true MAMAN あなたを見ている人がいる~序章~

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<p> 台所に立って、理恵子は夕食の支度をしていた。<br />  ――さあ、どうしたものかしら。<br />  支度をしながらも理恵子は、全く別の思索に頭の大部分を支配されていた。<br />  三者面談はもうすぐだった。今回の面談では進路についての具体的な話しをしなけれ<br /> ばならない。具体的な話をするには親子でまず話し合わねばならないが、仲上家の2人<br /> の子供は、将来について、話し合う事を好まないようだった。<br />  一向に跡を継ぐと言ってくれない息子も悩みの種だが、娘の方は別の意味で尚深刻だ<br /> った。<br />  そして先刻、学校から電話が入った。進路希望調査票(いつの間に書いたのか、そんな<br /> もの)の内容についての確認だった。</p> <p><br /> 「あなた、お話があります」<br />  食後のひと時だった。眞一郎はもう自室に戻っている。理恵子は、敢えて眞一郎がいなく<br /> なるのを待っていたのである。<br /> 「ん、なんだ?」<br /> 「今日、学校から連絡があったんですけど・・・・進路の事で」<br />  そういうと、ファックスで送ってもらった進路希望調査票を見せる。<br />  ひろしはそれを一瞬だけ目を落とし、すぐに理恵子を見た。<br /> 「これがどうかしたか?」<br /> 「これで本当にいいんですか?これじゃ――」<br /> 「まだ言ってるのか。眞一郎には好きな事を追求させてやろう」<br />  今までにも何度も夫婦で話し合った事だ。杜氏については住み込みで修行している少年が<br /> おり、他の従業員と協力していけば蔵を守ることはできるだろう。その気のない息子より、やる<br /> 気のある弟子に期待した方が現実的だ。<br />  だが、今日の理恵子は引き下がらなかった。<br /> 「眞ちゃんは、自分の事だけを考えていればいい立場の子じゃありません」<br /> 「まだ言ってるのか。眞一郎は眞一郎。仲上の家は関係ない」<br />  スッ<br />  理恵子がもう一枚の紙を差し出した。ひろしは今度は目を離さなかった。<br /> 「これは・・・・」<br /> 「もう一度、眞ちゃんと話をしてください。こちらは私が説得します」</p> <p><br />                         続</p>

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