リレー『ユニフォーム』

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リレー『ユニフォーム』 - (2008/12/05 (金) 20:23:10) の最新版との変更点

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-書きたい人は早い者勝ち **190 : ◆zK/vd3Tkac :2008/08/05(火) 00:57:16.48 ID:tHGwx2OU0 「うわ、何この服、露出高すぎ……」  コスチューム部。そんな変てこな部活が、この学校にはある。  私はまだ女になって1ヶ月しか経っていない女体初心者で、女性の服もろくに持ってない。  そんな私がよくお世話になっているのがこのコスチューム部である。  あらゆる衣服を集め、生徒に貸し出す服飾のプロ集団である通称コス部。  現にこの部活があって、多くの女体化した生徒達は助かっているのだ。  私も、学校で授業中に女体化したため、動こうにもだぼだぼのズボンとブカブカのブレザーに翻弄されどうにも出来なかったところ、コス部はぴったりのサイズの女子制服を用意してくれた。(下着に関してもフリーサイズの物を用意してくれた)  そんなコス部に、私は思い切って入部した。  けど、そんなコス部で課された最初の課題がまさかこんなことだとは思いもしなかったのである。 「それ着て? この部のユニフォームだから」  眼鏡をかけたショートカットの南部長から渡されたのは、まるでアニメキャラが着るような大胆に太ももや胸元やお腹が出ているにも関わらず装飾過多気味のメイド服だった。  とりあえず着てみたものの、鏡を見てこれはどうにも、と頭を抱えているところだ。 「はいはい、さっさと出る! 部員は着替えは40秒以内で済ませられるようにならないと更衣室の利用者を待たせちゃうから!」 「すす、すいません!」  唐突に更衣室から引っ張り出され、困惑しつつも平謝り。  部長は正面に立って、私をじっと見つめた。 ---- **196 : ◆7UgIeewWy6 :2008/08/05(火) 01:37:48.45 ID:Lv2/dU650 「うーん…なかなか似合うわねぇ…。」 「はぁ…。どうも。」 しかしどうにも腑に落ちない。 私がコス部にお世話になった時にも、部室に行ったときも、 そして当の南部長も、「この服」を着ていないのである。 「それじゃあ、教室周り行くわよー!」 「え!?」 教室周り。 主にコス部がその成果を見せたり、 にょた対策の一環として服飾を行っていることをアピールするシロモノで、 定期的に自作の服で昼休みや放課後に学校内を周っているのだ。 私が助けられたのも、丁度昼休みのソレにぶちあたったからなのだが…。 「わ、私がですか!?」 「そうよー。」 「でも入部していきなり…!」 「期間の長さは素材の良し悪しには関係ないね~。そ・れ・に~。」 「それに?」 「これは入部希望者のための最初の試練なのよ!」 「えぇえ!?」 「自分や部員が作った服を「恥ずかしくて着れない」なんていうのはコス部員として失格よ!」 「え、あ、はい!?」 「じゃあ、同意が得られたところでしゅっぱーつ。」 私は南部長の有無を言わさぬ勢いに気圧され、フリフリヒラヒラ露出過多のメイド服で、 昼休みの学校内を周ることになった…。 ---- **224 :1/2 ◆veGtaVgeKE :2008/08/05(火) 03:36:02.21 ID:n2ko+x110 「こんにちはー、コスチューム部ですぅ……。」 今にも消え入りそうな声だったと思う。それでもいきなりメイドさんが入ってきたものだから、教室の半分は同じように口を開けてこっちを見ている。 うぅ、穴があったら入りたい……。 「ちょっと、そんな声じゃみんなに聞こえないでしょ!」 「でも……。」 ただでさえ恥ずかしいのに、その上同学年ときた。知り合いに私だと気付かれないか心配で心配で。 「もう、しょうがないわね。みなさん! コス部です! 今日は新入部員を紹介しまーす!」 えっ、……ええー!? 確か説明では『衣装の紹介』―そもそもこんな衣装を紹介して着る人がいるのかは甚だ疑問だが―だったはずなのだが……。 