レンジャー連邦王宮図書室 @wiki内検索 / 「悲しい涙は最悪の調味料(七)」で検索した結果

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  • 悲しい涙は最悪の調味料(七)
    (七) 「ここまで来れば大丈夫であろう」 ブラックはカナを連れて少し離れた所にあった防風林の所まで来ていた。カナを下ろし、すぐさま踵を返してレッドの元へ行こうとする。 「あ、あの・・・」 「隠れていろ。ここなら安全だ」 「え、ち、違くて・・」 怖い。上手く喋れない。でも、このままじゃオルロが! 伏せ目がちだった顔を起こすカナ。 「あ、あの子は私の友達なの!だから、乱暴しないで」 ブラックは目をパチクリさせる。何を言っているか理解できない、っと言った顔だ。 友達だと? 「馬鹿な。アレは恐らく【クラウデス】の怪人だ。お主に危害を加えるつもりだったのかもしれない」 「そんなことないもん!オルロはとっても優しい子なのよ!」 目に涙を浮かべて怒りを顕にするカナ。 本当に友達だと思っているようだな。友達を想うゆえにか。友達想...
  • 悲しい涙は最悪の調味料(五)
    (五) 雨宮 カナ(11才)。ちょっとチビで痩せっぽっちな女の子。しかし、顔立ちは十人中十人は可愛いと評価するだろう。 そんなカナは遠い通学路をトテトテと歩いていた。 今日も学校嫌だったな。 彼女にとって、学校は憂鬱そのものだった。クラスの男子はイヂワルでイタズラばかりしてくるし、女子は強い子ばっかりで取っつきにくい。あまり喋らないまま一日を終えた。 そんなカナに最近楽しみが出来た。ナツメヤシ園にいるお友達。その子と遊ぶのが彼女にとって唯一の楽しみになっているのだ。 ナツメヤシ園の中に岩と岩の隙間に出来た洞穴。ひょこっと顔を覗かせる。 「オールーロー」 カナがそう呼ぶと洞穴の奥で四つ目が光る。のそっのそっと巨体が姿を表した。 二本足で立つその姿は怪物そのもの。体はアルマジロの様に固そうな鱗に覆われている。サイの角の様な三本指。目は四つ。頭には中央の長い...
  • 悲しい涙は最悪の調味料(八)
    (八) 砂丘の頂上より白衣の男が降りてきた。肩までの長髪で、目に機械でできた眼帯のような物をしている。 「何だ貴様らは?ははーん、さては最近我々の邪魔ばかりしてくるレンレンダーだかなんとか言う連中だな」 「レ、レンレンジャー、だ!誰だ、お前?」 レッドの近くまでやって来くる。いきなり踏みつけた。 「言葉には気をつけろよ小僧。私こそは【クラウデス】の(自称)世界最高の科学者!Dr.フライヤー様だ!」 「よくも、まあ恥ずかしげも無く、言えた、ものだ。マッドサイエンティストめ」 くぃっとブラックに向きを変えるDr.フライヤー。 「色っぽいが随分と口が悪いお嬢さんだ。後で洗脳して助手にしてやろう。さて」 オルロに近づいていく。かくゆうオルロは突然現れたこの男がなんなのか判らず事のなりを見守っていた。 「迎えに来たぞ、No.23」 ...
  • 空馬(空馬)
    空馬(空馬)の作品群 ●文章 だおスピンオフ 小雲散策記 『二人の間に流れるのは』 ●悲しい涙は最悪の調味料 1 2 3 4 5 6 7 8 ●提出 夜の楽しみ
  • 悲しい涙は最悪の調味料(六)
    (六) 「クラカイ君?反応?なんすかそれ?」 『私が【クラウデス】の怪人に反応するレーダーがあったら便利だなーって思って作ってみたのよ。名付けて【クラカイ君壱号】試作機なんだけどね。スイッチ入れたらさっそく反応があったってわけ。』 「その機械大丈夫なんすか?」 『私が作ったんだから大丈夫に決まってるでしょー。とにかく、村雲君偵察よろしく!絵斗さんも向かわせるし、都合がつけば他の3人も合流させるわ。バクアイレッド出撃よ!』 「りょ、了解!」 チン。受話器を置いてから唸る村雲。 大丈夫かー?アイアイ博士は凄い人なんだけど、あの人が訳わからんネーミングセンスで開発したモノってろくなモノ無いんだよなぁ。でもいたら大変だからいかなきゃな。 村雲は急いで身支度をして偵察に出掛けた。 『ちょっと準備中。ゴメンヨ!!』 扉についている看板はゆらゆらと揺れた。 ...
  • 悲しい涙は最悪の調味料(四)
    (四) 街の明かりが遠くに見える。豪邸とは言えないが新築のちょっとした高級住宅。そこの台所でシチューをグツグツ煮込む主婦。時計をチラチラと気にしている様だ。 「(ちょっと遅いわねー。大丈夫かしら?何があったのかしら?心配だわ)」 この家が建っている場所は言わばニュータウン的な場所である。これから住宅街となる予定なのだ。まだまだ土地代も安かったので新築のの家を建てるのに選んだのだ。ネックと言えば街まで少し遠い事。 もう一度時計を見る。 「(新しくここに住み始めてからこんなに遅くなる事はなかったわ。あの人は出張でいないし。なんだか不安になってきた)」 この心配と不安は取り越し苦労となる。すぐに玄関から元気な声が聞こえてくる。 「ただいまー!!」 「(ホッ)お帰りなさーい。 どうしたの?何か嬉しそうだけど?」 「えへへー。お母さん、私ね、お...
