幻想郷に海鮮寿司は存在しない。
まぁ厳密には存在するのだが海のない幻想郷で海鮮寿司を見るのは非常に稀だろう。
それこそ八雲紫に頼み海産物を貰えるよう頼まない限り。
◆◆◆
「美味しいわね」
紅魔館では寿司パーティが行われていた。
主であるレミリアが外出中なのもお構いなしである。
門番の美鈴、本来図書館に籠ってるパチュリー、幽閉されているはずのフラン、仕事で忙しいはずの咲夜、そして妖精メイド。
紅魔館に住む者の大多数が寿司――まぁ寿司といってもチラシ寿司をだが堪能していた。
「外世界には興味的な食べ物があるみたいですね」
「咲夜ーおかわりー」
「はい、妹様。どうぞ。」
パチュリーの感想に美鈴が返し。フランは無邪気にチラシ寿司を食べる。咲夜はフランの笑顔を見ながら微笑みを浮かべる。
みんなしてレミリアの存在を忘れているんじゃないだろうかというレベルである。
もっとも紅魔館で寿司パーティが始まる原因となる存在が現れたのがレミリアが外出した直後だったので仕方ないのだろうが。
紅魔館に現れた外来人は咲夜が立つ厨房に突如として現れた。
現れた拍子に咲夜が付くっていた料理を全て床にぶちまけてしまったのだ。
咲夜はそれを見て突如として現れた侵入者にナイフを投げたのだがまぁそれは別の話。
その現れた外来人は物陰に隠れながら自分が料理を作るから!!ということで説得を試みたのだった。
咲夜もぶちまけた分の料理全てを作ってくれるならということでそれを認め(まずかったら排除するとか脅したらしい)他の仕事に戻った。
そして外来人が作った料理がチラシ寿司だったわけだがこれが咲夜におおうけし大量に作ることとなったのだ。
もちろん大量のチラシ寿司が短時間で作れるはずはないのでその大部分は咲夜が止めた時の中で作ることとなったのだが。
それが紅魔の面々にも大好評でこうして一大パーティが始まったのだ。
「しかし”あるえすし”とは珍しい名前……」
パチュリーが寿司を口に運びながらその外来人の名を呼ぶ。
そう、幻想入りしたVIP雀士はRSC、酔っ払い配信のある時である。
「いえいえ、そんな珍しい名前ではないですよ。」
「酒臭い……」
口調はしっかりとしているがかなり酒臭い。
酒をガンガン飲んでいる最中にここに連れてこられチラシ寿司を作っている間も飲み続けていたので当然だが。
どう考えてもありえない量を飲んでいるしそれだけ飲んでいればどうしようもないほどに酔っぱらいそうなものであるがそんな様子は見られなかった。
結論から言うとRSCが持つ能力の所為である。彼がが持つ能力は”酒気を操る程度の能力”
自身が酔っぱらうのも素でいるのも思いのまま、ついでにあまり離れ過ぎていないなら自身の周囲にいる人間を酔わせたりすることもできる。
まぁそんな能力は今どうでもいいとして紅魔の寿司パーティの熱気は最高潮に達していた。
パーティということで当然酒もふるまわれるし酔っ払って芸を始めるメイド妖精もいる。
RSCも調子に乗って裏で能力をつかい酔わせるのに一役買っていたり。
「ちょっと動いてみて」
「はい?」
パチュリーはその芸を笑いながら見るRSCに言う。
意味が分からないような顔をしたRSCだったが素直に軽く動く。
「こんどは止まってみて」
RSCは動きを止める。
パチュリーはそのRSCをジッと見つめる。
なにか流れのようなものを見つけるようにして。
「あるえすしー!こっちにきてー」
「いまいきますよー」
フランがRSCを呼ぶ。
RSCはパチュリーに頭を下げフランの方へと向かった。
あとに残ったのはパチュリーだけ。
「あるえすしが動くとそこの結界がゆがむ……」
パチュリーはフランのもとへゆくRSCの周りの流れを確かめるようにしながら呟く。
「なにかまた異変が起きようとしているのかしら、でもまだいいわよね」
そうしてパチュリーもまた、チラシ寿司に下鼓を打った。
◆◆◆
「中でなにか大騒ぎしてるけど本当に入っていいのかな……?」
男は呟いた。
場所は紅魔館の門の前。現在は出入り自由であると掲げてあるが一歩その中に踏み込む勇気が出ないのであった。
「求聞史記だと紅魔館は幻想郷の住人には友好的ってあったけど俺は外来人だし……」
男の名前はまだら、彼もまたVIP雀士である。
紫を愛する人物。
「どうしようかなぁ……」
まだらは決断できないでいた。
場所:【紅魔館/1日目・夕方】
名前:まだら RSC 咲夜さん 美鈴 フラン パチュリー
備考:RSCがいる周辺は幻想郷の結界がゆがむようです。他のVIP雀士の周囲でも結界が歪むかは不明です。
※酒気を操る程度の能力 ――自分や周囲にいる人を自由に酔っぱらいにしたり素に戻したりすることができる。それ以上でもそれ以下でもない。
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