「では、どうぞっ!」 こちらに向けられた笑顔が恐ろしい。 私は覚悟を決めて壇上にあがる。途中で転んだけど忘れる! 「この度、コスチューム部に、入りました、」 「かわい~っ!」 私の声は歓声にかき消された。男女共に熱いまなざしを送りつけてくる。 私の顔はもう真っ赤なのだろう。 「あれ?」 教卓に何かが零れた。 「え、ちょっと……、大丈夫?」 さすがの部長もここまでの事態は想像していなかったらしい。 自分でさえも、こんなことで泣くとは思ってなかった。 「あ、と、とりあえず部室に戻りなさい。それぐらい一人で行けるわよね。私は教室回り続けるから。」 「はい。」 私は黒板を伝って歩き出した。 「ごめんね。」 後ろから、心配そうな声が届いた。 **225 :2/2 ◆veGtaVgeKE :2008/08/05(火) 03:36:43.91 ID:n2ko+x110 しばらく廊下を歩いていると落ち着いてきた。 緊張が解けたせいか私はトイレに、男子トイレに入ろうとした瞬間、そいつと目が合った。 「ご、ごめんなさい!」 自分が今女だということをすっかり忘れてしまっていた。こんな格好だというのに。 「君、その服。」 「あ、これはコスチューム部の……。」 いきなり襟をつままれた。 「ここ、1センチほど伸ばした方がいいね。」 「え?」 「ごめん、いきなりだったよね。それよりさっきコスチューム部って言った?」 「はい。何か……?」 「この学校にはそんな部活があるんだ。」 「ええ。……えっ?」 「ああ、僕最近転校してきたばかりなんだ。それで、よかったらコスチューム部ってのを見学させてもらえないかな。」 「それはいいですけど、……ちょっと失礼します。」 とりあえず隣のピンクの扉に入り込んだ。逃げ込んだ、という方が正確か。 いろいろな疑問が頭をよぎる。個室の中は考え事をするには最適だ。 なぜこんな時期に転校してきたのだろう。このメイド服について指摘してきたけどどこまで詳しいのかな。 男の人でコス部に興味あるのって珍しいよね。まあ私もちょっと前までは男だったんだけど……。 「はぁ……。」 思わずため息が漏れた。ちょっと前は男だったんだけど、がメイド服か……。 さて、感傷に浸っている暇は無い。人を待たせている。 女の子はここが面倒だよね、と後始末を済ませ、個室を出た。 手を洗って廊下に出ると、彼は外を眺めていた。 私は覗き込むようにして呼んだ。 「お待たせしました。行きましょう。」 ---- **313 :リレー ◆7UgIeewWy6 :2008/08/05(火) 19:27:43.19 ID:/BTlRBlR0 「ただいま戻りましたー。」 「失礼しまーす。」 あんなコトになってしまった後なので、 極力元気な声を出して部室の扉を開ける。 「おっかえり~!」 出迎えてくれた南部長にいきなり抱きつかれる。 どうやら部長の方が先に戻っていたようだ。 「あんなコトになっちゃったし、そのまま帰らないんじゃないかって心配してたのよ~!」 抱きついたままポンポンと私の背中を叩く部長。 どうやら本当に心配だったようだ。 「あはは…制服もここに置きっぱなしですし、このままじゃ帰れませんよ。」 「ほら、人には向き不向きってのがあるしね?やろうと思ってくれただけで充分だから!」 「あの…部長?」 「だからあれは気にしなくて良いから!やめないで?ね?ね?」 なんだか話がかみ合わない。 それにあまり彼を放置しておくのも可愛そうだ。 **314 :リレー ◆7UgIeewWy6 :2008/08/05(火) 19:28:31.98 ID:/BTlRBlR0 「…とにかく!私はやめませんから、落ち着いてください。」 「ホントに?ホントに?良かったぁ~。」 「それより、彼を案内してあげてください。」 「ん?彼?」 「…こんにちは。」 私に部長が抱きついているのを居心地悪そうにしながら、彼は挨拶した。 「どうも、1年の北川と言います。」 「北川君…ね。入部希望なの?」 「そのつもりですが、一応見学をと思いまして。」 「ふーん…珍しいわね、見学だけでも男子が来るなんて。」 服飾に興味がある男子が珍しいのか、胡散臭そうな目つきで彼を見る部長。 しかしそれを返す彼の目は、真剣そのもののようだった。 