※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

「春雷-7」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

春雷-7」の最新版変更点

追加された行は青色になります。

削除された行は赤色になります。

+――第七幕『あなたの大切って、なに?』――
 
+ 眞一郎と比呂美の『あの夜』からの数日間、眞一郎は、心と体の潤滑油が切れてしまっ
+たように、ぎこちなかった。それでも、比呂美がいつも通りの笑顔を向けていたことで、
+徐々に『なめらかさ』を取り戻していった。
+ 比呂美も、彼が自力で立ち直ることを期待していた。
+ 五日ぐらい経って、比呂美は、眞一郎に自分をぶつける頃合を計っていた。いつもの
+『寒い冗談』が眞一郎の口から出はじめているのを確認すると、よし、今日よ、と比呂美
+は『決行の旗』を心に掲げた。
+
+ 眞一郎と比呂美は、久しぶりに一緒に歩いて下校していた。まだ夕陽は落ちていなかっ
+たが、空はきれいな茜色に染まっていた。比呂美は、夕陽が見たいと言って、眞一郎を
+『あの砂浜』へ誘った。
+ 砂浜に二本の点線が徐々に伸びていく。
+ 比呂美は、スカートの裾を絞って握り『あの地点』へ向かって歩いていく。眞一郎は、
+比呂美の後につづく。やがて、比呂美が足を止めると、眞一郎は、比呂美の右横に来て、
+止まった。
+「……この場所……覚えてる?」
+「……うん」
+「眞一郎くんと、私が、初めて……キスした場所」
+「…………」
+「初めてにしては、うまかったでしょう?」
+ ふたりは並んだまま、海を見ていた。
+「……わからないよ、そんなこと」
+「もう、キスの感想がそれ?」
+ 比呂美は、正直に不満を漏らして呆れた。
+「いや……その……や……温かかった」
+ 眞一郎は、やわらかかった、と言おうとして止めた。その言葉は使ってはいけないと思
+ったのだ。
+「ふ~ん、私は、冷たかった…かな……寒かったしね」
+ 沈黙。ふたりは、まだ手も繋がない。
+ ふたりの間を、海風が疾走する。観客のカモメたちは、二人に演技のつづきを求めるよ
+うに騒がしく啼いた。そんな観客に耳を貸したつもりはなかったが、ふたりの一騎打ちの
+始まりのゴングが鳴った。
+
+ ザッッパァァ――――ン
+
+「…………ねえ」
+「ん?」
+ 気持ちのない眞一郎の返事。
+「これから、私の部屋行って……エッチする?」
+「なっ!!」
+ 眞一郎は、すぐさま比呂美を見て、目を白黒させた。比呂美は、海を見たままつづけた。
+「セックス、しようか?」
+「な、何だよ、急に……」
+ 眞一郎は、比呂美と反対側の方へ体を向けた。眞一郎のそんな様子に比呂美は苛立ち、
+眞一郎の正面へ移動して、射抜くような目をしてこう言った。
+「私を……抱いてくれる?」
+「比呂美、どうしんたんだよ」
+ 眞一郎は、すぐさま目線を逸らしたが、怒りのようなものが込み上げてきて、肩が少し
+振わせた。
+「私を犯して…」
+「おまえ! 何言ってるんだよ!」
+ 比呂美を睨み返す眞一郎。しばらく、ふたりの睨み合いがつづいた。
+ 比呂美は、もうスカートも押さえていない、髪も気にしていない。比呂美の心情を表し
+たように、長い髪が水平方向へ伸び、けたたましく揺れた。
+ そして、この睨み合いに最初に折れた眞一郎は、とても『カノジョ』に対して相応しく
+ない言葉を、我慢できずに発してしまった。
+「お前って、いやらしい女だな」
+ 比呂美は、この言葉に反応して、目を見開いた。
+
+……いやらしい、『女』……
+
+ こんな言葉を、こんなに早く、眞一郎から引き出せるとは、比呂美は思わなかった。眞
+一郎の『本音』に限りなく近い言葉。例え、自分のことを褒める言葉ではなくても、紛れ
+もなく、眞一郎の比呂美に対する心象だった。比呂美のイメージの一面。比呂美は、芋づ
+るの根っこをつかんだのを感じた。
+
+……大丈夫、このまま吐き出させ、私にぶつかって来させればいい……
+
+ だが、恋人としては、この発言を許さないフリをしなければいけない。
+
+ パンッ!!