  • 悲しい涙は最悪の調味料(三)
    (三) 絵斗は自宅の近くにあるオアシスの前に座って居た。膝に顔を伏せている。彼女は夜になると、ここにこうして一人でいる事が多いのを西薙は知っていた。 「泣いてるのかい?」 「泣くか!」 「おっと、失礼」 西薙は歩いて絵斗の後ろまで近づいていった。 「帰れ!貴様も説教言いに来たのであろう!」 「説教は好きじゃないな」 そう言うと西薙は背中合わせに座った。背中が触れた瞬間びくっと体を振るわせる絵斗。 「なっ・・・!」 「そのまま聞いてくれないか?イヅル」 後頭部をゴンと付ける。 「悪は成敗、悪は死ななきゃ治らない、か。イヅルはそれを体現してる訳だ」 「・・・誰かが、誰かがやらねばならぬのだ!」 「違うだろう?」 「!?」 「それでしているとは思えない。復讐かい?」 ハッとなり少し後ろを振り向く。そしてまた...
  • 悲しい涙は最悪の調味料(二)
    (ニ) ────────────── ─メガ、イタイ─ ─ココハ?─ ─ ボクハ?─ 『警告。警告。実験体が脱走した模様。繰り返す。実験体が・・・』 アラートとともにマッドサイエンティストDr.フライヤーの怒声が響く。 「この馬鹿者どもが!!!一刻も早く探しだし、捕獲せよ!No.23にはまだ『教育』が済んどらんのだ!えぇい!とっとと行けい!!」 ─────────────── 「なんで君はそんな考えしか出来ないかなー!?石?頭が石で出来てるの?」 「何だと!」 ここは爆愛戦隊レンレンジャーの秘密基地兼研究所兼博士宅兼隊員溜まり場である。今日は言条アスミ(バクアイグリーン)と絵斗イヅル(バクアイブラック)の喧嘩の声が鳴り響き、部屋の隅には村雲ケンパチ(バクアイレッド)が正座をしていて、それを卯ノ花ミハネ...
  • 悲しい涙は最悪の調味料(一)
    (一) 白く綺麗な研究室。そこは壁の汚れや棚の埃など全く無い、清潔感溢れた研究室だった。ただ一つ。培養槽のなかにいるモノを除けばであるが。そのモノはこの研究室に似合わぬおぞましい生き物であった。 ─────────────── 「はぁっはぁっ」 路地裏を疾走する一つの影。その影をもう一つの影が追う。 「くそっ!まだ追ってくる!」 追われている影はある組織の末端の構成員。組に入れる資金作りの為に日夜強盗を働く子悪党だ。今日もいつもの様に店を襲い、売上を奪う。何回も繰り返しやってきた事で手慣れたものなのだが、今日はそうはいかなかった。 ゴミ箱を倒し、木箱を倒し、追跡を阻害しようと試みるも、差は縮まる一方だった。 カッ!!! 突然目の前に突き刺さる剣。全力疾走していたため巧く避けることが出来ずに派手に転倒してしまった。 ...
  • 秘宝館SS:『青の宝石』(後編)
    青の宝石(後編) /*/  ぴるりると、掛かる青空にさえずりが飛ぶ。  日当たりのよい、開けたところにあるベンチで、クリサリスと和子はコロッケをつまみながら世間話を交わしていた。  塗りもない、素朴な質感と形状とを生かした樹色のベンチは、周囲に溶け込み、よく調和している。 「最近、大きな戦いがあって、他のにゃんにゃんの国が大きな被害がでたそうです」 「それを理由にまた出兵する国が出る」 「うん、悲しい連鎖ですね」  大変だな、と声をかけられて、和子はそれが自分にではなくてっきり世間一般の話をしているものと思って相槌を打った。 「大変な人に、私が何かお手伝いできることがあると、いいのですが……」  くしゃり、新聞紙を押しのけて空になった紙皿をバスケットの中に押し込む。  振り向いた先にあった、こちらを捉えている青い輝きを、だから彼女...
  • ある文族
    「僕はねえ、昔、好きだった人に笑顔をもらったんだ。ただ、笑う、笑い転げる、それも本当にくだらないようなジョークやネタで、いつまでも、いつまでも、飽きることなく笑い続ける、そんなごく普通で当たり前の、けれど、決して忘れちゃいけない大切な笑顔をね、もらったんだ」 笑いながらその文族は、ずっと遠くを見て、そう言った。 「僕はねえ、読み返されれば読み返されるほど、誰かの目に触れれば触れるほど、アイドレスの世界が育ち、強化される、そんな物語が書きたかったんだ。  魔法みたいだろ? 魔法遣いになりたかったのかな。それとも、魔術師になりたくて、なれなかったから、魔法を使おうと思ったのかな。  僕にとってね、物語っていうのは、魔法だったんだ。本を開けばそこに世界がある。どうしようもなく、世界があって、命があって、物語があって、何かがある。必ず、胸躍るようなスカッとする冒険談でも、心塞ぐ...
  • 【EV143】“今日も元気だごはんが美味い”
    幸せ大前提:「今日も元気だごはんが美味い」 ごはんはおいしい。ごはんが美味しいと全てが美味く回る。 「なんでご飯があると幸せなの?」 「ごはんが美味しいと嬉しい。お腹一杯だと満たされる。余裕がでる。  余裕が出ると優しくなれる。  優しくされると、優しくできると嬉しい。  嬉しいと笑顔が増える。笑顔が増えると頑張ろうって思える。  頑張れると悲しい事も乗り越える力になる。  悲しいを乗り越えるとこが出来ると笑顔が増える。  笑顔で食べるとごはんが美味しい!愛だ!蝶子さーーん!」 「なげーよ!!!」  ごはんが美味しいってうれしいんだ。 自己紹介 浅葱空(PL:にゃーしゅ) 国民番号:06-00156-01 魂の故郷:東京都 性別:女 愛を奉じる藩王をこよなく愛する。 のんびりのうっかり屋。 痩せたいと思うけど食べる...
  • 文族事始め・ぱあと2:『あなたの書きたいものは何ですか?』
    文族事始め・ぱあと2:『あなたの書きたいものは何ですか?』 上手に文章を書きたい。小説を書こうとした時に、誰もが感じることだと思います。 でも、どうして上手に文章を書きたいのですか? 下手だとみっともない?上手な方がいいに決まってる? もう一度思い出してみてください。 小説は、読む人に何かを体験させるためのものです。句読点の乱れや誤字脱字がいけないのは、それがみっともないからではなく、読む人が集中するための妨げになるからです。好きな音楽を聞いている時に、すぐ側を大型トラックが行き交いしていたら気になって充分味わえないでしょう? そういうことなのです。 同じ表現を、繰り返さない方がいい時、繰り返したい時、両方あります。意味なく繰り返すと、それは塩も砂糖も醤油も何も調味料を使わずに、ただ延々と同じ物を同じ味で食べさせられるようなもので、気にし...
