比呂美のダブルデート奮闘記

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比呂美のダブルデート奮闘記」(2008/03/21 (金) 00:39:04) の最新版変更点

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=このSSの時系列は仲上家の騒々しい正月の後、二人でお買い物と同じ時期です =愛子は元のお姉ちゃんポジションで、ふった三代吉は"単なるお友達" 比呂美のダブルデート奮闘記 冬の休日、いつものような嫁いびり、ではなく、家のお手伝いで働く比呂美 の姿があった。その日は"おばさま"の機嫌がいいようで厳しいという感じで はない、どちらかというと優しい。比呂美は逆に警戒していた。 (な、何かあるのかな?) ちょっとビクビクしながらお手伝いしていると、玄関に誰かが来たような気 配がした。 「こんにちはーっ」 「こんにちは!眞一郎君いますかぁ?」 愛子と三代吉であった。愛子の服装は"デート仕様"、三代吉は普段どおりで あるが、ちらちらと愛子の方を見ている。 「おおー、愛ちゃん、三代吉ぃ」 眞一郎が早速出迎えて話している。しばらくした後、比呂美を呼んだ。 「おーい、比呂美ぃ。ちょっと、こっち来てー?」 呼び出しとあれば仕方ない、"おばさま"に断りを入れて玄関へ向かう。 「あっ、今日はどうしたの?」 「時間大丈夫だよね?水族館に行かない?」 「これから?」 「そうだよ、まだ時間はたっぷりあるでしょ?」 「と、突然二人で来てそんなこと言われてもなぁ、ちょっと困るけ…」 演技っぽい言い方の眞一郎にかぶせるように愛子が続ける。 「大丈夫だって!、まだお昼にもなってないし!」 「そーそー、まだまだこれから」 三代吉の援護もやはり演技が入っている、ちょっと声も固い。 なんだかおかしい男性陣に比べ、愛子はいつもどおりに見えるが… 「あら?愛ちゃん?久しぶりねぇ」 そこへ眞一郎の母が登場して、愛子と話を始める。 「お久しぶりです!、眞一郎のお母さん」 軽く会釈してから元気良く愛子が答え、早速水族館のことを切り出す。 「今日は二人を誘いにきたんですよ。ちょうどチケットが手に入って!」 「そうなの?いいわねぇ」 などと、和気藹々という感じで話し出す。比呂美はかなり複雑な心境だ。 (えっ!?すごく仲がいいというか…、愛子ちゃん、気に入られてる?) にこやかに話す"おばさま"と愛子を見比べて落ち着かない比呂美は、眞一郎 に小声で話しかける。 「ね、ね、あの二人って仲いいの?」 「うん、まあ、そうかな?昔からだから、なぁ」 「そうなんだ…」 「どうした?」 「ちょっと気になって…」 「?」 小声でやりとりをしていると、"おばさま"から声がかかった。 「じゃあ、二人とも支度をして行ってくれば?」 「!」 「!」 笑顔で承諾が下り、驚きを隠せない。 「?、何?行きたくないの?折角のお誘いなのに」 「よし!準備しよう!な?比呂美っ!」 「う、うん…」 動揺を隠せないまま言ってしまう眞一郎と、ちょっと元気のない比呂美。 「早く!早くっ!」 それをせかすような愛子の声で、二人はそれぞれ自室へと向かった。実は3 人で、比呂美に内緒で水族館でダブルデートを企画したのだった。休日脱出 作戦の一環であった。 (な、何が、一体、どうなって!?) 比呂美は大慌てで"本気デート仕様"に換装しながら、考えていた。 (というより、愛子ちゃんと"おばさま"の仲がいい!?) 眞一郎と愛子が仲がいいのは知っている。"あんなこと"があった後でも特に わだかまりがないのは、正直言って不満だ。しかし、"おばさま"との関係も 良好となると、不満どころか危機感が募ってしまう。 眞一郎の言葉を思い出す 「愛ちゃんにはきちんと言ったよ。やっぱり"姉"としてしか見れないって」 その言葉からすると、恋愛対象として意識していないことは理解できるが、 愛子の態度が対して変わっていないことが気になる。 (ま、まさかっ!?まだ諦めていない?だとしたら…) 眞一郎の愛情を一身に受けていることを自覚しているが、やはり"その種類" の不安というのはつきまとうものなのであった。 - - - - - - - - - - - - - 「さあー、行きましょう!行きましょう!水族館!」 「…」 愛子は元気一杯。横に並んだ"本気デート仕様"の比呂美は少し元気がない。 眞一郎と三代吉はそんな二人の後について、のんびりと歩いている。 「あっ!?バスが来ちゃうよ!みんな!ちょっと急ごう!」 愛子が振り向いて眞一郎と三代吉を捕まえ、急ぎ足で歩き始めた。 「うわっ」 「おおっ」 愛子に引っ張られて、よろける眞一郎と三代吉。 「!」 その時、比呂美は気付いた。愛子は三代吉の手首を掴んでいる。そして、眞 一郎の"手"を固く握っている… (あっ!?どうして眞一郎くんの場合は手を握るの?) 比呂美は眞一郎を慌てて追いかけ、腕をがっしりと取る。 …ぷよん…ふにっ…<おなじみの擬音です> 「おげっ!」 未だに眞一郎はその攻撃に弱いらしい。 「あっ!比呂美ちゃん!」 (にこっ☆) ここで比呂美は眞一郎の恋人としての余裕の笑み。愛子に自分の存在を主張。 ("お姉ちゃん"にはできないことでしょ?ふふふん、だ) …ふにっ…ふにっ…ふにっ…ふにっ…ふにっ…ふにっ…ふにっ…ふにっ… 「おぐっ、げげっ、ぐごっ、ぼべっ、ほごっ、ぎゅお、へぶっ、ひぎっ」 一歩進む度、"何か"が自分の腕によって形を変えると、奇声を発する眞一郎。 やってきたバスに乗り込み、目的である水族館へ向かった。当然のように、 比呂美は眞一郎と2人席を陣取り、密着体勢で守備を固める。水族館までの 間、二人きりの時間をすごす。そんな二人を見る愛子は、三代吉の相手もお ざなりだ。がんばれ三代吉、今は我慢だ。 バス停から水族館までの道を、二組のカップルが歩いている。 一組は腕を取って密着。片方は奇声をあげているが、もう一方は満面の笑顔。 もう一組は…、ちょっと離れているようだ。"単なる友達"の距離。 - - - - - - - - - - - - - 水族館に入ると、攻守が逆転し始めた。 「さぁー!今度はあっちだよ!」 どうやら愛子はしっかりと下調べをしてきていたらしい。あちらこちらへと 一行を引き連れて、効率よくいいポイントを説明しながら楽しそうにしてい る。そこそこ混雑している館内では、さすがに密着体勢を維持できない。奇 声を発し続けられると注目を浴びてしまうことも一つの原因だが、比呂美と してはちょっと不満だ。それに現在の隊形も不満だった。それは… 「だって、はぐれたら面倒でしょ?」 愛子の言葉で、四人は数珠繋ぎのようになっている。愛子は片方の手で三代 吉のコートの"袖"を掴み、もう片方はしっかりと眞一郎の"手"を握っている。 「えっ!?だって携帯電話あるし…」 「時間が無駄になっちゃうじゃない。手を繋いだほうが早いって」 愛子に押し切られる形で、現在の隊形をとることになってしまった。 (だからと言って、眞一郎くんの手を握りっぱなしでなくてもいいでしょ?) 自分も眞一郎の手を固く握り締めながら、比呂美は考えていた。そこで、あ る名案がひらめいた。手の握り合いっこだ、これなら愛子に知られることな く眞一郎と"二人"でいる実感を持てるはずだ。 …きゅっ… 「!」 眞一郎は、突然開始された比呂美の手の握り合いっこに驚いたが、ちゃんと 返事をする。 …きゅきゅっ…(なに?) …きゅ…きゅきゅっ…(ううん、何でもない) まあ、こんな感じで二人は愛子の説明をそっちのけで、楽しんでいるようだ。 しかし数珠繋ぎ隊形では、たまにアクシデントが発生した。方向転換を行う 場合がそれに相当する。 …ぼよん… 「あっ、ごめんねー?」 明らかにフェイントをかけてから、"当ててんのよ"をする愛子。 「!」 「あだだだだだっ」 比呂美の握力が最大限に発揮される。何回も繰り返される為、その度に眞一 郎が奇声を発した。しかも、たまに比呂美も"全身を当ててんのよ"する。 「どぅぼっ!」 一人だけ奇声を発することがある数珠繋ぎ隊形は、しばらく続いた。 一通りいいポイントを巡ってから、軽く食事することになった。 眞一郎と三代吉は場所の確保、比呂美と愛子は注文と運び役ということにな り、並んで出来上がりを待っていると愛子が先に動いた。 「あっ、これとこれが二人の分だね?私、持って行くね」 「!」 