+
+「くッ」
+ 比呂美は、眞一郎の頬を叩いた。
+ 眞一郎は、すぐさま目線を比呂美に向け、そのあと斜めに向けさせられた首を、比呂美
+の方へ戻し、睨み返した。
+「なんで、俺が、叩かれるんだよ」
+ 眞一郎の右手が徐々に上がりはじめ、胸の辺りでピタッと止まる。
+「なによ、叩きたいなら、叩きなさい。ムカついたんでしょ。」
+「よせよ」
+「遠慮することないよ。私が『女』だから? 『カノジョ』だから? 関係ないよ」
+ 眞一郎、右手を下ろし、横を向き俯く。
+「そんなこと言うのやめろっ」
+「あなたが言わせているんじゃない、私に、こんないやらしいこと」
+ 眞一郎、再び、比呂美を睨む。ここからは、怒涛の言い合いが始まった。
+
+眞一郎「言わせてない!」
+比呂美「言わせてる」
+眞一郎「言わせてねーよ。お前、おかしーよ」
+比呂美「あなたの方がおかしいよ」
+眞一郎「どこが」
+比呂美「押し倒した『カノジョ』を残して帰るってなんなの? バカじゃないの?」
+眞一郎「はあ? 『あの夜』のことを言ってるのかよ」
+比呂美「そうよ!」
+眞一郎「したかったのかよ」
+比呂美「そうよ」
+眞一郎「そんなにしたかったのかよ」
+比呂美「そうよ!」
+眞一郎「じゃあ、怒ってるんじゃないか」
+比呂美「怒ってるわよ」
+眞一郎「じゃあ、そう言えよ」
+比呂美「言う前に帰ったじゃない」
+眞一郎「嬉しかったとか、嘘つくなよ」
+比呂美「あなたが顔、真っ青にしてるからでしょ?」
+眞一郎「やさしくしたつもりか?」
+比呂美「いいえ、とんでもない」
+眞一郎「じゃあ、なんだよ」
+比呂美「おばさんにばれるからよ」
+眞一郎「な!」
+比呂美「あのくらいで動揺しちゃってさ」
+眞一郎「動揺なんかしてない」
+比呂美「びびって帰ったじゃない」
+眞一郎「びびるとかそういうことじゃないだろう」
+比呂美「あのとき、許してくれって言ったよね」
+眞一郎「ああ」
+比呂美「何を許して欲しいの」
+眞一郎「それは……お前を……」
+比呂美「はっきり言いなさいよ、誰も聞いてないんだから」
+眞一郎「お前を犯そうとしたことだよ」
+比呂美「ああ~そっち」
+眞一郎「そっちって何だよ」
+比呂美「てっきり、すごすご帰ることかと思ってた」
+眞一郎「だってお前、あんな大声で、やめてって」
+比呂美「眞一郎くん、何も分かってない」
+眞一郎「は?」
+比呂美「あのとき、自分でも分けわかんなくなっていたよね?」
+眞一郎「…………」
+比呂美「あのとき、私に何をしたか覚えてる?」
+眞一郎「……ああ」
+比呂美「なんで、あんなになっちゃうのよ」
+眞一郎「それは……」
+比呂美「なんで答えられないのよ」
+眞一郎「お前が……あんなに」
+比呂美「あんなに?」
+眞一郎「さびしい思いを……」
+比呂美「それは違うよ」
+眞一郎「え?」
+比呂美「ずっと自分に我慢して溜まっちゃったからでしょう?」
+眞一郎「な!」
+比呂美「性欲のことだけ言ってるんじゃないよ」
+眞一郎「…………」
+比呂美「あのとき、いろいろ限界だったんだよ、眞一郎くん」
+眞一郎「…………」
+比呂美「私も悪い。合鍵渡したり、家にまだ帰らないとか言ったり」
+眞一郎「それは、お前にとって、心の……」
+比呂美「要は、私のこと大切に思ってるのに、なんであーなっちゃうかってことよ」
+眞一郎「…………」
+比呂美「私のこと傷つけたくない、と思っているよね?」
+眞一郎「ああ」
+比呂美「私のこと大切にしなきゃ、と思っているよね?」
+眞一郎「ああ」
+比呂美「あなたの大切って、なに?」
+眞一郎「え?」
+比呂美「あなたの大切って、なんなの?」
+眞一郎「…………」
+比呂美「…………」
+
+「比呂美が、悲しんだり、傷付いたりしないように、気遣う、こと」
+ 比呂美、そのあと、優しい口調になった。
+「じゃあ、私が、笑ったり、喜んだりするように、気遣ってはくれないの?」
+
+ あぁっ……!
