せる一同。
ニャーロードのかなた、北の都の商港を発したパレード隊がいよいよ藩都に入ってくる。ニャーロードの周りを囲む野次馬たちの盛り上がりも最高潮になる。

先頭を切って藩都に入ってきたのは、ドランジ氏のシンボルでもある金の龍の巨大な張り子である。龍の頭部を持って前進してくるのは連邦軍の舞踏子。総勢30名のドランジファンによる金の登り龍が藩都の正門をくぐり、市内に入ってきた。
出発前に見事に最前列のクジを引いた(引いたのは舞踏子。未来予知能力?)金の龍はゆったりと政庁へと続く市内の中央道路を練り歩き始めていた。
それに続く個人参加の市民達も龍の仮装のものが多い。もともとドランジ氏の歓迎パレードであったため、多くのものが氏のシンボルである龍に身を変えていた。
5歳くらいだろうかの角と羽を生やした子龍が走りぬけ、2~3人で作られている小型の龍の張り子がいくつも続く。中には上半身裸で「風雲のぼり龍」の旗をなびかせグーパンチで通り抜けていく変わり者もいた。
迎え入れる市民達は道路沿いで拍手喝采。家々からはいっせいに紙ふぶきが舞う。

次に大きな歓声で迎え入れられたのは4頭立ての大型馬車。前後を時代錯誤な甲冑で身を固めた仮装兵士に警護されてきたのは連邦史になだかいイカーナ王子と北の姫君である。馬車の手綱を握るのは当時の一級資料として重要視されている「手記」を残した北の姫の護衛隊長であろうか、しかめっ面で馬を抑えている。
「・・・・藩王、あれは・・・。」
「・・・・やっぱり来たか。」
良く見れば手綱を握るのは新たに士官したビッテンフェ猫。イカーナ王子は虹ノ七色、北の姫君は女装した楠瀬藍であった。
市民達は車上の3人にやんやの声援を送る。ビッテンフェ猫は敬礼で応え、虹ノのと楠瀬は熱い投げキッスを門上の3人と市民たちに送る。調子に乗った虹ノが楠瀬にベーゼを送ろうとしたが、楠瀬は巧みに交わして張り手を一線。大観衆は爆笑に包まれた。

4頭立ての馬車に続いて連邦の大団旗が通りすぎると、2頭立ての馬車が登場。
こちらは「連邦中興の祖」として有名な第3代藩王のお出ましである。
手綱を握るのはピエロに扮した山下大地。手の平からマジックで造花を取り出し、群集に投げている。デップリとお腹に綿を敷き詰め大仰なアゴヒゲをさすりつつ、手を振って歓声に応えるのは男装のマグノリアである。横につけた馬上で凛々しい正装を見せているのは浅葱空。かぶとにつけた派手な羽飾りが踊り、「美男子宰相」として知られる名宰相に沿道の女子はため息を漏らす。

「ふふ。藩王殿の登場ですな。」
「ちょっ!!」
宙を舞う紙ふぶきの量がどっと大きくなった。
続いて入ってきた4頭立て馬車に勇壮なる仁王立ち。「愛」と染め抜かれた赤の大マントを翻してひときわ大きな歓声に応えるのは我らが蝶子藩王の正装に扮した小奴である。
大型馬車の手綱は城華一郎が握る。こちらも今夜はトレードマークの黒のマントに「愛」の大染め抜きである。彼の照れながらのウィンクに沿道からは黄色い声が飛び交っている。
馬上の蝶子藩王の隣には豊国ミロ。レンジャー連邦の地に第一歩を記したとされる伝説の民族の族長衣装を身に纏い、藩王姿の小奴と並び古代から現代へと続くレンジャーの歴史を身で現している。
馬車に続く騎馬には共和国の大団旗を持った双樹真、隣には連邦の大団旗を掲げたアスカロンがにこやかに登場した。
正門を通ると一同は門上を見上げ、
「レンジャー連邦、バンザーイ!!」
の大合唱。群集も続き「レンジャーバンザーイ!」「愛にすべてをー!!」「蝶子藩王ラーヴ!!」「ドランジさんバンザーイ!!」の声で藩都は一時うめつくされた。