「まぁ、良いわ。とりあえず案内してあげる。」 「ありがとうございます。」 「西園さん、あなたも一応一緒に来てね。」 「え、私も?」 「そ、どうあれ彼を連れてきたのはあなただからね。」 そう言って、部長は部室の中へと真っ直ぐに歩き出して行った。 **449 :リレー (ちふでさん):2008/11/30(日) 03:09:19.22 ID:ZQDy3xSkO 「……桃源郷」 部室に入るなりそう呟いた彼——北川君の動きは凄まじかった。 南部長に対して「入部すればここの設備全部使えるんですか? このミシンも? あの生地も?」といきなり尋ねはじめ 南部長が唐突にハイテンションになった彼に戸惑いつつも「ええまぁ」と答えると「なら入部します!」と即答。 ただここで流石に自分のテンションがおかしいことに気が付いたのか、一度赤面する。 けれど南部長はまだこのイマイチ性格の掴めない男を警戒していたようでこんなことを言った。 「入部しますと言われても、貴方がこの部に入部する資格があるかまだ分からないわ。 だからとりあえず今ここにある道具と布や何かで、一着服を作ってみてくれるかしら。まあ、テストみたいなものね」 とかいいだしてしまった。 いくら何でも服を一着つくるって言うんじゃ時間がかかりすぎるだろう。そう思って彼の方を見れば、なにか嬉しそうな表情をつくっていた。 ——彼は凄まじい速度で作業を初めた。 生地に大まかな線をひいたと思えば直ぐに裁断をはじめ、そのまま素早く仮止めをした後ミシンをセットして縫い始めた。 あまりの素早さに南部長も驚いていたほどだ。 そうして一時間と少しというあり得ないスピードで、可愛らしい無地のワンピースを作ったのが十分前。 そして今何故かそのワンピースを着ているのが私だったりする。 寸法は彼いわく「まあ一目見れば大体分かります。それに、ある程度余裕のある作りでも大丈夫ですしね、これなら」だそうだ。 ちなみに南部長はいま、嬉々として彼にチャイナドレスを作ってくれるように頼み、身長、肩幅、股下、スリーサイズetcを教えていた。 南部長のではなく——私の、だ。 それどころか彼の歓迎会が私を着せ替えて遊ぶという計画すらたっている。これは一体どういうことだ。くそう、しまいにはまた泣くぞ私。 ----
-書きたい人は早い者勝ち **190 : ◆zK/vd3Tkac :2008/08/05(火) 00:57:16.48 ID:tHGwx2OU0 「うわ、何この服、露出高すぎ……」  コスチューム部。そんな変てこな部活が、この学校にはある。  私はまだ女になって1ヶ月しか経っていない女体初心者で、女性の服もろくに持ってない。  そんな私がよくお世話になっているのがこのコスチューム部である。  あらゆる衣服を集め、生徒に貸し出す服飾のプロ集団である通称コス部。  現にこの部活があって、多くの女体化した生徒達は助かっているのだ。  私も、学校で授業中に女体化したため、動こうにもだぼだぼのズボンとブカブカのブレザーに翻弄されどうにも出来なかったところ、コス部はぴったりのサイズの女子制服を用意してくれた。(下着に関してもフリーサイズの物を用意してくれた)  そんなコス部に、私は思い切って入部した。  けど、そんなコス部で課された最初の課題がまさかこんなことだとは思いもしなかったのである。 「それ着て? この部のユニフォームだから」  眼鏡をかけたショートカットの南部長から渡されたのは、まるでアニメキャラが着るような大胆に太ももや胸元やお腹が出ているにも関わらず装飾過多気味のメイド服だった。  とりあえず着てみたものの、鏡を見てこれはどうにも、と頭を抱えているところだ。 「はいはい、さっさと出る! 部員は着替えは40秒以内で済ませられるようにならないと更衣室の利用者を待たせちゃうから!」 「すす、すいません!」  唐突に更衣室から引っ張り出され、困惑しつつも平謝り。  部長は正面に立って、私をじっと見つめた。 ---- **196 : ◆7UgIeewWy6 :2008/08/05(火) 01:37:48.45 ID:Lv2/dU650 「うーん…なかなか似合うわねぇ…。」 「はぁ…。どうも。」 しかしどうにも腑に落ちない。 