+
+ 眞一郎に衝撃が走る。
+「……あのね、今の眞一郎くん見ていると、正直、つらいの」
+「つらいって……」
+「いつも、私にね、一生懸命なんだもん。見てらんない」
+「おれ……」
+ 眞一郎から大粒の涙がこぼれる。
+ 
+……眞一郎を私が泣かせてしまった。でも、これでいい……
+
+「私のこと考えると、苦しかったんだよね? 悲しかったんだよね? 好きな女の子の両
+親がいっぺんに亡くなって、その子から笑顔が消えて。それを間近で見てきたんだもんね。
+一生懸命にもなるよね。何とかしてあげなくちゃって」
+ 眞一郎の足がガクッと崩れ、膝が砂浜に突き刺さった。
+「眞一郎くん、言ってくれたよね、私が仲上家に来たとき。みんな、そばにいるからっ
+て。」
+「みんな……そばに……」
+「その言葉が……その言葉をあなたが言ってくれて、どんだけ私が……私、あなたのそば
+にいなきゃって思った。そうしなきゃ、生きていけないって。眞一郎くん、いま、こうし
+て、そばにいるじゃない。もう、それだけで充分なんだよ…………充分なの……」
+ 眞一郎の両腕も砂浜に突き刺さった。
+ 比呂美は、そんな眞一郎に覆い被さるように優しく体を寄せた。
+
+「もう……昔の私は見なくていいんだよ。……今の私だけ見てほしい」
+
+……今の、比呂美?
+  今、昔
+  昔の、比呂美
+  両親を亡くした、女の子
+  両親を亡くした、俺の好きな子
+  俺の、好きな人
+  笑顔を失った、比呂美。まるで、死人のように。
+  ビクビクしていた比呂美。
+  ずっと、好きな気持ちを閉じ込めていた比呂美。
+  …………
+  ずっと、俺を好きでいた比呂美。
+  ずっと、俺を待っていた比呂美。
+  俺は、そんな比呂美を、好きになった?