気付いた時には、トレイを2つ持ってさっさと歩き出している愛子。 比呂美は悔しがる。 (ううぅ、普段の手際良さがこんなところで発揮されるなんて…) 自分と愛子のトレイを持って、少し元気なく席へ向かうと愛子のコンボが炸 裂していた。 「はい、眞一郎。お水」 「あ、ありがと」 眞一郎はぐびぐびと、一気に飲み干す。 「いやぁ、ちょうど喉が渇いていたんだよなぁ」 「!」 比呂美はダッシュで水を取りに行ってきた。 「はいっ!眞一郎くんっ!お水っ!」 張り切ったので、3杯も水を持ってきていた。 「え?もう、大丈夫。でも、ありがと」 「飲んで!」 「いや、だから…」 「全部っ!飲んでっ!」 「はい」 眞一郎は全て飲み干した。おかげで満腹。軽食もやっと食べきった。 愛子はそんな様子を見て、ちょっと笑っていた。 (な、なんか…、すごく悔しい…) 比呂美の苦難は続く。 - - - - - - - - - - - - - 水族館を出た時にはすかさず密着体勢を取り、守備に余念のない比呂美。 (ぜ、絶対に近寄らせないんだからっ!) 愛子は三代吉と"単なる友達"の距離を保ちつつ、歩いていた。帰りのバスで も、比呂美の全力守備が継続されたおかげで眞一郎は無事。眞一郎は比呂美 だけを見て、話かけているのだが比呂美はそれに気づかないほどに守備に専 念していたようだ。バスを降りた後、別れ際の愛子の言葉はこうだった。 「また"四人"でどっか行こうねー。またねー」 守備にへとへとの比呂美には、それはキツイ言葉だ。 (ま、また、どこかへ行くのかしら?け、結構、し、しんどい…) 休日にはどんな策謀を使ってでも眞一郎と二人で出かけよう、比呂美はそう 心に誓う。 (眞一郎くんは私が守る!) END -あとがき- えーと、TVアニメ第7話で愛子が参戦してきたので書きました。 SSでは比呂美は眞一郎と結ばれているのですが、こんなこともあるかもね? というお話です。あ、途中から三代吉を忘れていました。悪いことしちゃっ たなぁ。 このSSで愛ちゃんが諦めているように感じましたか? 最後に、読んで下さってありがとうございました。
=このSSの時系列は仲上家の騒々しい正月の後、二人でお買い物と同じ時期です =愛子は元のお姉ちゃんポジションで、ふった三代吉は"単なるお友達" 比呂美のダブルデート奮闘記 冬の休日、いつものような嫁いびり、ではなく、家のお手伝いで働く比呂美 の姿があった。その日は"おばさま"の機嫌がいいようで厳しいという感じで はない、どちらかというと優しい。比呂美は逆に警戒していた。 (な、何かあるのかな?) ちょっとビクビクしながらお手伝いしていると、玄関に誰かが来たような気 配がした。 「こんにちはーっ」 「こんにちは!眞一郎君いますかぁ?」 愛子と三代吉であった。愛子の服装は"デート仕様"、三代吉は普段どおりで あるが、ちらちらと愛子の方を見ている。 「おおー、愛ちゃん、三代吉ぃ」 眞一郎が早速出迎えて話している。しばらくした後、比呂美を呼んだ。 「おーい、比呂美ぃ。ちょっと、こっち来てー?」 呼び出しとあれば仕方ない、"おばさま"に断りを入れて玄関へ向かう。 「あっ、今日はどうしたの?」 「時間大丈夫だよね?水族館に行かない?」 「これから?」 「そうだよ、まだ時間はたっぷりあるでしょ?」 「と、突然二人で来てそんなこと言われてもなぁ、ちょっと困るけ…」 演技っぽい言い方の眞一郎にかぶせるように愛子が続ける。 「大丈夫だって!、まだお昼にもなってないし!」 「そーそー、まだまだこれから」 三代吉の援護もやはり演技が入っている、ちょっと声も固い。 なんだかおかしい男性陣に比べ、愛子はいつもどおりに見えるが… 「あら?愛ちゃん?久しぶりねぇ」 そこへ眞一郎の母が登場して、愛子と話を始める。 「お久しぶりです!、眞一郎のお母さん」 軽く会釈してから元気良く愛子が答え、早速水族館のことを切り出す。 「今日は二人を誘いにきたんですよ。ちょうどチケットが手に入って!」 「そうなの?いいわねぇ」 などと、和気藹々という感じで話し出す。比呂美はかなり複雑な心境だ。 (えっ!?