青色通知4

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  ~青色通知4(初紀の場合)~  陸は、胸のつかえが取れたのか晴れやかな顔でショコラ・ラテとレアチーズケーキ(恐ろしく食べ合わせが悪い気がするのは気のせいか?)をものの数十秒で平らげ、 "仕事に行く"と新札の二千円をテーブルに置き、晴れやか顔で出て行った。  その去り際に――― 「じゃあな、"初紀"」  ―――だってさ。  勿論、男だった時の名前じゃなくて。  ……どうやら、"私"の変化もキチンと受け入れてくれたみたいで嬉しくて。もう一度、喧騒の中で、小さく自分の名前を口にしてみる。 「みどう……はつき」  今まで、こんなに自分の名前が愛おしく感じたことなんて一度もなかったけど……こうして、ゆっくりと口に出してみると照れくさい中に……確かに嬉しさが混じっていることを再認識した。  ……あ、ちなみに陸が言ってる"仕事"っていうのはガソリンスタンドのアルバイトのこと。  話だけでしか聞いたことないけど、"バイト"と言わないのは陸のポリシーらしい。  責任感を軽くするみたいな言葉で逃げたくないってことか?  まぁ何にせよ、悪ぶってはいるものの、陸は生真面目な良い奴だ。うん。  そんな奴と親友で居られるなんて、私は幸せ者だ。  ……それ以上は望まないことにしよう。  アイツは"俺"から"私"になった"初紀"を受け入れてくれたんだから。  今はただ、アイツが最も幸せな形で男で居られることを祈ろう。  ……それ以上は、考えちゃダメなんだ。  せっかく好きになれそうな私と私の名前を、嫌いになってしまいそうだから。 「……ぐすっ」  ……花粉症か? 最近はやたら鼻の奥がツンとしたり、目が赤くなることが多くて困る。別に泣いてるわけでもないのに。  ……泣いてないっての。 「……ふぅ」  とりあえず、ラ・フランスのタルトとカプチーノを美味しく頂戴してから、千円札と小銭で会計を済ませ外に出る。  ……しばらくアイツの置いていった2千円は財布の中に取っておこう。 「さて、と」  外の空気を吸いながら大きく伸びを一つ。  帰るかな。  ここら辺は歓楽街だから、ゲーセンやカラオケといった娯楽施設から大人なお店や宿泊施設まで何でもござれだけど、一人じゃ何もすることないし。  …………あ。  今更気付いたけど、陸とプリクラくらい撮れば良かったかな。  予行とは言えさ、ほら、その……デートなんだしさ?  ………ま、陸のあの鈍感っぷりじゃなぁ。  私の査定が、減点20の大台に乗る危険もあったわけだし。……だからって何かしらのデメリットがあるわけじゃないけど。  ……ま、いっか。帰ろ帰ろ。   ―――さて。  ここからウチに帰るとなると、大人な宿泊施設の通りを突っ切った方が近いんだけど……なんかヤなんだよなぁ。  まぁ、女になったとは言え、これでも空手有段者だから身の危険は感じないけど、そうだとしても気が引ける。  ……以前のこと思い出すから。  うぅん、過去のことを引き摺っててどうするんだオ……じゃなかった私!  さぁ、とっとと真っ直ぐ帰ろう! 「………………ぇ?」  踵を返した、その刹那に私は思わず声を漏らしていた。  ―――虫の報せってホントにあるもんなんだ……。  ヤな予感っていうか……なんか、こう、……そういう口じゃ表現出来ないような、ぞわぞわした感覚。  多分、数分前の私が感じていたであろうそれは、現実のものとなって目の前に具現化した。  ―――もし髪を結うとしたら、今の私と同じ―――短めのポニーテールが凄く似合いそうな……可愛らしい女の子。  そして、その後をおずおずとついていく、冴えない外見の若い男。  制服は着てなかったけど、恐らく間違いない。  ……坂城 るい。  陸が、想いを寄せる同学年、他クラスの女の子だ。  道の途中ですれ違う程度ならば、ぞわぞわなんてしなかった。  けど、そうじゃない。    坂城さんと若い男は……派手な外装の宿泊施設、要は……ラブホに姿を消した。  ―――気がつくと、私は電柱の影に隠れて息を殺していた。  ……見た、見ちゃった、見てしまった!  思わず電柱に寄りかかりながら、その場にへたり込む。情けないことに足腰が立たなくってた。  ……あの純粋そうな坂城さんが、誰とも分からない男と……ラブホに入っていく瞬間を、はっきりくっきりと!!  ……髪は下ろしてたけど、間違いない。あんなに可愛い娘はそんじょそこらでお目に掛かれるようなものじゃないし……右目の目尻に、坂城の特徴である涙黒子があったのも見えてしまったっ!  ―――ど、どどど、とうしよう……。 「はぁ……はっ、っはぁ……っ!」  心臓が、バクバクと私の中で騒音を掻き鳴らす。  陸の前で高鳴った時と、同じ場所が鳴らしているとは思えない―――無粋で乱暴な音。  そのダイレクトな振動が、嫌で、気持ち悪くて、必死で呼吸を整える……。 「ふー……っ、っふぅ……」  漸く、心音が大人しくなったと思ったら、今度はじんわりと汗がまとわりついてた。  ったくもぉ……帰ったら風呂に直行だな、これは。  ……って、そんなことより!  ―――あれは、確かに坂城さんだった。  髪型は確かに違ってたけど、双子の姉妹が居るとかなんて聞いたことないし……。だとしたら、あの子は……やっぱり―――?  私の中で上手く思考がまとまらない。  もし、本当に坂城さんなら、どうしてあんな所に入っていったのだろう……?  恋人だから? うぅん、多分それは違うと思う。  なんて言うか、あの二人にそういう感情が見えてこなかった。  じゃあ、何のために……?  勿論、高校生ともなれば、あーいう所で……その、……どんなコトするかなんて、みんな暗黙の了解で知っている。  まさか、あんな所で優雅にティータイムってことはまずないだろうし……。  もしかしたら、他人の空似ってのかもしれない。でも、もし、万が一……本当に坂城さんだったとしたら……?  ……ふと、陸の顔がチラつく。  ―――よし、帰りは遅くなるけど、少し張り込もう……っ!!  そうと決まったらコンビニに直行だ!  え……何でかって?  アンパンと牛乳は、張り込みの基本じゃなかったっけ?  ……あれ、違うの? ----   ~青色通知4.1(陸の場合)~   「―――じゃ、お疲れッス」 「おう、お疲れぃ。気ぃつけて帰れよ~?」  ガソリンの匂いが染み付いた店員の制服をハンガーに掛けて、先輩形に挨拶して仕事場を後にする。  すっかり暗くなった国道沿いの歩道を歩きながら、ふと思う。  そうだ、そういや初紀との――……"予行"で忘れてたけど、今日って発売日じゃん、まじめの一歩の、単行本の。    カモン、俺の財務省。  ………………はぁ。  ……ここ最近の外交経費が嵩んだせいか財政難だってよ。  ゆうちょの口座から幾らか降ろそうかとも思ったが、そーいうことしてたら際限がなくなりそうだしなぁ。  ……立ち読みだな、こりゃ。  適当に入ったコンビニの文庫本コーナーを物色する。  ……ない。  くそっ、売り切れかよっ!?  ……ん? 『一通の青い封書が語る、女体化症候群を取り巻く実態が今明らかになる!』  代わりに、そのコーナーに大量に積まれた文庫本の帯の文字が目に入った。その下に小さなフォントで――― 『この国が生み出した歪み。次の被害者は、あなたかもしれない。』  ―――とか何とか書かれていた。  なんだ、この煽りの文章は。仕事先に置いてある東スポとか週刊誌かよ?  ……普段なら気にも留めないが、今の現状が現状のせいか……その本に手が伸びる。  えーとタイトルは……   『――の――』  読めない。唯一読めたのは平仮名の"の"だけ。  ……悪かったな、ゆとりで。  誰ともつかず毒づきながら本を開く。目次を指でなぞりながら各章のタイトルを追っていく。 ・第一章 【女体化症候群について】P4 ・第二章 【性別選択権】P11 ・第三章 【青色通知】P25 ・第四章 【性別選択権に於けるあれこれ】P36 ・第五章 【通知受取人と選択権給付】P51  ―――通知受取人? 選択権給付?  どっちも初めて見る言葉だな。  最近、女体化症候群についてあれこれ調べていたつもりだったけど、こんな言葉は微塵も聞いたことがない。  