「くそっ!くそっ!くそっ!!!なんでだよっ!!!」 鏡に映る自分の姿を見て愕然とした。 そこには今までの自分でない、別の誰かが映し出されていた。 出っ張っていた喉仏は鳴無くなり、代わりに胸のところが出っ張っていた。 ありえない。絶対にありえない。 いや、絶対ということを言ってしまっては、今この場で起きた現象を否定してしまう。 絶対という言葉はそう安易に使ってはならない。 でも今は、そう考えなければやっていられない状況。 支えが無ければ、多分俺は発狂してしまうだろう。 とりあえず自分自身を落ち着かせる。 荒れていた呼吸をゆっくりと整え、ベッドに座り込む。 ある程度呼吸が落ち着き、機能停止状態だった思考回路も、少しずつ正常に機能していく。 知らぬ間に汗を掻いていたようで、厚手のパジャマはびしょびしょに濡れていた。 「喉・・・渇いた・・・」 次第に働いていく思考回路。俺の喉は水分を欲しているようだった。 額に溢れる汗をタオルで拭い取り、自分の部屋を出る。 冷蔵庫のある所へは、一階のリビングを通っていかなくてはいけない。 喉の渇きが激しいらしく、俺は急ぎ足で冷蔵庫のある台所へ向かった。 俺は喉の渇きばかりに気を取られており、女体化したことを忘れ、何も躊躇せずにリビングに足を踏み入れた。 そこには父親がおり、朝食を取りながらのんびりと新聞を読んでいた。 「ひ、ひ、ひ、ひ、ひ、ひ、ひ・・・ひろ・・・し・・・?」 俺の姿を見るやいなや、父親は唖然とする。 口に含んでいたコーヒーは全て新聞紙に還元され、濾過され床にぽたぽたと零れ落ちていた。 「お前・・・童貞だったか・・・」 父親が、床にぶちまけたコーヒーを拭きながら話す。 仕方無さそうに言っているが、どこか落胆したような表情を見せている。 自分の息子は大丈夫だろうと思っていたのだろうか。 コーヒーをぶちまけるシーンを思い起こせば、相当衝撃的なことだったのだろう。 ため息をつきながら、染みのついたYシャッツを脱ぐ。ネクタイにまで染みがついている。 クリーニングに出してもかなり厳しいレベルだ。 「お前、今日学校はどうするんだ?」 「休んだほうがいいよね?」 冷蔵庫から取り出した牛乳を、一杯、二杯と一気に飲み干す。乾いた喉に潤いが戻る。 頭に上っていた熱はほぼ治まり、今は冷静に物事を考えることが出来る。 ふう、と息を吐き、今後のことについて父親と相談した。 女体化すると、色々と面倒なのだ。 市役所に行って手続きをしたり、学校に行き今後の学校生活について三者面談形式でやったりしなくてはいけない。 そのことを考えると、憂鬱になってくる。 しかし一番の謎。なぜ俺は女体化したのかということ。 あの時、俺は男になったはず。感触もあった。 だけど今この状態だ。神様の悪戯なのだろうか。 理解しづらい状況に、少しばかりのもどかしさが俺を襲う。 この時はこう思わざるを得なかった。 俺の中の思考回路は、これ以外の回答が出てこなかった。 あの人と出会うまでは・・・。 -------------------------------------------------------------------------------- ◆[[ポニーテールの少女]] ----
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