  • ★一方その頃…(空馬さんのもんじゃの前のワンシーン。的な)
    「レンジャー連邦は一妻多夫制ではありません、冗談です(笑)」 レンジャー連邦の会議室の扉が勢い良く開かれる。 「いたっ!ビッテンフェ猫ー!なんであんたから贈られてくるプレゼントはいつも爆発するんだー!?その度に3時間はその場で気絶してしまうんだぞ!」 「なんの事だかさっぱりでござるな~」 「問答無用だ!成敗ー!成敗ー!」 「まぁ待つでござる。ここはこのリンゴでも食べながら話し合おうではござらんか」 「むっ、リンゴ?頂きます(^o^)………∑(゜ロ゜)ハッ!ノシ~●」 ちゅどーん!赤く塗られた爆弾は景気良く弾け飛んだ。 「やっぱりだー!危ないところだったー!」 「学習能力はあるようでござるな~」 「うがー!もう許さん!」 その時、会議室の扉がまた開かれる。 「空馬さんダメ!そんなの悲しいだけだよ!」 入ってきたのは浅葱空。すかさ...
  • 146:砂浜ミサゴ
    こっちの世界は色々と 難しいことばかりだけど それでも君のまわりの人は 君が来るのを待ってるよ 嬉しいことばかりじゃなくて でも悲しいことだけでもない 楽しいことばかりじゃなくて でも苦しいことだけでもない こっちの世界は本当に 何もかもが複雑すぎて 嫌になるかもしれないけど それでも綺麗なものもある ときどき雨が降るけれど そのあと虹が出ることもある ひとりの道で転んでも たまには誰かが助けてくれる こっちの世界はそんなふうだよ むりやりになんて呼べないけど 僕は来るのを待ってるよ 君が来るのを待ってるよ
  • 夕ごはん
    かんぱーい! 幸せおまけ前提:「もんじゃも世界を救う」 もんじゃってね、皆でわいわい、楽しいよ! 皆で食べると楽しいし、悲しいことがあっても大丈夫。 悲しさをもんじゃに混ぜてくるっと丸めて焼いちゃおう。 皆でおいしく食べちゃうぞ!さあ、皆でもんじゃしよう! 蝶子さーん!(抱きつき)  普段はお家で愛情たっぷりの手料理が多いレンジャー連邦ですが、今日はちょっと特別で大もんじゃ祭りです。  メイド服に着替えて、みんなの分のメイド服を用意して準備ー! レンジャー連邦はいつだってお祭りです!  ★一方その頃…(空馬さんのもんじゃの前のワンシーン。的な)  ★一方その頃…(ビッテンフェ猫さんの大もんじゃ祭り01)  ★一方その頃…(冴木悠さんの大もんじゃ祭り裏側)  ★一方その頃…(ビッテンフェ猫さんの大もんじゃ祭り02「にゃーおん!」) 夕ごはん  【...
  • ドランジのいない日(1)
    男は牢にいた。 その牢に鍵はかけられていない。 冷たく氷で出来た思考の牢獄。 力が足りない。思うのは、情熱ではなく、理性。 力が足りない。考えて、理性に委ねたのは情熱。 何が必要だ。 感情はいらない。世界を文字で見るように、世界を数字で見る心。 ロジカルに感情をデジタライズ、ラジカルに視界をロジカライズ。 感情のカテゴリを捨象する。 掌中に淡い蛍火のような珠。 感情はそこに捨てよう。感傷はそこに仕舞おう。 道化師は道化に舞おう。 勝つために感動することが不要ならそれはいらないものだから捨てて仕舞おう。  『かぱ……』 一枚の白い面が手にそれを顔に嵌めて仕舞う。 城華一郎(じょう かいちろう)はおどけた。 白い面の唇は、冷たく笑うだけだった。  /*/ 第七世界時間81307002、にゃんにゃん共和国はその大連合にも関わらず、ゲーム開始史上初といってもいい...
  • 新編・文族院
    新編・文族院 序文 書きたいものだけが書けるもの。 だから何を書くには何が必要か、なんてことは、文族院では教えません。 本当にほしいものは、あなただけが知っているはず。 あなたがほしいものは、なんですか? 文族院は、あなただけが知る「素敵」の道への、扉の在り処を教えます。 早くあなたの想いの結果を読ませてください。 初級編:おおいに真似よう! 読んだようにしか書けません。 喋ったように書いたり、聞いたように書いたりすることもありますが、 どちらにしろ、それは相手ありきの話です。 同じようなものを書きたい! と、思うのが、きっと一番のモチベーションのはず。 何と同じようなものを? それはあなたにしかわからない。 それが何かも、どう心に響いたかも、あなただけが知っている。 同じ「ような」もの。 まったく同じものがいつまでも...
  • 作者名索引
    作者名索引 見たい作者の名前をクリックすると、その方の作品一覧へ飛びます。 (国民番号順、()内PL名) 霰矢蝶子(蝶子) 砂浜ミサゴ(ミサゴ) 楠瀬藍(ひでぽん) 青海正輝(RisKey) 小奴(小奴) マグノリア(マグ) アスカロン(Ascalon) 浅葱空(にゃーしゅ) 双樹真(しん) 城華一郎(星野十郎) ビッテンフェ猫(吉田幸村) 豊国 ミロ(みど) 矢神サク(サク) 冴木悠(悠) 遊佐 呉(ユサク) むつき・萩野・ドラケン(むつき) 春雨(春雨)? 彩貴(彩貴) 空馬(空馬) 七周シナモン(七周) 石丸 春丸(石丸 春丸)?
