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ヒスイさんの - (2011/06/23 (木) 00:47:25) のソース

本日も猫なり

私の名はヒスイ。
レンジャー連邦で長い事猫士として勤め暮している一介の猫だ。

仲間内の中では年長で、毛並みは黒、自分には判別付かないが、瞳の色はその名の通り翡翠色だと人は言う。
趣味は政庁屋上の手摺の上に立ち、空を見上げ哲学する事だったが…施設に配属されてからというもの、なかなかそうもいかなくなっている。
なぜならば、職務に就いている間我々は、作業効率を考えて猫士専用の義体に介入する事になっているからだ。

義体を使用する、というのはこの国ならではの事、もちろん職種によっては本来の姿のままで構わない。
しかし、猫の手足は細かい事をするのには向いておらず、とくに、出撃の際人間用作られているI=Dに乗り込む時など…その…操縦桿に手足が届かない…という弊害も…過去にはあった。
各猫士の年齢や性格、人が持つイメージに合わせて外見が形成された義体は、TLO問題に抵触しない素材で出来てはいるが、本来の身体と構造が違うのが不便だ。
体が大きくなる為、手すりに立ちにくく、柔軟性の不足で背中がかゆくても足が届かない。
(しかも、仲間の愛佳から人の姿の時それはやめろ、と理不尽な蹴りが飛んでくる。)
とは言え、それは仕事の間だけなので、いたしかない。

本来はする事ができない指を使う動作を意識する。
飛び上がる事が出来ない高所を道具を使って上る。
色の着いた視界になれる…などなど、これらは結構な訓練が必要で、この国で銘入猫士になる際に苦労した事を思い出しながら、私は今日の業務を勤める。
猫と人は違うのだ、とも同時に感じたあの時。
人の姿を借りる様になって長い時間が過ぎたが、私はやはり猫なのである。
人の作りだす技術は人のもので、我々はそれを使えども、そこから別のものを生み出そうとも思わない。

木陰に長々と寝そべり、ひんやりとする地面を楽しみ、
風の匂いを嗅いで近所で何が起こっているかを感じ、
夜空の星々を見上げ、遠い未来に思いを馳せる方が私には重要だからだ。

我、本日も猫なり。
仕事が終わったら、猫の姿に戻ろう。
そして、政庁の屋上で今日は何を思考しようか。

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