押し寄せるパレード参加者の波、波、波。
エキゾチックな踊り子の一団は北の歓楽街の住人たち。
酒の神に扮して馬上から酒を巻きながら登場する腹のでっぱった男がいる。
大型馬車に乗る男女たちは皆、結婚衣装。熱いベーゼを交わすカップル達に群集からははやし立てる声が後を立たない。
大学教授陣があからさまにメガネをクイクイさせて登場する。普段はお堅い教授陣。今夜は全員、何故かパンツ一つの天使の姿。ビン底メガネを揺らす姿に群集は大爆笑である。

「あ・・・。は、藩王・・・。」
「き、来たか・・・。」

連綿と続くパレードの最後に登場したのは、巨大な黒馬に跨った青海正輝と彼に続くマーチング楽団である。
威勢のいい行進曲を奏でながら入ってくる一団に市民達は大歓声。
青海は馬の下まで届きそうな青いマントに「イカ一途」の大染め抜き。姿はすっぽりと頭から赤いイカの衣装を見に纏った珍妙なものである。
続く旗持ちが掲げるのは共和国と連邦の大団旗。一つ遅れて通る大団旗には、
「『超国家組織【イカナマニア】』・・・・と書かれているね。」
「なんじゃそりゃー。」
奇妙な大団旗に続いてマーチング楽団。全員が赤いイカの服装である。

「ハーーーーイル!イッカナーーーーーーーー!!!!!」
「「「ハーーーイル!イッカナーーーーーーーーー!!!!!」」」
正門前で青海の掛声とともに一団は敬礼を決めての大合唱。
3人に向けてペロっと舌を出して笑う青海。ガキである。

「はははは、あれはイカナか。」
「もう!青海めー!!」
眼下では青海の一団が通り過ぎた後も一般参加の仮装者たちが続いている。
「いや、笑わせてもらったよ。」
「ドランジさんに楽しんでもらえたのならなによりです。」
笑顔の3人。
窓から見下ろすとそこにもあそこにも、楽しそうな顔、顔、顔・・・・。
「・・・・いい国だね。皆がこの国を愛している。」
「はい・・・・。私もこの国が大好きです。」
笑いあう摂政とドランジ氏。
一歩後ろでにこにこしていた蝶子藩王が声をかける。
「さ、私達も政庁広場に行きましょうか?今夜は宴ですよ!」
「そうですね!」


「さぁ~お待ちかね!我らが蝶子藩王、そしてミサゴ摂政とカール・T・ドランジさんの登場です!!」
ステージ場でマイクを握った山下大地に呼び込まれて登場する3人。
パレード参加者、一般市民が入り混じった大観衆は思い思いの歓声で3人を迎える。
「皆さん!今夜は思いっきり楽しんでいってください!!!」
蝶子藩王のシャウトに合わせて、連邦の夜空に大花火が華を咲かす。
大楽団が陽気なダンスを奏で始める。
群衆は老いも若きも、男も女も、富むも貧しきも関係なく、今このとき、愛と平和を祝う宴に手を取り合って参加していく。
「・・・よろしかったら、一緒にいかがかな?」
「え・・・・は、はい!!!」
手をとって群集に混じっていくミサゴ摂政とドランジ氏。
笑顔で見送った蝶子藩王も、大地とともにダンスの輪に入っていった。

夜空をアメショーが駆け抜ける。陽気な歓声が星に消えていく。

明日も、レンジャー連邦は晴れそうである。


●後日談●
「・・・・で、優勝は?」
「うーん、小奴さんかな。可愛かったし。でも、正直決められないわね!」
「お、俺は!?」
「・・・・・・あの布、城の大カーテン使ったでしょ?」
「サイナラー。」
「待てコラー!!」

(文責:青海正輝)

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最終更新:1970年01月01日 09:00