  • 短編:たまには夢の話を
    「夢の話をしていいかい」 白い、昼の日差しが漂う開放的なレイアウトのレストランで、その白の似合わぬ黒衣の男が行儀悪くも高々足を組み、つば広の帽子をくいと持ち上げながら、そう尋ねた。 男と対面の席でイカ墨パスタをつついていた、切れるような質感の男は、言葉に面を上げる。 伊達者の男であった。一振りの剣を、その刀身のあでやかな実直さと妖しい切れ味とに見合った拵えに仕立て上げたかのような、華美にならぬ洒脱さが装いに漂う。厚みのあり、筋肉に割れた肢体の輪郭線は、その伊達を、何より雄弁に内側から支えていた。 アスカロン。アメショーを駆るレンジャー連邦正規パイロットの一人にして、愛と正義を知る、連邦一の剣であった。 その彼が、目の前の男に問われて、面を上げていた。 「――――」 無言の促し。 「夢の話さ」 もう一度、黒衣の男は両手を...
  • 七周シナモン(七周)
    ●文章 146:七周シナモン
  • What a perfect blue world 10
     狂ったように愛情を求めた。  求めるたびに、さらに狂った。  満たされない底無しの欲望が、さしもの温厚な夫をすらも、音を上げさせた。 「疲れてるんだ」 「ごめんね、また今度でいいかな」 「キスだけじゃ駄目かい?」 「こうして抱きしめてるだけで僕は幸せだよ」  違う。  違うの。  感情の底が抜けていた。  欲望の底が抜けていた。  恐怖は不信に変わった。不信はジレンマに変わった。  他の誰からも愛されたくはない。  でも、もっと愛されていたい。  怖い。  男に相談してみた。 「俺と、来い」  言葉は、稲妻のように強く彼女の闇を貫いた。  闇よりも濃い、漆黒の響き。 「俺や、お前のような存在が、世界にはまだいくらもいる。俺達は、バグだ。バグには正常な情報が通じにくい。それは、バグ同士の間でも変わらない。...
  • 防衛戦隊レンレンジャー:第三話
    ●防衛戦隊レンレンジャー 『第三話:運命の戦い!! レンレンジャーよ永遠なれ!!』 【~あらすじ~】 時は第七世界歴72508002の夕刻、 早速計上された隊員達の訓練手当てを経理部のインクジェットブラックが処理する一方で、 レンレンジャー一同に、休む間もなく事件が再び降りかかる。 戦うべき本当の敵は誰なのか? 悲しみと共に、今、決戦の幕が上がる!! /*/ 「きっつぅ……」 「教官たち、鬼だろ」 「鬼の方がまだ優しいんじゃないか? 鬼なら瀬戸口先輩だし」 「みんなのお耳の恋人っていうよりは、みんなの地獄の恋人って感じだよな、教官」 「なんで美人なのにうちの上司達は長官といいみんなああなんだろうな」 「なー」 (ヘタレた顔で休憩室のベンチに座り込んでいる面々。ただ1人、ポニーテイルの少女だけが快活である) ...
  • 秘宝館SS:『星の瞳、太陽の羽根』
    ヤガミは蝶子の腰を抱き寄せたまま、今しか味わえないこの景色を存分に体感していた。 「これが…………」 見つめる先で、唇が動く。 ちょっと赤くなりながら、蝶子はヤガミが何を言おうとしたのか想像する。 これが、パーフェクトワールドか。 これが、ゲート。 これが、お前の見ている風景か。 どれもしっくりとは来なかった。 ヤガミは結局何も続けずに、細い蝶子の体を抱えている。 びゅうびゅうと風を切る音だけが響く。 言葉交わさぬままでいれば、それはまるで爆音のようで、2人は弾丸のように、向かい風とさえ呼べないそれを突き抜けていく。 灰色の長い髪が風に持っていかれそうになる。 ヤガミが、ぐい、と胸に蝶子の頭を抱き寄せるようにして、その髪の思う存分乱れてはためくのを、自らの体で遮った。 「眼鏡、なおしますか?」 ...
  • EV143発表ログ
    2009年5月12日に一番手で突貫してきました。 皆様、本当にありがとうございましたっ!! 読みやすいように多少入れ替えました。 また発表時は「浅葱空@レン連」という名前でしたが、長いので「浅葱空」に変えています。 では、どうぞー。 /*/ 浅葱空 > はい。ではレンジャー連邦のしあわせ発表を始めます。(ぺこり) 芝村 > /*/ (5/12-22 54 53) 浅葱空 > まずは、こちらをご覧ください。http //www25.atwiki.jp/tosyoshitsu/pages/454.html 浅葱空 > こちらが発表基本ページです。こちらでまず幸せ大前提:「今日も元気だごはんが美味い」を掲げさせていただくとともに自己紹介です! 浅葱空 > 遅ればせながら私はレンジャー連邦の浅葱空です。よろしくお願いします。 浅葱空 ...
  • 回想録
    私には法官1級の資格があります。 護民官3級の資格があります。 星見司4級の資格があります。 吏族5級の、参謀3級の資格があります。 私はそれらすべてを破棄します。 私に能力はいらない。能力を示すための、使うための印はだからいらない。 私は無名世界観が好きです。 それが私のここにいる理由です。 /*/ 下手の横好き、下手だから上手くなりたがる、下手だから上手くなった証拠が欲しくなる、 だから資格を山ほど取って。 けれども私は見失いました。 自分の気持ちの矛先を、追い求めるあまり、自分の気持ちそのものを見失いました。 私には法官長の責任がありました。 私には藩国民の権利がありました。 どちらももういらないです。思い出せなくなるくらいなら、そんなもの必要ない。 文字通り、それにまつわる何もかもを、信頼丸ごと投げ捨てました...