P51、P51……と、あったあった。 『前章で紹介した通り、女体化のボーダーラインである"15~6歳の性交渉未経験の男子"には、希望すれば性交渉を行う"相手"を国から用意してもらえる。  これがいわゆる、"通知受取人"というものである。』  ―――"通知受取人"っていう凄ぇお役所仕事的な名前が付いてんのに、やってることは……ヤることかよ。  ……そう思いながらページを捲る。 『この"通知受取人"という名称の由来は、その性別選択権のシステムそのものにある。  性別選択権該当者が、選択権を行使する際―――つまり"性交渉後"、証拠として性別選択権該当者の通知の一部を受け取るというもの。  その通知の一部を役所に持っていくと、通知受取人に"選択権給付"として一定の金額が手渡しされる算段だ。』      要は風俗と同じじゃねぇか……ま、タダで見ず知らずの野郎とヤるなんて誰だって嫌だろうからな。  ……俺なら金積まれても願い下げだが。  更にページを捲る。 『この一連のシステムはここ数年で確実な成果を挙げており、世論も黙認し始めたのだが、未だに幾つかの問題がある。    1点目、通知受取人は"18歳以上、健康状態に問題がない女性"に限られるが、年齢に関しての事実確認はほぼ行われていないこと。  これは"性交渉"というデリケートな問題が絡む故の、社会的信用を考慮した結果である(但し、匿名での定期的な健康・性病診断は義務付けられているので、感染についての問題は無いとされている)。    2点目、"通知受取人"を騙った性別選択権行使者に対する詐欺、若しくは仲介業者を騙った女性への詐欺が横行していること。  まだまだ世の中に定着しきっていないこのシステムの穴を突いた卑劣な詐欺の被害が後を絶たないのが現状だ――――』  ………何か気分が悪くなってきた。  本を閉じてコンビニを後にする。    ―――ま、俺には関係ないことだしな………男で居られよう居られまいと。  ―――陸の誕生日まで、あと5日。 ~青色通知4~ 完
  ~青色通知4(初紀の場合)~  陸は、胸のつかえが取れたのか晴れやかな顔でショコラ・ラテとレアチーズケーキ(恐ろしく食べ合わせが悪い気がするのは気のせいか?)をものの数十秒で平らげ、 "仕事に行く"と新札の二千円をテーブルに置き、晴れやか顔で出て行った。  その去り際に――― 「じゃあな、"初紀"」  ―――だってさ。  勿論、男だった時の名前じゃなくて。  ……どうやら、"私"の変化もキチンと受け入れてくれたみたいで嬉しくて。もう一度、喧騒の中で、小さく自分の名前を口にしてみる。 「みどう……はつき」  今まで、こんなに自分の名前が愛おしく感じたことなんて一度もなかったけど……こうして、ゆっくりと口に出してみると照れくさい中に……確かに嬉しさが混じっていることを再認識した。  ……あ、ちなみに陸が言ってる"仕事"っていうのはガソリンスタンドのアルバイトのこと。  話だけでしか聞いたことないけど、"バイト"と言わないのは陸のポリシーらしい。  責任感を軽くするみたいな言葉で逃げたくないってことか?  まぁ何にせよ、悪ぶってはいるものの、陸は生真面目な良い奴だ。うん。  そんな奴と親友で居られるなんて、私は幸せ者だ。  ……それ以上は望まないことにしよう。  アイツは"俺"から"私"になった"初紀"を受け入れてくれたんだから。  今はただ、アイツが最も幸せな形で男で居られることを祈ろう。  ……それ以上は、考えちゃダメなんだ。  せっかく好きになれそうな私と私の名前を、嫌いになってしまいそうだから。 「……ぐすっ」  ……花粉症か? 最近はやたら鼻の奥がツンとしたり、目が赤くなることが多くて困る。別に泣いてるわけでもないのに。  ……泣いてないっての。 「……ふぅ」  とりあえず、ラ・フランスのタルトとカプチーノを美味しく頂戴してから、千円札と小銭で会計を済ませ外に出る。  ……しばらくアイツの置いていった2千円は財布の中に取っておこう。 「さて、と」  外の空気を吸いながら大きく伸びを一つ。  帰るかな。  