私がコス部にお世話になった時にも、部室に行ったときも、 そして当の南部長も、「この服」を着ていないのである。 「それじゃあ、教室周り行くわよー!」 「え!?」 教室周り。 主にコス部がその成果を見せたり、 にょた対策の一環として服飾を行っていることをアピールするシロモノで、 定期的に自作の服で昼休みや放課後に学校内を周っているのだ。 私が助けられたのも、丁度昼休みのソレにぶちあたったからなのだが…。 「わ、私がですか!?」 「そうよー。」 「でも入部していきなり…!」 「期間の長さは素材の良し悪しには関係ないね~。そ・れ・に~。」 「それに?」 「これは入部希望者のための最初の試練なのよ!」 「えぇえ!?」 「自分や部員が作った服を「恥ずかしくて着れない」なんていうのはコス部員として失格よ!」 「え、あ、はい!?」 「じゃあ、同意が得られたところでしゅっぱーつ。」 私は南部長の有無を言わさぬ勢いに気圧され、フリフリヒラヒラ露出過多のメイド服で、 昼休みの学校内を周ることになった…。 ---- **224 :1/2 ◆veGtaVgeKE :2008/08/05(火) 03:36:02.21 ID:n2ko+x110 「こんにちはー、コスチューム部ですぅ……。」 今にも消え入りそうな声だったと思う。それでもいきなりメイドさんが入ってきたものだから、教室の半分は同じように口を開けてこっちを見ている。 うぅ、穴があったら入りたい……。 「ちょっと、そんな声じゃみんなに聞こえないでしょ!」 「でも……。」 ただでさえ恥ずかしいのに、その上同学年ときた。知り合いに私だと気付かれないか心配で心配で。 「もう、しょうがないわね。みなさん! コス部です! 今日は新入部員を紹介しまーす!」 えっ、……ええー!? 確か説明では『衣装の紹介』―そもそもこんな衣装を紹介して着る人がいるのかは甚だ疑問だが―だったはずなのだが……。 「では、どうぞっ!」 こちらに向けられた笑顔が恐ろしい。 私は覚悟を決めて壇上にあがる。途中で転んだけど忘れる! 「この度、コスチューム部に、入りました、」 「かわい~っ!」 私の声は歓声にかき消された。男女共に熱いまなざしを送りつけてくる。 私の顔はもう真っ赤なのだろう。 「あれ?」 教卓に何かが零れた。 「え、ちょっと……、大丈夫?」 さすがの部長もここまでの事態は想像していなかったらしい。 自分でさえも、こんなことで泣くとは思ってなかった。 「あ、と、とりあえず部室に戻りなさい。それぐらい一人で行けるわよね。私は教室回り続けるから。」 「はい。」 私は黒板を伝って歩き出した。 「ごめんね。」 後ろから、心配そうな声が届いた。 **225 :2/2 ◆veGtaVgeKE :2008/08/05(火) 03:36:43.91 ID:n2ko+x110 しばらく廊下を歩いていると落ち着いてきた。 緊張が解けたせいか私はトイレに、男子トイレに入ろうとした瞬間、そいつと目が合った。 「ご、ごめんなさい!」 自分が今女だということをすっかり忘れてしまっていた。こんな格好だというのに。 「君、その服。」 「あ、これはコスチューム部の……。」 いきなり襟をつままれた。 「ここ、1センチほど伸ばした方がいいね。」 「え?」 「ごめん、いきなりだったよね。それよりさっきコスチューム部って言った?」 「はい。何か……?」 「この学校にはそんな部活があるんだ。」 「ええ。……えっ?」 「ああ、僕最近転校してきたばかりなんだ。それで、よかったらコスチューム部ってのを見学させてもらえないかな。」 「それはいいですけど、……ちょっと失礼します。」 とりあえず隣のピンクの扉に入り込んだ。逃げ込んだ、という方が正確か。 いろいろな疑問が頭をよぎる。個室の中は考え事をするには最適だ。 なぜこんな時期に転校してきたのだろう。このメイド服について指摘してきたけどどこまで詳しいのかな。 男の人でコス部に興味あるのって珍しいよね。まあ私もちょっと前までは男だったんだけど……。 「はぁ……。」 思わずため息が漏れた。ちょっと前は男だったんだけど、がメイド服か……。 さて、感傷に浸っている暇は無い。人を待たせている。 女の子はここが面倒だよね、と後始末を済ませ、個室を出た。 手を洗って廊下に出ると、彼は外を眺めていた。 