  • 小笠原の勉強会:前夜
    ふぁら、ふら… 音もなく足跡が、刻まれてはその上をまたすぐに雪が覆い尽くし、幾度繰り返しても、変わらない。 ただ注がれて日溜まりがかりそめの姿を取ったみたいに、光の糸がすべてをゆるやかに編みこみながら染みこむように落ちていた。重さもなく、冷たさも、そして暖かさも感じさせないその雪は、なぜだろう、どこか悲しくなるやさしい感じを、その中に抱かれているものたちへと覚えさせた。それでいて、なぜ悲しくなるかを気付く事ができない、自分でも遠い、感情のとばりの向こう側。それこそがこの雪のやさしさで、それこそがこの雪の無慈悲さだと、気付くものは、ひとにぎり。 無数の細い光、そのすべてはとても目に捉えられぬほど繊細に折り重なっていて、 青い空も、肌を押すような熱気も変わらないまま、やさしさが世界を染めていた。 悲しみを慈しむこと知らぬ雪化粧が心を染めて鎮めていく。 ...
  • 秘宝館SS:『夢幻桜華』
    柔らかな空が、行けども行けども満ちている、桜の向こうに見えていた。 それが永遠であるかのように花びらは、止むことなく降り注ぎ、春の園の空気を淡くその色彩で彩る。 時折立っている露店では、カップルが楽しそうに賑々しくしている。 それを微笑ましそうに横目で通り過ぎながら、肌色の濃い、大柄で人の良さそうな若者が歩いていた。 手の中には大事そうに抱えられた風呂敷がある。 光景には、どこか美しさだけではない、胸をはっと打つような、そんな儚さがあった。 桜色に染め上げられた空気を、陽射しは無造作に縫って大地を照らしている。 その、光の水底に、その少女は眠そうな目をして佇んでいた。 桜の海に、呆れるほど大きな猫を抱えながら佇んでいる、黒髪、小柄な日本人の少女。 幻想的な光景とは裏腹に、どこまでも凛々しい顔立ちをしている。 現実をどこまでも諦めることを知らない顔。ずっと昔に...
  • ~レンジャー訓練記 サバイバルレース大会編(前編)~
    「レンジャー連邦のモットーは!」 「1にソックス!」 「2にメガネ!」 「「3,4がなくって」」 「5に女装ぶあ!?」 すぱーん! 猫士・じにあの巨大ハリセンが炸裂する。 「全部違いますっ!!  ていうか華一郎さん、あなたは復讐とか言ってたんじゃないんですか!?」 「ネタになればよかろうなのだよ、文族にとってはな。表面上の変化なぞさしたる問題では、ない!!(かっ!!)」 これがほんとに法官1級を取った人かしら…と、じにあは頭を抱えた。ちなみにハリセンはどこへともなくしまわれている。 今日は仮想飛行士と猫士の訓練日。大気中に舞う砂の粒が見えるほど、よく晴れた早朝から、藩都の国立大学グラウンドの上でみんな一列に並んで、目の前にあるハテナボックスの中に手をつっこみ、順番に一枚ずつ紙を引いていく。 「惜しいっ!」 「愛佳ちゃん、よろしくね」 愛佳、マーブルペア。 「浅葱殿、よろしくで...
  • 短編『唇の雪』2
     空の植木鉢に今日も水をやる。  赤い素焼きの鉢植えの中で、湿った黒土の色が、さらに濃くなる。毎日の中の違いといえば、それだけの変化。  店は、棚も、客足も、ついでに言えば私の人生にも閑古鳥が鳴いていた。  これは私に限った話ではなく、共和国の、大半、とまではいかなくとも、少なくとも半分以上の人には実感を持てて共通しうる、単なる経験談の一つだろう。世界は運命という名のテクノロジーによって、変わってしまった。それも、気がつく間もなく、何度となく。  乾いた空気が吹きこむので、ケホリ、と、一つ、咳が出た。  虚ろな家に、虚ろな風、か。 「不景気なことだね、今日も、ユーミちゃん」  しわ深い笑みで、そう言って挨拶しながら入ってきたのはアキトさんだった。砂避けを脱ぐと、その内側にぶら下げていた水のボトルと、店内の棚に置いてあった数少ないココの実を交換していく。  しゃく...
  • とりあえずは日常へ~雨のち曇り時々晴れ~
    時間が… 思いが… 一瞬が無限する矛盾の中に ほんのひとひら 黒雲の隙間からもがくように漏れる光 てるてる坊主 てる坊主 明日天気にしておくれ てるてる坊主 てる坊主 てるてる坊主 てる坊主 /*/ これは… この世界は… この体は… この景色は… ゲームに過ぎない どこまで行ったって仮想にしか過ぎやしない でも… 違う 違うよな… この気持ちは仮想じゃない 何かを信じて待つ心も 何かに立ち向かい歩いて行く事も 必死に相手を思い涙する事も 別れを恐れる気持ちも 仮想じゃない この気持ちはデータなんかじゃない これが仮想だとしても これが仮想だって言うなら 仮想もリアルも同じじゃないか /*/ 息が切れる いつの間にか走っていた 走れていた 拗ねてひねくれて駄々こねて 人を泣かせて何が強くなるだ いや、猫を泣かせて…か 意識的に避けていた場所 喧嘩した...
  • 儀式歌唱アイドレス 緊急ログ支援ページ
    儀式歌唱アイドレス きこえますか?この声が、少しでも誰かの希望になるようにと願うこの歌 最後に笑っていられるように この歌は純粋な気持ちより生まれ出る 貴方を想い、歌を力を今、届ける。この声を、貴方の元へ! 悲しみを悲しみで終わらせないために、歌を、祈りを 夜明けを呼びましょう 思いが届くのなら 今高らかに歌い上げましょう 正義の心はここに すべての思い、願いをかなえるために…努力し続ける… 銀の剣は持っていない。光る手もない。だが闇を払おうという意思は想いはこの胸にある。だから唄うのだ想いを込めて。 すべての思いを、願いを、夢を、かなえるために 誰かを想う唄は決して途切れない。人の心に尽きることなどないのだから 想いよ、届け。唄に乗せて どれだけ渇望しても得られない真の愛を諦めきれないバカ者達よ それでも唄おう 「それがどうした」と どれだけ遠くても どれだけ時が...