ここら辺は歓楽街だから、ゲーセンやカラオケといった娯楽施設から大人なお店や宿泊施設まで何でもござれだけど、一人じゃ何もすることないし。  …………あ。  今更気付いたけど、陸とプリクラくらい撮れば良かったかな。  予行とは言えさ、ほら、その……デートなんだしさ?  ………ま、陸のあの鈍感っぷりじゃなぁ。  私の査定が、減点20の大台に乗る危険もあったわけだし。……だからって何かしらのデメリットがあるわけじゃないけど。  ……ま、いっか。帰ろ帰ろ。   ―――さて。  ここからウチに帰るとなると、大人な宿泊施設の通りを突っ切った方が近いんだけど……なんかヤなんだよなぁ。  まぁ、女になったとは言え、これでも空手有段者だから身の危険は感じないけど、そうだとしても気が引ける。  ……以前のこと思い出すから。  うぅん、過去のことを引き摺っててどうするんだオ……じゃなかった私!  さぁ、とっとと真っ直ぐ帰ろう! 「………………ぇ?」  踵を返した、その刹那に私は思わず声を漏らしていた。  ―――虫の報せってホントにあるもんなんだ……。  ヤな予感っていうか……なんか、こう、……そういう口じゃ表現出来ないような、ぞわぞわした感覚。  多分、数分前の私が感じていたであろうそれは、現実のものとなって目の前に具現化した。  ―――もし髪を結うとしたら、今の私と同じ―――短めのポニーテールが凄く似合いそうな……可愛らしい女の子。  そして、その後をおずおずとついていく、冴えない外見の若い男。  制服は着てなかったけど、恐らく間違いない。  ……坂城 るい。  陸が、想いを寄せる同学年、他クラスの女の子だ。  道の途中ですれ違う程度ならば、ぞわぞわなんてしなかった。  けど、そうじゃない。    坂城さんと若い男は……派手な外装の宿泊施設、要は……ラブホに姿を消した。  ―――気がつくと、私は電柱の影に隠れて息を殺していた。  ……見た、見ちゃった、見てしまった!  思わず電柱に寄りかかりながら、その場にへたり込む。情けないことに足腰が立たなくってた。  ……あの純粋そうな坂城さんが、誰とも分からない男と……ラブホに入っていく瞬間を、はっきりくっきりと!!  ……髪は下ろしてたけど、間違いない。あんなに可愛い娘はそんじょそこらでお目に掛かれるようなものじゃないし……右目の目尻に、坂城の特徴である涙黒子があったのも見えてしまったっ!  ―――ど、どどど、とうしよう……。 「はぁ……はっ、っはぁ……っ!」  心臓が、バクバクと私の中で騒音を掻き鳴らす。  陸の前で高鳴った時と、同じ場所が鳴らしているとは思えない―――無粋で乱暴な音。  そのダイレクトな振動が、嫌で、気持ち悪くて、必死で呼吸を整える……。 「ふー……っ、っふぅ……」  漸く、心音が大人しくなったと思ったら、今度はじんわりと汗がまとわりついてた。  ったくもぉ……帰ったら風呂に直行だな、これは。  ……って、そんなことより!  ―――あれは、確かに坂城さんだった。  髪型は確かに違ってたけど、双子の姉妹が居るとかなんて聞いたことないし……。だとしたら、あの子は……やっぱり―――?  私の中で上手く思考がまとまらない。  もし、本当に坂城さんなら、どうしてあんな所に入っていったのだろう……?  恋人だから? うぅん、多分それは違うと思う。  なんて言うか、あの二人にそういう感情が見えてこなかった。  じゃあ、何のために……?  勿論、高校生ともなれば、あーいう所で……その、……どんなコトするかなんて、みんな暗黙の了解で知っている。  まさか、あんな所で優雅にティータイムってことはまずないだろうし……。  もしかしたら、他人の空似ってのかもしれない。でも、もし、万が一……本当に坂城さんだったとしたら……?  ……ふと、陸の顔がチラつく。  ―――よし、帰りは遅くなるけど、少し張り込もう……っ!!  そうと決まったらコンビニに直行だ!  え……何でかって?  アンパンと牛乳は、張り込みの基本じゃなかったっけ?  ……あれ、違うの? ----   ~青色通知4.1(陸の場合)~   「―――じゃ、お疲れッス」 「おう、お疲れぃ。