すごく仲がいいというか…、愛子ちゃん、気に入られてる?) にこやかに話す"おばさま"と愛子を見比べて落ち着かない比呂美は、眞一郎 に小声で話しかける。 「ね、ね、あの二人って仲いいの?」 「うん、まあ、そうかな?昔からだから、なぁ」 「そうなんだ…」 「どうした?」 「ちょっと気になって…」 「?」 小声でやりとりをしていると、"おばさま"から声がかかった。 「じゃあ、二人とも支度をして行ってくれば?」 「!」 「!」 笑顔で承諾が下り、驚きを隠せない。 「?、何?行きたくないの?折角のお誘いなのに」 「よし!準備しよう!な?比呂美っ!」 「う、うん…」 動揺を隠せないまま言ってしまう眞一郎と、ちょっと元気のない比呂美。 「早く!早くっ!」 それをせかすような愛子の声で、二人はそれぞれ自室へと向かった。実は3 人で、比呂美に内緒で水族館でダブルデートを企画したのだった。休日脱出 作戦の一環であった。 (な、何が、一体、どうなって!?) 比呂美は大慌てで"本気デート仕様"に換装しながら、考えていた。 (というより、愛子ちゃんと"おばさま"の仲がいい!?) 眞一郎と愛子が仲がいいのは知っている。"あんなこと"があった後でも特に わだかまりがないのは、正直言って不満だ。しかし、"おばさま"との関係も 良好となると、不満どころか危機感が募ってしまう。 眞一郎の言葉を思い出す 「愛ちゃんにはきちんと言ったよ。やっぱり"姉"としてしか見れないって」 その言葉からすると、恋愛対象として意識していないことは理解できるが、 愛子の態度が対して変わっていないことが気になる。 (ま、まさかっ!?まだ諦めていない?だとしたら…) 眞一郎の愛情を一身に受けていることを自覚しているが、やはり"その種類" の不安というのはつきまとうものなのであった。  ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 「さあー、行きましょう!行きましょう!水族館!」 「…」 愛子は元気一杯。横に並んだ"本気デート仕様"の比呂美は少し元気がない。 眞一郎と三代吉はそんな二人の後について、のんびりと歩いている。 「あっ!?バスが来ちゃうよ!みんな!ちょっと急ごう!」 愛子が振り向いて眞一郎と三代吉を捕まえ、急ぎ足で歩き始めた。 「うわっ」 「おおっ」 愛子に引っ張られて、よろける眞一郎と三代吉。 「!」 その時、比呂美は気付いた。愛子は三代吉の手首を掴んでいる。そして、眞 一郎の"手"を固く握っている… (あっ!?どうして眞一郎くんの場合は手を握るの?) 比呂美は眞一郎を慌てて追いかけ、腕をがっしりと取る。 …ぷよん…ふにっ…<おなじみの擬音です> 「おげっ!」 未だに眞一郎はその攻撃に弱いらしい。 「あっ!比呂美ちゃん!」 (にこっ☆) ここで比呂美は眞一郎の恋人としての余裕の笑み。愛子に自分の存在を主張。 ("お姉ちゃん"にはできないことでしょ?ふふふん、だ) …ふにっ…ふにっ…ふにっ…ふにっ…ふにっ…ふにっ…ふにっ…ふにっ… 「おぐっ、げげっ、ぐごっ、ぼべっ、ほごっ、ぎゅお、へぶっ、ひぎっ」 一歩進む度、"何か"が自分の腕によって形を変えると、奇声を発する眞一郎。 やってきたバスに乗り込み、目的である水族館へ向かった。当然のように、 比呂美は眞一郎と2人席を陣取り、密着体勢で守備を固める。水族館までの 間、二人きりの時間をすごす。そんな二人を見る愛子は、三代吉の相手もお ざなりだ。がんばれ三代吉、今は我慢だ。 バス停から水族館までの道を、二組のカップルが歩いている。 一組は腕を取って密着。片方は奇声をあげているが、もう一方は満面の笑顔。 もう一組は…、ちょっと離れているようだ。"単なる友達"の距離。  ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 水族館に入ると、攻守が逆転し始めた。 「さぁー!今度はあっちだよ!」 どうやら愛子はしっかりと下調べをしてきていたらしい。あちらこちらへと 一行を引き連れて、効率よくいいポイントを説明しながら楽しそうにしてい る。そこそこ混雑している館内では、さすがに密着体勢を維持できない。奇 声を発し続けられると注目を浴びてしまうことも一つの原因だが、比呂美と してはちょっと不満だ。