  • レンジャー連邦政庁録外伝 狩人狩り1~胎動~
    (焦げた靴下をゴミ袋に投げ込んでいく小太りの男) この物語はフィクションです。 実際の団体、個人、政庁当局とは一切関係が…って夜星! ビデオは駄目だって言って… (砂嵐になる画面) ―とある猫士からのテープ /*/ レンジャー連邦政庁禄外伝 狩人狩り1~胎動~ /*/ レンジャー連邦、政庁の長い廊下を一人ぶらぶらと歩く小太りの男。 男の名は、青海 正輝と言った。 イカにもツマラナイと言った風情を漂わせながら欠伸などかましつつ窓の外を見る。 外では浅葱 空がこの国には珍しいメイド服をこれ以上無い程ばっちりと着込み広い中庭に洗濯物を展開している。 その中の小さな純白を見つめ恍惚とした表情を浮かべる青海。 ―イカんイカん。 頭を振る青海。 匂いも何もない靴下に反応してしまうとは。 青海は迷っていた。 愛だ…。 青海は愛に迷っていた。 「イカか…靴下...
  • 祭りの最中に ~やさしい風~
    薄暗い部屋の中。 男は小さな端末を片手に仰向けに横になっている。 男が端末の側面に付いた小さなボタンを押すとカチッと小さな音を立てて端末が開いた。 黒く輝くその画面に映るのは燃えるような黄金の文字。 〔システムはロックの解放を要求します。〕 どうも気を使わせているらしい。 自分の機械音痴に絶対の自信を持つこの男は、この画面を呼び出す度に異なる文面を見て少しだけ微笑んだ。 男は親指を小刻みに動かして単語を入力する。 〔I_Dress〕 男が仮想飛行士として飛ぶためのパス。 この一言でロックは解放され電網への扉は開かれる。 ―でも。 男は少しだけ微笑むと文を追加した。 いつか見た、男よりも遥かに巧みに文字を操る男の言葉。 〔I_Dress、私は飛翔する〕 それと同時に男の精神の転写体が精製され、そこに情報子が吸着し一人の人間が現れる。 名を双樹 真と言った...
  • 祭囃子:後編
    「すいません、英吏さん…ありがとう。」 赤星はうつむいた。何かを祈るような、姿だった。 「こんな事になるつもりではなかったのです。いつかもっと良い形でお会いしましょう。英吏さん、奈津子さん、クイーン。」 潮騒が、人々の確かにそこにいた余韻をかき消していく。今夜は月夜だ、水面が青い。 波に散る、月の姿を見ながらに、思うのは、今宵の顛末。思いもよらないすれ違いが、それでも最後には、気持ちを、理解を半ば押し付ける形にはなったけれども果たされて、そうして最初の英吏たちは元の世界に帰っていった。 緊張していた。警戒していた。 当然のことだった。自由意志も同意もなく、自分の置かれた状況に対する、知識も、心構えも、何もない人間が、突然に理解を求められたのだ。 だが、それでも――― 一方的ではなかったと思う。最後には、対話が出来ていたと、そう...
  • What a perfect blue world 8
     受け継いできた流れを変える、というのは、とても勇気のいることだ――。  ましてそれが、自らの愛した、骨肉を分けた相手の意志ならば。  雫は、もはや敢然とアドラに向かい、自分と共に立ちはだかっている、スバル、もとい、まどかを見て、目を細めながら、そう、友のことを慈しんだ。  受け継がれる流れ――物語という力は、そう、強大だ。  人の認識にすら影響するほどに。いや、むしろ、人の認識をこそ変えるためだけにある力、だからこそ。 「……似たような筋の物語(ストーリー)を繰り返し、描き出し、それを元に、己のようなエラー体の存在を認知させる、か――――  オールドOVERSにも似た仕組みだね、どこでそんなアイデアを拾ってきたのやら……  そして一体、どれだけの『私』たちが、君の掌で踊ってきたのだろうね。  そして、その中のどれ一つとして成功していない、そういうことなん...
  • NWの夏・上
     連邦の夏に蝉は居ない。そもそも、夏そのものが存在していない。あるのは長い雨季と長い乾季、季節を問わないスコール、それくらいだ。  あのしゅわしゅわと油の細かく爆ぜるような鳴き声も、また、樹肌と一体化した茶色い姿も、土中で何年もじっと過ごし、空でつがいと巡り合うために飛ぶ、儚きたった一週間を象徴する、どこか物悲しさを感じさせる羽化の透明な抜け殻も、砂漠の国には無縁の風物詩なのだ。  砂中に潜むのは、日本人である私達にとり、もっと得体の知れない、馴染みの薄いものたちばかりである。  アイドレスの世界は、日本であって日本でない。現実を、手で触れられる領域に限るなら、アイドレスの世界はあらゆるフィクションの世界がそうであるように、現実ではない。しかし、人の心がそこにあると感じさえすれば、いくらでもフィクションは現実に変えられる。悠久の昔より、人は、そうして現実を自らの意志...
  • 怪しいものには目に蓋を
    豊国 ミロ@レンジャー連邦 こんばんは、24時からの生活ゲームをお願いしたくお呼びしました 芝村 記事どうぞ 豊国 ミロ@レンジャー連邦 はい 豊国 ミロ@レンジャー連邦 【予約者の名前】06-00160-01:豊国 ミロ:レンジャー連邦 【実施予定日時】2008/8/7/24 00~25 00 【ゲームの種別】生活ゲーム 【ゲーム時間:消費マイル】  ・1時間:20マイル×1時間 【予約の有無】予約 有り(10マイル) 【召喚ACE】  ・バルク・ドッケン:非滞在:10 【参加プレイヤーの食糧消費】3マイル×1人 【合計消費マイル】計43マイル 【参加者:負担するマイル】  ・06-00160-01:豊国 ミロ:レンジャー連邦:入学済:43 豊国 ミロ@レンジャー連邦 先に数点お聞きしたいことがあるのですが、よろしい...
