196 名前: 次藤×佐野1 投稿日: 02/02/16 21:49 ID:w+YKmveq へたれなので思い切り長くなりました。読んでくれる人いるのだろうか……。 俺が私服で街を歩いていると、たまに柄の悪い連中から声をかけられる。 「彼女、彼女ー。無視しないでさ。」 そんな時は、「俺は男だっ!」の一言でたいてい片づくんだけど、 その日の連中はしつこかった。 「お前が女みてえな顔してるのが悪いんじゃんか。他の子に声かけるからさ、 デート代持ってくれよな。ちょっとこっちこいよ。」 ごつい手で手首をつかまれ、路地に連れ込まれる。 そいつらの一人が汚い手で俺の前髪をかき上げる。 「へへっ、ほんとに女みてーな顔。腕もほっそくて折れそうだな。」 こんなことを言われるのがイヤだから、前髪を伸ばして顔を隠してるのに。 「さ、痛い目みねー内に金出せよ。それともいっそ本当に俺たちとつきあうか?」 どっちもお断りだよ、と言おうとしたとき、俺の前に大きな影が立ちふさがった。 197 名前: 次藤×佐野2 投稿日: 02/02/16 21:51 ID:w+YKmveq その大きな影は、俺の手を掴んでいた奴を引き剥がし、地面に叩きつける。 「こ、このやろう、いきなり何しやがる」 「それはこっちの台詞タイ、大勢で一人に対して何しよっとか」 一人の腹にパンチを打ち込み、もう一人の顔に蹴りを入れる。 俺はこの人を知ってる。次藤さんだ。次藤洋さんだ。不良で、喧嘩に負けた ことがなくて、高校生だってやっつけちゃうって有名な人。 最後の一人を叩きのめすと、次藤さんはやっと俺の方を振り返って笑った。 「これでもう大丈夫タイ、かわいこチャン」 「俺は男ですっ!!」 言い慣れた台詞をいうと、次藤さんはきょとんとした。そして、大声で 笑い出した。 「ぎゃはは、とんだただ働きしてしまったものタイ。お前中学生か?」 「はい、比良戸です」 「じゃあ、後輩を助けたわけか。そう捨てたもんでもなかタイ。ワシは……」 「知ってます。次藤洋さんでしょ。有名人だから」 198 名前: 次藤×佐野3 投稿日: 02/02/16 21:54 ID:w+YKmveq ハンバーガーショップに入った俺たちは、向かい合わせに座る。うんと上を 向かないと、次藤さんと目が合わない。 「助けてくれて、ほんとにありがとうございました。いくらでも奢るから、 じゃんじゃん食べちゃって下さい」 「そういわれても、後輩から奢られるってのもなあ……」 「次藤さんていつも喧嘩ばっかりしてるんですか?」 ちょっと失礼かなと思いながら、質問する。 「う~ん、たいがいは毎日喧嘩タイ。あとサッカー部にも籍は置いとるがな」 サッカー、か……。喧嘩はできなくても、サッカーなら出来る。いつか一緒に サッカーをすることが出来るかもしれない。 「それじゃ、また学校で」 「いや、さっきの連中がまだうろついてるかもしらん。家まで送っていくタイ」 俺は家までのそう遠くない道のりを、次藤さんと並んで歩いた。俺の頭は次藤さんの 胸までしかない。一生懸命上を向いて次藤さんに話しかける。それはなんだか幸せだった。