ダキム

【ダキム】
 荒地や砂漠が多くを占める大陸南部にあった国。
 元々は豪商で知られるダキナムリ一族が、金に物を言わせて貴族となり、更に力をつけて王を僭称するようになり、金の力で雇った大量の傭兵団を使って、910年代に南部群立中小国を力尽くで併合し誕生した。

 王家の人間はプライドと選民意識が極端に高く、総じて成金趣味。代々の王が敷いた治世は大概酷いものだった。
 それでもダキムが国家として維持されてきたのは、有能な武官・文官が揃っており、暗愚な王の無能ぶりを補い続けていたから。
 歴代の王は自分本位で民を奴隷程度にしか思っていなかったが、国を実質的に支え運営していた大臣や将軍達は、民ありきの国という共通意識を持つ。

 そんな国は、百年戦争によって国力を衰えさせ、激しく弱体化していった。

 戦時下では王の決定で重税が課せられ、加えて男手が徴兵によって前線へと送られてしまい、国内の主だった生産業は立ち行かなくなる事態に。
 食糧不足と王命の過酷な取立てにより治安が乱れ、疫病が蔓延し、魔物の活動までが活発化。
 ようやく戦争が終わった頃、疲弊したダキムはそれまで戦線に投入していた傭兵達へ、充分な恩賞を与える事が出来なくなっていた。すると王は彼等の働きに報いないばかりか、傭兵軍団を早々に解散させてしまう。
 命懸けで戦いながら望む報酬を得られず、仕事さえなくし、野に放たれた傭兵達の不満は程無く限界に達した。
 その結果、彼等の多くは野盗同然の無法者へ堕ち、国内で略奪行為を行い始める。その暴性と勢いは日毎に増大していき、この鎮圧も覚束ないダキムの有様に、民衆の不満も爆発。ただでさえ傾いていた国体は噴出する叛意を抑えきれず、1110年代ついに崩壊へと至った。
 これ以後、大陸南部は治める者なき乱世の時代に突入する。
 自らが覇を唱えんと野心家が専横し、戦争難民が溢れ、魔物達が跳梁跋扈する混乱の地と化した。
 再び散り散りになった国々は、更に部族毎へと細分化していき、混迷はいよいよ深さを増していく。
 人々の心まで荒涼としてくる凄絶な刻は、半世紀以上も続く事に。
 そんな南部へ新たな風が吹いたのは、今から20年ほど前のこと。

 ダキム滅亡から凡そ70年後、1180年代に拳帝領トゥカトゥトゥルフが誕生する。
最終更新:2013年10月20日 07:54
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