「ひまわりのさく頃に」 僕は15年間ずーっとこの村に住んでいる。ある県の山奥にある辺鄙な村だ。 村の人全てを僕は知っているし、皆も僕を知っている。それぐらい小さな村なんだ。 そんな村で僕はキミに出会った。 村に唯一ある中学校。僕が通っている学校だ。 夏休みに入ると生徒で賑わう学校もえらく静かになる。静かな学校ってのもなかなかいいものだ。 僕は夏休みに入ってからほぼ毎日学校に来ている。一人でだけど。 友達は皆町場の高校に進学するために受験勉強に追われている。 ・・・僕は中学校を卒業したら叔父さんの工場で働くことが決まっているから暇なんだ。 学校に来ると決まって裏山(通称:富士山。「ふじさん」じゃなくて「ふじやま」)の丘へ向かう。 ここは僕のお気に入りの場所。村が見渡せて凄くキレイなところなんだ。 この日も僕は一人で丘に向かった。そしていつも通りの時間を過ごすはずだった・・・、でもなにかが違っていたんだ。 「ふう、やっと着いた…あれ?」 いつも僕の貸切なのに先客がいた。 どうやら女の子のようだった。 「君も、よく来るの?」 僕はその女の子に聞いてみたんだ、でも返事がない。 …まてよ、僕はこの女の子を 見 た こ と が な い 。 この村の人だったら僕が知らない人はいない。これは間違いない。 「ねぇ?君はいったい…」 『ワタシハアナタ』 「え?それって――」 ザザァー。突然風邪が吹き付けてきた。おもわず僕は目をつぶっていた、目を開けるとあの女の子は消えていた。 「いったい、誰だったんだろう――」