10 五番目物「鬼顧」

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10 五番目物「鬼顧」 - (2022/08/06 (土) 17:29:55) のソース

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 そのいでたちして
 人にも似ぬものもなく
 されどその髪の色はあかあかと
 人の肉の色にも似て


いつより生まれて
いつよりその身を落とした
それは何れも内より出でたもの
血の味を覚えて


深山は深く
大江山に
あれらが居所となり

わたるたづきも絶えてなお
この身よ 生きねばならぬ
何に替えようと


いかないかな兵とて
人の子なれば 皆 同じことよ
鬼の居ぬ間にその心
砕け
いずこへいざなわれるのか
にどとうきよにかえれぬか


あなかま
口を噤め
その腕のあって尚
人情あるものを失わず


 そのなりわいして
 けして人には似ぬこと
 ならばそのわざ照らすはあおあおと
 人の魂の色にも似て


その昔には
人に畏れられては
されどいつしか人の手にかかって
あああの鋼の音


あれなるは遠く
羅城門に
今宵の愚かしきもの


わたるたづきを得てもなお
この身は 生きねばいけぬ
何に替えねば


いかないかな理さえ
人の子なれば 皆 同じことよ
鬼の居ぬ間はこの心
力け
いずこへといざなうものぞ
ひとをくらうがさだめなり


あなかま
口を噤め
その腕の痛みして
人情あるものを失わず


人はみな そのこころのうちなる
鬼をみて 恐れおののく

鬼はみな そのこころのうちなる
人をみて されども人に戻れず


いかないかな物語も
鬼の子なれば 皆 同じことよ
人の居ぬ間に討たれなん
風け
いずこへといずこなれども
このあるところ天の道


あなかま
口を噤め
その腕を戻しても
人情あるものを失わぬよう

斃せ
鬼の声を
未だ続く鬼退治
人情あるものを失わぬよう
}
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