  • 断章
    「おかーさま、どうしてみんなしななくちゃならないの?」 すずろな砂漠の夜の家、白い髪をしたむくむくの子供が母親の膝にすがりついて見上げていた。 アイドレス世界の命の始まりもまたこの世界と同じようにずっと昔から続いている。また、それと等しくプレイヤーたち仮想飛行士が思い描いたその瞬間から誕生したとすることも間違いではない。 「それはね、愛佳、大切な人のために今いる場所を譲ってあげるためなのよ」 やさしい手が頬をなでる。すりすりと、自分よりも二まわりは大きなその手に手を重ねてほお擦り甘える。 「わかんないよ」 素直な問い返し。 きゅ…と、頬をなでていた手が、考えこむように止まった。 「お父様も、お母様も、そのまたお父様のお父様も、お母様のお母様も、みんなみんな、いつか、あなたとおんなじことを、おんなじように聞いてきたわ」 「うん」 指に、しがみつくようにして握りしめながらうな...
  • 小笠原の夜
    遠く、祭囃子が聞こえた。 とっぷりと夜が打ち寄せている。渡航してきた船の灯りがぼんやりと視界の中で漂っているぐらいで、一面に、響く潮騒と、暗闇が、まるで、波に乗せて小さなこの島に夜を運んで来ているかのような錯覚を誘う。赤星は、星月夜の微かな光だけを頼りに桟橋近くを小走りに、あちこち海岸沿いの軒先をのぞき回っていた。 あった。 ひょいと段差を飛び越えて確認する。それから人気がないだけの桟橋の上でへたくそな介抱を続けている奈津子を促して、英吏を近くの海の家のベンチに寝そべらせる。海の家、というのも便宜的な呼び方で、港に近いから、観光客が見込めるのでそういう風に運営しているというだけで、今日は祭りだから、軒先だけ残して店主も屋台を開きにいったのか、それとも祭りぐらいは客になりにいったのか、ともあれ、無人のそこを、赤星は拝借することにした。 真白く気高い毛並みをした...
  • 短編『唇の雪』4
     その日も私は夜の仕事に出かけていた。  もう、半ば以上も砂に埋もれた廃村の、車中で一人、毛布に身を包み、息を吐きかけてアカ切れの両手をこする。  いつもは眠りを誘う雨足の単調さも、今は間断なく神経に障る厄介者だ。  振り返った後部座席のシートには、日用品だけれども生活必需品ではない、たとえばダイアリーだとか、おもちゃだとか、そんなものだけがそぞろに積まれていた。毛布みたいな実用品は、真っ先に持っていかれているので、これだけが自前だ。 「…………」  ひどく寒い。  空では狂った月が蒼然と雨の砂漠に光を振舞っている。  雨なら雨らしく曇れよ。  乾いた陸は、熱を吸わない。ただ、水を奪うだけだ。  降る雨は水を与えない。ただ熱を奪うだけだ。  金属の車体は氷のように冷え切っている。ウィンドウを下ろしていても、ガラス越しに冷気の這入ってくるのは避けられない。 ...
  • 男が逃げ出す100の理由
    豊国 ミロ こんにちは。17時から小笠原ミニイベントを予約していた豊国 ミロです。 芝村 記事どうぞ 豊国 ミロ こちらになります 【予約者の名前】0600160:豊国 ミロ レンジャー連邦 【実施予定日時】2月26日/17 00~18 00 【ゲームの種別】小笠原ゲーム 【イベントの種別(時間):消費マイル】  ・ミニイベント(1時間):10 【召喚ACE】(※小笠原のみ)  ・バルク:非藩国滞在:10 【合計消費マイル】計20マイル 【参加者:負担するマイル】  ・0600160:豊国 ミロ レンジャー連邦:仮入学(既):20 豊国 ミロ まだ2月ですがバルクさんと会えますでしょうか?(※1) 芝村 ええ。 豊国 ミロ では、イベントなのですが、もし可能だったら宰相藩国の壁画にある神話を見に行きたいのですが、でき...
  • O島の伝説
    /*/ 「たすけ・・・っぷぁ、だ、誰か助けて!!」 波の逆巻く海に落ち、私は必死にもがいていた。 何度も波に飲まれながら、必死で助けを呼ぶ。 苦しい。 息が続かない。 必死にもがいても、すぐにまた波に飲まれてしまう。 助けて。 たすけて。 だれか・・・ 「たすけ・・・っ!!」 何度目かの波に飲まれ、私は意識を失った。 /*/ 私は、商家の下働きとして貿易船に乗っていた。 仕事は、船旅中の食事の支度と、洗濯。 場所が船の上ということを除けば、いつもの仕事。 だけど、今回はそれだけではすまなかった。 海賊船に、襲われたのだ。 洗濯中だった私は、どーんという衝撃で壁に叩きつけられ、気を失った。 気がついたときには、商家の旦那様共々縄で縛られ、海賊船の中にいた。 船員さんたちも一緒みたい。 どう...
  • レンジャー連邦の日々・横山の場合
    洗い物をしながら横山は、軒先から伝わる熱い気配の源を時折眺めていた。裏通りの安い宿は砂避けのために台所の窓ガラスのような使用頻度の低い場所ははめこみにしてあり、手元をぼんやりと照らす灯りだけでは、砂漠の街の夜更けに人影を充分に確かめることは出来ない。だが、そこにいるのが誰なのか、横山には確かめるまでもなくよくわかっていた。 相変わらず、休む事を知らない。 しかもその鍛錬には私欲がない。 私欲がないから自分に対する甘えもなく、ただ客観的に積み重ねる。それを、延々と繰り返している。 強くなるわけだ。 道場で毎日最後まで顔を突き合わせていた頃に比べても、もう全然私じゃ敵わない。 かちゃかちゃかちゃ、きゅう。 ぽた、 ぽた、 ぽた、 …… 静かにコップや皿を布巾で拭う。その表面に鈍く照り返しが映りこむのを、どこ...
