『ロボット』 2008 > 09 > 02(火) ID:WaM0Y > ZeO

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『ロボット』 2008/09/02(火) ID:WaM0Y/ZeO - (2008/09/08 (月) 20:42:39) のソース

安価『ロボット』


「もし好きなロボットがもらえるとしたら、どんなのが欲しい?」
「そうだね、今俺の目の前にいる邪魔なロボットオタクを、教室からつまみ出したくれるロボット」
「なんだよ、連れねーなぁ」

他愛のない会話。義行が主に自分の趣味について話をふり、俺がそれを軽くいなす。
義行はいつも俺の返事にやや不服そうで、それでいてどこか満足げにしている。
いつものやりとりだ。


「・・・で、優希」
「ん?」
優希というのは、俺の名前。女体化がまだ未知の病気だったころ、
両親が「どちらの性別でも困らないように」とつけてくれた名前。
なまじ顔立ちが中性的なだけに、女と見間違われることも少なくない。

「お前、どうすんの?来月」
「あぁー、女体化?別に気に病む必要ないっしょ」
「お前なあ・・・後悔しても知らんぞ?」
「はいはいわかったわかった。ご忠告どーも恐れ入りますよー」
「真面目に聞け!ったく・・・」

その夜、俺は柄にもなく煙草の煙なんぞをくゆらせ、考えあぐねていた。
実際問題、どうしたものか。義行に対する意地から「心配ない」と言ってはみたものの、正直いってアテはない。
かといって、クラスの女子に頭を下げることが可能なほど、俺の自尊心も安くない。

女体化という現象はなかなか厄介なもので、回避するには運に頼るか、「期日」までに性行経験をするしかない。

最近では公共風俗とやらの台頭により、性行に至るだけならば何の感慨もなく出来てしまう。
ただ、見ず知らずの女で童貞を捨てるというのも、それはそれでプライドが許さない。

「どうしたものかな・・・」
慣れない煙草の味はひどく苦味を帯びていて、それがメランコリックな気分を一層逆なでした。


次の日。思い詰めてみたものの折衷案にはたどり着けず、陰鬱な気分をひきずり俺は学校へ向かった。

義行の顔・・・直視できるだろうか。いっそ欠席すれば良かった。「・・・き」
おまけに眠い。昨日は考えすぎてまともな睡眠すら得られなかった。「・・・うき、ゆうき」

「―――おい!優希ってば!」

ふと、甲高く張り上げられた声が自分に向けて発せられていたことに気がつく。
周りの声すら聞こえなくなるほど頭を悩ませてたのか、俺は。さておき、俺の名を呼んだこの少女は誰だろうか。

見たところ、非常に可愛らしい。「美」をつけた少女と呼称しても違和感のないほどだ。
しかしながら、悲しいかな。俺はこんなにも麗しい女性の方と知り合った覚えはない。

「さしでがましいようですが、どちら様―――」

言いかけたところではたと気がついた。
この少女、見てくれこそ芸能界にでも進出できそうな風貌だが、立ち振る舞いにはどことなく既視感が。

そういえば、今日はまだ義行は来てない?

「・・・あー、義行?お前童貞だったのか」

図星。顔を赤らめ、少女こと義行はそっぽを向く。
「・・・そ、うだよっ!それが何か」

極めて平静を装っているつもりらしいが、声色は震えているようにも聞こえる。

「って、そんなこたぁどうでもいいんだよ!耳貸せぇ耳」
「はあ?」
「あー、えーとだな・・・」

「――はあ!?俺とお前が?!」
「ばっ・・・声、でけぇよ!死ね!」
「いてっ」
照れ隠しなのだろうか、俺の後頭部に拳を命中させる義行。
女体化しても、腕力に衰えは見られないらしい。

「いってぇ・・・ていうか、義行?本気かおま」
「よ・し・の!いいか、俺はもう義行じゃない。義乃って名前なの!次義乃っつったらはったおすぞ」

「わかった、わかったから。で、義・・・乃。本当の本当に本気か?」
「・・・本気でなくて、こんなことお前に言うかよ」
「そうか・・・わかった、いいよ。ありがとうな」
「・・・あぁ」


数日後のある夜更け。肌を重ね、ぎこちなく愛し合う二人の姿がそこにはあった。

「・・・なあ、義乃。本当に俺なんかで良かったのか?」
「・・・何度も言わすな。お前だから選んだ」
「そっか・・・義乃、大好きだよ―――」
おわり 

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