+  俺は、そんな比呂美を、好きになったんだ。
+  今の、比呂美を……
+
+ ぅうわああああああぁぁぁぁぁーーーーーーーー
+
+ ぅぅぅああああああぁぁぁぁぁーーーーーーーー
+
+ 二度の慟哭。
+ 今、眞一郎の心の奥の『壁』が砕け、ずっと溜め込んできた、『欲心』が音となって全
+身から放出されている。がんじがらめになっていた眞一郎の『心の光』が、ようやく全て、
+外へ放たれ出したのだ。
+『石動乃絵』は、持ち前の純真さで、このバリケードを天使の様に軽々とくぐり抜け、眞
+一郎の『心の光』を感じては、彼の心を照らした。
+『湯浅比呂美』は、眞一郎を想い続けた強固な気持ちでもって、このバリケードを一本一
+本引き千切り、『心の光』を解放させた。
+ お互いの『心の光』の全てを感じれるようになった今、眞一郎と比呂美は、一緒に笑い、
+一緒に泣き、一緒に転び、一緒に立ち上がって、励まし合っていくだろう。どんなに悲し
+い境遇であっても、お互いに好きでい続けたことが、『それ』を手にすることになったの
+だ。『幸せ』を――。
+
+ 比呂美は、眞一郎が泣き止んでも、しばらく彼の体を包み込んでいた。
+ 冷たい海風が吹き込んでも、ふたりにはそれを通す隙間はもうなかった。
+ 比呂美は、眞一郎が落ち着いたのを感じると、肩に手をかけ、顔を上げさせた。ひどい
+顔だったが、優しく笑っていた。
+ 比呂美も、顔に髪の毛が無茶苦茶に絡まっていた。眞一郎は、手に付いた砂を叩いて落
+とすと、比呂美の髪を丁寧に直しはじめた。比呂美も眞一郎の触っていない部分を自分で
+直した。ある程度、髪の毛が整うと、比呂美は、右手で拳を作り、眞一郎の口に近づけた。
+テレビのリポーターつもりである。
+「本当の眞一郎さん、今の心境はいかが?」
+「…………」
+ 眞一郎は、そのまま黙っている。
+「ん?」
+ 比呂美は、首を少し傾け、さらに覗き込む。
+「お前の……裸が見たい」
+ 比呂美は、その拳を作っていた手で、眞一郎の鼻をつまみ、めっと睨んでこう言った。
+「……まだ、だめ」
+ ふたりは、睨めっこをした後、突然噴き出した。
+ 眞一郎が先に立ち上がり比呂美に構わず歩きだした。比呂美は、そんな彼をしばらく目
+で追って立ち上がり、スカートを二、三度叩いて、後をついていった。
+
+ 砂浜へ下りる階段を上がり、歩道を歩き、三叉路の信号を過ぎる。
+ しばらくして、竹林へ続く道に入った。あの『告白』の場所を過ぎ、右に折れれば、白
+い長方形の建物が姿を現した。
+ やがて、ふたりは、カンカンと鳴り響く鉄製の階段を上がり、扉の前に立った。
+ 比呂美は、ハートの『輪っか』の付いた鍵をポケットから取り出し、ドアを開け、カレ
+を部屋の中へ誘った。カレの本当の思いを受け止めるために……。
+ そのあと、一陣の温かい風が吹き込み、降り積もった桜の花びらを、一斉に天に向かっ
+て舞い上がらせた。そして、それは、決して落ちることなく、宙に散った。
+
+
+――終幕『背中をポンポンしてくれて』――
+
+ 窓から差し込む懐かしい光、柱の木の匂い、微かな畳の匂い、優しくむ迎えてくれた机。
+ ひとりの少女が、自分の背丈よりも大きい鏡に前に立っていた。服をまだ着ておらず、
+下着のままで。肩まで伸びた栗毛色のサラサラした髪、胸を包む純白の羽衣、引き締まっ
+た体、ぷっくり膨らんだ二つの丘に張り付いた水色の縞模様が、鏡に映し出されていた。
+ 少女は、目線を鏡に固定したまま首だけを横に向けた。そして、左手で後ろ髪の毛先を
+つまんだ。こんどは首をさっきとは反対方向へ向け、右手で同じようにした。
+ 自分自身に何かOKを出したのだろう、少女は再び鏡に向き直り、両手で自分の頬を軽
+く叩いた。
+「よし」
+ 昨日とは違う自分に喝を入れると、その空間の外から、聞き慣れた声がやってきた。
+「比呂美、朝飯できてるぞ」
+「今着替えてるとこ」
+ 少女は、白いブラウスを体に引っ掛け、ボタンを留めると、スカートを胴にストンと落
+とし込んだ。そして、左脇のファスナーを閉めた。
+「いってきます」
+ 比呂美は、自分の思い出の存在にそう告げると、自分に向けてくれる温かかな笑顔の元
+へ向かった。
+
+ 湯浅比呂美は、ゴールデン・ウィークに仲上家へ戻ってきた。