気ぃつけて帰れよ~?」  ガソリンの匂いが染み付いた店員の制服をハンガーに掛けて、先輩形に挨拶して仕事場を後にする。  すっかり暗くなった国道沿いの歩道を歩きながら、ふと思う。  そうだ、そういや初紀との――……"予行"で忘れてたけど、今日って発売日じゃん、まじめの一歩の、単行本の。    カモン、俺の財務省。  ………………はぁ。  ……ここ最近の外交経費が嵩んだせいか財政難だってよ。  ゆうちょの口座から幾らか降ろそうかとも思ったが、そーいうことしてたら際限がなくなりそうだしなぁ。  ……立ち読みだな、こりゃ。  適当に入ったコンビニの文庫本コーナーを物色する。  ……ない。  くそっ、売り切れかよっ!?  ……ん? 『一通の青い封書が語る、女体化症候群を取り巻く実態が今明らかになる!』  代わりに、そのコーナーに大量に積まれた文庫本の帯の文字が目に入った。その下に小さなフォントで――― 『この国が生み出した歪み。次の被害者は、あなたかもしれない。』  ―――とか何とか書かれていた。  なんだ、この煽りの文章は。仕事先に置いてある東スポとか週刊誌かよ?  ……普段なら気にも留めないが、今の現状が現状のせいか……その本に手が伸びる。  えーとタイトルは……   『――の――』  読めない。唯一読めたのは平仮名の"の"だけ。  ……悪かったな、ゆとりで。  誰ともつかず毒づきながら本を開く。目次を指でなぞりながら各章のタイトルを追っていく。 ・第一章 【女体化症候群について】P4 ・第二章 【性別選択権】P11 ・第三章 【青色通知】P25 ・第四章 【性別選択権に於けるあれこれ】P36 ・第五章 【通知受取人と選択権給付】P51  ―――通知受取人? 選択権給付?  どっちも初めて見る言葉だな。  最近、女体化症候群についてあれこれ調べていたつもりだったけど、こんな言葉は微塵も聞いたことがない。  P51、P51……と、あったあった。 『前章で紹介した通り、女体化のボーダーラインである"15~6歳の性交渉未経験の男子"には、希望すれば性交渉を行う"相手"を国から用意してもらえる。  これがいわゆる、"通知受取人"というものである。』  ―――"通知受取人"っていう凄ぇお役所仕事的な名前が付いてんのに、やってることは……ヤることかよ。  ……そう思いながらページを捲る。 『この"通知受取人"という名称の由来は、その性別選択権のシステムそのものにある。  性別選択権該当者が、選択権を行使する際―――つまり"性交渉後"、証拠として性別選択権該当者の通知の一部を受け取るというもの。  その通知の一部を役所に持っていくと、通知受取人に"選択権給付"として一定の金額が手渡しされる算段だ。』      要は風俗と同じじゃねぇか……ま、タダで見ず知らずの野郎とヤるなんて誰だって嫌だろうからな。  ……俺なら金積まれても願い下げだが。  更にページを捲る。 『この一連のシステムはここ数年で確実な成果を挙げており、世論も黙認し始めたのだが、未だに幾つかの問題がある。    1点目、通知受取人は"18歳以上、健康状態に問題がない女性"に限られるが、年齢に関しての事実確認はほぼ行われていないこと。  これは"性交渉"というデリケートな問題が絡む故の、社会的信用を考慮した結果である(但し、匿名での定期的な健康・性病診断は義務付けられているので、感染についての問題は無いとされている)。    2点目、"通知受取人"を騙った性別選択権行使者に対する詐欺、若しくは仲介業者を騙った女性への詐欺が横行していること。  まだまだ世の中に定着しきっていないこのシステムの穴を突いた卑劣な詐欺の被害が後を絶たないのが現状だ――――』  ………何か気分が悪くなってきた。  本を閉じてコンビニを後にする。    ―――ま、俺には関係ないことだしな………男で居られよう居られまいと。  ―――陸の誕生日まで、あと5日。   ~青色通知4~   完

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