  • ジョニ子受難編
    ジョニ子は思っていた。 かつて御先祖様も、こうして船に揺られてこの海を渡ったんだろうか。ああ、ああ、潮騒の調べが喉を誘う。潮風はべっとりとしてちょっと苦手だけど、名付け親の小奴さんと一緒に久しぶりに旅が出来るのが嬉しいな。ふぁらふら、首まわりに着けた羽飾りもそよいで気持ちいい。 歌おうかな。歌いたいな。歌おうかな。歌っちゃおう。 「にゃあーん!」  * * * 豊国ミロは思っていた。 この金色の毛並みの猫、可愛いなー。犬は犬でチャーミングに可愛いけど、猫はコケティッシュに可愛いな。ああ、それにしてもいい天気。こんな日差しはこの国に来て初めて浴びたよ。日焼け大丈夫かな。それにしても、冒険だなー。ああ、違った、冒険じゃないか。でも、それにしてもいい天気。 あれ、しちゃおうかな。だめかな。しちゃいたいな。しちゃおう。 「やっ、ほーー...
  • 間奏
    病室の窓の外は青かった。 「綺麗ですね、空」 彼女は、それが自分の名前ではなく、一般的な名詞を指した発言だという事に気付くのに数秒ほどをかけてしまって、その照れ隠しのように皮を剥いた林檎を彼に皿ごと差し出した。 ここはレンジャー連邦王立病院。 レンジャー連邦に所属するフィクションノートの1人である浅葱空は、もう大分回復して、ほとんど本復と言ってもよいほど健康になった少年、グーンの見舞いに来ていた。 グーンとは、先日王宮を襲撃した暗殺者レグ=ネヴァや、その正体であるところの通称ムゥエ少年とは何の関係もない、ただの怪我人である。 と、いう事に、対外的にはなっている。 グーン=メ=ラウド。 竜士の家系であったというムゥエの名前をアナグラムにした、新しい名前だ。 Goon=maraud/Dragoon=MuA そうだねと頷きながら、空はふと、名前の話題で思い出す。 「ど...
  • 始まりの物語のためのある風景(3)
    「あー君らにちょっと頼みごとがあるんだが」 「行くなら北国と森国とどちらがいい?」 「ちなみに行く場所はるしにゃんかジェントルにゃんにゃんなんだが」 「るしにゃんはいいよー王猫のアルフォンスちゃんがかわいいよー」 「ジェントルはねー、んー、なんといっても他にない元わんわんだからねー、珍しいものがきっとたくさんあると思うよー」 「どっちがおすすめかって言ったらちょっと迷うんだよねー君らの中でどっちがいいか決めてくれないかなー」 「決まったら教えてねー、出張費ちゃんと文族予算から計上するから」 「よろしくねー」  /*/ そんなわけでジョニ子とドランはジェントルにゃんにゃんにやってきていた。 同じ旅行へ行くなら珍しいところへ行きたいというジョニ子の意見が採用され、ドラン少年も、同じ星見司関係の調べ物なら、先に星辰の塔へと登ったジェントルにゃんにゃんの方が今頃情報の整理も落ち着いていてよい...
  • 連邦の民 ~没プロット~
    ツキイロキセキ ~連邦の民~ 目次 ?天体観測 初日曇天の新月 百万の夜明け 唇の訪れ 二日目美少女軍団、現るガールズサイド ボーイズサイド 双軸の針 三日目歴史の道程 すれ違う時 岬の告白 守りたいもの 十五日目ツキイロキセキ 登場人物 月色(つきいろ) アラタ・キイ ソーマ ユイ ショウ コトハ リリ=レーヴェ艦氏族=イシュタル マリ=レーヴェ艦氏族=イシュタル 言条 充(げんじょう みちる) 準・登場人物 月色の同期 月色の上官 東都の町の方々 コトハの父(町長) レーヴェ艦氏族の方々 ホープ・舞踏子夫妻&新生児 《シーン1・天体観測》 時:卒業前夜 場所:東都大学屋上 天候:晴天(満月) 【登場キャラクター】 月色 →主人公。男。明日、東都大学を卒業する。同期の面々も一緒に、軍への配属が決まっている。ただし部署は一人を除いてバラバラになる予定であり、そ...
  • アイドレス(ルール再約):補足編
    * アイドレス(ルール再約):補足編 ●数値と判定 基本タイプと職業にはそれぞれ性能があり、その数値の組み合わせとゲームで求められる難易度の数値とを比べて、自分の方が高いと成功しやすくなります。差によっては絶対成功、絶対失敗、どちらもありえます。 数値を押し上げるのが、チャットでの応援や作戦案、小説・イラストの効果で、当然何でも沢山あればあるほど効果は高くなります。また、それぞれのアイドレスについている特殊能力や各種兵器を利用することで、この数値を底上げすることも出来ます。その際には資産の消費が生じたり生じなかったり、状況によっていろいろです。 ●着替え 職業は一人一人がチーム全体で持っている組み合わせパターンの中から選んで決める必要があります。ターン開始時、イベントで変更可能と指定された時、藩国から藩国へと移動した時、そして新しい組み合わせパターンを獲得した時...
  • 無限爆愛レンレンジャー:第一話(6)
     チリンチリン――  来客の合図に、ドアの上部をさり気なく飾ってある妖精像の手にした鈴が鳴る。 「あ、いらっしゃいま――」  接客業の常として、そこだけは条件反射になっているらしい。  バンダナの彼が、応対のためにレジ前まで小走りで迎に上がろうとする、足が止まった。  一人、二人、三人、四人、五人……その団体客は、ゆっくり、優雅に、余裕を持って入店してくる。まるでそれが唯一守るべきマナーだと、暗黙のうちに主張するように。  一人目は、コックコートに高いコック帽をした、長身の男だった。険の強い顔立ちで、料理人というより、マフィアの若頭とでも説明された方が納得してしまう、いかにも鋭い人相をしている。  二人目は、燕尾服に身を固めた、愛想の良い小男だった。そして愛想の良い、というのは、嘘だ。営業スマイルのような、陳腐な安物の笑顔ではなく、わざわざその筋の芸術家が悪意を込...
  • @wiki全体から「悲しい涙は最悪の調味料(七)」で調べる

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