+ そのこと自体、時間の問題だったのだが、もうひとつ、また、麦端の民を震撼させるこ
+とをやらかしていたのだった。
+ 引越しの作業が終えた日、比呂美と眞一郎の母・理恵子は、美容室にきていた。比呂美
+が中学に入る前から伸ばしていた髪をばっさり切るというのだ。そのことを告げられた仲
+上家の人たちは、全身が凍りついた。そのとき、ヒロシと理恵子は、すぐに眞一郎の顔を
+注視したが、眞一郎の顔は、穏やかだった。そんな予感をもうすでに眞一郎は感じていた
+のだった。
+ 比呂美が美容室に出かけるとき、理恵子は一緒について行くと言って聞かなかった。
+
+ 鏡の前に座る比呂美。比呂美の長い髪がやさしく梳かされる。
+ 沢山の思い出が詰まった髪。いつも、どんなときも自分の傍らにいて、優しく頬をくす
+ぐってくれた髪。でも、今の比呂美には、もう必要ないのだ。それに替わる沢山の愛情を、
+手にしたのだから。
+ 比呂美の髪に、銀色の切っ先が近付いていく。切っ先が二つに分かれて開き、髪を挟も
+うとしたとき……。
+「待って!」
+ それを制する声が、室内に反響した。
+ 比呂美は、ゆっくり声の主に振り返ると、理恵子の目から、涙が、こぼれていた。
+ 一筋の涙が。
+ 初めて理恵子の涙を見た比呂美は、急に罪悪感みたいなものを感じた。自分は何かとん
+でもないことをしているのではないだろうかと。でも次の理恵子の言葉で、それが、幸福
+感へと変わっていった。
+「私くらい長くてもいいじゃない。髪、結んであげられなくなるわ」
+「……はい……そうします……」
+ 比呂美は、そう素直に返事をした。
+
+ ゴールデン・ウィーク明けの初日、眞一郎と比呂美は一緒に登校をしていた。
+ いつもの変わらぬ景色、変わらぬ空気、変わらぬ道のりなのに、ただお互いの隣に大切
+な存在がいるというだけで、それらの全てが塗り替えられた気がした。ふたりは、朝の空
+気を胸いっぱいに吸い込みながら、今日一日の出来事の予想をしていた。
+
+「また、髪、伸ばしていくんだろ?」
+「ん~わかんない。髪長い方が好きだった?」
+「まぁ~そのぉ~でも、今のもいいよ、比呂美らしくて」
+「それに、エッチのとき邪魔にならないしね?」
+「お、お前、外でそういうこと言うのは感心しないな~」
+「ふふ、おじさんみたいな言い方」
+「え、そうか?」
+「みんな、なんて言うかな~わくわくしてこない?」
+「いやーおれはなんだか怖い、もうすでに悪寒が走ってるし」
+「ちょっと予想してみない?」
+「ああ、いいよ」
+ ふたりの横を、軽トラックが過ぎていく。
+「朋与はね~先ずね、無言で私を抱きしめて、背中をポンポンしてくれて、急に鬼のよう
+な形相になって眞一郎くんを睨むの。そして、仲上君、今からちょっと顔貸してくれる? 
+って言うの」
+「それで?」
+「それでね、体育館裏に連れて行って、朋与が眞一郎くんに愛の告白」
+「ないない」
+「これだから男の子は……朋与、中学のとき眞一郎くんのことが好きだったのよ」
+「え、マジ?」
+「………………ウソ」
+ 眞一郎は、比呂美の肩をぺしっと叩いた。
+「野伏君は?」
+「みよきちは……ん~あいつは……いきなり殴りかかってきそうだな~」
+「私、止めないね」
+「止めてくれよー、お前しか止められないだろ?」
+「自分でなんとかして」
+ 比呂美は、お高くいなした。すかさず次の人物へ。
+「あさみはねぇ~」
+……………………
+
+ 神社にある藤棚が見事に咲き誇っている。その横を肩を並べて通過するふたり。
+ 二人の予想は、半分くらい的中することとなった。
+
+ 彼らの物語は、つづく……
+
+
+――『あとがき』――
+
+「カカ」と申します。最後まで読んでくださり真にありがとうございます。
+ 生まれて初めて、文章というもので創作をしてみました。はっきり言って技術もセンス
+もありませんが、素人となりに勢いだけで突っ走って書き上げました。何か一つだけでも、
+皆様の心に残ってくれるものがあれば幸いです。
+ スレッドの皆様の妄想が発想の原点となっておりますので、この作品は、皆様との合作
+だと思っております。そういう意味で最後にこう書き記します。
+
+ お疲れ様です!
