Amour et trois generations episode 0

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 鏡の前で確認する。  髪の毛は大丈夫?服はおかしくない?にきびなんて出来てないよね?  視線はいつの間にか唇に。  そっと指を当てる。  口紅を引いてみようかしら?もしかしたら、もしかするかもしれない。  苦笑して首を振る。幾らなんでも先走りすぎね。  いつも通りでいこう。キメすぎて、安売りしてるように見られたくない。  私は時計を確認する。もうそろそろ行かなくちゃ。私は家を出た。  眞一郎が待ってる神社へ。  初めて会った頃はまだ私の方が背が高かった。  おばさんのスカートにしがみついて、なかなか人前に出ようとしないような、内気な男の 子だったのだ。 「あたし、愛ちゃん。お名前は?」 「・・・・眞ちゃん」 「眞ちゃんいくつ?」 「・・・・・・・・」  一言も発さず、指を3本立てて前に突き出す。 「・・・・今川焼き、食べる?」  私が今川焼きを差し出すと、眞一郎はおばさんを見上げた。おばさんがうなずくと恐る 恐る手を伸ばし、今川焼きを受け取る。 「眞ちゃん、ありがとうは?」  おばさんに促され、 「ありがとう・・・・」  と頭を下げる。 「どういたしまして」  お姉さんらしく、お母さんに言われる前にお返事をする。眞一郎は今川焼きを一口かぶり ついた。 「おいしい?」  訊いてみる。  眞一郎はにっこり笑って頷く。  今川焼きを気に入ってもらえて、私も嬉しくなった。  背はすぐに追い越された。私は小さな頃から小さくて、眞一郎が幼稚園を卒業する頃に はもう彼の方が大きかった。  その少し前から、女の子を連れてくることが多くなった。明るい色の髪をした、可愛い感 じの女の子で、比呂美という名前だった。  私の前では甘えん坊な眞一郎が、比呂美の前では少し威張り気味に、比呂美を引っ張 るように行動するのがおかしかった。 「比呂美、本屋行こうぜ」 「転んだくらいで泣くなよ、比呂美。服が汚れたのは俺もおばさんに謝ってあげるからさあ」 「比呂美、今度の夏祭りは浴衣で行こう」  私たちは3人で遊んでたけど、比呂美ちゃんはいつも眞一郎について歩いていた。比呂 美ちゃんから見て、私は「眞一郎君の幼馴染」であり、私から見た比呂美ちゃんは「眞一 郎の同級生」だった。  やがて、それぞれがそれぞれに友達を増やす中で、自然に一緒に遊ぶ機会は減ってい った。  小五の頃から、私が成長期に入り、再び眞一郎を追い抜いた。  比呂美ちゃんも成長期に入り、眞一郎は3人の中で一番背が低くなった。眞一郎はもの 凄く悔しがり、店に来ても牛乳を飲むようになった。 「ほーら眞ちゃん、早く大きくなりなさい」  私はそう言いながら、眞一郎の頭をぽんぽんと叩いてからかった。眞一郎はますます悔 しがった。  それも長くは続かなかった。眞一郎は中学に入ると背が伸び、中一の夏休み前に私を 追い越してしまった。  再び私より高くなった眞一郎を見たとき、突然彼を意識した。  それまで弟みたいな男子だった眞一郎が、男の子に変わった。頬が熱くなるのを感じる。 「あーあ、もう抜かれちゃった。そんなに慌てて伸びなくたっていいのに。もう少し、お姉さんの顔を立てなさい」  精一杯の憎まれ口を叩いてみる。何か言い返してこないかと顔を窺う。 「無茶言うなよ。こればっかりはどうしようもない。うちは両親とも大きいから、大きくは なる家系だよ」  極普通の答え。私の背を抜き返した事は、それほどの快挙ではないようだ。  女の勘が、一つの可能性に辿り着いた。眞一郎が追い抜きたいのは私じゃない。比呂 美ちゃんは依然として眞一郎より背が高かった。 「で?まだ牛乳飲む?用意してあるけど」 「うん、貰う」  本当は店に牛乳は置いてない。眞一郎が来る時のために、無理を言って2本だけ配達 してもらっているのだ。眞一郎が来ない日は自分で飲んでいる。  眞一郎が帰ると、なんとも言えない寂しさが胸に流れ込んでくるのを感じた。  私は自分が初恋をしていることに気がついた。  電話があったのは昨夜が初めてだった。携帯の番号は教えてあったけど、かけたこと も、かかって来たこともなかった。設定はしたけど、一度もなったことがない、彼専用の着 メロ。出るとき少し手が震えた。 「はい、もしもし?」 「あ、愛ちゃん?俺俺、眞一郎」 「わかってるよ。どうしたの?」  かすかな期待。そんなはずはないと思いつつも、どうしても捨て去る事が出来ない。 「あの、さ。愛ちゃん、明日、予定あるかな?」 「え、ちょ、ちょっと待って」  スケジュールを確認するフリをする。予定はあるのはわかってる。だけど、断れない用事 じゃない。 「え・・・・と。特にないけど」 「よかった。じゃ、じゃあ、明日・・・・会えないかな?」 「え?」  心臓が高鳴る。まさか、そんな少女漫画みたいな話!? 「い、いい、けど・・・・どうしたの?改まって?」  極力軽い口調で訊いてみる。駄目だ。震え、止まれ! 「いや、ちょっとね・・・・それじゃあ、神社で。よろしくね」  電話が切れる。息が苦しい。大きく肩で息をする。  夢、じゃないよね?  何度も何度も電話の内容を思い返し、夢でも、幻覚でもない事を確認した。 「どうしよう・・・・」  その夜はあまり眠れなかった。 「ごめん、ごめん、遅くなった」  神社にはもう眞一郎が待っていた。 「愛ちゃん。こっちこそいきなりごめん」  眞一郎が逆に謝ってくる。 「ううん、全然いいの。で、用は、何?」  練習しておいた台詞を言う。いろんなパターンを頭の中で考えて、大事なところで噛まな いように何度も何度も練習しておいたのだった。  願わくば、この後もシミュレーション通りになりますように。 「実は・・・・会って欲しい奴がいてさ」  えっ・・・・?                            了 ノート 愛ちゃんのこの後の気持ちについては書きません。それは皆さんの胸の中で

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