それに現在の隊形も不満だった。それは… 「だって、はぐれたら面倒でしょ?」 愛子の言葉で、四人は数珠繋ぎのようになっている。愛子は片方の手で三代 吉のコートの"袖"を掴み、もう片方はしっかりと眞一郎の"手"を握っている。 「えっ!?だって携帯電話あるし…」 「時間が無駄になっちゃうじゃない。手を繋いだほうが早いって」 愛子に押し切られる形で、現在の隊形をとることになってしまった。 (だからと言って、眞一郎くんの手を握りっぱなしでなくてもいいでしょ?) 自分も眞一郎の手を固く握り締めながら、比呂美は考えていた。そこで、あ る名案がひらめいた。手の握り合いっこだ、これなら愛子に知られることな く眞一郎と"二人"でいる実感を持てるはずだ。 …きゅっ… 「!」 眞一郎は、突然開始された比呂美の手の握り合いっこに驚いたが、ちゃんと 返事をする。 …きゅきゅっ…(なに?) …きゅ…きゅきゅっ…(ううん、何でもない) まあ、こんな感じで二人は愛子の説明をそっちのけで、楽しんでいるようだ。 しかし数珠繋ぎ隊形では、たまにアクシデントが発生した。方向転換を行う 場合がそれに相当する。 …ぼよん… 「あっ、ごめんねー?」 明らかにフェイントをかけてから、"当ててんのよ"をする愛子。 「!」 「あだだだだだっ」 比呂美の握力が最大限に発揮される。何回も繰り返される為、その度に眞一 郎が奇声を発した。しかも、たまに比呂美も"全身を当ててんのよ"する。 「どぅぼっ!」 一人だけ奇声を発することがある数珠繋ぎ隊形は、しばらく続いた。 一通りいいポイントを巡ってから、軽く食事することになった。 眞一郎と三代吉は場所の確保、比呂美と愛子は注文と運び役ということにな り、並んで出来上がりを待っていると愛子が先に動いた。 「あっ、これとこれが二人の分だね?私、持って行くね」 「!」 気付いた時には、トレイを2つ持ってさっさと歩き出している愛子。 比呂美は悔しがる。 (ううぅ、普段の手際良さがこんなところで発揮されるなんて…) 自分と愛子のトレイを持って、少し元気なく席へ向かうと愛子のコンボが炸 裂していた。 「はい、眞一郎。お水」 「あ、ありがと」 眞一郎はぐびぐびと、一気に飲み干す。 「いやぁ、ちょうど喉が渇いていたんだよなぁ」 「!」 比呂美はダッシュで水を取りに行ってきた。 「はいっ!眞一郎くんっ!お水っ!」 張り切ったので、3杯も水を持ってきていた。 「え?もう、大丈夫。でも、ありがと」 「飲んで!」 「いや、だから…」 「全部っ!飲んでっ!」 「はい」 眞一郎は全て飲み干した。おかげで満腹。軽食もやっと食べきった。 愛子はそんな様子を見て、ちょっと笑っていた。 (な、なんか…、すごく悔しい…) 比呂美の苦難は続く。  ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 水族館を出た時にはすかさず密着体勢を取り、守備に余念のない比呂美。 (ぜ、絶対に近寄らせないんだからっ!) 愛子は三代吉と"単なる友達"の距離を保ちつつ、歩いていた。帰りのバスで も、比呂美の全力守備が継続されたおかげで眞一郎は無事。眞一郎は比呂美 だけを見て、話かけているのだが比呂美はそれに気づかないほどに守備に専 念していたようだ。バスを降りた後、別れ際の愛子の言葉はこうだった。 「また"四人"でどっか行こうねー。またねー」 守備にへとへとの比呂美には、それはキツイ言葉だ。 (ま、また、どこかへ行くのかしら?け、結構、し、しんどい…) 休日にはどんな策謀を使ってでも眞一郎と二人で出かけよう、比呂美はそう 心に誓う。 (眞一郎くんは私が守る!) END -あとがき- えーと、TVアニメ第7話で愛子が参戦してきたので書きました。 SSでは比呂美は眞一郎と結ばれているのですが、こんなこともあるかもね? というお話です。あ、途中から三代吉を忘れていました。悪いことしちゃっ たなぁ。 このSSで愛ちゃんが諦めているように感じましたか? 最後に、読んで下さってありがとうございました。

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