+
+
+――『おまけ:実録、髪を切った比呂美への反応』――
+
+1)朋与の場合
+
+「仲上君、ちょっと顔貸してくれる?」
+「なんだよ」
+……体育館裏。
+「比呂美、髪、切ったってことは別れたってことよね?」
+「違うって、あれは……」
+「ウソ!」
+「なんで嘘言わなきゃいけないんだよ、あれはな」
+「好きなの」
+「え?」
+「ずっと、好きだったの、仲上君のこと……」
+「からかうなよ」
+「からかってなんかいない! 比呂美のそばに居て、ずっと仲上君のこと見てた……中学
+のときから……」
+「!! ……うそだろ? ……まさか……参ったな……」
+「どうしたら信じてくれる? キスしたら信じてくれる?」
+「ちょ、ちょっと待てよ。比呂美とは別れていないって」
+「それでもいい……私、もう止まらない」
+ 朋与、目を閉じて顔を寄せてくる。
+「わっ」
+「眞一郎くん!」
+ 比呂美が大学ノートを開いて立っていた。「ドッキリ」とマジックで書かれたノートを。
+ 比呂美と朋与が、前日から考え、仕組んだドッキリだった。
+ 比呂美はこのため、朋与の演技料の替わりに一週間、朋与のパシリとなった。
+ 眞一郎も一日、口を利いてやんなかった。
+
+2)愛ちゃんの場合
+
+「いっらしゃい! ひ!比呂美ちゃん!」
+ 悲鳴に近い声を上げながら愛子は、急いで比呂美のところに駆け寄った。
+「どうして……」
+というと大粒の涙をボロボロ流して泣きだした。そして眞一郎にこう言った。
+「あんた、1年間出入り禁止!」
+ もちろん、すぐ解かれることになったが……。
+
+3)三代吉の場合
+
+「眞一郎!!てめーーー!」
+ 案の定、三代吉は眞一郎の胸倉をつかみ、床に押し倒した。
+「落ち着けって!」
+「お前、さんざん湯浅さんのこと泣かしておいて、何も学ばなかったのかよ。こんな奴を
+親友と思っていた自分が情けねーわ」
+ 売り言葉に買い言葉、この取っ組み合いが意外と長くつづいた。周りに居た男子生徒五、
+六人でもなかなか二人を止められず、先生に見つかり、二人は生徒指導室送りとなった。
+
+4)あさみの場合
+
+「私、やっぱり仲上君のこと見損なっちゃった」
+ その日の午後。
+「私、やっぱり仲上君のこと見直しちゃった」
+ なんなんだ。
+
+5)石動乃絵の場合
+
+「あなた……仲上君と、エッチしたでしょう?」
+ 比呂美、全身赤面。
+
+
+――『続編予告』――
+
+ 愛子と眞一郎は「ファースト・キス」を隠したまま、
+ それぞれの恋愛模様を描き続けていた。
+ ある日、乃絵から呼び出された眞一郎は、
+ 心揺さぶられる事実を知ることになる。
+ いずれ直面するはずの試練に、悶える眞一郎。
+ 二人の居場所を侵されたと、苛立つ比呂美。
+ まだまだ大人になりきれない二人に、母・理恵子は……
+「あなた、カノジョ、失格よ」
+ 今だからこそ、眞一郎は、比呂美にラブ・レターを出す。
+
+「トゥルー・ティアーズ・アフター ~ファースト・キス~」
+
+「春雷」続編。本編のその後を描いた、こころ温まる物語。
+……どうしても、最初に、見せたかったんだ……
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。