感想
のり子が卵を守るため奮闘するお話。
大沢木家の新聞を盗み見するのがどうやら日課の西川家。(ただしこのような形で西川家の親が早起きするシーンは今後レアになって行くが。)なぜか広告を読んでいた西川母は突如絶叫して昏倒する。その理由は卵10個で50円という値段であった。久々の卵料理にヤバイほど心を躍らせているのである。
まら酒なる卑猥な名前の酒屋に(ぶっちゃけこの話のタイトルもなんか・・・)ビールを持っていき駄賃をもらうのり子。卵をその金で購入し、大興奮である。作中のセリフで瓶を10本酒屋に持っていっている事が判明するが、大体一本600グラムなので6キロ程度にその重さは達すると考えられる。2年生には少々重すぎやしないか&「オカンお前が行って卵こうてこいや」と思わんでもないが、のり子自身が納得しているので元々そういう教育方針なのであろう。
さて、余りにもはしゃぎすぎたため卵を車にひかれそうになり反省するのり子。自分のジャージを梱包材にしてランドセルに収納する事を思いつく。ランドセルのスペースから考えて、ほとんど教材が入っていない気がするが、いわゆる置き勉だろうか。ともかく、卵を守るためにランドセルの防衛が始まった。
卵を持っているとバレたら最後と強迫観念にとらわれたのり子は絶対にランドセルを脱ごうとしない。(春巻流の体罰中にはなぜか脱いでいるが・・・。)体育の授業でさえもそのスタイルを貫き通し、中身が気になった春巻に成績ネタでけしかけられた男子の猛攻も防ぎきり、完全に秘密を守り通したのであった。ここで小鉄はともかくノブまでもが殴られているのは珍しいかな。
卵を守りきり家に持ち帰ったのり子。泣きながらオムレツを食う母子なのであった。のり子が腹をくちくし、次に満たそうとするのは顕示欲である。早速大沢木家に上がりこむが、大沢木家は経済的にそこまで逼迫していなかったのであった。ハッチにでもくれてやると目玉焼きを捨てようとする小鉄に、逆水平チョップを食らわせるのり子の目には先程とは違う涙が・・・ というお話。
同じタクシー運転手で大沢木家と西川家どうして経済的にここまで差がつくのかって感じはするよね。むしろ大沢家は家族の成員も多いし、母がパート勤めでもないし・・・。西川父のギャンブル癖がひびいてるんでしょーかね?
個人的評価 ★★★★★
作者評
「浦安版「恐怖の報酬」気に入ってます。」
この話、パッと読んでああ面白いなとも思えるんですけど、例えばラスト2ページで箸をバチがわりに茶碗をカンカンいわせる行為が、のり子サイドだと食を待ちわびる行為であり、一方小鉄には食に対する抗議として行使されてるのが凄く象徴的だなあと、じっくり読もうとするとこういうシーンは対比の為に用意されてるんじゃないかなと思わされてくるわけです。のり子の最後に流したくやし涙が、結局何に起因する悔しさなのかってのは様々な解釈が成り立つし、答えもないんですが、序盤のビール瓶運びやらなんやら見てると結構その根源ってのは深いんじゃないかなあと・・・
「恐怖の報酬」は1952年フランスの白黒映画。ニトログリセリンを運搬するならず者たちを描いたサスペンスもの。なんかのり子がとんでもないモノをなぞってる気がしないでもないですが・・・
最終更新:2012年06月22日 22:37