私は覗き込むようにして呼んだ。 「お待たせしました。行きましょう。」 ---- **313 :リレー ◆7UgIeewWy6 :2008/08/05(火) 19:27:43.19 ID:/BTlRBlR0 「ただいま戻りましたー。」 「失礼しまーす。」 あんなコトになってしまった後なので、 極力元気な声を出して部室の扉を開ける。 「おっかえり~!」 出迎えてくれた南部長にいきなり抱きつかれる。 どうやら部長の方が先に戻っていたようだ。 「あんなコトになっちゃったし、そのまま帰らないんじゃないかって心配してたのよ~!」 抱きついたままポンポンと私の背中を叩く部長。 どうやら本当に心配だったようだ。 「あはは…制服もここに置きっぱなしですし、このままじゃ帰れませんよ。」 「ほら、人には向き不向きってのがあるしね?やろうと思ってくれただけで充分だから!」 「あの…部長?」 「だからあれは気にしなくて良いから!やめないで?ね?ね?」 なんだか話がかみ合わない。 それにあまり彼を放置しておくのも可愛そうだ。 **314 :リレー ◆7UgIeewWy6 :2008/08/05(火) 19:28:31.98 ID:/BTlRBlR0 「…とにかく!私はやめませんから、落ち着いてください。」 「ホントに?ホントに?良かったぁ~。」 「それより、彼を案内してあげてください。」 「ん?彼?」 「…こんにちは。」 私に部長が抱きついているのを居心地悪そうにしながら、彼は挨拶した。 「どうも、1年の北川と言います。」 「北川君…ね。入部希望なの?」 「そのつもりですが、一応見学をと思いまして。」 「ふーん…珍しいわね、見学だけでも男子が来るなんて。」 服飾に興味がある男子が珍しいのか、胡散臭そうな目つきで彼を見る部長。 しかしそれを返す彼の目は、真剣そのもののようだった。 「まぁ、良いわ。とりあえず案内してあげる。」 「ありがとうございます。」 「西園さん、あなたも一応一緒に来てね。」 「え、私も?」 「そ、どうあれ彼を連れてきたのはあなただからね。」 そう言って、部長は部室の中へと真っ直ぐに歩き出して行った。 **449 :リレー (ちふでさん):2008/11/30(日) 03:09:19.22 ID:ZQDy3xSkO 「……桃源郷」 部室に入るなりそう呟いた彼——北川君の動きは凄まじかった。 南部長に対して「入部すればここの設備全部使えるんですか? このミシンも? あの生地も?」といきなり尋ねはじめ 南部長が唐突にハイテンションになった彼に戸惑いつつも「ええまぁ」と答えると「なら入部します!」と即答。 ただここで流石に自分のテンションがおかしいことに気が付いたのか、一度赤面する。 けれど南部長はまだこのイマイチ性格の掴めない男を警戒していたようでこんなことを言った。 入部しますと言われても、貴方がこの部に入部する資格があるかまだ分からないわ。 だからとりあえず今ここにある道具と布や何かで、一着服を作ってみてくれるかしら。まあ、テストみたいなものね」 とかいいだしてしまった。 いくら何でも服を一着つくるって言うんじゃ時間がかかりすぎるだろう。そう思って彼の方を見れば、なにか嬉しそうな表情をつくっていた。 ——彼は凄まじい速度で作業を初めた。 生地に大まかな線をひいたと思えば直ぐに裁断をはじめ、そのまま素早く仮止めをした後ミシンをセットして縫い始めた。 あまりの素早さに南部長も驚いていたほどだ。 そうして一時間と少しというあり得ないスピードで、可愛らしい無地のワンピースを作ったのが十分前。 そして今何故かそのワンピースを着ているのが私だったりする。 寸法は彼いわく「まあ一目見れば大体分かります。それに、ある程度余裕のある作りでも大丈夫ですしね、これなら」だそうだ。 ちなみに南部長はいま、嬉々として彼にチャイナドレスを作ってくれるように頼み、身長、肩幅、股下、スリーサイズetcを教えていた。 南部長のではなく——私の、だ。 それどころか彼の歓迎会が私を着せ替えて遊ぶという計画すらたっている。これは一体どういうことだ。くそう、しまいにはまた泣くぞ私。 ----

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